スマートメータがあれば、輪番停電は不要だった 井上晃宏
井上晃宏提供:井上晃宏/アゴラ
2011年03月15日22時25分
今回の電力不足は、電力消費量に供給量が足らなくなったからだと理解されているが、正確ではない。発電能力の不足は絶対的なものではなく、昼間のピーク電力消費量を賄う発電能力がないというだけのことでしかない。夜間の発電能力は足りている。
毎年、夏になると、ピークに発電能力が足らなくなり、停電の危機が訪れる。電力会社は、季節別料金や時間帯別料金制度によって、ピークを抑制しようとしている。
ピーク時にのみ高い電力単価を適用することにより、夏や昼間の経済活動を縮小し、冬や夜間に行うなら、経済活動を縮小せずに、ピーク電力消費量を減らすことができる。発電設備はピーク時に合わせて整備する必要があるため、ピーク電力消費量が減るなら、電力設備は少なくて済む。
しかしながら、電力料金の変更をする場合、実施前に、利用者への周知期間を置く必要があるために、今回のような、突然の天変地異には対応できない。電力単価の変更を速やかに利用者に伝達する手段がないからだ。現在は、検針員が利用者宅に直接投函する検針票をもって、電力単価を伝達している。
また、従来の電力計は、単に電力量を積算して表示するだけであり、時間帯別、日にち別の電力消費量を記録することができない。
この問題を解決するには、無線通信機能を備えた「賢い電力計」、すなわちスマートメータが有用だ。東京電力は昨年より導入実験を始めた。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100311/181021/
当初より予定されている機能は、自動検針であるが、通信は双方向であり、電力会社側から利用者へのデータ通信を行うこともできる。
スマートメータがあれば、リアルタイムで利用者に電力単価を知らせることができる。もちろん、時間帯別、日付別の電力料金の集計も可能だ。電力会社は、価格メカニズムによって、間接的に消費電力を制御できるだろう。
「間接的に制御する」というところが重要だ。直接制御してしまう輪番停電は、言わば計画経済であって、消費者側の細かい事情を斟酌できない。エアコンは止められても、サーバは止められないとか、冷蔵庫は止められるが、人工呼吸器は止められないとかいった事情は、消費者にしかわからないので、価格メカニズムを介した消費抑制の方が望ましいと考えられる。