2010-04-12
「学校耐震化予算削減」はスポーツ利権目的の大嘘
鳩ぽっぽ「予備費を使って学校耐震化を推進する!」→四か月前に自分たちが予算をごっそり削ってました
まーたころっと騙されてからに。
削られた予算の名前だけ見て、内容を知ろうとはしないのか。
×学校耐震化予算を削減した
○学校耐震化「等」の「当初」予算を削減した
◎学校耐震化「等」と称して同じ予算で建設されていたスポーツ利権予算を潰し、学校耐震化に回す。耐震化には、当初予算に加え、状況に応じて「補正」予算も付ける
どこが学校耐震化予算削減なのか。
学校耐震化予算を減額した事実はなく、当初予算(年度開始前に決まっている分)で不足する分を補正予算で手当てすることも既定路線である。
学校耐震化に関しては、間違いなく無駄を削って本来の趣旨に予算を回している。政府(仕分け)側にも非があり甚大な弊害を招いた科学技術関係とは違い、この仕分け内容に政府を叩くべき点はない。
批判すべき点があるとすれば、国民への説明が不十分なところ。特に鳩山首相てめーはだめだ。まるで今自分が思いついて検討し始めたかのように答えたために、今まで補正予算を付けない予定であったと捉えられ、こうした政治不信を著しく煽っている。強く批判したい。いや、首相の脳内では今まさにぼくが素晴らしい政治判断をした予算になっているのだろうか。だろうな。
当初予算の要求予定額(事業仕分け前時点)
□公立学校施設整備事業 1085億円
├□公立学校施設整備費負担金 252億円(学校の新増築)
│├継続 155億円 :仕方ないから執行(実際の予算ではこれも結構削られている)
│└新規 97億円 :凍結
└□安全・安心な学校づくり交付金 833億円(学校の改修や文教施設)
├改築・大規模改造・地震補強 681億 :優先、むしろ政府の肝煎りで増額
├武道場新改築 38億 :無駄
├地上デジタルアンテナ工事 7億 :必要性低い
├太陽光発電設置 20億 :財政上、見送り
└その他 約87億 :概ね無駄
(事業仕分けでは「あとの細かなメニュー」と説明し、金額や細目の説明せず)
補正予算見込み額
□公立学校施設整備事業
└□安全・安心な学校づくり交付金
└改築・大規模改造・地震補強 大雑把な推計で約2000億円*1
学校耐震化に関する事業仕分けと折衝はこんな感じ(意訳)。
文科省「学校耐震化等に833億円よこせ。うち681億円を耐震化に使う」
仕分け人「『等』と称して学校と関係ない体育施設建設に流用すんな。耐震化に集中しろ」
文科省「じゃあ学校耐震化に893億円よこせ」
政府「うるせー910億円くれてやる。補正予算も後で出すからな!」
限られた予算をさまざまに使おうとする文科省に対し、仕分け人と政府がほとんど全部学校耐震化に突っ込めと求めた。学校耐震化予算を召し上げたという世間に流布するイメージとは逆である。
実は、事業仕分けの簡単な速報記事では以下の通りちゃんと報じられていた。
【公立学校施設整備事業】小中学校舎の耐震化工事など公立学校の施設整備事業を実施する地方自治体向け補助金と交付金で概算要求は計1085億円。学外にある水泳施設整備なども助成対象となっていることが疑問視され、対象事業を耐震化工事に限定し、予算を削減すべきだと判定。
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112501000810.html
学校と無関係な予算や緊急性の低い予算を削ったのであり、学校耐震化に限れば増額である。耐震化予算を削ったという話はデマ。学校耐震化の美名を金看板に、無駄に伴う利権を温存したいスポーツ利権者が仕掛けた情報操作だ*2。またそれか。
2775億円を1032億円に削ったというのも、当初予算と補正予算を意図的にか混同した(後で説明する)悪質なミスリード。まあ姉ファルファの記事で引用されている読売新聞は分かっていて民主叩きのために乗ったのだろう。官僚の説明を鵜呑みにして騙されているならそれはそれで報道機関の体をなしていない。どっちにしても駄目だな読売は。
むしろ学校耐震化に予算を集中した事業仕分け
第一点。
「公立学校施設整備事業」の事業仕分けで学校耐震化分は削られていない。むしろ他を削って耐震化予算を優先(+新増築のうち既存事業)と決定されている。
事業仕分けでは、無駄を省くのが目的で本体予算を削る気は「なかった」(のに削る答申が行われた)残念なケースが頻発した。仕分け人の無理解と省庁側の説明力不足による茶番だ。だが、学校耐震化予算に関する限り、削る気は「ない」。珍しく仕分け人がいい仕事をしている。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov25kekka/3-56.pdf
*ちなみに新増築は統廃合や増設が必要になったものを指し、旧校舎の強度が足りなくて新築する場合は耐震化に入るらしい。
「地震により倒壊の危険性のある公立小中学校、幼稚園、特別支援学校施設の耐震化等の推進」と説明され、あたかも耐震化予算のように説明されている「公立学校施設整備事業」は、実は学校施設を整備する予算ですらない。学校施設と文教施設を整備する予算である。予算の無駄として批判を受けたのは、学校の武道場の新設*3や地デジテレビ投入、緊急性のない太陽光パネル設置、そして学校と関係もない地域スポーツセンター・地域スイミングセンターの類であった。
事業仕分けでのやりとりはこんな感じ(意訳)。
仕分け人「学校の耐震化の重要性はよく分かってる。しかしその予算で何故、学校と関係ない地域スポーツセンターや地域スイミングセンター作ってるんですか?」
文科省「体育館も大地震の際には避難所となり、大変役に立ちますね」
仕分け人「いや、そんな話はしてない。地域スポーツセンターってそもそも学校じゃないわけで、なんで学校耐震化に使うべき予算でそんなもの作ったのかって聞いてるんだけど」
文科省「避難所として使うからにはそれらの体育施設にも耐震予算が必要であり、新たに付けて頂きたい。お願いしましたよ」
仕分け人「そんな話してないつってんだろ」
文科省「ですから今後、予算措置を強くお願いしていく所存であります」
仕分け人「時間ないんだけど今何の話してるか理解してる?」
例によって、耐震化「等」の1文字に趣旨とかけ離れた利権の予算が潜ませてあるわけ。そこで事業仕分けでは学校関係ない予算や緊急でない予算を削り、学校耐震化に回せと判断が下った*4。
これがスポーツ利権者の手にかかると、「学校耐震化予算を削った!政府民主党は子供の命を何とも思っていない!」ということになる。で、国民はころっと騙されている。バカバカしいったらない。
なお、私立幼稚園や私立学校向けの耐震化予算は別途設けられている。こちらは目的を厳しく限り、チェックされていて流用がないから、事業仕分けの対象になっていない。また政権交代後に2009年度公立学校施設整備事業予算のうち127億円を執行停止しているが、これも新増築事業向けの補助金分で申請がない残りであり、耐震化予算を含む交付金分は止めていない。これらからも、政府に学校耐震化予算を削る気はないことがよく分かる。
当初予算と補正予算を理解せよ
第二点。
実際に決まった予算でも、学校耐震化予算は削られていない。
学校耐震化予算はもともと一定額以上は補正予算で対応するものであって、当初予算が少ないのは当たり前である。
学校耐震化予算を含む「公立学校施設整備事業」の当初予算はここ数年、1000億円ちょっとで推移している。制度上、当初予算は大きく増やせず、補正予算で手当することになっている。自治体側が申請してきたら対応するため、最初に国の側で予算を決め打ちしてしまえない事情もある。
08年度・09年度とも当初予算は1050億8300万円であり、これに年度開始後の補正予算として08年度1119億円・09年度2778億円が追加された。
元々数次に分けて手当されるものであり、最初から年度初めに揃う予算ではない。かつ、当初予算分は大幅に増額されている。予算を削られて耐震化工事ができないという説明は完全な虚言である。「一旦止めたから遅くなった」「止められた間に逸失が発生した」という(事業仕分けで削減→復活となったケースにおいては正しい)批判も、この件では的外れである。止めてない。また、高校無償化のために削られたとする説明もでまかせである。耐震化予算は削られていないのだから。
・当初予算
当初予算は「公立学校施設整備事業」全体で1000億ちょっとと決まっており、それを越える部分は補正予算から出るのが通例であって、当初予算を1000億円に削られたという理解は誤り。
8月31日の最初の概算要求(自公向け)では確かに前年度比1725億円増の2775億円要求されているが、こんな増額は常識的に考えてありえず、文科省もこれが通るとは思っていない。
結局、10月15日再提出(民主向け)では1085億円の要求に対して1032億円の回答となっている。うち耐震化分は、文科省の当初の要求681億円が、事業仕分けでの「耐震化に集中せよ」との結論を受けて要求893億円に積み増され、これに対し回答910億円と政府側が増額している(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1288850.htm)。
要求1085億 うち耐震化681億、新築252億、ほか152億
↓
回答1032億 うち耐震化910億、新築122億?
・補正予算
補正予算で出すことの了解はあった。900億追加しても別に当然で、自治体側の申請状況次第ではまた追加があってもいい。脚注1に書いた通りあと600億ぐらいは必要と見込まれ、それ以上でもあればあるほど好ましい。
近年の公立学校施設整備事業については、補正予算≒耐震化関連である。耐震関係の予算ばかりがちゃんと出ている。以下のグラフを見れば一目瞭然だ。
(本土分となっているのは沖縄県が内閣府扱いのため。当エントリ中の数字は全てそう)
どう「一目瞭然」か分からないなら、補正予算がぴこっと飛び出しているところをこちらの記事と比較していただくと分かる。
平成10(1998)年度:1995年の阪神淡路大震災を受けて建築基準法改正、耐震基準ができる。
平成14(2002)年度:耐震診断・耐震補強が(自主的に)なされたか、調査が行われた。ろくに行われていなかったため、7月に文部科学省より「公立学校施設の耐震診断実施計画の策定について」なるお触れが出て、全国の学校で耐震診断実施。
平成16(2004)年度以降:改正耐震改修促進法により、幼稚園・小中学校の耐震化を義務化。
平成20(2008)・21(2009)年度:08年度に制度改正(よく分からない。事業仕分けでの発言)。耐震化への補助金増額の期限(2010年度)に近付き、駆け込み需要発生。2008年四川大地震の学校倒壊で、地震をナメていた自治体にもついに現実感。
「安全・安心な学校づくり交付金」のうち、耐震化でも地デジ武道場太陽光パネルでもない「その他」部分にも、バリアフリー化など必要そうなものが含まれる。全部無駄ではないはず。だが、事業仕分けで説明を忌避したほか、文科省のサイトを漁ってみたところ文教施設企画部の文書では一切存在に触れておらず(耐震化ばかり強調、あって太陽光パネルまで)、スポーツ関係部局の文書でも他の名目の費目と合算した額しか出していない。適切でない予算をこっそり組み込みたい意図がありありだ。無駄・付替・流用の伏魔殿であることは、心象的にはまず間違いないところ。そもそも交付金というのは弾力的な運用が可能=細かいチェックを受けずに使える予算の意味。補助金の用途が厳しく限られるのとは対照的に無駄遣いしやすいものだ。
地域スポーツセンターなんてどう考えても「安全・安心な学校づくり交付金」の範疇外。かつては「公立文教施設整備事業」であったから学校以外の予算が含まれてよく、またその内訳で「社会体育施設整備」などとして学校施設整備とは区分していた。だから以前は特に問題なかったし過去の予算額も記録が残されている。しかし今や「安全・安心な学校づくり交付金」という不適切な費目に入れてしまい、複数の用途を同一費目に隠して区分できないようにしてある。今社会体育施設整備分がいくらなのか、データで出していない様子*5。いやーナメきってますねコレ。後ろ暗いところがなければ堂々と費目を立てればいいわけで、反対しにくい費目にこっそり忍び込ませるようじゃ、露骨に怪しい。
なお、公立学校施設整備事業を担当する文教施設企画部は省内のハコモノ行政を牛耳ってミニ国交省と呼ばれ、文科省の中で特に利権の強い部局だそうである。ソースはウィキペ。まあ利権の強さは事実らしい。ちなみに文教族のドンが森元首相である。
しかし、予算の多くを耐震化に食われているのが現状*6とのこと。耐震化は裁量の余地が少ない、つまりは旨みが少ないと思われ、逆に学校に関わりない社会体育施設こそ自由度が高くて旨いのだろう。国民が用途を把握できないよう「安全・安心な学校づくり交付金」に溶け込ませたスポーツ利権を手放したくないわけだ。無駄を守りたい利権者が、学校耐震化を餌に国民を欺き、予算を削るなと政府批判させようとしているのではないか。
結論。
政府は同じ費目に忍び込まされていた無駄なスポーツ利権予算をカットしてその分を耐震化に集中するよう命じ、実際そのように予算編成した。
学校と無関係な社会体育施設の隠れ予算を削られて気に食わない利権者が、事実と正反対の「学校耐震化予算が削られた」という嘘を流布して国民を騙し、その国民の声を利用して有利に事を運ぼうとしている。
国民、これでもまだ無駄を守りたい利権者に騙されますか?
*1:文科省は2010年度に学校耐震化工事を行うべき棟数の見込みから、予算2371億円(2775-1085+681)が必要と弾いている。うち910億円が当初予算で付き、補正で1461億出れば計画通り。政府が推進方針であること、2010年度分で交付金の優遇制度が終了することから、上積みされると推定した
*2:文教施設には体育施設以外もあるはずだが、座学では既存の学校等を利用して施設を作らないということなのか、事業仕分けでは体育施設だけ挙がっていた。
*3:これも無駄なハコモノと判断されたわけだが、こちらは経緯の無理解。愛国心の養成を目的とした2012年の学習指導要領での武道必修化によるもので、国が設置を義務付けたのだから、無駄とは言えない。言うなら学習指導要領改定を急遽撤回せねばならない
*4:もっとも費目が同じである以上、流用できるよう誤魔化されるおそれは依然あるように思えるが、どうなのだろうか
*5:1550ページある資料を見ても内訳がなかった。探し方が悪くて見つからなかった可能性も否定しないが、簡単に見つけられるように示されていないのは確か。もう探さないぞ
*6:事業仕分けで文科省側が発言。額を見てもその通り