2011年3月15日21時52分
被災地で生活や安否情報を伝えている東北地方のラジオ局が、綱渡りの放送を続けている。停電で自家発電に切り替えて放送を続けたが、燃料にも限りがあり、被災者の大事な情報源が危機に立っている。
宮城県のテレビ兼営のAM放送、東北放送(仙台市)のラジオアンテナは、津波被害が大きかった仙台市若林区にある。地震後、アンテナは水浸しになり、使えなくなってしまった。
県内のAM放送は、NHKと東北放送だけ。NHKが全国放送の合間に地元の災害情報を流すのに対し、東北放送は地元の情報を24時間流している。本社に設置してある予備のアンテナに一時的に切り替え、備蓄燃料による自家発電で、放送を続けた。
だが、予備アンテナは電波の出力が弱く、視聴者からは「放送が聴けない」との声が相次いだ。このため、同社はインターネット上の動画配信サービス「ユーストリーム」でも放送を流す非常措置も取った。
社内に緊張が走ったのは、地震から2日後の13日。燃料の重油が底を尽き始めたからだ。急きょ、系列キー局のTBSに援助を要請。TBSは同社が備蓄する重油の提供を決めた。一方、総務省はタンクローリーの被災地向け通行許可を得るため、警察庁とかけ合った。
現地に到着したこの重油でひとまず自家発電し、15日午後から、復旧した元のラジオアンテナから電波の送信を再開した。
総務省によると、東北の被災地の民放局は震災後、軒並み停電に見舞われ、一時的に自家発電で放送していた。いずれも15日までに電力が復旧し、正常に戻った。だが、東北放送だけは、ラジオアンテナへの電気が復旧するメドがいまだに立たないという。重油は8〜9日分しかなく、再び燃料が尽きた後の対応に頭を悩ませている。(田玉恵美、岡林佐和、仙台総局・高橋昌宏)