社説

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社説:東日本大震災 情報は危機管理の要だ

 東京電力福島第1原発では3号機の原子炉建屋が水素爆発で吹き飛ぶ新たな事態が起きた。1、3号機に続き、2号機でも冷却機能が失われ、一時は空だき状態になった。

 その後、海水注入を再開したが、ぎりぎりの状況だ。空だきが続けば、炉心溶融が進み、79年の米国スリーマイル島原発事故のようなメルトダウンにつながる。最悪の事態が起きれば、被害は国内にとどまらない。なんとか冷却につなげたい。

 原発で何が起きているのか、よくわからないまま避難指示が出されても人々は不安に思う。現状に加え、今後どういう事態が予測されるのか。正しい情報を伝えてほしい。臆測で不安感が高まればパニックにつながり、不要な被害を広げることになりかねない。

 今回のような大災害における危機管理では、信頼できる発信元からの迅速な情報発信が何より大事だ。その重要性は新型インフルエンザの時にも身にしみている。

 しかし、これまでの状況を見ると、官邸、経済産業省原子力安全・保安院、東電などが別々に会見を開いている。1次情報は東電にあるため、時間差があり、情報の詳しさや正確さにも濃淡がある。

 1号機の原子炉建屋の爆発では政府の公表までに何時間もかかった。東電の報告が遅かったためという。その後、改善は見られるものの、迅速な情報共有は万全とはいえない。

 計画停電をめぐる混乱の根底にも情報提供の不備がある。東電の説明や対応は二転三転し、自宅がいつ停電するのか、前日深夜になってもきちんと伝わらなかった。

 情報がないままに停電すれば、自宅で人工呼吸器などを使っている人の命にもかかわる。情報の混乱は、鉄道運休による混乱にもつながった。これだけの大災害であり、停電自体は国民の理解を得られるはずだ。問題は情報の的確な発信である。

 もはや、原発や電力供給をめぐる情報の収集と提供を一企業に任せておける状況ではない。

 リアルタイムの情報を基に、政府が原発や放射線の専門家、危機管理や広報、リスクコミュニケーションの専門家と一体となって、情報提供に取り組む必要がある。

 ひとつの方策として、政府と東電とで危機管理チームを作り、外部の専門家や関係業界の支援を得ながら、政府主導で迅速に統一情報を出していくことも検討してはどうか。

 非常に困難な状況をみなで乗り切りたい。そのためにも、的確な情報共有と提供による危機管理に国の総合力を高める時である。

毎日新聞 2011年3月15日 2時33分

 
 

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