郵便不正事件の証拠品だったフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事、前田恒彦被告(43)の初公判は14日午後も大阪地裁(中川博之裁判長)で続いた。検察側が朗読した前田元検事の供述調書の中で、無罪が確定した厚生労働省元局長、村木厚子さん(55)に対し「申し訳ない気持ちでいっぱい」と謝罪していたことが分かった。
郵便不正事件で特捜部は、厚労省の証明書を勝手に作った元係長、上村(かみむら)勉被告(41)のFDを押収したが、中のデータは村木さんが証明書作成に関与したとする検察の構図と合わず、前田元検事はFDが裁判の証拠になるのを避けようとした。
供述調書では「『事件のことは早く忘れたい』と言っていた上村元係長にFDを返却すれば、見ないだろうし処分する可能性もあると考えたが、その保証はないと悩んだ末、改ざんを思いついた。まさに魔が差した瞬間でした」と心境を述べていた。10年1月末、特捜部の元副部長、佐賀元明被告(50)=犯人隠避罪で起訴=に「検事を辞めなければいけなくなりました」と電話で改ざんを告白。佐賀元副部長は「何とか守りたい。上に相談してみる」と泣き、誤って書き換えたという言い訳を考えると、佐賀元副部長は「それでいこう。それが真実だからな」と答えたという。
証人で出廷した前田元検事の司法修習同期の男性弁護士は「死も考えたと聞いたが、奥さんや2人の子どものためにも生きてほしい」と情状を訴えた。「夫は正義感が強くまじめな性格。ずっと支えたい」と寛大な処分を求める妻の陳述書や、同期の弁護士の嘆願書が次々に読み上げられた。【苅田伸宏、久保聡】
毎日新聞 2011年3月14日 23時07分