〜それはずっと消えない小さな光〜
後藤政志氏 福島原子炉格納容器同型設計者 会見内容
2011-03-14 Mon 08:48
演題: Ban(伴英幸氏), Kamisawa & Goto(後藤政志), The Earthquake and Nuclear Disaster In Tohoku 「地震と東北に於ける核災害(の可能性)について」

日時:2011年3月13日 19:30 - 21:30
場所:外国特派員協会(東京)
主催者:原子力資料情報室(CNIC)-Citizen’s Nuclear Information Center(脱原発を訴える市民グループ)
主とした発言者: 後藤政志(元東芝エンジニア。専門は原子炉格納容器の強度、解析の研究。今回問題を起こしている福島原子力発電所の原子炉格納容器と同型の設計の責任者。)

(お名前の漢字の表記が正しくは政志であるところを、正志と間違って掲載していましたことお詫びいたします)

上記記者会見の内、後藤政志さんの会見部分のみ、発言内容をなるべく忠実に筆記したのが以下の文章です。

テーマ:原子炉格納容器の構造とその耐性、及び非常事態における炉心融解の危機について

後藤、と言います。先ほどご紹介いただきましたように、元東芝、で原子炉格納容器の、設計を担当しておりました。
特に私の専門はですね、格納容器のシビアアクシデント(深刻な事故)における、強度、圧力、温度にどれだけ耐えるか、そういうこと等、実験、解析で、研究しておりました。
現在起こってます、原子力プラントの事故は、地震そのものと、津波の両方によっています。
ご承知のように、日本は地震国です。
日本における原子炉プラントの設計は、当然地震力を決めて、それで設計しております。

<柏崎刈羽原子力発電所のケースについて>
しかしながら柏崎刈羽原子力発電所で設計の条件を2倍または3倍を超える地震による力が発生しました。
柏崎に於きましては、ご承知のようにさまざまなトラブル、いろんな所での故障がありました。
しかしながら原子炉本体、格納容器、等主要部分は大きな損傷は免れたと思われます。
柏崎刈羽の事故の後ですね、プラントは非常に設計に余裕があるから大丈夫だったんだと、このように評価をされています。
しかしながら実際に大きなダメージを受けなかったのは偶然であります。
何故ならば、地震による力、はそれだけではなくて設計は圧力、温度他の条件の組み合わせによって決まります。
ですから柏崎では偶然、非常に厳しい所が、大きく揺れなかった、まあそういう可能性が高いです。
( 2007年7月16日 新潟県中越沖地震に伴う東京電力柏崎刈羽原子力発電所での一連の事故を指している。Wikipediaの引用; 同日発生した新潟県中越沖地震により、外部電源用の油冷式変圧器が火災を起し、微量の放射性物質の漏洩が検出された。この地震により発生した火災は柏崎刈羽原子力発電所一カ所のみであるとされる。震災後の高波によって敷地内が冠水、このため使用済み燃料棒プールの冷却水が一部流失している。全ての被害の詳細は2007年10月現在もなお調査中である。この事故により柏崎刈羽原子力発電所は全面停止を余儀なくされた。2007年11月13日、経済産業省原子力安全・保安院はこの事故をレベル0-と評価した。)

<福島第一、第二原子力発電所のケースについて>
で福島の話、第一福島発電所、第二福島発電所のお話に移ります。
ご承知のように、大きな、史上初めと言いますか、マグニチュードで、9+の大きな揺れ、と津波を受けました。

図を元にご説明させていただきます。

ここに原子炉(nuclear reactor)があります。燃料(fuel)ですね。で、この原子炉で冷却水がこう回っているわけですね。
これ正確には再循環ポンプと言いますけど、この他に、ここで原子炉がありましてここで蒸気が出ます、これでタービンをまわして(水蒸気が)戻って来る。こう蒸気が、水になって、戻って来ますね。
これに図に描いてありませんけれども、事故の時に冷やす、ECCS(Emergency Core Cooling System)、というのがあります。
で、お話はこのシステムと、この外側にあります鉄製の格納容器、containment vesselですね、に関係したお話になります。
このスティール(鉄)の厚さは大体30ミリ、直径は30メートル近くあります 。

ただしこの格納容器の形は大きく分けて二つタイプがあります。
これはマークII型と言います。もう一つマークI型という形があります。
今回の第一福島の、一号機からですね、三号機まですか、今問題になっているプラントは、マークI型です。

で格納容器と言うのは事故がありました時に、放射能を閉じ込める機能を持っております。
さらに、事故が起こりまして配管が破綻したり、原子炉の蒸気が出た時に、このサプレッションプールと言います。この水に、蒸気が吹き込まれて凝縮します。
形は同じでして、格納容器としてはこの閉じ込めている事、それからプールがあるという事、この2点であります。

事故が起こりましたのは、この冷却系ですね、地震がありまして、制御棒は全部挿入できました(核燃料の、燃料棒の間に、制御棒が差し込まれる事で、核分裂を停止させる事が出来る)。制御棒は下から上に上げるんですね。下から上に上げまして、核反応は止まりました。

しかしながら、この温度ですね、崩壊熱がありますので、崩壊熱というのは、核反応が止まってもその後、燃料は冷やし続けないと、メルトダウン、溶け落ちます。

(今回の)この事故が、どのように起こったかと申しますと、端的に、原子力プラントの外から供給される、電気、電源が喪失したことにあります。
全電源喪失といいますが、電気が落ちたために、冷却が出来なくなりました。

原子力プラントでは、こういう事故を想定して、ECCS、先ほどの、緊急炉心冷却、とそういうシステムをつけております。
さらに、外からですね、そのように電源が入らなかった時に備えて電源の代わりに、非常用のディーゼル、を複数台用意しています。
非常用の(ディーゼルを動源とする)ジェネレーターは、2台、ないし4台あります。

第一福島の一号機においては、その2台の、非常用ディーゼルの立ち上げ、に失敗しました。
従いまして、冷却が、水が循環しませんので冷却出来ないために、だんだん水位が落ちて来ます。落ちて来ました。
燃料が水面から露出して、燃料が溶け始めました。

原子炉内の圧力、温度が上がってますから、この中の温度が上がるということは格納容器全体の温度も、ここから蒸気が出ますのでね、吹いたために、(原子炉)格納容器の温度も上がって来ます、圧力温度ですね(原子炉圧力容器を原子炉格納容器が覆っている構造)。圧力と、温度。
この格納容器の圧力、はですね、設計の条件の1.5倍以上に上昇し始めていました( 格納容器内で、格納容器が耐えられる圧力の1.5倍まで圧力が上がった)。

従いまして、格納容器が破損する、危険性が出て来ました。

同時に、サプレッションプールの水温、これも100度C(摂氏100度)を超えて来ました。
従いまして、この水を使って、冷やすことも難しくなって来ています。

炉心がだんだん出て来まして、溶け始めた、そういう状態の中で、何とか水を、注入するようにですね、圧力容器の中に、水を注入する努力をしていました。
通常のシステムではない、外からですね、つなぎこみをしたりして、何とか、冷却機能を維持するように努力してきたということです。

機能として必要な事は、水、それからポンプですね、それとその動力としての電気ですね。

電源に関して言いますと、全体の電源が落ちていますから、全プラント、オールプラントが電源喪失しています。(通訳者に確認を求められて、電源が)無くなっています、完全に。

それで非常用のディーゼルが、一号機では2台も止まっていて、他の号機では、4台の内1台動くとか、そのように一部が動いていましたけど、かなり止まっているのが多かった。起動が出来なかったのですね。
それで先ほど申し上げました一号機のように、二台とも止まったときには外から、電源車、電源を持って来る、ということをしたんですね。確保する事ですね。
その非常に容量の小さい、不安定な電源で、維持している、わけです。

実はその状態で、先ほど申し上げました格納容器、の圧力が上がっていて、冷却も、不十分、です。

それで仕方がなく、格納容器が壊れる事を防止するために、格納容器のヴェントと言いますけど、格納容器から外に蒸気、放射能を含んだガスを出した、ということになります。


私が研究して来た結果、を申し上げます。

格納容器の強度は大体設計の2倍くらいまでは、たぶん保つであろう。
ただし厳密には2倍、から上手くいくと5倍くらい保つかもしれません。
それは(圧力に耐えられる数値にばらつきがあるのは)何故かといいますと、プラントの形質、とか一部弱い所があったりしますので、プラント一号機か二号機か、それぞれ違いますから、同じ値とは限らない訳ですね、2倍から5倍の間くらいかと思います。

実はこの事故の状態では、ですね、もう格納容器は設計の状態を超えているんです。
冷却機能も、完全ではないわけです。
従いまして、格納容器がこのままいって爆発する、ことを恐れていました。
それで、先ほど申し上げたように、格納容器からヴェントしたわけです。
これは格納容器、という目的ですね、放射能を閉じ込めるという目的に反しております。
しかしながらやむを得ずヴェントした(それ以外選択肢がなかった)、とそういうことであります。

そういう不安定な状態の中で、冷却を維持するために、冷やしているんですが、水が足りない訳です。
通常プラントの中は、非常にきれいな純粋、真水で動かしています。しかしながら水がないので、事故の対策としてやむを得ず、海水をそのまま原子炉、に入れることを決断しました。
海水を入れるということは、プラントとしてはもう使えないということを覚悟してやったことだと考えます。

同時に、それだけではまだ、確実ではない。何故かと言いますと、まだ、冷却がずーっと上手く行くかどうか、現在、余震も続いていますから。


従いまして、この格納容器の機能を、維持する事が絶対、必要です。


しかしながら、格納容器の、万一ですね、さらに炉心溶融が進んだ場合、格納容器はほぼ、間違いなく壊れるだろうと思います。
なぜならば、先ほど申し上げましたように圧力が、1.5倍とか2倍になって、温度も上がっている状態、もちろんその後少し下がっているんですけれども、また炉心が溶けて来ると、そういう状態になります。

そのために、格納容器の中も、海水で満たす、ことを現在始めています。
(通訳の方の確認を受けて)一つは原子炉圧力容器の中、二つ目は原子炉格納容器の中を海水で満たすことをしています。サプレッションプールだけではなくて、全部この水を上まで(原子炉格納容器全体に)入れちゃうんです。
非常事態としてそういう対策をやりつつある、とそういうことです。
今、満水しているのは、原子炉の中は一号機は既に、海水を入れて、格納容器の中も今入れている途中です。


実は他のプラントも次々とそのようになる可能性があります。


従いまして、現在ですね、非常に危機的ですぐ、そのまま格納容器が壊れるという状態ではありませんが、非常に、もし、炉心、のここで冷却に失敗する、今冷やしているところが止まってしまうとか、ありますと、最悪のシナリオにいく可能性があります。


一つ、追加しますと、ここには絵がありませんけど、格納容器の外側に、原子炉建屋という、リアクタービルディングがあります。
昨日、このリアクタービルディングの上部で水素爆発が起こりました。
その爆発によりまして、建物の上部は吹き飛んでおります。

非常に心配されました格納容器、原子炉、は何とか、その爆発、に耐えられたようです。

原子炉において、心配なことは、冷却、出来なくなることですね、それが一つですね。

それと、爆発です。水素が出ますので、燃料が溶けると水素が出ます。その水素が爆発する。
格納容器の中は、窒素を封入しています。
窒素を封入してありますから、格納容器の中で水素ガスが出ても、簡単には火はつきません。
しかしながら、今回は、格納容器をヴェントしています(格納容器の中のガスが、今回の非常措置により、外に排出されている状態になっている)。
従いまして、窒素ガスのいくらか、かなりの部分かもしれません、外に出ている可能性があります。
実際の、発表によりますと、格納容器の中には窒素があるから大丈夫だという説明になっています。
が、それは、間違いです。今出ちゃっているから、危ないんです(窒素がないから、窒素で封入されていないから、水素が出ますよね。水素ガスが出て、中の窒素が外に出されちゃうとですね、窒素封入になってませんから、それに酸素が加わると、燃えるんですね)。
ですから、通常の状態ではない、ということです。


ただこのまま、冷却に上手く行く、同時に格納容器が壊れない、そういう状態になれば、事故は収束できると思います。


ただ繰り返しますが、決して安定した状態ではない。

ですから、プラントの周辺の人が退避しているわけです。


以上、概要を申し上げましたけれども、現在まだ進行形であります。

私は、原子力に携わったエンジニアとしての立場から、非常に、今回、事故に関わられて、けがをされた方、あるいは被害を受けられた方に対して非常に、哀悼の意を表したいと思います。
私自身、設計に携わった立場といたしまして、こういう不幸になったことは、非常に無念であります。

ただ特にですね、現在、いろいろ報道で見てますと、本当の実態、ですね、何が起こっているか、の説明が足りない、と私は思います。
正確にその状態を、みんなに知らせて、それによって対策と同時に被害を最小限にする手だてを講ずるべきだろう、と考えます。

現在の状態を維持するためにも、たぶんプラントの運転に関わる人、メンテナンスの人、あらゆる方が努力されているという風に、その方々に非常に、の想い、苦労を思いますと、非常に胸が、苦しい思いであります。
以上、どうもありがとうございます。


*福島第一原発に関するNHK報道は次の通りです* (3/14/11、11:50amの時点)

経済産業省原子力保安院によると、午前11時1分、東京電力福島第一原発3号機で、水素爆発が起きたとのことです。住民に対して、屋外にいる場合は、屋内退避して下さいとのことです。扉も必ず閉めて下さい。原子炉建屋の天上や外壁が吹き飛んで、骨組みだけになっているのが見えます。風は南から北に向かって、吹いているということです。一昨日起こった1号機と同じような現象の爆発が起こったと保安院は説明している。(NHK報道による)続いて流れた現場の映像によると、詳細は確認中とのことです。まだ格納容器が無事かどうか未確認です。

東京電力によると、爆発がどこで起こったのか、核燃料が入っている原子炉圧力容器や、原子炉格納容器が大丈夫か、まだ未確認です。

それに対して、枝野官房長官は、現地の所長の、本日11時30分の情報によると、原子炉圧力容器が入っている格納容器は大丈夫であり、従って放射能物質が大量に飛び散っている可能性は低い、との見解を会見で述べた。今放射線濃度の情報を収集しているので、情報分析に戻りたい。
影響がない、というのは、圧力の数値が若干低下しているが一定の範囲にある+現地の所長の報告により、現時点の正確な報告として、格納容器は健全である、としている。放射能の移譲な上昇を示す値は確認されていない、としている。

<枝野官房長官による12時45分頃の記者会見>
福島第一原発3号機爆発放射線量特段変化なし。
現地から6名の負傷者が出た。行方不明の報告はない。
避難の状況は20キロ圏内からの退避の途上にある。
500人ほど避難中。

今回の事象は過日の一号機での水素爆発と同種のものであり、格納容器の健全性は保たれているとの見方。


(参照)原子力教育を考える会による原子力防災についてのサイト
http://www.nuketext.org/manual.html

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