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 小沢一派の会派離脱と菅・小沢会談の相関関係

 民主党会派は離れても民主党は離れない──。小沢一郎・民主党元代表(写真)に近い衆議院比例代表選出議員の造反騒動は、禅問答のようだった。だが、この禅問答こそが今の政治状況を象徴している。そして不毛の「小沢氏の党員資格停止」への道につながる。その道中で注目されたのが二月十日午後の首相官邸での二人だった。菅直人首相は強制起訴された小沢元代表に、「裁判が終わるまで党を離れてもらえないか」と自発的離党を求め、小沢氏は拒否。約五十分間は予定調和の如き展開で終わった。なぜだろう。
 解答の糸口は、首相と会談した民主党幹部の「菅首相はどうも様子がおかしいですね。正常な判断ができる状態なのか……」という一言にある。それを聞いた小沢氏は「首相の様子を自分の目で確かめるために会談に応じた」(小沢氏周辺)という。
 首相周辺からも国会での首相の答弁ぶりに「疲れているのかな」と不安の声が上がっている。例えば、法人税の実効税率五%引き下げを「引き上げ」と二回続けて言い間違えたり、環太平洋連携協定(TPP)についても「IPP協定」と間違えた。 二〇一一年度予算関連法案については、政局の展望は全く開けておらず、「首相が精神的に相当追い詰められていることが、答弁の乱れにつながっている」との見方がもっぱらだ。そして小沢氏側近の一人は、今後の小沢戦略について「『ポスト菅』を決める代表選に向けて小沢系議員の結束を図っている。今、離党する必要はない」と解説する。


 離党したくてもできない小沢元代表の裏事情

 小沢元代表は、今も離党を繰り返し否定している。これまでの小沢氏は窮地に陥ると「新党」カードを効果的に使い、敵対勢力に圧力をかけてきた。今回、このカードが切れないのは大きく三つの理由がある。
 一つ目は、仮に小沢氏が離党しても同調者は多くないという厳しい現実。枝野幸男・官房長官は「せいぜい四十人」とみる。前々回の代表選で小沢グループから支持を受けて立候補した樽床伸二氏は小沢グループから距離を置き始めた。鳩山グループの海江田万里氏は小沢氏とつかず離れずだが、それも「鳩山由紀夫氏の顔を立てるため」だ。
 残るは原口一博・元総務相しか小沢氏周辺に有力議員はいないのだが、原口氏も地元・佐賀市で、地域主権の推進を目的に掲げた政治団体「日本維新の会」を結成する考えを表明。大阪府の橋下徹知事や名古屋市の河村たかし市長と連携を目指すという。明らかに小沢路線からテイクオフしようとしている。
 二つ目は、これまで小沢氏が離党し新党を作った時は、党代表や幹事長の立場だった。政党交付金を原資とする政治活動資金を差配する権限を持っていた。しかし、今回は単なる「一兵卒」である。発言力、影響力、資金力が全く違う。
 もう一つは、有力な側近議員や盟友が次々に離反した結果、小沢氏の考えを「解説」する幹部や、小沢氏の意向を踏まえて動く議員の数が少なくなったこと。小沢氏の盟友である鈴木宗男氏は入獄する前、「側近が茶坊主ばかりなのが小沢氏にとって一番不幸な事態だ」と語っていた。
 この結果、小沢氏はどんなに屈辱を受けても民主党にしがみついて、反執行部派として執行部をかき回すしか方策がなくなったのだ。


 お門違いな民主党若手の格付け機関批判

 今もまだ民主党の若手議員の間から「欧米の格付け会社なんて、営利目的の単なる民間企業。その情報に一喜一憂することはない」との見方が流れている。もちろん、日本国債の格下げに絡んで、官邸のぶら下がり会見で発した菅総理の「そういうことには疎いんで……」発言をカバーしたものである。
 欧米の格付け会社を巡っては「企業の依頼で格付けして、手数料を取っている。また、頼まれもしないのに勝手格付けをする」(都銀幹部)ことから、「依頼格付け」への評価には疑問も出る。十年物など長期の社債や国債の評価を「発行時点でとりあえず情報発表するが、本当に長期の分析、評価ができるのか」(財務省幹部OB)との否定的見方もある。
 そんな格付け会社の評価を地に落としたのがサブプライムローン問題。金融機関が住宅ローンをもとに作り上げた「証券化商品」に、リスクを評価せず高い格付けをして、ローンが焦げつくと途端に格付けを大幅に下げ、市場を大混乱に陥れた。
 だが、S&Pが格下げしたのは「民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略に欠けている」との判断からだ。さらに重要なのは「欧米の金融、証券市場は、格付けを信用して投資家に勧めるという厳然たるルールがある」(金融庁幹部)ことである。
 菅首相の「疎い」発言は、その直後から世界中にキャリーされたが、目立ったT反響Uはなかった。「無視したか、これが本当に日本の総理発言かと驚愕したか。予算成立がゴタゴタすれば、欧米のファンドは国債の空売りを仕掛けてくるかもしれない。地銀、信金、個人も追随しかねない」と事情通は危惧する。


 会合の非公開に疑念噴出、「宇宙基本計画」見直し

 宇宙政策の国家戦略である宇宙基本計画を見直す宇宙開発戦略専門調査会の座長に、国鉄改革三人組の一人、葛西敬之・JR東海会長が就任。一月から月一回程度開かれている会合はすべて非公開。政府の宇宙政策の司令塔である宇宙開発戦略本部は「会合の内容はきちんと説明する」と言うが、発言した委員の名前はほとんど明かさない。二〇一二年度予算概算要求までに叩き台をまとめるというが、労務畑出身の葛西氏の座長就任をいぶかる声も上がる。
 宇宙基本計画は自民党政権下で、〇八年の「宇宙基本法」に基づいて〇九年に策定。それまでの宇宙研究開発中心だった政策を、宇宙開発利用に重点を置いた。同計画は、〇九年から五年間に二兆五千億円を投じて人工衛星を計三十四基打ち上げる試算が盛り込まれるなど、意欲的な計画。年間換算で約五千億円に上り、財政難の中、現在の三千億円超という予算規模との乖離が鮮明だ。
 しかも、素案をまとめるのは、宇宙行政の一元化を目指す「宇宙庁」構想を提言した松井孝典・東大名誉教授。前回の提言と似たり寄ったりになるとの声がもっぱらだ。専門調査会は会合終了後、報道関係者へのブリーフィングを開いているが、葛西氏は木で鼻をくくったような答えを繰り返す場面が多い。記者からは「ブリーフィング不要、公開の場の議論を」との声も。宇宙基本計画をめぐる議論が国民不在では、ニッポンの宇宙開発の未来はない。


 自衛隊を便利屋扱い? 北海道のエゾシカ駆除

 陸上自衛隊が全面支援して初めて行われた北海道のエゾシカ駆除作戦。捕獲は、目標の百頭に遠く及ばない二十八頭と、ほぼ失敗に終わった。
 道内に生息するエゾシカは約六十四万頭。農林業被害額は年間五十一億円に及ぶ。北海道庁は昨年、防衛省に、狩猟免許を持つ隊員のハンターとしての派遣、大人数による罠への追い込み、給食でのエゾシカ肉の使用など、八項目の検討を要請した。
 困ったのは防衛省だ。自衛隊の民生支援は「緊急性、公共性、非代替性」の三つが揃うことが条件。最近では狂牛病や鶏インフルエンザ、雪かきと民生支援のための出動が相次ぎ、民業圧迫の懸念とともに「自治体がタダ働きの自衛隊を安易に利用している」との批判が省内にあった。
 エゾシカも「地元ハンターでもできるのでは」と否定的な見方も出ていたが、北海道からの要請項目には、ヘリコプターによる上空からの偵察と、捕獲したシカの雪上車による輸送が含まれるため、ヘリと雪上車を併せ持った唯一の機関、自衛隊の派遣が決定した。「さすがにハンターの派遣は抵抗が大きい。支援はヘリ派遣と輸送の二点とし、それも三日間だけになりました」(陸自幹部)。
 初日の二月八日、ヘリでシカを発見して追い立てたものの、シカが動じず収穫はゼロ。九日はヘリに加えハンター七人が追い込み役の勢子を兼ね、三頭を駆除。十日は勢子を十四人に倍増し、二十五頭を駆除した。
 結局、シカを追い込んだのは地元ハンターたち。地上での駆除作戦だけで完結する可能性が高いことを証明したようなものである。
 北海道庁は今後も自衛隊に協力を求めていく意向だが、エゾシカ対策は、国が農業被害対策や生物多様性の保全策などを踏まえ、総合的に取り組む国策であるべきだ。安易な自衛隊頼りは対処療法にすぎない。


 就活めぐり意地張り合う経団連vs.同友会・日商

 新卒者の採用活動をめぐり、日本経団連と他の経済団体による対立の構図が鮮明になっている。従来通りの「四月開始」を求める経団連に対し、経済同友会や日本貿易会は「八月開始」を提案。日本商工会議所の岡村正会頭も同友会案に賛同する意向だ。長期化する学生の就職活動の是正という狙いこそ一致するものの、方法論はともに譲らない。
「(活動時期が)短すぎると学生に不安を与える」。経団連の米倉弘昌会長(写真)は選考活動の後ろ倒し案に懐疑的な見解を示す。米倉会長が危惧するのは、四カ月の後ろ倒しで全体のスケジュールがずれ込み、「卒業証書を受け取っても一部の学生の職場が決まっていないこと」。「採用活動を短くして困るのは学生と中小企業」と同友会案を否定する。
 それに対し、「一番大切なのは大学生の学業。学業の向上を阻害しない採用活動が必要だ」と主張するのは同友会の桜井正光・代表幹事。青田買いなど違反した企業の社名を公表するという同友会の見直し案は評価が高く、日本私立大学団体連合会が賛同しているほか、日商の岡村会頭も「大学四年生の夏休みから採用に入るのが正常な姿」と同友会案を支持。「経団連vs.同友会・日商」という図式ができ上がりつつある。
 経団連と同友会は近く「懇話会」を設けて話し合いを始める方針だが、「経団連の無謬性を考えると、耳を傾けてくれるかどうか」と同友会幹部は指摘する。
「どちらでもいいから早く方向性を決めてほしい」。ある大企業の人事担当者はこう漏らす。各団体の意地の張り合いで苦労するのは、学生と人事担当者である。


 日本の自動車メーカーが大挙して極東ロシアに進出

 自動車各社が中国、インドに次ぐ新興国市場の開拓先として、一斉にロシア市場に照準を合わせ、未開拓の極東地区での生産も視野に入れ始めた。
 極東生産に真っ先に手を挙げたのがトヨタ自動車。三井物産がロシア第三位の自動車メーカー、ソレルスと設立する合弁会社に生産技術を移転し、ウラジオストクでスポーツタイプの多目的車(SUV)を組み立てる検討に入った。実現すれば二〇一二年頃に生産を開始、シベリア鉄道を利用してロシア全土で販売する。トヨタは〇七年からロシア北西部のサンクトペテルブルクで小型乗用車「カムリ」を生産しており、極東生産が加われば、業界に先駆けてロシアでの東西二拠点体制が整う。
 一方で、ロシア政府は極東生産の自動車についてシベリア鉄道の輸送料を無料化するなど、極東の産業振興に国を挙げて取り組んでおり、日本勢へのアプローチも過熱化している。一月下旬には沿海地方政府がマツダと極東生産を協議したことを発表したほか、昨年は日産に極東進出を打診するなど、二枚腰の対応も見せている。
 日露関係は外交面で北方領土問題が冷却化する半面、経済は協力関係を増しつつあり、「政冷経熱」の様相を呈してきた。しかし、自動車各社にとって極東進出は事業採算が不透明な要素も多く、リスクと背中合わせの決断にもなりそうだ。


 KDDIが取り逃がすソフトバンク追撃の好機

 遅ればせながらスマートフォンを投入し、加入者獲得の低迷から脱しそうなKDDI。新任の田中孝司社長も拡販に大号令をかけているが、相変わらず意思決定が遅い大企業病が治らない。というのも、「iPhone4」の取り扱いに逡巡しているからだ。
 米国では開発元のアップルが、W‐CDMA方式のiPhone4をAT&Tに独占販売させてきたが、新たにCDMA2000方式の機種を開発し、ベライゾン・ワイヤレスを通じて売り出した。この結果、主要国でiPhone4を独占販売しているのは、ソフトバンクが扱っているわが国だけとなる。
 CDMA2000方式のKDDIは販売を検討しており、その場合、つながらないソフトバンクの通信品質に苛立っている既存ユーザーを、KDDIは軒並みリプレースできる商機を得る。しかし、アップルのスティーブ・ジョブズCEOが課す代理店契約の条件は厳しく、販売奨励金を投じて安く売り出し、さらに通信料収入の三割を上納金として納めなければならない。
 KDDI幹部は「もともとソフトバンクはARPU(加入者一人当たり月間収入)が低く、上納金を納めてもトラフィック増のメリットを見込めた。当社のARPUは低くなく、自前のスマートフォンも出したばかりだし……」と煮え切らない。アップルは六月にも「iPhone5」を投入する見通し。今度はオサイフケータイ機能も付いているらしく、結局、KDDIのT孫正義追撃Uは始まらない?


 オリンパス役員会に衝撃、外国人社長で国際展開

 二月十日に開かれたオリンパスの役員会は、多くの役員にとって衝撃的なものだった。マイケル・シー・ウッドフォード氏の社長就任が告げられたからだ。
 ウッドフォード氏は一九六〇年英国リバプール生まれ。七七年ミルバンク・ビジネススクール卒業。八一年キーメッド入社。九一年同社代表取締役社長、二〇〇三年オリンパス・キーメッド・グループ取締役、〇八年オリンパス・ヨーロッパ・ホールディング代表取締役社長などを経て、〇八年六月からオリンパス執行役員を務めてきた。
「多様な文化、習慣、市場からなる欧州でのビジネスを統括し、常にグローバルな視点で事業構造やプロセスの改革を進め、大きな成果を上げてきた。これらの経験や知識、彼の強いリーダーシップは、グローバル化のネクストステージに挑む当社の大きな活力になると確信している」と、菊川剛社長(写真)は期待を寄せる。ウッドフォード氏の社長兼最高執行責任者(COO)就任は四月一日。菊川氏は会長兼最高経営責任者(CEO)としてウッドフォード氏をサポートする。
 日本企業のグローバル化が叫ばれて久しいが、日本を代表する上場企業で外国人を社長に据えた企業は、日産自動車、ソニー、日本板硝子など数えるほどしかない。
 オリンパスの柱は世界シェア七割の内視鏡などの医療機器。創業百周年の一九年に医療事業の売上高を現在の三倍に当たる一兆円を目指すという意欲的な目標を掲げる菊川氏。〇八年には英ジャイラスを約二千億円で買収したのをはじめ、〇九年イスラエルのメディノールと胆管医療機器開発で提携、一〇年米ベンチャーのスパイレーションを一億?で買収するなど、積極的なグローバル経営を展開してきた。
 企業の本丸自体も外国人の抜擢によってグローバル化しようという意欲的な人事として注目される。


 巨額損失でりそなを訴えたヘッジファンド好き年金基金

 不動産私募ファンドへの投資で巨額な損失を被ったとして九州石油業厚生年金基金が、販売したりそな銀行を相手取り二百六十三億円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしている。同基金は一時、総資産の半分以上を不動産私募ファンドに集中投資していたが、「物件の時価が下落し、転売ができないままファンドがデフォルトし、投資価値がゼロになっているケースもある」(信託銀行幹部)という。このため、「元本が全損する恐れのあるファンドのリスクについて事前の説明が十分でなかったとして、りそな銀行を訴えている」(同)というのだ。
 このファンドを運用するのはダヴィンチ・アドバイザーズで、同基金は同ファンドのハイリスクな「エクイティ(出資)分」に投資していた。この投資はオルタナティブと呼ばれるもので、リスクも高いが、それだけ高いリターンも狙える一種のヘッジファンド。年金基金の世界ではよく知られた商品でもある。
 年金基金は運用のプロであり、「リスクを承知した上で自己責任で投資する」(信託銀行幹部)というのが一般的な見方。また年金基金の運用は、「分散投資が法律で定められており、資産の半分を同ファンドに投資すること自体が異常」(同)という。
「同基金はヘッジファンド好きで有名であった」(年金運用関係者)ともいわれ、リスクを承知したうえでの運用の可能性が高い。ヘッジファンド運用は年金の世界では「絶対リターン戦略」として数多く組み込まれており、同様の損失は他基金にも波及しているとみられる。


 旭硝子がライバル打倒へ「ゴリラ狩り」戦略

 旭硝子の石村和彦社長が持ち前の「勝ち気の性分」を発揮し始めた。二〇〇八年の社長就任以降、リーマン・ショックによって守りの経営を余儀なくされていたが、昨年は液晶ガラス基板の販売が急回復し、経常利益で過去最高を更新した。業績回復を追い風に同社長が年明けから矢継ぎ早に打ち出した戦略を、関係者は「ゴリラ狩り」と呼んでいる。
 ゴリラとは、米コーニングが〇八年に発売した「ゴリラガラス」のこと。高い耐衝撃性と傷の付きにくさが特長で、スマートフォンなどの多機能携帯端末の画面カバーガラスの実質的な業界標準になっている。
 拡大を続けるスマートフォン市場に歩調を合わせるコーニングの成功に対抗するために、旭硝子は一月末に対抗製品「ドラゴントレイル」の市場投入を打ち出した。同製品は、特殊な化学反応を利用して建築や自動車に使う従来ガラスの六倍の強度を持たせたのが売り。新製品発表で石村社長は「これからドラゴン伝説が始まる」と見得を切った。
 だが、ある開発担当者は「ゴリラは市場を独占するTキングコングU。価格を大幅に引き下げるなど思い切ったことをしないと、ドラゴンの入り込める余地はないだろう」と語った上で「ゴジラやガメラが出てくるかもしれない」と付け加えた。
 スマートフォンのタッチパネルのカバーは現在ほぼすべてがガラス製だが、今後は樹脂製が登場するとの見方が多い。実際、東レや帝人は樹脂製カバーの開発に乗り出している。「携帯端末を軽量化できる樹脂は魅力的で、価格も安くなる可能性がある」(前述の開発担当者)。
 ゴリラ狩りでは終わらないT怪獣大戦争Uをどう戦うかに注目だ。


 中国資本が触手伸ばす三大メガバンク

 三大メガバンクの大手株主に、中国系投資ファンドが名前を連ねている。みずほFGでは第三位(総発行株式の一・五%を保有)に、三井住友FGで第四位(一・六%)、三菱UFJFGで第五位(一・六%)といった具合である。三メガ(銀行)とも「日本の主だった企業の株式に投資するインデックス型運用の範囲内」との認識を示している。ちなみに三メガの場合、投資ファンドの名称は「SSBT・OD05・オムニバスアカウトリーティ」。
 平静さを装う三大メガだが、ある関係者はこんな事実を漏らす。
「幅広く(昨年九月末で東証一部八十五社の大株主)買っている中国系ファンドは、ほかにSSBT・CD05チャイナトリーティとCD05・オムニバスチャイナトリーティ808150がある。いずれも拠点は豪州(シドニー)の同住所に置かれている。単独ファンドでは五%ルールの壁は厚いが、三つのファンドの総計でとなると、事情は異なってくる。要は各ファンドの裏に中国の公的資金がついているかどうかだ。手を尽くし調べたが、結局わからずじまいで今日に至っている」
 なぜファンドの裏を調査したのかというと、「いずれ物言う株主になりT実態の把握Uに駒を進めてくる可能性というか危惧が捨てきれないから」(関係者)である。証券関係者の間には、「中国マネーの流入・拡大は株価上昇の好材料」とする声も聞かれるが、そんなふうに安穏としていられる話ではないようだ。


 強制的解雇に怯える外資系金融機関の社員

 リーマン・ショック以降、国内にある外資系金融機関のリストラが労使紛争に発展するケースが増えている。個人加盟の「東京管理職ユニオン」によると「外資系金融機関をレイオフされた社員から月二十〜三十件の相談が寄せられている」という。
 それも急増しているのが「ロックアウト型解雇」と呼ばれるもの。ある日突然、上司から呼び出され、自己都合による退職の書類にサインを求められる。サインを拒めば、即座にIDカードと貸与されていた携帯、身分証明書等が取り上げられ、パソコンのLANは切られる。その上で自宅待機を命じられる、
 このため、「会社側の一方的な解雇通告を無効にできないか」「もっと多くの退職和解金が要求できないか」といった相談が数多く寄せられるという。この中には日本人のローカルスタッフだけでなく、外国人の相談も増える傾向にある。
 外資系金融機関における解雇はこれまでもあったが、労使紛争にまで発展するケースはそう多くはなかった。それというのも、外資系金融機関で働く人材の転職マーケットがあり、比較的短期で転職ができたためだ。しかし、リーマン・ショックを契機に外資系金融機関全体の雇用人口が減り、転職マーケットが機能しなくなっている。
 日本の金融市場のプレゼンスが低下し、中国をはじめとする新興国に外資系金融機関のビジネスの主戦場は移っている。それにつれて雇用も他のアジア諸国に奪われている構図である。外資系金融機関で多発する労使紛争は、東京マーケットの沈滞を象徴しているようにみえる。


 再び夕刊廃止ラッシュ? 「静岡新聞」が土曜夕刊廃止

 新聞社の業績が悪化する中、「静岡新聞」が四月から土曜夕刊廃止を発表したのを皮切りに、夕刊廃止の動きが再び広がっている。日本独自とされる「朝夕刊セット発行」というビジネスモデルは崩壊寸前だ。
 日本ABC協会の調査によると、二〇一〇年十二月の夕刊の総発行部数は一千三百九十七万部で、一年間で七十八万部(五・三%)も激減した。朝刊は一・五%の微減にとどまっただけに、夕刊の落ち込みが目立つ。
 静岡新聞は、土曜夕刊廃止について「週休二日制により土曜休日が定着したため、日曜祝日と同様の報道体制に移行する」と説明しているが、土曜休日は今に始まったことではないので、その意味するところは「実質値上げ」にほかならない。
 夕刊の廃止は、リーマン・ショックに見舞われた二〇〇八年から〇九年にかけて相次ぎ、「毎日新聞」(北海道)、「秋田魁新報」、「南日本新聞」、「琉球新報」、「沖縄タイムズ」が実施に踏み切り、全国各地で夕刊が消えた。その後も、大分や佐賀の「朝日新聞」が一〇年四月、「岩手日報」も七月から朝刊だけの発行に切り替えたほか、「東奥日報」、「新潟日報」、「信濃毎日新聞」に加えて、「河北新報」、「毎日新聞」(名古屋)、「産経新聞」(大阪)、「神戸新聞」、「中国新聞」なども夕刊の廃止や休刊を検討しているといわれる。
「新聞離れ」による部数の落ち込みや「ネットシフト」による広告収入の減少はとどまるところを知らず、読者離れにつながる値上げも難しいため、新聞社の収入が伸びる見込みはほとんどない。となればコストカットを進めるしかないが、通常経費の削減だけでは追いつかず、次の一手は夕刊廃止にならざるをえない。
 地方から始まった変化の波は都市部にも及んできたようで、再び夕刊廃止ラッシュが起きそうだ。


 ニューヨーク金融取材現場で産経新聞のサプライズ人事

 産経新聞社の二月一日付、役員・編集人事で、ニューヨーク支局駐在編集委員に松浦肇氏を充てるという人事が発表になり、ニューヨークの金融取材に携わる日本メディアの現場で「えっ、本当か」と、ちょっとしたサプライズが広がった。
 というのも、この松浦氏は、実は少し前までは同じニューヨークで日本経済新聞社の敏腕の金融取材記者として現場仲間の間では定評があったからだ。
 日経新聞関係者はあまり多くを語らないが、ニューヨークの日本メディア関係者は「びっくりした。どうやら松浦君が日経新聞内部の人事異動に際して、ニューヨーク在住にこだわったらしい。その間隙を縫って、人材を求めていた産経新聞が巧みにスカウトしたようだ」と述べている。
 産経新聞はワシントンには、毎日新聞からスカウトして、その取材力や米国政府などでの人脈ネットワーク力では群を抜く古森義久・ワシントン駐在特別編集委員などを抱えるばかりでなく、東京本社での編集委員、論説委員クラスには他社から引き抜いた人材がずらり。
 米国内の新聞、通信社、テレビ、ネットメディアなどの間では引き抜き人事は日常茶飯事で意外性はない。ただ、最近の米国新聞社の苦しい経営事情からいけば、むしろ引き抜き人事よりもリストラが原因というのが一般的だった。
 それにしてもニューヨーク在住にこだわったという松浦氏は、なぜ待遇面や取材環境からみても産経新聞よりもはるかに条件のいい日経新聞を離れたのか、もったいない話だという声も出ていることも事実だ。


 朝日新聞の希望退職に名物記者が続々と応募

 朝日新聞社が募集している三月末付の希望退職に四十四人が応募した。朝日が昨年から実施している希望退職者六十八人と合わせて、百人を超えるベテランが朝日を去ることになる。今回の応募者には社外に名の通った幹部や名物記者が含まれ、朝日の凋落がひときわ鮮明になった。
 朝日社内で衝撃的に伝わるのが、ニューヨークやロンドンの特派員を経験し、箱島信一・前社長時代にスキャンダルが続発して腐敗した編集局を立て直そうと編集局長に抜擢された外岡秀俊・元編集局長の退任だ。役員入り間違いなしといわれた人物の退社だけに、「もはやエースも社の行く末を見限ったのか」(朝日社員)と受け止められている。また薬師寺克行・元政治部長は「論座」編集長や政治部長を歴任し、『外務省』などの著書もある、役員候補の有名人。
 ほかにも名前の挙がっている人をみると労働問題担当の竹信三恵子・編集委員、外報部出身の竹内幸史・編集委員、佐久間文子・読書欄編集長、矢部万紀子・元書籍編集部長らで、いずれも近い将来、朝日新聞社を背負う逸材と嘱望されてきた面々だ。
 今回の希望退職では、本来受け取れる退職金額に割り増し退職金を積み増す。割り増し分は、上限を一千八百万円とした年収の半額が、六十歳定年までの残存年数分(最大十年)加算される。例えば五十歳で年収二千万円の人の場合、九千万円が加算される。通常の退職金と併せて「一億円突破」の大盤振る舞いである。
 朝日社内では実力者たちが相次いで退職する一方、「辞めてほしい人たちは組織にしがみついている」(朝日中堅記者)といわれている。


 電通の社長人事が示した「新聞との蜜月」の終焉

 広告業界のガリバー、電通が異例の社長交代に踏み切った。電通が二月十日発表したトップ人事は、四月一日付で高嶋達佳社長(写真)が代表権を持たない会長に就任し、後任に石井直・取締役専務執行役員が昇格する。二〇〇七年六月に就任した高嶋社長は、在任中に海外事業強化に道筋をつけ、〇八年秋の「リーマン・ショック」以降の広告不況からの脱却にもめどをつけている。
 この人事に仰天したのは新聞業界だ。電通では伝統的に新聞社への広告出稿を担う新聞局が絶大な力を持ち、歴代の経営トップはすべて新聞局出身だった。しかし石井氏は、広告主である企業への窓口役である営業部門出身。新聞局以外からの起用は初めてだ。これは、テレビ、新聞、ラジオ、出版という旧来のマスコミ四媒体への依存体質を改め、事業展開をインターネットなど多様化するメディアに対応し、「電通は変わる」という強いメッセージと取れる。
実際、マスコミ四媒体の時代は完全に終焉を迎え、国内広告市場はテレビを除いて残る三媒体がじり貧という、大きな構造変化の真っ只中にある。とりわけ新聞の凋落ぶりは著しく、〇九年には媒体第二位の座をネット広告に明け渡したほどだ。
 その意味で電通のトップ人事は、広告媒体としての新聞の地盤沈下を反映しており、持ちつ持たれつだった新聞との蜜月関係に一つの区切りをつけたとも受け取れよう。


 「手術で治る認知症」があり医療・介護費の節減に期待

 高齢化社会での医療費の増大は、一般には当然視されている。しかし、一つひとつ検証していけば、思ったほどかからないという研究も少なくない。その一つが、「突発性正常圧水頭症」についての研究だ。
 同症は高齢者の認知症の五〜一〇%を占め、頭の中に髄液が溜まることで脳が圧迫されて起こる。認知症の症状のほかに、歩行障害や尿失禁などが現れる。血管性の認知症や他の病気と間違えられやすいのだが、専門医の間では「手術で治る認知症」とされ、実際、八〜九割が良くなる。
 石川正恒・洛和会音羽病院正常圧水頭症センター所長らが、六十〜八十五歳の同症の症状がある百人の患者を治療し、回復状態を調査した。その結果、手術や治療費を含めても、術後二年後から医療費と介護保険額が削減され、五年後には百人で一億四千七百万円余りの削減となった。同症の患者は全国で推定三十一万人。すべて治療を行えば、削減額は推計四千五百七十六億円となる。
 まさにいいことずくめだが、問題は同症の認知度の低さ。医師でも見逃すことが多い。専門医の治療を受けるのはごく一握りで、症状が出ても対症療法を行うだけというのが実情だ。多くの患者は効果のない治療や無駄な検査を受け続ける。あるいは介護支援、要介護の認定を受け、介護保険の世話になる。こうした無駄が医療費の増加につながるわけだ。
 以下はチェックリストだ。思い当れば脳神経外科などで受診を。
・歩く時、小刻み、すり足、足が開き気味になる。歩行が不安定で転倒することがある。
・物忘れが激しくなり、一日中ぼんやりする。趣味などに興味を示さない。呼びかけに反応が遅い。
・尿が我慢できずに失禁する。
・声が小さく、表情が乏しくなる。


 創価学会の世襲大詰め? 露出度増す大作氏の長男

 公明党の支持母体である創価学会内で最近、池田大作・名誉会長の長男の池田博正・副理事長の露出度が増している。一月八日の本部幹部会で登壇し、この日欠席した父・大作氏が昔揮毫した和歌を紹介した。昨年五月の本部幹部会を最後に大作氏の肉声が聞かれず、重病説が消えないだけに、「世襲へ大詰めか」(ベテラン会員)などと憶測を呼んでいる。
 毎月開かれる本部幹部会は、地方の幹部や各国の創価学会員代表らが多数招かれ、幹部が順次挨拶し、最後に大作氏が話をするのが通例だが、昨年六月以降、大作氏は出席せず、メッセージが読み上げられるのみだ。
 関係者によると、博正氏の本部幹部会登壇は極めて異例。創価学会の国際組織であるSGI(創価学会インターナショナル)の副会長(会長は大作氏)でもある博正氏は、昨秋以降、大作氏の名代として豪州やブラジル、香港を訪問したほか、国内各地を精力的に指導に回る様子が機関紙「聖教新聞」に掲載された。
 これらが大作氏の後継者問題との関連で語られるのは、自然な流れだ。大作氏は以前、「世襲はしない」と明言しており、博正氏が第七代会長になる可能性は低く、SGI会長だけを引き継ぐという説が一般的。また、創価学会では、牧口常三郎、戸田城聖、池田大作の三代会長までを宗教上の指導者と位置付けていることから、「教義」を守るポストを新設して就任するとの見方もある。
 関係者によると、大作氏の健康状態に関する情報は厳しく管理され、接触できるのは夫人や博正氏、三男の池田尊弘・副会長ら家族とごく一部の最高幹部だけとか。創価学会を育て上げた大作氏の身内以外、誰が後継者になっても内紛が懸念される。結局は北朝鮮と同じ道を歩むのか。


 国際商品相場が急騰する3つの要因

 国際市場で農産物や金、原油などの商品相場が急騰している。これらは食品や工業製品の原材料として幅広く使われているだけに、市民生活や産業活動に悪影響を与える。
 国連食糧農業機関(FAO)が発表した昨年十二月の世界の食料価格指数は二一四・七と、一九九〇年一月の統計開始以来の高水準を記録した。専門家によれば、今回の商品市況高騰には三つの大きな要因がある。
 一つ目は、二〇〇八年の時と同様、投機資金の流入。特に米国経済の低迷を背景に大規模な量的金融緩和が行われており、行き場を失ったマネーが商品市場へと向かっている。
 二つ目は、新興諸国を中心とした需要の増大だ。特に急速な経済発展を遂げる中国やインド、ブラジルなど新興市場諸国で、生活水準の上昇に伴って消費意欲が高まっている。中でもコーヒーは、産地ブラジルの所得向上で輸出用豆が国内消費に回されているほか、中国では食生活の西洋化でコーヒーを飲む人たちが増えているのが原因という。昨年六月以降、コーヒー相場はおよそ七割も値上がりしている。中国がこのほど〇・二五%の追加利上げに踏み切ったのも、食品を中心にインフレが加速しているからだ。
 三つ目は、異常気象による生産減少だ。昨年夏にロシアが干ばつの影響で小麦輸出をストップしたのは記憶に新しいが、最近でも中国の冷害や洪水による農作物被害、さらにはオーストラリアでの豪雨、アルゼンチンや米プレーンズ地域での干ばつが市場の逼迫感をいっそう駆り立てているという。


 バーナンキFRB議長に反旗を翻す有力理事

 FRB(米連邦準備制度理事会)が「弱いドル」政策の下で低金利のまま通貨供給を激増させる狙いは、景気を浮揚させることにある。だからベン・バーナンキFRB議長は「ヘリコプター・ベン」といわれるのだ。カネを空から市場にはばらまき、ひたすら強気の経済運営の旗を振る。
 ところがFRBの中で、「強いドル」を言い張り「預金率を引き上げて通貨供給を減らせ」と真っ逆さまに議長に反対している有力理事がいる。トーマス・ホーニグ(カンサスFRB総裁)である。実は、オバマ大統領が指名した新理事の議会承認が遅れており、現在FRBは二人が欠員。バーナンキ議長は多数派を形成できない状況で、このまま内部対立が続くと支障がでる恐れがある。
 レーガン政権下で再任されたポール・ボルカー氏は現在と逆に高金利政策をとり、一九八一年に一三・五%もあったインフレを数年後には三・二にまで抑制。しかし、レーガン政権幹部と意見が対立し、FRB内部も四対二とボルカーへの反対論が急速に頭をもたげ、少数派に転落。「レーガノミックス」の邪魔者として解任されたことがある。後任には共和党寄りのアラン・グリーンスパン氏が任命され、株高演出に貢献した。
 ホーニグ氏がバーナンキ議長に反対する根拠は米国債の肥大化だ。国債をFRBが大規模に購入して無理矢理、景気回復をさせるのは邪道であり、効果は疑問だとする。そしてホーニグ氏は「現在の金融情勢で追加緩和のリスクを上回るだけの利益が得られない。FRBはあくまで経済と金融市場の安定を目指す『通貨の番人』であり、経済成長の政策増強などFRBに主導権はない」と主張している。


 経済改善で市場も味方、オバマ大統領は二期目に意欲

 オバマ大統領(写真)は二〇一二年の大統領選挙へ再出馬する旨をこの三月にも表明する意向だ。
 再選への鍵は何といっても経済状況だ。頼みとする景気回復は株高と失業率の数字にかかっている。二月段階ではニューヨークダウも右肩上がりで伸び、失業率も九・〇%まで下がり、予想以上の改善が見られた。これらは、昨年秋にFRBのバーナンキ議長が主導した「QE2(量的緩和第二弾)」によるものだ。マーケットは、このQE2を通してオバマ政権と中央銀行が本気で景気回復に取り組んでいるとみている。また産業界も、オバマ大統領にもう一期任せても良いのではないかとの心境に変わりつつある。
 一方、予想される共和党の大統領候補だが、共和党内では、その候補者にふさわしい人物として、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事が一九%の支持を獲得し、ペイリン前アラスカ州知事の一六%をリードしている。今年一月には来年の予備選序盤戦の鍵を握るニューハンプシャー州で党員らの模擬投票がすでに実施され、ロムニー氏が三五%の支持を集め、トップに立っている。ペイリン氏は過激な発言が多く、また昨年十一月の北朝鮮砲撃事件では朝鮮半島での米国の同盟国を韓国ではなく北朝鮮と間違って発言するなど、相変わらず国際情勢に疎い点が懸念されている。
 就任から二年を経たオバマ大統領の仕事ぶりに対し、CNNが最新の世論調査を発表した。その結果では、オバマ政権の任期前半の二年間について「成功だった」と評価する人が四五%、「失敗」だとするのは四八%となった。
 しかし、ホワイトハウス・ウオッチャーの間では、ブッシュ前政権の失政の始末に追われた二年間の評価としてはまずまずで、これから景気と雇用が回復していけば支持率はかなり高くなるとみている。また、ギャロップ社の「最も称賛に値する人」調査の結果は、男性ではオバマ大統領が三年連続、女性ではヒラリー・クリントン国務長官が九年連続で一位に選ばれた。この二人で次期大統領選に臨めば大丈夫との声は民主党内でも強くなっている。


 ロシアでイスラム人口急増、三十年後には多数派の勢い

 カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」が最近、ロシアは三十年後、イスラム教徒が多数派になると報道し、ロシア社会にショックを与えている。ロシアのイスラム教徒は現在約二千三百万人で、人口の一五%だが、過去二十年間で四〇%増加。二〇二〇年までに人口の二〇%を占める見込みだ。現在のロシア系の少子化、イスラム系の多産という人口動態の変化が続けば、三十年後にその比率は逆転するという。
「プーチン首相は人口減をロシア最大の問題と位置付け、二人目を生んだ母親に二十五万ルーブル(約九十万円)のキャッシュをプレゼントする政策を開始したが、これがイスラム系女性の人気を呼び、イスラム人口の急増につながっている。中央アジアからの移民増もイスラム人口増の背景にある」(モスクワ特派員)
 この数年、ロシアでスラブ系とイスラム系の民族衝突が頻発しており、昨年十二月にもモスクワで一万人規模の武力衝突が発生したばかり。イスラム系がロシア人の雇用を奪っているとの不満が背景にある。
 ロシアのイスラム聖職者会議のギザツリン議長はアルジャジーラで、「ロシアの保守政治家は選挙目的でイスラムの脅威を意図的に煽っている」と批判している。モスクワなどで頻発する無差別テロは、チェチェン問題だけでなく、ロシア政府のイスラム蔑視政策も背景にありそうだ。
 米国では黒人系大統領が誕生したが、いずれロシアでもイスラム教徒の大統領が誕生する可能性がある。北方領土問題は「イスラム系大統領」のもとで解決するのかもしれない。


 窮地の韓国原発受注活動、UAE原発受注の裏側

 一昨年十二月、韓国はアラブ首長国連邦(UAE)から原発プラント建設工事四百億?を受注した。海外で原発建設実績がない韓国はフランス・アレバや日米連合の日立・GEを退け受注に成功したことで、世界的ニュースになった。だが一年たっても韓国が約定した百億?の資金調達が進まず、起工式も延期された。
 最近明らかにされた契約によると、韓国輸出入銀行が原発建設費の五〇%に該当する九十億〜百十億?を延べ払い条件で融資するとしたが、この資金調達が難航している。
 韓国輸出入銀行がこれまで手がけた海外発電プラント融資残高は十カ国二十一億?で、UAEへの百億?はその五倍に達する金額だ。しかも、貸出期間も二十八年の長期である。この資金を国際金融市場で調達する場合、スタンダード&プアーズの国家信用格付けがAAのUAEに比べ、Aの韓国は高い金利で資金を調達して、安い金利で融資する逆マージンになる。
 しかも、この不利な契約条件は韓国の海外原発受注に悪影響を及ぼす。ほかの国も原発発注に際し、韓国にUAEと同じ延べ払い条件を要求するとみられるからだ。





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