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[26156] 【習作】 IS ~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~
Name: kei◆6ab4c12a ID:f779f124
Date: 2011/03/01 13:02
IS、インフィニット・ストラトスというものがこの世界にはある。

女限定で乗れるマルチスーツであり、現行のどの兵器よりも強力な存在で、たった数機で国1つを殲滅可能というとんでもスーツだ。

そのせいで女尊男卑な世界になってしまった。

まあ、その前くらいから男女平等といいつつ女性優先なものはあったりしたけど今はちょい関係ないか。

だけど、ついこの前……まあ俺が高校受験で必死こいてたぐらいにだが、世界を仰天させるようなことがあった。

なんと男がISを動かしたというのだ。

晩飯食ってて聞いたときは米を口から吹いて母親に怒られたくらい驚いた。

しかもその名前が

『織斑一夏』

……思いっきり聞いたことのある名前だった。

箒が昔住んでたとこでの友達だったはずだ。

俺と同じ歳の親戚の篠之乃箒の幼なじみで、正月やらなんやらで親戚一同が集まるときによく聞かされた名前だ。

聞かされすぎて覚えてしまったのだ。

顔も知らん奴の名前知ってどーすんねんという話でもあるけど。

そーいや、IS学園の入学決まったとか聞いたしきっと再会してギャルゲーな感じになるのかな?

っと……話がズレた。

とにかく男がIS動かせたってことで仰天したわけだ。

あれから月日が過ぎてもう6月。

俺も地元の高校の入学式を済ませて普通の高校生となったある日のことだ。


「やっほー! お久しぶりだね! ところで慶斗君もIS乗りたくない~?」


突然箒の姉ちゃんの束え(たばねえ)が通学路に落ちてきたと思ったらこんなこと言ってきた。

色々突っ込むとこはあっただろうが、こう答えた。


「むしろガンダムに乗りたい!」

「オッケー! わかったよ! じゃあとりあえず政府に連絡しとくね!」


なんかそのまま突然現れたミサイルに乗ってどこかに飛んでいってしまった。

……え? 何? え? え? 結局なんだったんだ!?






                             IS ~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~







束えの突然の襲来から1週間が過ぎた。

そして今、俺はIS学園にIS学園の男子制服を着て職員室にいた。

あれこれ色々経緯はるんだが、簡単に言おう。


束え「もう1人適正ある子いたよー!」  政府「え!? マジ!?」 束え「名前と住所はねー」  政府「おk! とりあえずIS学園入学の手続きしておく」


こんな感じである。

しかし1週間でそれが済むとは……恐るべし天才束え。


「えっと……君が転校生の篠乃之慶斗君ですね。私が副担当の山田真耶です。よろしくお願いします」

「あ、お願いします」


メガネをつけたなんとも普通な感じの先生だった。

名前も山田ですげえ平凡な日本人って感じだ。


「私が担任の織斑千冬だ。しかし束の従姉弟が編入とはな」

「え? 知り合いなんですか? てか織斑ってことはあの?」

「余計な話はしないでさっさと行くぞ。時間に遅れる」


織斑とかいうこの先生すげえ怖え! 

つうか質問すらさせてくれないとかちょっとひどくねえ!?

……ものすげえ美人だけにちょっといいと思った俺にM属性が見えたのがショックだ。









廊下を先生2人と一緒に無言で歩いてついた先は1年1組。

中に入ると見渡す限り女子、女子、女子。

しかも国籍まったく関係なしで外人もいっぱいいた。

共通して言えることはすべての女子の容姿レベルが半端じゃないということだ。

たしかここの倍率って数千、数万だったよな……入試の内用に容姿も入っていたのか?


「はい、それではまたまた転校生を紹介します。世界で確認された3人目のISを動かせる男の子です」

「篠之乃慶斗です! IS動かせるってことでここに入学できました! 特別扱いで気に食わないことあるかもしれませんがよろしくお願いします!」


そのまま45度に体を折って深く礼。

いろいろ一発ネタとか考えたけど無理だった。

俺にそんなことできる度胸はない! 滑ったら女子ばっかの学園でやっていくには辛過ぎる!


「そういうわけで織斑君、デュノア君は篠之乃君のお世話をお願いしますね。同じ男の子同士仲良くしてください」


ん? 織斑はわかるがもう1人? 俺が2人目って聞いてたけどもう1人いたってことか。


「それでは1限目に入る。篠之乃サッサと席につけ。貴様は一番後ろの窓側の席だ」


え? こういうのって1時間目は質問時間とかで使われるんじゃないの? マンガとギャルゲのし過ぎだったか。

自重しよう。












やすみ時間になった。

さあ質問タイムいつでも来い! と思ったが意外にもこないな……なんか観察されてる?


「よお。お前もとまっどってる感じか」

「おお、人類初の男のIS操縦者か」

「ああ、織斑一夏だ。よろしくな。こっちがシャルル・デュノアだ」

「よろしくね」


おお、外人さんだ。

織斑の彼女だろうか……めっちゃかわいいじゃん。


「俺たち3人が数少ないこの学園の男だし仲良くしようぜ」

「は?」

「おいおい。そんな連れないこというなよ」


いやいや、そこじゃねえよ。

今なんつった。


「え? 何? 男?」


デュノアの方を指差してしまう。

そんな馬鹿な!? こんなにかわいいのに男だと!?


「うん、そうだよ。シャルル・デュノア。フランスから来たんだ」

「嘘っ!?」

「あはは。俺も女っぽく見えるから最初はびっくりしたけどな」

「え? でもそんな素振りしなかったよね?」

「いや、だって男だっていうんだからそうなんじゃないのか?」

「あ……う、うん。そうだね」


なんでどもる。

しかしこの顔で男って……まあある意味女子からの支持は高そうだな。

美少年にランクインって感じか。織斑はかっこいい系のイケメンだな。

くっ……話が両親よ……何故俺をもっとイケメンに産んでくれなかった。劣等感を感じずにはいられません。


「まあとにかくこれからよろしくな」

「あっ、おう。こっちもよろしく。ところでホーキ……篠之乃いる?」

「いい加減その呼び方をやめろ慶斗」

「っていつの間に……」


視線を動かして探してみようとしたらホーキが腕組みしていつのまにか織斑の横にいた。

おお、久々に合ったがこれまたえらいべっぴんになってるな。

しかも黒髪ロングでポニテのままだと……ポイント高いじゃないか。


「え? 2人は知り合い?」

「そういえば名字が同じだよね」

「ああ、従姉だ。久々だな」

「まあそうなる。というか何故ここに来た。私は何も聞いてないぞ」


だって言ってないし。

いきなりの展開過ぎて連絡する暇なかったし、おれ自身がホーキのケータイの番号とか知らないしな。


「まあそれは置いといて……」

「置くな!」

「なんだ。いつの間にくっついたんだ?」

「なっ!?」


織斑とホーキを交互に見ながらニヤニヤしてしまう。


「いやあ~そうか。そうか。うんうん。小さいときに耳がタコになるくらい織斑のことを聞かされたからな。よかったじゃないか」

「うん? 俺がなんだって?」

「わーー! 馬鹿! 喋るなーーー!」

「むー!むおーーー!」


慌てたホーキに口を押さえられる。

てか手が手刀みたくあたったから痛い!


「お、お前はもう黙れ! 一夏! いいか! 何も聞くな! いいな!」

「え? でも」

「いいな!」

「お、おう……」


……もしかしてそうでもなかったのか?


「篠之乃君はもう少しデリカシーもった方がいいと思うよ……」


デュノアに注意されてしまった。

たしかに……


「ちょっと失礼いたしますわ」


今度は金髪ロングな女子が来た。

なんというか日本語堪能なのばっかだな。


「まったく。私を誰と思いまして。イギリスの代表候補セシリア・オルコットでしてよ。その私に挨拶もないとは一体どういうことですの!」


高飛車なお嬢様のような仕草でそう言って来た。

ちょいカチンと来る言い回しだが……イギリスの代表候補だと!?

つまり超エリートってことか!?


「あら、どうやら驚いたようですわね。まあたしかに私とブルーティアーズの前ではそうなってもおかしくないことですが」

「すげー。てことはあれだろ? 超エリートなんだろ? マジすげえ」

「ああ……そうですわ。これですわ。この反応が当然であり私の求めたもの……」


なんか感動を噛み締めてるんだがどうすればいいのだろうか。


「もしかして他にも代表候補とかいるのか?」

「あたしがそうよ! 中国代表候補生にして一夏の幼なじみ! 凰鈴音よ!」


今度はツインテールの小柄なのが現れた!

今度は中国か! しかもこっちも日本語うまい!


「やっほー一夏。なんかまた男のIS操縦者が来たってきいて来ちゃった」

「わざわざ隣のクラスから来るとは暇なやつだな」

「なんですってー! わざわざ来てやったんだから感謝しなさいよね!」


……なんだこの空気。ギャルゲか?

てかこいつも幼なじみってことは


「ホーキも幼なじみ?」

「いや、私が引っ越した後のだそうだ。というかいい加減その呼び方をやめろ」

「じゃあどうしろって言うんだよ。箒って呼び捨てしたらと怒ったじゃねえか。箒ちゃんとでも呼ぶか?」


小さい頃に自分を呼び捨てにしていい男は自分の夫になる男だけだとかいうことを言ってたじゃねえか。


「それもやめろ。こ、この歳でそれは恥ずかしい」

「俺もちゃん付けは恥ずかしいわ」

「う、うむ……と、とにかく他を考えろ!」


無茶言うわーこいつ。


「なんつーか。仲いいなお前ら」

「そんなことはない!」

「えーどうだか。てっきり夫婦漫才かと思ったわよ。にっしっし」

「ええ、お似合いでしてよ」

「鈴、セシリア貴様ら……」


ふむ……

声を小さくしてデュノアの耳元で聞いてみた。


「なあ……もしかしてあの3人って織斑争奪中?」

「うん。もしかして篠之乃さんのことは元々知ってた?」

「そりゃあな……さっき言っただろ? 小さい頃って」

「ああ、納得」


そう話をして再び目の前の4人に視線を戻す。

4人でなんか言い合いをしている。


「……織斑は?」

「気づいてないみたいだよ」

「……マジかよ」


とりあえずデュノアと2人でため息を吐くのだった。






時間は過ぎて放課後。

今日は全授業が教室で済ませられる内容だったのでとくに移動はなかったのでイベントも特になしだった。

さて、寮の方にもどるか。


「ねーねー! 篠之乃君!」

「篠之乃さんとイトコって本当!?」

「もしかして織斑君と一緒で専用機持ってるの!?」

「うおっ!?」


時間差で別の女子から質問タイムだと!?

女子に囲まれるなんて初めてだからちょっと嬉しいじゃねえか。


『篠之乃慶斗君。1年1組篠之乃慶斗君。第一アリーナまで来てください』


と思ったら放送で呼び出し。

そのまま女子に謝って第一アリーナへと向かうことになった。








「……ここはどこ?」


第一アリーナへ来いという放送だった。

だが迷子になってしまった。この学園広過ぎ。

どうしよう。このままだと辿り着けない。

どこかその辺の生徒に聞くしかないよな。

そう思ってあたりを見回すと1人だけ見つけることができた。

あの人に聞こう。


「すいません」

「何だ」


声をかけて振り返る女子生徒。

銀の髪に左目に眼帯をしており、やや小柄な女子生徒だ。

ほっ……日本語通じてよかった。どうもIS学園の生徒は国籍関係なく日本語を話せるようだ。


「第一アリーナってどこかわからないんですけど」

「だからどうした」

「え? あ、どこにあるか教えて欲しいんですけど」

「自分でどうにかしろ」


そのまま立ち去る銀髪さん。

……なんつか冷たいとしか言えなかった。


「どーっすかな。このままだと織斑先生に怒られるな。アリーナってことは多分ISのことでなんだろうけど」


銀髪さんの後ろ姿を見送りながらこれからのことを考えようとしたらピタっと止まってこっちに戻ってきた。


「貴様教官に召集をかけられているのか」

「え? あ、うん。そう」

「何をしている! サッサといかんか! 教官の命令に逆らう気か!」

「いや、命令ってそんな大層なもんじゃ」

「いいから走らんか! さっさとついて来い!」


そのままいきなり走り出す銀髪さん。

え? 案内してくれるってことでいいのか? とにかく追いかけるしかないか。


「って速っ!」

「何をグズグズしているこのノロマが! その辺のカメでもそこまで鈍足ではないぞ!」


ちょ、これでも部活とかで鍛えてたのにマジでこいつ速すぎる。

文句言いたいけど向こうの方が速いのはマジだし文句言えない。


「サッサと走らんか!」

「っ、あーもう! わかったって!」


だからダッシュしてるじゃねえか!

軍隊じゃねえんだぞこの野朗!

……って、あれ? IS学園生だと軍属の生徒もいるとか聞いた気が。














「遅いぞ」

「もうしわけありません教官」

「……何故ボーデヴィッヒまでいる」

「はっ! 召集に対し遅れた不届き者がいたため連れてまいりました」

「ぜーはーぜーはー」


アリーナについて早々織斑先生よりお叱りを受けた。

そして息が切れてる俺と比べて息を切らせてないで、しかも気をつけまでしてる銀髪。

どんだけ鍛えこんでるんだここの生徒は……


「貴様姿勢を正さんか」

「ちょっと待って……はあ……はあ……遅くなって、す、すいません」

「まあいい。ボーデヴィッヒご苦労だった。戻っていいぞ」

「はっ!」


敬礼してアリーナから出て行くボーデヴィッヒ。

どうも仕草からして完全に軍属のようだ。

あの歳でもう軍人とはすげえな。

やっぱりIS操縦者っていうのは色々特殊な部分があるみたいだな。


「さて、お前を呼んだのはISの起動テストのためだ」

「ああ、やっぱりですか」

「束から聞いたがまだ実際には動かしていないというのは本当か?」

「はい」


動かしてもいないのにここに来てよかったのかと不安になる。

あれから束えからきた連絡は「起動確認は学園の方でしてね」ということだけ。

用意はしておいてくれてたみたいだけど。


「まったくあいつは……」

「織斑先生は束えの親友だって聞いてますけど」

「そんなところだ。話を戻すがお前のISは届いている。束が国から徴収して少し手を加えてはいるが基本は何も変わらん」


織斑先生の視線の先に置かれている無骨な鎧のようなフォームに黒をメインカラーとした純国産第二世代IS『打鉄』が置かれていた。


「束からの伝言だ」


手紙を渡されそれを開く。
 

『馬鹿なこと言った馬鹿な子にはジャジャーン♪ 純国産品をプレゼント~♪ 期待した? 期待した? でも束さんはその期待を裏切ってみたりするんだなこれが♪』


……ひでえ!

そういえばこんな人だった!

基本親族でも人間に興味ない人なんだが年下の俺を苛めるのが大好きで、俺には興味示してたんだった!

ガンダムに乗りたいと言ったから、それっぽくなってるISかなと思ったらまんま国産品とは!


「基本資料は読んでいないだろうから用意はしておいた。これを1週間で頭に叩き込め」


百科事典並みに分厚いマニュアル本を渡される。

んな無茶な……いくらなんでもこんな量……夏休みの宿題でもこんなに出ないぞ!?


「む   スパーン!


無理ですと言う前に出席簿で頭をはたかれた。

痛え。


「1週間で覚えろ」

「はい」


この人に逆らえる気がしない。


「この打鉄だが先ほども言ったが束が手を加えている。本人は織斑のデータを元に微調整のみしたそうだ。一応調べたが機体自体は一般のものと変わらん」

「マジっすか……」

「国からも量産機における男子操縦者のデータが欲しいから打鉄のデータを行えと言われている」

「量産機のデータ?」

「……織斑には別の専用機が用意されていてそっちのデータは別途採取ということだ」


やべ、なんか羨ましいと思ってしまった。

同時にずるいとも思う。

……まあ向こうが一番最初の男子操縦者だし仕方ないといえば仕方ないし理解はできる。

けどまあ思うことは別というわけで。


「だがこの打鉄はお前のデータ保存を目的にしているため使用するのはお前だけだ。量産機ではあるが、一応専用機ということになる」

「はあ……」

「不服か?」

「少し」

「図に乗るなよ。織斑もそうだが特殊ケースというために優遇されているだけで、お前たちより優れたIS操縦者はいくらでもいる。専用機を持たないものも含めてだ」

「……はい」

「わかればいい。では動作テストを行う。アンダースーツに着替えて来い」

「はい」

「声が小さい!」

「はい!」




















ISの動作テストも無事終わり寮に向かう。

結果で言えばISは無事に動かすことができた。

数値的にも平均レベルの適正値が出ていて不具合らしいものはなかったそうだ。

初めて乗った感想としてはおもしろかったというのが一番強い。

宙に浮いて空を飛ぶ。

想像しかしたことなかったけど自分の思うように空を飛ぶというのはものすごく気持ちが良かった。

最初は量産がどうだとか思ったけどそんなの関係ないってすぐに思えた。


「えーっと、俺の部屋は……1025っと。ここか」


終了時に渡された部屋の番号の鍵。

相室らしいので多分中にいるのは織斑かデュノアだろ。

そのまま扉を開けて中に入る。


「うーっす。今日からよろしく」

「おっ、来たか」

「今日からよろしくね」


2人はテーブルに座ってお茶を飲んでたようだ。

軽くこれからの挨拶を済ませて部屋の内装を見てみる。

入ってすぐの所にまずキッチン、風呂があるのにビックリした。

さらに部屋の奥に入ってみるとベッドが左側に2つと、窓側に急遽設置されたのが1つ。

PCの設置された長テーブルが右側に設置されていて、イスが3つある。

……え? これ寮だよな? ホテルじゃねえよな?


「実家の自分の部屋より全然いい部屋すぎるんだが」

「あはは。俺も思った」

「女の子ばっかりの学園だし、各国から資金が出てるからね。このくらい普通だと思うけど」

「デュノアすげえな……」

「え? そうかな?」


この設備は普通じゃねえって。

まあ国際的に支援されてるんだし、これくらいの設備がないと箔がつかないだろうけど。


「戻ってきたらベッドが増えててビビったぜ」

「多分、篠之乃君が来るんだと思ったけどやっぱりそうだったね」

「あ、やっぱそうだったんだ」


急遽設置したってのは間違ってなかったみたいだ。

どうも基本は2人部屋らしいのだが男は3人。

女子と相部屋は不味いので無理やりだが一緒にされたんだろう。

ちなみに一夏だけだった時期があるらしく、そのときはこの部屋にホーキがいたとか。

なんで寝食ともにしてて何も起きてないんだよ!? 頑張れよホーキ! 千載一遇のチャンスだったじゃねえか!


「そういや、飯は食ったか? 多分まだだろうから一緒に行こうと思って待ってたんだけど」

「あ、まだだわ。場所も知らねえし」

「じゃあこれから行こうよ」

「ちょいその前にシャワー浴びさせてくれ。更衣室にタオル持ってかなかったから浴びてねえんだ」


ベッドの上に着替え等を入れたスポーツバッグを開き下着と着替えを出して適当にその辺に置く。


「ちょっ!? し、下着をその辺に置かないでよ」

「へっ?」


デュノアが顔を赤くして慌てた様子で注意してくる。


「別に普通じゃね? てかなんで顔赤いんだ?」

「そ、そんなことないよ! と、とにかくほら、あんまり服を散らかす癖がつくと共同部屋がどんどん散らかるし!」

「あー、なるほど。デュノアは潔癖症か」


もしくはフランスと日本の違いかもな。

向こうはそういうのを気にするのかもしれん。


「け、潔癖症ってわけじゃないけど……」

「とりあえずこれからは注意するわ。散らかすにしても自分のベッドの上程度にしとく」

「そ、そういう問題じゃないんだけど……」

「シャルルは気にしすぎじゃないか? 着替えのときもなんかよそよそしいし」

「え? そ、そうかな」


……なんか慌てて妖しいけど。

男の着替え関連で慌てる、よそよそしい……

マンガとかだとこういうのは……

でもまあ、男装した女子だったーってオチはないだろ。

完全に女顔だけどさすがにこの学園でそんなことできないだろう。


「んじゃすぐ上がってくるからちょい待っててくれ。2、3分で出てくるから」

「おう」


待たすのも悪いので頭だけ洗って済ますか。


「お待たせー」


「速っ!? っていうか上!」

「うん? 下は履いてるだろ?」


トランクスだけど。


「ちゃんと上も着てから出てきて! デリカシーが足りないと思うよ!」


また顔を赤くして注意される。


「え、えっと……織斑。俺が変なのか?」

「いや、男ばっかだし変とも思わないけど、シャルルの言う通りにした方がいいとも思うぞ」

「一々気にしすぎじゃないか?」

「そ、そういうのを気にしておかないと女の子にモテないよ!」

「すぐ着ます」


それは流石に回避したい。

ベッドの上に置いておいたシャツとズボンを着てタオルで濡れた髪をもう一度拭きなおす。


「ところでさ。織斑とかデュノアって呼び方じゃ不便だったりするだろ。下の名前で呼んでいいぞ。俺も下の名前で呼ぶし」

「僕も篠之乃さんと被っちゃうから下で呼ぶほうが楽かな」

「んじゃ一夏とシャルルでいいか?」

「おう」

「うん」

「んじゃ俺は慶斗で」


この後3人で食堂へ向かい、夕食を食べてIS学園の1日目が終わった。

はてさて、これからどうなるんだろうか。

ちなみに寝る前にISのマニュアル本を軽く読んで10分で挫折した。

……明日頑張ろう。















    あとがき



どうも初めまして。

最近ISをアニメで見てシャルに萌えてSSを書いて投稿させていただきました。

基本シャルをメインヒロインとしてその次にラウラのつもりで書き始めたのに、設定上箒の出番が多くなってしまいそうですw ファースト幼なじみは伊達じゃなかったw

多分ISを男が乗れる理由に束との関係が大きく関わっていそうなので親戚という設定にさせていただきました。

更新はかなり不定期になると思いますがこれからもよろしくお願いします。





[26156] 【習作】IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~ 第2話 ピンチで吹っ飛んでかわいいから許す
Name: kei◆6ab4c12a ID:f779f124
Date: 2011/03/01 13:02
IS学園に転校して2日目の朝が来た。

現在朝6時37分。寝起きはいい方ではないけど、枕が変わったせいかあまりよく眠れず、結構早い時間に目が覚めてしまった。

二度寝をするかどうか迷うところだ。


「あれ? シャルルがいない?」


部屋を見渡すと一夏のベッドの布団はまだ膨らんでいるのだが、シャルルのベッドはからっぽで、布団も綺麗にセットされた状態だ。

もう起きたのか? 起きるの早いな。

俺も顔と歯を磨くかとベッドから降りる。

それと同時に風呂場の扉が開き、すでに制服を来たシャルルが出てきた。


「おはようっす」

「え? あ、お、おはよう」


俺が起きたのが予想外だったのか、一瞬慌てた様子だったがすぐに朝の挨拶を返してくれた。

しかし何故そこまで焦るのだろうか。


「なんか焦ってねえ?」

「そ、そんなことないよ。まだ寝てると思ったから急に声をかけられてビックリしただけだから!」

「お、おう……わかったからそこまで大きな声で言わなくても」


むしろこっちの方がびっくりするんだけど。

まあいいか。とりあえず顔洗ってトイレでも行こう。

風呂場の洗面所で顔を洗おうと思いシャルとすれ違うとなにか甘い匂いがした。

あれ? この風呂場に何か女物のシャンプーとかそういう感じのものあったっけ?


「新しいタオルは棚のほうに置いてあるから」

「了解。サンキュー」


冷たい水で顔を洗ってしっかり目を覚まさせる。

棚からタオルを出して顔を拭いてから、次はトイレに行こうと思って部屋の外に出る。

この学園のトイレは各部屋にはついておらず、女子専用に設計されたものだから男子用トイレは場所が少ないし、離れているのが不便だ。

部屋の扉を開けて廊下に出る。





「………………」




そして部屋に戻って静かに扉を閉めた。

もう一度顔を洗って拭いてからもう1度廊下に出てみる。

そして再び部屋に戻った。


「……どうしたの?」

「シャルル! 大変だ!」


ものすごい形相でシャルルに近づき、その肩を両手で掴んでおもいっきり揺さぶってしまう。

そのせいでシャルルの目が回り、後ろで束ねた長い髪が大きく揺れる。

しかし動転し過ぎた俺はそのことを心配することができなかった。


「ど、どうした!? 落ち着いて! というか離して!」

「廊下で女子が半分下着みたいな格好で歩いてた! しかも結構な数が!」

「だから落ち着いてー! 揺らさないでー!」


必死な声で揺らすのをやめてと言うのだが、今の俺の脳がそれを理解することができなかった。

俺の脳内では先ほど見た、朝から見るには刺激的過ぎる廊下の光景がフラッシュバックしていたのだ。

寝癖がついて眠そうな顔して廊下を歩く女子が廊下にたくさんいたのだが、その服装がネグリジェだったり、

胸元がはだけたバスローブだったり、下着の上にシャツを着ただけだったりと警戒心0の状態だった。


「何これ!? どういう状況!?」


女子学園というのはこれほどにおいしいシチュが朝から広がっていたのか!?

以前からこんな光景を見てみたいとも思ったが、実際に目にするとパニックに陥ってしまったじゃないか!


「おい何だよ。朝っぱらから騒々しい」

「おい一夏! 大変だ! 廊下でエロい格好の女子がいっぱい!」


掴んでいた両肩から手を離し、眠そうな顔で上半身だけを起こした一夏の方を向いて廊下を指差す。


「ああ。あれか。そうだよな。いくらなんでももう少し何とかしてほしいよな」

「あ、あれ? お前なんかリアクション薄くない?」

「俺も初日に見たから。まったく、男がいるんだから着崩すにしても部屋の中だけにしてほしいよな」


両腕を組んでうんうんと1人で頷く一夏。

俺は朝からのあまりに眼福すぎる光景にパニックに陥ったというのに冷静だと。

こいつもしかして枯れてるのか? それとも俺が大げさなのか?


「えーっと、とりあえずトイレに行くならもう少しタイミングをズラした方がいいと思うよ。この時間だと起きたばっかりの女の子がよく出歩く時間帯だし」

「でもまだ6時半くらいだぜ? 早くないか?」

「身だしなみを気にする子ならこの時間に起きてこれから髪やメイクのセットをするよ」


さも当たり前のことだよというように爽やかなスマイルとともに言い切るシャルル。

身だしなみに対してそこまで気にかけない俺からしたら、よくわからない感覚だ。


「そういうもんなの?」

「そういうものらしいぞ」


一夏にも意見を聞こうとそちらに視線を向けたら、よくわからないというような表情だったがシャルルの意見に賛同した。


「うん、そういうものだよ」


にっこり笑うシャルル。

どうも俺には女子の感覚というものがよくわからないようだ。

なんとなくだがシャルルは女子の扱いがうまいみたいだし、意外とプレイボーイだったりするのかなと思った。

顔も良くて、女心もわかる。こいつはさぞかしモテるのだろう。













                  IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~

                    第2話 ピンチで吹っ飛んでかわいいから許す








「そういやさ」

「ん?」


衝撃の朝のハプニングの後しばらく部屋で雑談で時間を潰し、朝の準備等を済ませて3人で食堂に来て朝食を食べていると一夏がご飯を左手にもったままたずねて来た。


「俺放課後にシャルルや箒たちにISの特訓してもらってるんだけどお前も一緒に受けるか? 多分そこまで操縦できないだろ?」


そういって箸を朝食セットのシャケに伸ばして口に入れる。

俺は味噌汁を飲みながらこの誘いについて少し考える。

特訓か。迷うことないよな。せっかく教えてもらえるし操縦の腕を上げるには願ったり叶ったりだ。

でも問題は箒達にってとこだ。

多分他のメンツは昨日のオルコットさんと、凰さんのことだろう。

きっと一夏との時間を増やしたいって思って特訓してるんじゃないのかな。そうだとしたら俺はお邪魔虫になったりしないだろうか。


「ちなみに面子は?」

「箒とセシリアと鈴とシャルルが指導者ってことになるな」


面子は予想通りか。なおさら可能性が高まったな。


「んじゃシャルルが教えてくれないか?」

「え? 僕?」


予想外だったのか不思議そうに聞き返してくる。


「ほら……なあ……」


言葉を濁しながら箸を回してジェスチャーをとる。

俺自身もどう言っていいのかわからないのでこのジェスチャーがうまく伝わるかどうかはわからない。


「あ、そういうこと。うん。いいよ」


どうやら俺の言いたいことはわかってくれたようだ。

察しのいい奴でよかった。


「サンキュー」

「ん? なんでシャルルなんだ?」


シャルルは俺の言いたいことを理解してくれたが、一夏にはよくわからなかったようだ。

まあここでわかるようならあの3人の争奪戦はもっと違う形になるか。


「俺は馬に蹴られたくないんだ」

「どういうことだシャルル?」

「慶斗はオルコットさんや凰さんとまだそこまで仲良くないから僕の方が気が楽ってことだよ」


シャルルがうまく誤魔化してくれたおかげで一夏はとりあえずは納得したようだ。

そっかと言ってそのまま箸を進めて食事を続ける。

気づかないのは本人のみということか。箒も苦労してそうだなあ。とりあえず頑張れとだけ言っておこう。


「放課後に2人のISを見れるってわけか。どんなのか楽しみだな」

「そういえば慶斗のISはどんなのなんだ?」

「……俺のは打鉄だ」


しまった。この話題を出すんじゃなかった。

口に含ませようとした味噌汁を一旦止める。

何で俺のだけ特別製じゃないんだよと嫉妬したせいで少しぶっきらぼうに答えてしまい、それを誤魔化すように再び味噌汁をすする。


「え? でも何か特別な装備をしているとか?」

「うんや。何が特別な装備なのかはわからないけど織斑先生曰く普通の打鉄だってさ。俺の場合は量産機でのデータを取るんだと」

「何だよそれ。同じ男なのに扱いが違い過ぎないか」

「……それをお前が言うか?」


だけどこの反論に一夏本人に悪気があるわけじゃないってことが再認識できた。

そうだよな。別に誰が悪いってわけでもないし、我侭言ってる俺が駄目なだけなんだから拗ねたりとかしたら俺がかっこ悪いよな。

そう思うとなんか気が楽になったわ。


「何笑ってるんだ?」

「え? そうか?」


どうも俺は少し笑っていたらしい。

少しすっきりしたからかな。ここで沈黙されてたら重い空気のままだったかも。

他人のために怒れるやつだっていうのはよくわかった。いい奴だこいつは。


「まあ気にするな。俺は打鉄だって文句はねえよ。むしろ専用機もらえた時点で相当な特別扱いだ。ある意味プレッシャーだぞ? 素人が専用機持ちだなんて」

「そうなると一夏の方がなおさらプレッシャーだね。素人なのに白式みたいなすごい機体で専用機持ちなんだし」

「お、お前らなあー!」


そのまま3人で笑い合う。

昨日も少し思ったけどこの2人とはこれから本当に仲良くやっていけそうだ。

転校したばっかりで仲良くなれるか心配したけど多分大丈夫だな。


「あ、急いで食べないともうすぐ時間」

「うおマジだ。急げ。急がないと千冬姉に頭を出席簿で叩かれるぞ」

「そりゃ勘弁だ」


かきこむようにして朝食のご飯とおかずを口に含んで味噌汁で流し込む俺と一夏。

洋食系の朝食を選んだシャルルも残っていたサンドイッチを急いではいるが丁寧に食べ終えると食器をカウンターの運んでそのまま走って教室に向かうのだった。













IS学園の授業は普通の高校などで習うこと以外のことがメインだ。

コマのすべてがIS関連のことで埋まっており、しかも女子の大半はここに入学前から出身中学などで習っていたりする。

さらにこの6月という時期には、その授業内容は相当進んでいる。

つまり何が言いたいのかというと


「さっぱりわからん……」


昨日もそうだったが、今日はなおさらよくわからない。

初日はこの学園の空気やら、自分の自己紹介やら休み時間に質問されたらどうしよう。

友達うまくできるかどうかなどに思考が割かれていたが2日目となるとそれもなくなり、授業の方に集中できたのだがこの有様だ。

山田先生がISの出力を上げた場合の空気抵抗や重力による圧力などについての説明をしているがさっぱり理解できない。

周りを見ると特に困った様子の生徒はおらず平然とした顔で授業を聞いている。

どうしよう。俺はもしかして落第してしまうのではないだろうか。

必死に教科書をめくり言われているところの公式だの、言葉の意味などを調べてなんとか理解しようとするがまったく追いつけない。

あー! さっきの表示されてたウインドウが消されたー! なんて言葉だったけ!?

そして鳴り響く無情の終業ベル。


「はい。以上で今日のところは終わりです。各自復習をしておいてくださいね」


そのまま教室から出て行く山田先生。

ああどうしよう。復習も何もまずIS知識が乏し過ぎる俺は本当にどうしよう。

自分のない頭に嘆きつつ額を机の上にくっつける俺。


「だ、大丈夫か?」

「無理……こんなのさっぱりわからん」


どうも心配してくれたのか一夏が声をかけてくれる。

その顔には少しの汗と苦笑いが見えた。


「お前わかるのか?」

「俺もさっぱりだ」


にこやかに笑って返された。



「だよなー……俺だけじゃなくてよかったー」



そのままぐでーと机に全体重を押しかけうな垂れる。

とりあえず勉強に悩んでいる仲間がいて安心した。駄目な安心だけどな。

これは夜とかに昨日もらったマニュアルをしっかり読まないと本当にまずいな。

クラスのみんなは別段勉強のことで困ってないんだろうなあ。いいなあ。

そんなことを思いつつ休み時間に楽しそうに談笑し合っているクラスメイトを眺めていると気になることがあった。


「……なあ。ホーキって昨日もだけど誰か特定の人と仲良くしてるか?」


一番前の窓側の席に1人座っているのが目に映った。

気のせいでなければ昨日も特に誰かと話しているという姿を見なかった気がする。


「ああ、セシリアや鈴とは仲がいいぞ。最近は呼び捨てで呼び合う仲になったしな」

「そうなのか? なら良かった。結構性格キツイままみたいだったし」

「あはは。確かにな」


お互いホーキの小さい頃を知ってるだけに昔のキツい性格のままでいることに笑ってしまう。

もう少し柔らかくなればいいのにな。


「誰の性格がキツいだと」


突然後ろからホーキの声がした。

慌てて後ろを振り返ると声の主のホーキ様が普段からややキツい目をさらにきつくつり上げ、両腕を組んで仁王立ちしていらっしゃった。

馬鹿な!? いつ回り込まれた!? さっきまで席に座っていたはずでは!?


「い、いつの間に」

「それでだ。誰が性格がキツいだと?」


その纏っているオーラと今のお顔がキツい性格の証拠だと思います!

などとは口が裂けても言えない! 言ったら斬られる! 


「お、落ち着こうホーキ」

「安心しろ。私は非常に冷静だ」


そんな感情の篭っていないような冷たい視線で見下ろされても信じられません。


「ほ、ほら。そんな怖い顔したらせっかくのべっぴんさんが台無しだって」

「なっ!? そ、そんな台詞で誤魔化されはしない!」


少しだけだが頬を赤くして小さく一歩後ずさる。

容姿を褒められることになれていないのか初々しい反応だった。

これは誤魔化すチャンスだ!


「そんなことないって! ホーキは笑ってるほうが似合ってるし。な、なあ一夏! 一夏もそう思うよな!」

「ああ。俺も箒は怒ってるより笑ってるほうが似合ってるしかわいいと思うぞ」

「い、一夏がそういうのなら……そのだな……」


一夏の押しの一言が効いた。ホーキの頬は赤くなり、モジモジと両手の指を弄ってる。

よし、ホーキの意識が逸れてる間にこの場から離脱だ!

席から立ち上がりそのままダッシュ。ホーキのことは一夏に任せた!

ほとぼりが冷めたらもう少し普段からデレを見せたほうがいいぞと言っておこう。


「慶斗貴様!」

「そんな怒るなよ! っとうお!?」


ホーキの方を見ながら扉に向かって走っていたせいで前方不注意になってしまったようだ。

気づいてすぐに足を止めようとしたが教室に入ってきた女子生徒に軽くだがぶつかってしまう。


「ごめん! 大丈夫!?」


軽くぶつかっただけなのでお互い転んだりはしなかった。

ぶつかった相手の確認をしようと視線を前に戻すと何かが顔面に飛んできたのを察知し、慌ててそれを手で弾く。


「うお!? な、なんだ!?」

「ほう……これくらいは弾くか」

「あ、えーっとボーデヴィッヒさんだっけ」


ぶつかった相手は昨日アリーナへ案内というか連行というか行軍というべきか、とにかく連れて行ってくれた銀髪眼帯少女だった。
 
どうも先ほど顔に飛んできたのは彼女の張り手だったようだ。

俺が悪いけどそこまでして仕返しをするか普通。


「次から気をつけろ」

「そうするけど……張り手までしなくてよくないか?」

「なんだ? 文句があるのか?」


俺よりも背が低いので下から見上げられるような形になるのだがその視線は明らかに俺を見下したもので、反論した俺に対して敵意をむき出しのものだった。

え? これって逆切れか? 


「いや文句というかなんというか」


なんていえばいいのかなと思ってたらそのまま席に歩いていってしまった。

え? もはや存在すらスルーの方向ですか?


「大丈夫?」

「ああ。でもキツいなあの女子」

「ボーデヴィッヒさんはね……まあ色々あるみたいだし」

「どういう奴なんだ?」


先ほどのやりとりを見て心配して駆け寄ってきてくれたシャルルから話を聞く。

ドイツの代表候補生であること。現役のドイツ軍人でありIS部隊の隊長であること。織斑先生の元教え子であり、尊敬しているということ。

そのせいか一夏という存在が気に食わないらしく転校初日に一悶着あったということ。


「なんか色々とぶっ飛んでるんだな」

「あ、あはは……そんなこと言っていいのかな。聞かれたらどうするのさ」


正直な感想に少し冷や汗をかいてもう少しオブラートに包んだほうがいいのではと言われてしまった。


「うーんでもあいつも代表候補生か……放課後とかに一緒に訓練してるのか?」

「ううん。彼女は慶斗の前日に転入してきたばっかりだし、昨日はなんだか国からの手続きとかでいなかったから」

「ああ、通りで昨日見なかったと思った」


じゃあ今日アリーナで会ったりするかもしれないのか。

現役軍人のIS操縦者か……きっとすげえんだろうな。

教えてもらえたりしないかな。


「あ、チャイム鳴ったよ。席につかないと」

「あ、うん」


シャルルに言われてそのまま自分の席に戻って授業が再開された。

なんとなくボーデヴィッヒさんの方を見ながら授業を進めてしまったせいで話が半分以上耳を右から左に抜けていってしまい、

夜になって復習をしたときに後悔したのは別の話。

あと、次の休み時間でホーキに叩かれたのも別の話である。













今日も1日学業お疲れさんでした俺。

もうあれだ。いつ俺の頭から煙が上がってもおかしくない。

ない頭を回転させるのは無茶だった。油をささないと歯車はうまくまわらないのだ。

まあその油も俺の頭にはうまく回ってくれる歯車もないんだけどな。

とにかくまあそんなこんなで放課後になってISの特訓が始まるのだ。


「しっかしこのアンダースーツなんとかならねえのか。すげえピチピチで恥ずかしいぞ」

「文句言っても仕方ないだろ」

「そうだけどさ」


俺たちはアリーナに設置されている更衣室で着替えをしているのだがIS用のアンダースーツ、これ本当にどうにかならんのか全身スパッツみたいなデザインは。

女子のデザインというのだと水着みたいなものなのでそう変に感じないかもしれないが、男用のデザインになると違和感がぬぐいきれない。

欧米とかではダイエットで有名なブー○キャンプなんかで似たようなの着てたけど親しみないから無理。


「シャルルはどう思う?」

「へ? ど、どうかな~僕はそこまで思わないけど」

「……お前着替えるの早いな。いや、マジで」

「そんなことないよ」


上を脱ぎながらシャルルの方を向いて話しかけると既に着替え終わってアリーナに出ようとしていた。

ほぼ同時に更衣室に入って着替え始めたよな俺たち。


「俺もそう思って早着替えのコツを聞いたんだけど教えてくれなくてっさ」

「てかこれってコツとかあるのか?」


夏の水煙の時間の小学生みたいに下に着込んでないと無理じゃないか?


「部活だと何も気にしないで全部脱いで着替えたりするけどな」

「え? 下もか?」

「体育会系だとそんなもんだぞ」


そう言いながら下も脱ぎだす。


「ぼ、僕先に行ってるね!」


顔を真っ赤にしたシャルルがものすごい勢いとでかい声で走っていってしまった。

その光景に俺も一夏も着替えをストップして走りさった後を見つめる。


「……なんなんだ?」

「さあ?……え? また俺が悪い感じ?」

「どうなんだ?」


お互いに不思議がるしかなかった。

とりあえず着替えのときは腰にタオル巻いてからパンツは脱ぐかな……
















着替えも終わってアリーナに出るとすでに女子陣がスタンバイOKな状況だった。

ホーキは俺と同じ純国産の量産型IS打鉄をその身に纏い、オルコットさん、凰さんは見たことないタイプのISに乗っていた。

きっとテレビとかで見る機体じゃなくてテスト機や最新鋭機なんだろうな。

他にも幾人かの女子の姿がちらほら見える。

あっちも同じでISの特訓なんだろうか。


「へーこれがイギリスと中国の機体か」

「そうですわ。これが私のIS、ブルーティアーズですわ」

「あたしのは甲龍っていうのよ」

「やっぱ最新鋭機?」



そのまま近づいて2人の機体を見させてもらう。

青いシャープなイメージのブルーティアーズ。

オルコットさんの手にはスナイパーライフルが装備されており、どうも狙撃中心の機体というのが伺える。

一方重量感たっぷりの装甲をした凰さんの甲龍。

背中には一撃で相手を斬ると言うより押しつぶすというような感じのごっつい剣が装備されており、両肩口にも砲がついている。


「もちろんですわ。イギリスの第三世代ISであり、この機体の最大の特徴である」


何か知らんがまた授業が始まったのだろうか。

よくわからないシステムの名前やらなんやらがオルコットさんの口から発言されるが……え? 今なんて言ったの?


「ああもうあんたは。もうその長ったらしい自慢みたいな説明やめなさいよね」

「な、なんですって! 私は懇切丁寧にこの機体と第三世代ISに求められていることをですね」

「はいはい、わかったから。それより一夏。訓練始めるわよ」

「それもそうですわね。一夏さん。今日は射撃戦での回避行動と切り返しについての特訓をいたしましょう」

「はあ? 何言ってるのよ! 今日は接近戦での対応と相手の予測行動の訓練でしょうが!」

「なんですって!」

「なによ!」


なにやら2人ではげしく睨み合い火花を散らしている。

一触即発。いつでもこのまま開戦されそうな勢いだ。

というか機体についての話を聞いてたはずなのに一夏争奪戦が開始されているとはなんという空気キャラ俺。

そういえばホーキは参戦しなくていいのか?


「接近戦ならホーキがベストなんじゃないか? ほら、剣道だと日本一だぞ」


さり気なく一夏に話を振ってホーキをプッシュしておく。

頑張れホーキ。ここでアピールしておくんだ。


「そうだな。昨日は空中での回避行動の特訓だったし。箒、接近戦での特訓に付き合ってくれるか?」

「わ、私か!?」


突然話を振られてか驚いている。

そしてこっちを恨みがましく睨んでくる。

おいおい。むしろここは感謝されるべきとこじゃないのか?

まあ少しいたずらしたいという下心もあったのだが……まあとにかくがんばれとサムズアップしておく。

あ、なんかため息つかれた。


「ご、ごほん。う、うむわかった。しかし教える以上手は抜かないからな」

「おう、望むところだ!」


少し顔を赤く染めながら打鉄に装備されている剣を一夏にむけて構える。

一夏もISを起動させ同じく装備している剣を構える。

一夏のISも見たことのないタイプで、真っ白で翼のように大きなブースターがついていた。

うん、とりあえず頑張れホーキ。


「篠ノ乃さん……」

「篠ノ乃……あんたねえ……」


びくうう! な、なんだこのものすごい殺気は!? 禍々しいオーラを感じるぞ!?

ゆっくりと、冷や汗をかきながらその妖気の発現場所に目をもっていく。

そこには般若が2人いた。


「ひっ……」

「そういえば篠ノ乃さんも初心者でしたわね……」

「あたし達が鍛えてやるから感謝しなさい」


なんということだろうか。悪戯心と従姉を応援する気持ちで後押ししてしまったらものすごい地雷を踏んでしまったようだ。

視線だけで人を殺せそうな目をしているのに口元だけ笑っている2人。

しかも俺をこれから物理的に抹殺する気満々なのだ。

あまりの恐怖に後ずさる。


「え、えっと……今日はシャルルに特訓してもらう約束でさ」


1歩下がれば1歩こちらに寄ってくる。

怖い! 怖すぎる!


「遠慮すんじゃないわよ……教える人数は多いほうがいいでしょ……」

「そうですわ……この私に教えを乞えるなんてこんな名誉なことは滅多にありませんでしてよ……」


だ、駄目だ。何を言おうが俺を抹殺する気だ。

数歩ずつ後ろに下がるが、人型汎用決戦兵器の初号機のように近づいてくる。

シャルル! 助けてくれ!


「…………ごめん」


助けを求めたが視線を逸らされた!?

そんな!?


「ほら、早く展開しなさいよ」


凰さんが八重歯をむき出しにして睨みつける。

て、手加減してください。お願いします。

大人しく展開するしかない状況に追い込まれてしまい、打鉄を展開させる。

どこか昔の鎧武者を思わせるような鎧に黒をメインカラーとしたIS。

手には日本刀に似た形状の剣が装備される。


「本当に普通の打鉄なんですわね」


オルコットさんが少し意外といように言う。

どうも普通の打鉄と違わないという話を聞いたようだが、どこか違う部分はあると思っていたようだ。


「どこかしら装備にも違いはないんですのね」

「ないんですので、本当に手加減してください」

「それとこれとは別ですわ」


物凄い綺麗な笑顔で言われた。

状況が状況でなかったら惚れてしまうような笑顔だったが、俺には恐怖を加速させるものにしかならない。








「ねえ、あれって」

「うそ!? ドイツの第三世代!?」

「まだトライアル段階だって聞いたのに!?」






なんだろうか? 別グループの方が騒がしいみたいだけど。

俺も含め全員の視線が騒ぎの方へ集中する。

騒ぎの原因は上の階のISのカタパルトの出口にいた。

黒く右肩に巨大な実弾砲を装備したISに乗るボーデヴィッヒさんがこちらを見下ろし一夏に目をつける。


「おい」

「……なんだよ」

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

「嫌だ。理由がねえよ」

「貴様にはなくても私にはある」


なにやら険悪なムードになっていく。

それに影響されてアリーナ全体の空気も重苦しいものへと変わっていく。


「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは用意に想像できる。

 だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」


な、なんだこのシリアスは。

なんか知らんが俺にはまったくわからない因縁が2人にはあるようだ。


「え、えっとさ。なんか事情があるみたいだけど喧嘩はやめとこうぜ。な?」


あははと冷や汗をかきながらゆっくりと浮遊して2人の睨み合いの間に立つ。

仲良くいこう、仲良く。

いろいろあるみたいだけどクラスメイトだしお前ら同じ専用機持ちだろ。


「邪魔だ。失せろ」

「へ?」


何かものすごい轟音がしたと認識するよりも先に物凄い衝撃が体を襲った。

視界が周りの景色の上下左右がわからないくらい回り、再び物凄い音がしたと思ったら地面に叩きつけられていた。


「がっは!? かっは! うげっほ、ごっほごっほ!」


突然の謎の衝撃と地面に叩きつけられた衝撃で全身が痛む。

呼吸もうまくできなくなっていて、咽ながらも酸素を吸収しようと必死になる。

何が起きた? 今の衝撃はなんだ!?

自分の今の位置を確認すると先ほど俺が浮いていた場所から数十メートルほど離れた地面に四つん這いになっていた。

先ほどと違うのはボーデビッヒさんの実弾砲から煙が上がっているのと、足元に巨大な薬莢が落ちているということ。

まさかアレを撃たれたのか!?


「慶斗!? 大丈夫!?」


慌てたシャルルが文字通り飛んでかけつけ、体を起こすのを手伝ってくれる。


「ラウラおまえ……」

「待て一夏!」

「落ち着いてください一夏さん!」

「あんたが飛び掛ったら思う壺でしょうが!」


飛びかかろうとする一夏を他の3人が取り押さえる。

だがその一夏を挑発するように見下ろしながら笑うボーデビッヒさん。


「ふん、邪魔をするからこうなる」

「てめええ!」

『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』


突然スピーカーから教師の声が響き渡る。

どうやら誰かが騒ぎを見て読んだようだ。


「……ふん。今日は引こう」


そのままあっさりとISを解除してアリーナから去っていく。

多分教師からなんか言われるんだろうけどあんまり意味がないんだろうな。

騒ぎも一応収まったといえばいいのだろうか、全員一旦ISを解除して駆け寄ってきてくれる。


「大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。しっかしISってすげえな。あんな砲撃喰らってもダメージがこれだけって」


木っ端微塵の肉片になってもおかしくないような威力だったはずだ。

それがいざ解除して自分の体を確認するが衝撃による軽い打撲のみで大して痛みは残っていない。

シールドによって操縦者は守られているらしいがここまで高性能なシールドとは……

操縦者は剥き出しみたいなデザインなのに。


「あなた悔しくありませんの!? あんな野蛮な方に一方的にやられましたのよ!?」


オルコットさんが息を荒げながら先ほどの不意打ちの攻撃に怒りをあらわにする。

他のみんなも同じようでギスギスした空気が広がる。

さっきは一体何が起きたのかわからなくてうまく思考が回らなかったが、今になってくると相当頭に来る。

頭に来るんだけど


「……もう帰っちゃたしな」

「はあ……呆れた殿方ですわ」

「あんたそれでも男なの?」


うるせえな。俺だってやり返せるならやり返すつうの。

だけど相手は軍人でしかもISの国を代表するようなやつだぞ。返り討ちが見え見えだ。


「しかし本当に大丈夫なのか? すごい勢いで飛ばされたのだぞ」


流石のホーキも心配してくれているようだ。

一体どんな感じで吹っ飛んだんだ? 


「一応保健室にでも行ったほうがいいかな?」

「そうした方がいいと思うよ」


シャルルもそう言うしそうするかなあ。


「すまん……俺のせいで」

「なんで一夏が謝るんだ?」


ていうか俺がしゃしゃり出たせいもあるんだろうけどさ。

空気読めって感じだったんだろうな。あっはっはっは。


「まあなんか事情あるみたいだし、そこに俺が割って入って天罰喰らったみたいなもんじゃん」

「……すまん」


それでも謝ってくる一夏。

いや、むしろ俺が謝るべきとこだよなこれ。


「えっと、俺も事情知らないのに割り込んでごめんな」

「……何お互いに謝りあってるのよわけわからないわね」


凰さんがうがーとこの重苦しい空気を壊してくれる。


「どー考えても一方的に喧嘩売ってきたあっちが悪いんじゃないの! あんたらが謝りあって何が解決すんのよ辛気臭いわね!」

「とりあえず今日はここまでにしましょう。あまり長いしますと先生方からの文句も多くなりそうですわ」


2人の意見に賛成してそれぞれアリーナの出口に歩き出す。

一夏が肩を貸そうかと言ってくれたが、別に歩けないということもないので遠慮しておいた。

いや、本当は別のグループの女子がすげえ嬉しそうな目で期待の眼差しを向けていたのでやめたんだ。

おい、お前らそんな目で見るんじゃねえ。俺はBLに興味はない!

つまんないとか言うんじゃねえ!







とりあえずIS学園入学から2日目。

勉強にものすごい危機感を覚え、クラスメイトにぶっ飛ばされるというものすごい精神的にも肉体的にもキツい1日だった。

寝る前に振り返ったのだが




「見た目がかわいいから許す!」




ボーデヴィッヒさんはクール系の美人だよな。うん。

とりあえずリベンジもするが仲良くもなっておきたいところだ。














      あとがき


どうも2話目を投稿させていただきました。

地の文が少ないというアドバイスをいただいたので背景描写を増やすなども含めて書いてみました。

気になる部分などもあったと思いますが読んでいただきありがとうございます。

また、改善したほうがいいことなどございましたらご指摘お願いします。

話のほうですが、多分このままIS初心者が学園で勉強し、特訓し成長していくというものになりそうです。

シャルメインヒロインの話にしたいとは思うのですが……8話の混浴シーンを見たらもう一夏の正妻確定だろという。

せっかく書き始めたので書き続けますが、ラブイチャはあんなのみせつけられたら難しいじゃないか! という感じです。

とりあえず今のまま妄想に任せて進ませていただきます!











[26156] 【習作】 IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~第3話 萌えてエロくて涙の逃走
Name: kei◆6ab4c12a ID:f779f124
Date: 2011/03/06 04:18
IS学園は楽園だ。

そう誰かが言っていた。

海も山も国境も越えた才女達が集まる美しい戦乙女の修行場。

発展途上のその肢体は日々洗練されていき、女の子から女性へと羽化していく聖なる地。

いつの間にか一部の男たちからそう呼ばれるようになっていた。

事実この学園の生徒のレベルは高い。

どのクラス、どの学年を見ても一般校ならば1位2位に簡単にランクインするであろうレベルだ。

そのため、容姿も入学の審査に入っているのではないかとも言われている。

いや、恐らく入っているのは間違いない。

ISとは兵器であるがその使用目的は表上スポーツなのだ。

そして女性のみが使用可能であり、その搭乗者はある意味国を代表するアイドルと言っても過言ではない。

国を代表する戦乙女が美しくないなど容認できないのではないだろうか。

長々と自問自答したが俺の言いたいことはただ1つ。


「お、俺のリビドーが萌えたぎるううううううううう」


誤字ではない。

なんなのだここは! 萌え要素が多過ぎるだと!?

どこの生徒もヒロインクラスなんて思春期男のいろいろ我慢できないところが刺激されてリビドーが抑えられないじゃないかあああ!








                     IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~

 
                       第3話 萌えてエロくて涙の逃走








はっ!? いかん何か暴走的な思考が始まってしまった! 抑えるんだ。抑えねばならんのだこのリビドー(ムラムラ)を!

先日も見た朝の刺激的な光景が今日も繰り広げられていた。

今はもう既に今日の最後の授業になっているのだが、未だに少し思考がハッスルしている。

15歳思春期男子。

エロイことばっかり考えてしまっても仕方がないんだ。

そういうお年頃なんだ。

だけどそんなの表に出したら退学どころかヘタこくと国際問題!?

世界中の美少女がここにいてしかも女子校出身者が多く、無防備な状況でいるのだ。

我慢できるわけがないのに我慢だぞ! コノヤロー!

あ……でも俺告白とかする度胸とかねえわ。

はっ!? また思考がおかしくなってる!

キーンコーンカーンと終業のベルが鳴り響く。

先生も授業が終わり教室から出て行く。そして放課後に何をするかを相談し始める女子たち。

俺も席を立ち上がり一夏と相談しようと立ち上がる。


「……俺思考がやばいわ」

「どうした?」


教科書を鞄に片付ける一夏に話しかける。



「ここ刺激が強過ぎてなんだ……いろいろ溜まる」

「……そうか?」


その、何だ……いろいろ複雑な年頃なのは男も同じで溜まっているのをどうしていくべきかと相談しようと話しかけてみた。

すごい言いづらいことであるのだがやっぱりこれから先まだまだこの学園にいることにはなる。

2ヶ月も先にここに入学している一夏ならいい方法を知っているかもと思ってどうしているか聞くつもりだったんだ。

それなのに


「そ、そうか? ってどういう意味だ?」

「いや、まあ刺激的なことが多いけどそこまでか? ってことだけど」


あっさりと平常心の顔で予想外の返事が返ってきた。

なんということだ。

一夏はもはや枯れてしまっていると判断してもいいのかもしれない。

あまりの予想外の答えについ一歩引き下がってしまった。


「お前ムラムラとか来ないのか?」

「え? そんなことないけど」

「……お前もしかして女に興味ないのか? そっち方面の人?」


もしそうだとしたらこれからのこいつとの付き合い方を考え直した方がいいかもしれない。

友達として付き合っていくのはいいだろうがそっちに染められないようにとか。

はっ!? もしそうだったらシャルルの貞操ピンチじゃねえか!?

あいつは所謂男の娘に分類できるだろ!? まさに最上級の……いや、至高の存在となるのじゃないだろうか!?



「なっ! そんなわけねえだろ!」

「だ、だよな……流石にそうだよな」


机に両手を叩きつけてイスから立ち上がって、結構焦った感じで否定してきた。

多分だがこの反応からして本当だろう。

よかった。少しそれっぽい言動をするときあったから不安だった。

ホッとした俺をみて一夏も席に再び座るのだった。


「じゃあなんでお前そんな枯れたみたいになれるんだよ」

「なんでって……千冬姉と2人で生活してたからな。意外と家でだらしなかったから昔から似たような状況だったんだよ」

「織斑先生で見慣れたって意味か?」

「まあ……そうなるな」


なんとなく下着姿で家の中を歩いている織斑先生を想像してみる。

下着は黒っぽさそうだな。

黒の下着を身に付けてややだるそうにあの長い黒髪をなびかせる織斑先生。その手には酒を持っていてアルコールで頬が赤くなっている姿を想像してみた。

やばっ。エロい。


「何想像してやがる!」

「いたっ!?」


突然一夏に頭をはたかれた。

叩かれた頭を抑えながら突然の攻撃に文句をつける。


「何しやがる!」

「千冬姉で変なこと想像しただろ」


ジトーと席に座っている一夏から批判の視線を向けられる。

そりゃしたかと言われればしたとしか言えないけどさ。

ええい。このシスコンめ。


「黒の下着とかぽさそうだなって考えただけだよ」

「なっ……お前見たのか!?」


顔を赤くしながら突然席から立ち上がると机越しで胸倉を掴んできた。

待て!? 見たのかってどういう話だ!? それっぽいよなって話しただけだろ!?


「落ちつけ! それっぽいよなってだけの話だ!」


そもそも常時隙がないような人だぞ!?

見れるわけないし、覗いてみようとも思えんわ! 殺されそうだ!

とにかくギブアップという意思表示をするために掴んでいる腕にタップをする。


「だ、だよなー。あはは。すまん」


手を緩め誤魔化すように乾いた笑いをする一夏。

そうか、そういうことか。


「つまりお前は織斑先生がタイプでそれ以外眼中にない感じか」

「なっ、ち、違うぞ!」

「そうか。そうか」


ホーキ。大変だぞ。

お前の意中の相手はシスコンだったぞ。しかもその姉は相当なクールビューティーで大人な人だ。

中々ハードルが高いっぽいぞ。


「一夏さんそれは本当ですの!?」

「うおっ!? セシリア!?」


突然話に飛び込んできたオルコットさん。

どうも一夏のタイプというワードに反応したようだ。

聞き耳を立てていたのだろうが、織斑先生がタイプということで黙っていられなくなったのか。


「そ、そのなんですの? 一夏さんは大人な女性が好みということでよろしいんですの!?」

「な、なんでそうなる!?」


え? だって織斑先生がタイプってことはそうだろ?

織斑先生の特徴を上げるとクールビューティー。大人な女。できる女。

さらにはボンキュボンという最強無敵の装備まである。

まさにハイスペックウーマン。


「セシリア落ち着け」

「わ、私は落ち着いておりますわ。ええ。そうですとも」

「いや落ち着いてないだろ」

「イギリスの淑女である私に落ち着きがないなんてことはありえませんわ」

「じゃあその額の汗はなんだ」

「な、何のことでしょうか。あっ、そうですわ。今日私の家から私のお気に入りのお茶が届きましたの。ご一緒に大人な穏やかな一時を過ごしませんこと?」

「いや、それはいいけど」


笑顔で一夏を自分の部屋へ招待し、二人だけの時間を作ろうと上手く話を進めていく。

俺はというとこの話に割ってはいることもできずただ呆然と2人の進んでいく会話を聞いているだけ。

なんだこのギャルゲ展開。

男の下ネタ方向な話からなんでこうなっていくんだ。


「慶斗もいくか?」


突然こちらを見て俺にまで話題を振ってくる。

おい、なんでそこで俺を誘う。お前はそこまで鈍感なのか。

見ろよこの野朗。オルコットさんが「え? 何でそこで誘うの!?」 的な顔で驚いてるだろ。


「俺は結構です」


女子とそんな素敵タイムを過ごしたいと思うけどお邪魔虫にはなりたくない。

両手を挙げて首を横に振ってお断りとジェスチャー。

オルコットさんも俺が断ったのでホッと安心している。


「それではさっそく私の部屋へ参りましょう」


一夏を引っ張って自然な流れで腕を組んで教室の出口へ歩き出そうとする。

ふむ、中々やるなオルコットさん。


「さあ参りましょう」

「ま、待てよ。今日の特訓どうすんだよ」

「たまには休息も必要ですわ。一夏さんはここのところずっと休みなしでしたし。それとも私と一緒にゆっくりとした時間を過ごすのは嫌だったりしますの……」


先ほどまで引っ張るように組んでいた腕をやや緩め、潤んだ瞳で悲しそうに声を小さくする。

その仕草はまさにか弱き乙女だった。


「え? そんなことはないけど……」

「……本当ですの?」

「ああ。でも一応箒に今日は休んでいいかって聞かないと」


ここでホーキの名前が出たせいでムッとなるオルコットさん。

さきほどのか弱き乙女の表情は一変。恋する乙女の嫉妬の表情に変わる。


「ホーキには俺が伝えとくからそのまま行って来れば?」


ここは助け舟を出しておこう。

ここぞと一瞬で表情が花が咲いたかのように明るくして綺麗な笑顔で再び強く腕を組むオルコットさん。


「ということですので参りましょう一夏さん」

「はあ……わかったよ。じゃあ頼んだ」

「任された」


そのまま教室から出て行く2人。

教室の出口からオルコットさんが感謝の意味を込めてかウインクをしてくれたので手を振って見送った。

命短し恋せよ乙女。

うんうん。よきかなよきかな。青春だ。


「そして俺の青春は……いつだろ」


くそーオルコットさんのさっきの仕草は反則だよな。

あんな風に腕まで組んで一夏め。羨ましいじゃないか。

その後、俺も荷物を纏めてから教室を出てアリーナへと向かった。

更衣室でISスーツに着替えて既に特訓の準備万端なホーキを見つけると出会い頭にこう言った。


「ホーキももっと男心をくすぐる萌え要素を身に付けたほうがいいと思うぞ」


とりあえず神速の抜刀術を喰らってアリーナの端から端まで吹っ飛ばされた。

ツンもいいけどデレもないと不味いと思うんだけど……ガク。
























「それじゃあ準備はいい?」

「首が痛い」

「もう1度飛ぶか?」

「次するなら全力で抵抗するからな」


シャルルもあの後合流して3人で特訓する流れとなった。

そういえば凰さんがいないが……まあいいか。

ギャルゲーとかだと一夏に起きたイベントを考えると途中で乱入とかありそうだなあ。

そして結局二人に鈍感過ぎだと怒られるんだ。

まあとにかく今は自分のことだ。特訓集中しねえと。


「特訓てことだけどまず何をすればいいかな」

「慶斗はまだうまく動かせないと思うから動作の訓練からしようか」

「ういっす」


まずは歩くことから始めようということでゆっくりとアリーナを一周することになった。

しかし思うのがどうも歩くとか走るといった行動には向いていない形をしているよな。

装備したときに操縦者はやや足を開くのでガニ股で歩くようなことになってしまう。

基本的に飛ぶことで行動可能にしているから仕方ないか。

広いアリーナをぎこちない動きながらも無事一周してシャルルとホーキのところに戻る。


「ただいま」

「おかえり。どんな感じ?」

「なんか歩きづらいってのが感想。なんかうまく動く方法ある?」

「こうやってズガガ! といった感じで進むと進みやすいぞ」


そう言ってホーキが歩くというよりも滑るように移動する。

適当にその辺りを移動して再び戻ってくる。


「ズガガって歩くのか?」

「そうだ」


ズガガ!とイメージして実際に動かしてみる。

しかし何故かタップをするようにただ高速で足が上下に動く。

全然違う動きになってしまった。


「違う。もっと前にシュバ!っとだな」

「シュバっと!」


今度は前に進んだのは進んだが斜め前の飛んでしまった。

シュバ! というよりシュワッチ! という感じになってしまった。


「真面目にやっているのか!」

「やってるわ!? てか難しいな操縦!?」

「えーっと……あはは……これってなんてコント?」


シャルルが俺とホーキの指導のやり取りに苦笑する。


「えーっと、基本はイメージと体重移動。それに慣れてくれば自分の体だと思って動かしてみて。そうすればもっと地面を滑るような感じで進むから」


シャルルのアドバイスの方が具体的で実行はしやすそうな感じだった。

さっそくもらったアドバイスを実行することにする。

体重移動か……前に重心を持っていってと。

ズデンとそのまま前のめりに倒れてしまった。


「「 …… 」」


無言になる2人。

少し恥ずかしがりながら起き上がる俺。

微妙な空気がこの場に生まれてしまった。


「慶斗」

「……なんだ」


静かにいつもの厳しい目を俺に向けて決定的な事実を口にするホーキ。


「センスがないな」

「ぐはあ!?」


ズバっと言われてしまい胸を撃たれた仕草をする。

しゃーないじゃん! わかんねえよ! シャルルの説明も具体的に言ってくれたけどよくわかんねえよ!


「えーっと、なんて言えばいいのかな……」

「いいんだ……フォローはしなくていい」

「う、うん……」


申し訳ないと言った感じでシャルルが口を閉じる。

今は何か言われるよりもとりあえず無言でいてくれるのが一番助かる。

もうこれはとにかく普通に動くことに慣れるしかないよな。


「飛んだりはできるよね?」

「ある程度ゆっくりでならな」


とてもじゃないがテレビで見るような選手みたいには自由には飛べない。

というか地表での移動に関してもここまで下手だとは……動作テストのときはうまく動かすことは考えないで浮いたり飛んだりだったからな。

細かい動作はできてない。


「ちょい自分で適当に動かして感覚掴むことにする。教えてもらうのはその後でもいいか?」


教えてもらうならある程度自由に飛んで動けるようになってからだな。


「まったく……何故先ほどの説明でわからん」

「ズガガなんて言ったら高速で足を動かす感じだろ」

「違う! 勢いよく前に進んでいくイメージだろう!」

「はあ!? それはビューンかギューンだろ!?」

「そんなわけあるか!」

「そういえば昔お前に剣道を教えてくれとスリ足を習ったときも似た様なこと言ったな!?」

「そのときもお前は結局できなくて剣道はやらなかったのだな! 頭の悪いやつめ!」

「他にやりたいスポーツあったんだからいいだろうが! なんだぞススス!ってスリ足っていうならス~って感じだろ!」

「だから違うといっているだろう!」


お互いに自分の感覚やイメージの違いについて熱く論じ合う。

まったく、なんでこいつはわからないんだ。


「……二人ってほんとに従姉なんだね。今日初めて似てるって思えたよ」


シャルルの突然の意味不明の発言に俺とホーキはお互いを見合ってそれか同時にシャルルに向き直る。


「そんなわけないだろう」

「そもそもどこが似てるんだよ。顔も性格もそこまで似てないぞ」

「はあ……僕射撃訓練してきていいかな?」


なんか疲れたように大きくため息を吐くシャルルだった。

一体なんなんだ失礼なやつめ。

俺とホーキが似てるって? ……似るなら顔がよかったなあ。

そうすれば俺もモテそうだし。

いろいろグダグダしたが、相談しあって結局3人バラバラで特訓する形となった。

ホーキは打鉄の剣で素振りなど剣道の練習のように接近戦の特訓。

シャルルはアリーナの機能を使って空間パネルに表示された的を使って射撃訓練。

俺はとにかくアリーナの中を歩く、跳ねる、飛ぶなどして自由に動けるようになる訓練をする。

各々好きなように特訓しているといつの間にやらもう5時半を過ぎていた。


『私はそろそろ戻る』


ホーキとチャンネルが繋がり小さな画面が目の前に現れる。

授業で聞いたISについている専用チャンネルってやつか、便利だな。


『僕もそろそろ上がるかな』


どうやらシャルルも上がるようだ。

俺はどうするか。

このまま戻っても休んでしばらくしたらまたリビドーが滾ってくる可能性があるな。

疲れきるまで特訓してそんな気力も湧かないようにしようかな。


「俺はもう少し動き回ってる。先に上がってくれていいぞ」


あんまり無理はし過ぎるなよと言って二人ともISを解除してアリーナから出て行く。

さて、もう少し頑張りますか。

今は5時半……飯は少し遅くなるかもな。

あれ? そういえば食堂って何時までやっているんだ? 戻って閉まってたら飯抜きになるぞ。

仕方がない。さっき戻ったばっかだけどシャルルを追いかけて聞いてくるか。

一旦ISを解除し追いかけるようにして更衣室に戻っていく。

しかしいざ男子更衣室に戻るがロッカーにはシャルルの姿はなかった。

もう戻ってしまったのだろうか?

それともシャワー浴びているのか? シャワー室から水音も聞こえるし。


「シャルルーいるかー」


水音が聞こえるシャワー室の方の扉を開ける。

部屋の壁の両サイドには個室になるよう見えないようにできたガラスが貼られており、その一部屋から影だけが見えた。


「け、慶斗!? 何で戻ってきてるの!?」

「あ、やっぱシャワー浴びてたか」


何故だかものすごく焦った様子のシャルルの声がシャワー室に響く。

少し疑問に思ったのだが、何故焦るんだ? それにいつもよりやや声が高くなかったか?

元々女のような声なのに今の驚きの声は本当に女に聞こえてしまう。


「あー、実は食堂の閉まる時間まで特訓しようかなって思ったんだけど閉まる時間何時?」

「く、9時までならやってるよ! それより早く出て行って!」

「ほいほい。了解」


恥ずかしがり屋というかなんというか。

気にしすぎだとは思うけどまあフランスだと気にすることなのかもしれないのだから素早く退散しよう。

シャワー室の扉を閉めロッカーの方に戻る。

アリーナに戻る前に軽く水分だけ補給しておこうと自分の荷物のあるロッカーを開く。


「ん?」


スポーツドリンクを飲んでいると列になっているロッカーが1つ少しだけ空いているのが見えた。

シャルルの棚かなと思い閉めようと近づくと何かを踏んだような感覚が足元から感じる。

何かと思い足元を見ると何かが落ちておりそれを拾い上げる・


「……女物の下着?」


そう。それは白のパンツだった。

ワンポイントのリボンがついており、一瞬ブリーフかと思ったが装飾のリボンによりその可能性が消えた。


「なんでこんなとこに女物の下着がある!?」


え? え? マジでなんで?

落ち着こう。状況整理だ。

俺は更衣室にいる。

そしてここは男子の更衣室だ。

シャワー室にはシャルルがいる。

そして俺の手には女物のパンツ。

ここは99%以上が女子の学園。

シャルルは多分だがモテる女顔の男だ。

そ、そうか! 謎はすべて解けた!

シャルルが今シャワー室に誰か女子を連れ込んでいるんだ!

だからさっき俺が突然シャワー室に行ったら驚いてすぐに出て行けって言ったんだな!?

ここに下着があるってことはすでに本番中か!?

アンアンしてるのか! そーなのか!?


「はっ……はは……速攻退避!」


そのまま自分のロッカー内の荷物を抱えて部屋へと猛ダッシュする。

くっ……壁の向こうでなんて羨ましいことが起きているんだ。

俺だって……彼女欲しいぞ!

廊下を走る俺の涙がさまざまな葛藤や嫉妬を表していたのであった。












「ふう……気持ちよかった……慶斗がいきなり来てビックリしちゃった……あれ? 僕のパンツがない……」













     あとがき


やってしまった。下ネタ回をやってしまった。

ですが後悔はありません!(ぁ

ふと疑問に思ったことで一夏は原作で若さゆえの衝動をどう抑えているんですかねえ。

やはり千冬姉のお世話をしていたというのだからもはや同じ年頃の女子では動じないというかムラムラはこないのですかね。

それとも裏では……

ごほん、失礼しました。

まあとりあえず複雑な年頃ということもありましてこんな感じで下ネタも混ざっていくかもです。

これ以上は多分はないでしょうが。

シャルルの裸シーンを期待した方。

それは一夏の特権ですのでご了承ください(ぁ



[26156] 【習作】IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~ 第4話 ヤってんじゃねえ男装なんだよ
Name: kei◆6ab4c12a ID:f779f124
Date: 2011/03/11 00:49
今俺はものすごい人生の岐路に立たされているのではないだろうか。

ベッドの上で腕を組みつつあぐらをかいている俺の目の前には白のパンツが1つ。しかもリボンがワンポイントでついている女物だ。

つい先ほどまで俺はアリーナの男子更衣室にいたはずなのだがどうもシャルルと誰かは知らないが女子生徒が事情中だったようで慌てて戻ってきたのだ。

いや、目撃したわけではない。目撃したわけではないのだが、これがシャルルのロッカーの足元に落ちていたのだ。

今になると下着ドロという可能性もあったのだが、現状を考えるとそれは俺だ。

女物のパンツを見つけて事情があったとはいえそれを自室へ持ち帰るとか。

ヤバイ。ヤバスギル。

オレハハンザイシャジャアリマセン。

一体これからこれをどうするべきなのか。

パンツを目の前にして頭を抱え、悶え苦しむ男子高校生というシュールな光景が広がる。


「なんなんだこの展開は! あれか! シャルルが俺にオカズにでもしろという意味でおいて置いたのか!?」








                     IS~とりあえずもう1人男キャラを突っ込んでみた~

                       
                         第4話 ヤってんじゃねえ男装なんだよ








                           




そんなわけねえだろバカ野郎と自己嫌悪。

とにかく俺が選べる選択肢は数少ない。



1.このパンツをオカズにするために黙っておく

2.証拠隠滅今すぐ廃棄

3.正直に事情を話してシャルルに渡しておく




まず1だが……いや、いかん。それはイカン。

人としていろいろ越えてはいけない一線だ。

そりゃ確かにこのアイテムはその方面に持って行ったらものすごくマニアックだがハッスルにはなるだろう。

どうもこの下着の持ち主は汗をかいていたようで俺が持ち帰ってしまったことに気づいたときはまだ生暖かく湿っていたのだ。

もの凄く生々しかった。

一応俺の尊厳を保つために言っておくが臭いは嗅いでないからな。本当だからな。危なかったけど。

とにかく1は却下だ。

2は……事なかれ主義。黙っていればわからない。

最もベストではないだろうか。

いや、だがもしこの持ち主がなくなったと騒いだらどうなるだろうか。

なくした場所時間。しかもなくなったブツ。

これを考えると容疑者は男子だけのたった3人。

駄目だ。もし騒がれたらアッサリとバレてしまう。

コレを燃やしたとしてもきっと疑念というものは女子からは消えはしない。

騒ぎになった場合最も厄介なことになる可能性が大だ。

3は……恐らく恥はかくことになるが最も穏便に静かに解決できるかもしれない。

童貞乙w となる可能性もあるが……あのシャルルがそんなことを言うとは思えない。

相手の女子は俺への苦情を持つかもしれないがそこは何とか拝みこんでシャルルに口外しないように頼んでもらえばいいのではないだろうか。

つうかこれしかねえよな。

とりあえずこのままパンツを素で渡すのもあれだし袋か何かに入れておこう。

そう思いパンツを手に持ちベッドから立ち上がる。


「ただいま~」

「あっ……」

「え?」


立ち上がったの同時にシャルルが部屋に戻ってきてしまった。

俺の手には白い女物のパンツ。

シャルルの視線は俺の手に。

俺の人生終わった。























****************************************





シャルル・デュノア、いやシャルロット・デュノアは戸惑っていた。

家の命令により男装をさせらて男としてIS学園に入学させられ、戸惑いながらもなんとかやっていけると思っていた。

特に仲良くなった同室の男子の2人。

騙している罪悪感があったが思った以上に自分によくしてくれ、友達と言える関係になれたと思っていた。

そんな矢先、つい先ほど更衣室で失くしてしまった自分の下着をその友人の1人が持っていた。

これはシャルロットにとって最悪の事態だった。

慶斗の手に握られた自分の下着を見て顔に熱が篭るのを感じる。

あまりの恥ずかしさに叫びたくなってしまうがそれをなんとか押さえ自分の状況を振り返る。

男子生徒だと言っていたはずの自分のロッカーにあったのは女性物の下着でしかもその場からなくなっていた。

まさかと思い更衣室をくまなく探したが見つからなかった。

誰かが……可能性としては慶斗が持って行った可能性が最も高いと考えたがそれは自分の正体がバレるのと同義である。

祈りながら、慶斗が持って行っていないことを祈りながら部屋へ戻ってきた。

不安になる気持ちを支えながらも自分の目に映る部屋の光景はいつものように少しだらしない慶斗のだらけた姿だと信じていた。

だが現実は違った。





実際に目に映ったのは自分の脱いだばかりの下着を握っている光景だったのだ。





そしてそれを見られ焦っている慶斗。


(ああ……僕の正体バレちゃったんだなあ……)


一気に冷めていく自分の気持ち。

なんという形でバレてしまったのだろう。

裸などを見られることで正体がバレることを最も恐れていたのにこんな変態チックな形でバレてしまっては乙女の心はズタズタだ。

泣くこともできず笑うこともできない。


「えーっと、あーっと」


シャルロットの下着とシャルロットの顔を交互に見て慌てふためいている慶斗。

何かを喋ろうとしているが何を喋ればいいかわからず言葉にできてないようだ。


「その……少し話しようか……」


全てを正直に話そう。

許してもらえるなんて思っていない。だがこんな自分のことを知っておいて欲しい。

この学園にもういられないのは確実なのだから。

そう思い部屋の中へ入り自分のベッドに腰をかけ、慶斗にも座るように促す。

何故か慶斗は正座で自分の前に座り込み真っ青な顔をしている。

だがそんなことはどうでもいい。自分のことを今は正直に話してしまおう。

そうしてシャルロットは自分の過去を話し始めた。








*********************************************






シャルルに見られてしまった。

最初の予定では袋にいれて渡して申し訳なかった。この持ち主には騒ぎにしないで欲しいと言ってくれと土下座してでも頼み込むつもりだった。

それが最悪のタイミングで帰ってきてしまった。

どう説明して自分の身の潔白を証明しようか、いや潔白とはいえないかもだけどとにかく事情をわかってもらわねば。

そう思って言葉にしようとするけど言葉にできない。

ああ! どういえばいいんだ!


「その……少し話しようか……」


すべてを諦めたかのような悲しい表情でそう言ってシャルルは自身のベッドに腰掛けた。

しかしその表情は今の俺には蔑みを込めた表情にしか感じられない。

ああ、これはきっと何て説明をしても許してくれないのだろうな。

覚悟を決めるしかないとベッドに腰掛けるシャルルの前に正座をする。

非は俺にある。責めるなら責めてくれ変態と罵るなら罵ってくれ。


「どこから話をしようかな……あのね僕の実家はISの会社だっていうのは知ってるよね」


ゆっくりと穏やかな声で話を始めるシャルル。

たしかにシャルルの実家がでかい会社だというのは知っている。

IS関連の開発でシェアが世界で3位になるほどの大企業だ。

まさか俺を社会的に抹殺するのか!?


「僕は実家の……お父さんの本妻の子じゃなくてね……」


え? あれ? はい? 何言ってるの?

ていうかすげえ重い話じゃないか? それが今回の下着の件とどう関係するんだ?

と、とにかく俺は無言でいよう。説教を受けるにしても責められて変態として晒されるにしても俺は文句を言えない立場なんだ。

場所をわきまえて行為に及んで欲しかったと思う部分も多々あるけど。


「別々に暮らしてたんだけどお母さんが死んじゃってある日突然迎えが着たんだ」


シャルルの話は続いていく。

そうか、母親が亡くなっていたのか。最近のことなのかはわからないけど辛かっただろうな。

これから性犯罪者の母親として扱われてしまうであろう我が母を思い出し、申し訳なくも思いつつ話を聞き続ける。


「そこでいろいろあってIS適性が高いことがわかってね。で、非公式であったけどテストパイロットになることになったんだけどね」


どんどん悲しそうな顔になっていくシャルル。声も少しずつだが震えているように感じる。

何故か俺の思っている雰囲気と感じる雰囲気がまったく噛み合っていない気がする。


「ぐっす……それで……それでね……」


ついにその目から涙が零れ、制服の両手の袖を伸ばして自分の涙をぬぐいながらも話を続けようとするシャルル。

ただでさえ女のような顔なのにその仕草と泣いている声はまさに女そのものだ。

一体何がどうなっている!? どうなってこんな状況になってしまったんだ!?

何故泣くんだ!? 誰かこの状況を説明してくれ!


「シャルル、と、とにかく泣くのはやめてくれ。というか男なら我慢だ! 日本じゃ男が泣いていいのは肉親が死んだときだけって決まってるんだ!」

「ぐっす……そんなの関係ないよ……ひっぐ、僕、男じゃないもん」

「そりゃ俺がお前の彼女の下着を持ち出してしまって悲しいのかもしれないけど辛い過去まで遡って悲しまなく……て……も?」

「……え? 僕の彼女の下着?」


俺とシャルルの間に無言の空間が生まれる。

お互いに今先ほど言った言葉の意味をよく考えている。

シャルルは今なんと言った? 「僕男じゃないもん」 って言ったよな?

男じゃない? 男じゃない……じゃあ何だ?

男の性別意外に存在する性別とはなんだ? えーっと女と女とそれと女だよな。

うん、女と女と女だ。


「えーっと僕の彼女……彼女……その下着は僕の彼女の下着? え? え? えええええええええ!?」

「そうか、シャルルは男じゃなくて女だったのか。そうか。えええええええええええええええええ!?」


お互いに驚き叫び声が部屋に木霊する。


「待って! 話を整理させて! 慶斗は僕が女ってことがわかったんだよね!?」

「むしろお前が待て! え? 何? お前さっきまで更衣室で女子連れ込んでヤってたんじゃねえの!?」

「な、なんでそんな方向に話がいくのさ……」


シャルルの涙の押さえも利かなくなってしまう。

くしゃあとその綺麗な顔が歪んでもう完全に涙がとまらなくなってしまう。



「かぇして……」

「えっ?」

「ぼ、ぼくのパンツかえしてよぉ……ひっく……」

「えっ!? これお前のだったの!? てかマジですいません!」


あまりの驚きの展開に今の今まで気づかずに手に持ったままだったパンツを握ったままでシャルルを指差していた。

シャルルは震えた両手でそれを掴み、ゆっくり取り戻そうとする。

しかし両手を出して掴んだせいで前のめりの体勢になってしまいバランスを崩してそのまま前に倒れてしまう。


「きゃっ……」

「へ? うおっと」


倒れてきたときについ反射的によけてしまったために抑えるものも掴むものもなく、ズベっとベッドの上から床に落ちて床とキスをしてしまうシャルル。 


「……あぅう……うう……」


上半身だけが床につき、下半身はベッドの上に残ったままの体勢で顔を上げるシャルル。

顔を打った痛みを抑えるためになんとか泣き止もうとするが止まるどころかさらに流れてしまう。


「ご、ごめんつい避けちまった……大丈夫か?」

「……うん」


手を差し出すとその手をとって体を起こすために肩に手を乗せるシャルル。

ベッドに乗っていた下半身はそれに引っ張られてずるりと落ちて完全にベッドから降りる形になる。


「顔大丈夫か?」

「うん……ちょっと痛かったけど大丈夫」

「そっか……ってうおお!?」


いつの間にか知らないがシャルルの着ていた制服の上着の襟元が開いたせいでサポーターらしきものによって抑えられている胸元が少しだけだが見えてしまった。

あからさまに見えるのではなく、俺が上から下へ覗き込むような視点になってしまったせいで見えてしまう。

サポーターによって押さえ込まれた胸は膨らんでいないため大きいかどうかはわからない。

だが、微妙に見えた谷間からそれなりのものであることが推測される。


「……?」


俺の視線がどこにいっているのかわからずその視線の先を見ると顔をただでさえ泣いて赤くなった顔がもうこれ以上は無理だというほど赤くなる。


「ひゃうっ!? ……あっ!? だ、だめ!」


俺の視線の先に気づいてすぐに胸元を隠すが、今度は自分で握っているパンツが見えてしまったことに気づき慌てて腕ごと上半身で隠して半身になる。

しかしその途端突然背中に腕を回してあたふたし始める。


「どうした!?」

「コルセットがとれて……な、なんでもないよ!」


完全に背を向けて体を抱え込んでしまう。

だが一瞬だが見えた。

さきほどまで抑えられていた豊かな胸がその抑えがなくなったことで大きく自己主張をしたことを。

男子制服では隠し切れないはっきりとした女性特有のラインが浮き上がったのだ。



「う……うう……えっちだぁ……慶斗はえっちだぁ」

「待て! ひ、否定はできないけどそんな顔で言わないでくれ頼むから!」


体は後ろを向いたままだが顔だけをこちらに向ける。

頬を羞恥で赤く染め、下から恨みがましい上目遣いの涙目でそんな台詞を言われてしまったら罪悪感もだが男の性を擽られてしまうではないか。


「安心しろ! そんな布キレに興味はない! そ、そう! 俺の興味があるのは中身だ!」


見えてはいないがシャルルが持っているであろうパンツを指差して力説する。

何か混乱して口走ってしまったがこれでフォローになるはずだ!


「そ……そんなの?」


何か気に障ることを言ってしまったのかショックを受けるシャルル。

小動物のように泣いていた上にただでさえ縮こまっていた体がさらに縮こまってしまい、さらには何か暗い影を負ってしまう。



「そんなの布キレ……それってやっぱりぼくが女の子らしくないから? ぐっす……そうだよね……こんな証拠みてもぼくが……ぼくが男だって思われるんだもんね……」



小さな声で呟くと完全に体育座りの形にかわって顔をうずくめて泣いてしまう。

え!? 何か不味かったか!? 何か! 何かフォローをしなければ不味いんじゃないのか!?


「え!? あっ、いや! そうじゃなくてやっぱりちゃんとつけている状態がベストであってだな」

「……やっぱり慶斗はえっちだ……ううう……恥ずかしいよぉ」

「ああーー! 泣くなー! 泣かないでくれー!」



体育すわりのまま両手を胸にうずめ、そのまま身を小さくして泣きながら身を震わせるシャルル。

そしてもはや何を言っても逆にどん底に突き進んでいる俺。

乙女のプライドをを傷つけられかつ羞恥で震える男装女子と、もはや混乱して泥沼にハマり頭を抱えて苦しむ男の姿が展開される。

その両者が落ち着くのにこの後10分以上の時間がかかるのであった。














あとがき



シャルの正体がバレる回でした。

転校2日目で早すぎるかなと思いましたがアニメだとこの時期ですし、あんまりにも後にし過ぎると先に一夏が風呂を覗いちゃうのでこの時期にしました。

しかしシャルの魅力は半端じゃないですね。自分の力ではアニメでの魅力を出し切れません。

物凄い頑張ったつもりですが……シャル……本当にパネエ。

今回のシャルの部分は友人数名にも協力いただいてとにかくシャルのを魅力をできるだけ出そうとしてみました。

友人たちにも感謝しつつ掲載させていただきます。




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