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一つ上の階層にリンクします。原子力発電(2010.05.25)

電力の話」の中でも出てきたが、いくつかの発電方法の中でも何かと議論のある原子力発電の話をしてみよう。

そういえば、たまに事故とか抗議とかニュースなんかで見ますね。

そうなんじゃ。君たちにも考えてもらいたい問題でもあるのじゃが、何事も基礎が大事、ということで原子力発電の基本的な話をしてみようと思う。

 そもそも原子力は不幸にして原子爆弾という形で最初に、しかも日本に対して使用されたという残念な歴史があるのじゃが、第2次世界大戦後の1953年12月8日にアメリカのアイゼンハワー大統領が国連総会で行った「平和のための原子力(Atoms for Peace)」政策をきっかけに、原子力の発電用としての利用がはじまったのじゃ。今では世界の総発電電力量に占める原子力発電の割合は約16%となっておる(2006年12月末)。

前世紀の中頃から約60年の歴史があるのですね。

そうなんじゃ、原子力の平和利用の歴史も60年。前世紀か、もう21世紀なのじゃのう...(遠い目)。

博士、感傷に浸っている場合じゃないですよ!!

すまんすまん。歳を取ると、つい昔のことがのう。
 そこでじゃ、日本では、試験炉ではあるが1963年10月26日に茨城県東海村で発電に成功したのが最初じゃ。この日は、日本が国際原子力機関(IAEA)への加盟が認められた日でもあり、「原子力の日」とされておる。

 今では、日本の電力量の2割以上が原子力発電になっておる(2008年度)。


図1 日本の電源別発電電力量
使用データ:EDMC/エネルギー・経済統計要覧(2010年版)

発電の方法は、何か特別なの?

原子力発電は、燃料(ウランなど)の原子核が、中性子を吸収して核分裂を起す際に放出するエネルギーを利用する発電方法でのう、そのエネルギー(熱)で水を加熱し蒸気を発生させ、蒸気タービンを回して発電を行うのじゃ。

 ボイラで化石燃料を燃やし蒸気を発生させる火力発電とは、どちらも蒸気を使って発電するということではシステム的には同じじゃ。火力発電所のボイラが、原子炉に置き換わっていると考えると分かりやすいかのう。


図2 原子力発電と火力発電の比較

蒸気を使うという部分では意外と古臭いのですね。原子力発電にはいろいろなタイプがあると聞いたのですが。

そうなんじゃ。現在、日本で最も利用されている原子炉のタイプは、軽水炉(LWR)といわれておるタイプのもので、燃料としては低濃縮度の濃縮ウランを、減速材や冷却材として普通の水(軽水)を使うのじゃ。この軽水炉は、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の2種類に大別されるな。


図3 沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)のしくみ

他にはどんなのがあるのですか?

新しいタイプの原子炉として研究・提案されているのは「改良型軽水炉」「プルサーマル」「高温ガス炉」「高速増殖炉」、そして究極の原子炉といわれる「核融合炉」などがあるのう。

 特に「高速中性子を用いて、核分裂性物質を生産(増殖)する原子炉」という意味で、高速増殖炉(FBR)と名づけられたこの炉は、消費される核分裂性物質よりも、生成される核分裂物質の方が多いため、原子力エネルギー量を飛躍的に大きくするために考えられたものなんじゃ。

 日本でも実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」と完成させてきたが、「もんじゅ」で1995年12月8日に2次系ナトリウム漏えいが発生したため、今は原子炉が停止されておる。まだまだ実験段階じゃのう。

表1 高速増殖炉(FBR)と軽水炉(PWR)の比較
原子炉
分裂に関係する中性子
燃料
減速材
冷却材
転換比
軽水炉
(BWR,PWR)
熱中性子
(高速中性子に比べ速度が遅い)

ウラン235  3〜 5%
ウラン238 95〜97%

軽水
軽水
約0.6
高速増殖炉
(FBR)
高速中性子

核分裂性
プルトニウム 約16〜21%
劣化ウラン  約79〜84%
(ブランケット燃料は劣化ウランのみ)

ナトリウム
約1.2
*:転換比:燃料が燃焼したときに、新たに生まれる燃料の割合
(例えば、燃料が1だけ燃焼して、新たに2の燃料が出来たら転換比は2です)
(高速増殖炉は転換比が1より大きいので、燃焼した燃料より多くの燃料が生まれ(つまり増殖)ます。)

使った以上に新しく燃料が出来るなんて夢のようですね。

そうじゃのう、完成したら正に「夢の原子炉」じゃよ。「高速増殖炉」から出てくる使用済燃料の中のウランやプルトニウムを再利用しようということじゃのう。「プルサーマル」も同じく、使用済燃料の中のウランやプルトニウムを再利用しようというものじゃ。

 このような、使用済燃料の中のウランやプルトニウムを再利用しようというシステムが日本では採用されており、この循環する輪を「原子燃料サイクル」あるいは「核燃料サイクル」と呼んでおる。

 しかし、アメリカではこの「原子燃料サイクル」の方法を採用せず、使用済み燃料を再利用しないでそのまま処分する「ワンス・スルー方式」を採用しており、どちらの方法が良いのかというのが原子力発電に関する議論の1つとなっておる。


図4 原子燃料サイクル
出所:資源エネルギー庁パンフレット日本のエネルギー 2009

このサイクルの図にはサイクルになっていないところがありますよ。

ほう、良く気がつくのう。どんなものにも「ゴミ」は付き物じゃが、原子力発電には「放射性廃棄物」という「ゴミ」が出る。放射性廃棄物には、大きく分けて、原子力発電所の使用済ペーパータオルや作業服などの低レベル放射性廃棄物と、使用済燃料の再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物の2種類の「ゴミ」があるのじゃ。

 低レベル放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村の埋設センターで埋設処分されることになっておるが、高レベル放射性廃棄物は、最終的には地下数百メートルに処分(地層処分)することが基本方針となっているものの、現在処分候補地を公募中で、まだどこに処分するのか決まっておらんのじゃよ。

 この「放射性廃棄物」をどうするのかというのも、原子力発電に関する議論の1つとなっておるのう。


図5 放射性廃棄物の処分方法
出所:資源エネルギー庁パンフレット「日本のエネルギー 2008」

議論されるところが多い様ですが、良い所はないのですか?

勿論、良い所があるからこそ使われておるのじゃ。原子力発電の主な長所と言われておるのは、次の3点じゃ。

 原子力発電は、この様な長所があるが、上で説明した様な放射性廃棄物の問題や事故により外部へ放射線や放射性物質が漏れる可能性があるという課題がある。また、この長所自体を否定する意見もある。要はこのプラス面とマイナス面をどうみるかという問題じゃのう。

表2 原子力発電の主な特長
長所

供給安定性が良い

経済性が良い

二酸化炭素がほとんど出ない

課題

事故の可能性への懸念

放射性廃棄物の管理や処分

でも一番心配なのは事故ですよね。

当然、一番の不安の原因は事故のことじゃのう。万が一、旧ソ連のチェルノブイリの様な事故が起こればそれこそ一大事じゃ。そこで、安全対策が重要になってくるのじゃが、この安全対策を見てみようかのう。

 まず、日本で使われて軽水炉には、何かのはずみで出力が上昇しても自然にその上昇が抑えられるという固有の安全性(自己制御性)がある。
 次に、燃料中の放射性物質(ウランやプルトニウム)を何重にも囲み外部に出ないようにし、さらに「多重防護」という考え方で何段階もの安全システムがとられておる。

 もちろん、システムによる安全確保だけでなく、セーフティカルチャ(安全文化)、つまり原子力関係者の「安全を守ろうとする意識」も重要じゃのう。


図6 原子力発電の安全確保のしくみ
出所:原子力安全委員会パンフレット、白書等パンフレット 

次回は原子力発電と関係の深い「放射線と放射能」の話をしてみようかの。 


関連ページ:
日本の発電電力量
世界の発電電力量と発電構成比率
IAEA(国際原子力機関)
原子力発電のしくみ
軽水炉(沸騰水型と加圧水型)
新しい原子力発電技術
原子燃料サイクル
原子燃料サイクルの位置付け
再処理
プルサーマル
放射性廃棄物の処理・処分
世界の原子力発電の歴史
日本の原子力発電の歴史
世界の原子力発電の状況
原子力発電の特徴
原子力発電事故の評価尺度
チェルノブイリ発電所事故
原子力発電所の安全確保のしくみ
関連サイト:
資源エネルギー庁なるほど! 原子力AtoZ
(財)日本原子力文化振興財団あとみん原子力百科事典ATOMICA

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