経済

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東日本大震災:産業基盤、打撃重く トヨタ、全工場停止 粗鋼生産中断、影響拡大

 東日本大震災の被災地で、工場の操業停止が相次いでいる。設備の損傷に加え、電力供給なども滞っているためで、自動車、電機の新興生産拠点として力をつけてきた東北地方の打撃は大きい。さらに、トヨタ自動車は12日、国内全工場の操業を14日も中止することを決定。影響は全国に広がっている。

 ◇自動車

 「復旧時期はまったく分からない。人的被害がなかったことがせめてもの救い」。岩手県金ケ崎町の完成車工場が停電や設備破損のため生産停止に追い込まれた、トヨタ子会社の関東自動車工業の社員はこう語った。

 トヨタは90年代以降、リスク分散やコスト削減のため、東北地方での新たな生産拠点作りを進めてきた。子会社の関東自動車の岩手工場(金ケ崎町)が93年に完成したのに続き、今年1月にはセントラル自動車が宮城工場(宮城県大衡村)を稼働。この2工場で、トヨタの国内生産台数約320万台(10年実績)のうち、約13%に当たる約42万台の生産能力がある。部品メーカーも次々と進出し、東北地方は自動車関連工場が20カ所以上集まる「新興生産拠点」としての存在感を高めてきた。

 その拠点を大震災が直撃。セントラル自動車は海外向けヤリスセダン(日本名ベルタ)を、関東自動車は米国向けカローラなどを生産している。稼働停止が長びけば、トヨタの業績回復を支えている輸出への影響は避けられない。

 ハイブリッド車(HV)用電池を生産する子会社も宮城工場(宮城県大和町)の操業を停止しており、販売好調なプリウスなどHVの減産に発展する可能性がある。

 日産自動車とホンダも12日、部品調達が難しくなったとして、国内全工場の操業を14日まで停止することを決めた。【米川直己】

 ◇鉄鋼、電機

 鉄鋼業界では、JFEスチールの東日本製鉄所(千葉市、川崎市)と住友金属工業の鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)が粗鋼生産を見合わせている。業界関係者によると両製鉄所合計の粗鋼生産量の国内シェアは約15%。生産中断が長引けば鋼材を購入する自動車など、他産業に影響は波及する。

 電子機器業界では、ソニーがリチウムイオン電池やICカードなどを生産する宮城、福島両県の6工場の操業を中止。6工場はいずれも「部品系の主幹工場」(広報センター)で、復旧が遅れれば、パソコンなどの生産に影響しそう。一時1200人が取り残された宮城県多賀城市の工場は、1階への浸水が引かないため、約400人が12日夜も工場内で避難を続ける見通しだ。

 電子部品大手のTDKは、秋田、山形、岩手、茨城の4県13工場が停電のため、生産を停止。建物、設備に大きな被害はないが、点検に時間がかかるとみられ、復旧の見通しは立っていない。これらの工場では、パソコンや多機能携帯端末をはじめとした電子機器全般に使われる部品を生産しており、米アップルや韓国サムスン電子など世界の完成品メーカーへの影響が懸念される。【弘田恭子、浜中慎哉】

 ◇日本経済に暗雲

 被害は東北地方にとどまらない。鶏卵を割って中身を取り出した、パンなどの原料「液卵」で、国内シェア2位のイフジ産業(福岡県粕屋町)は、停電と断水のため、同社生産の4割を占める水戸市の工場の操業を停止した。全国の製パン会社などの原料調達が滞る可能性がある。東日本大震災の経済的な影響について、野村証券金融経済研究所の木内登英経済調査部長は「輸出の停滞などで、景気を短期的に押し下げ、政府・日銀の踊り場脱却シナリオが変更を迫られることもありうる」とみる。【田所柳子】

毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊

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