福島のニュース
非常用機器、作動せず 国・事業者、後手に 原発爆発
12日、東京電力福島第1原発1号機が爆発し、作業員らが負傷した。国内初の「炉心溶融」の制御に苦慮していたさなかの惨事。55基の原発が立地する日本が大地震に襲われたとき、適切な対応が取られたのか、疑問も残る。
マグニチュード(M)8.8の東日本大震災。だが原子力施設を崩壊させた直接のきっかけは、揺れそのものではなかった。地震で外部からの電源が断たれた際に動きだすはずの、非常用ディーゼル発電機が機能しなかったのだ。 海水が命取り 原子炉は、緊急炉心冷却装置(ECCS)という「最後のとりで」に守られている。非常用発電機は、停電などの際にECCSに電力を供給する重要な役割を持つ。 福島第1原発は今回の地震で、運転中だった1〜3号機が自動停止。いったんは非常用発電機が動いたが、地震から約1時間後に全て故障してしまった。 強い衝撃にも耐え、最高基準の耐震安全性を誇る非常用発電機の故障。経済産業省原子力安全・保安院のある幹部は「万一の備えに、さらに備えた対策がうまく働かないなんて。原発の安全対策の常識が吹っ飛んでしまった」と絶句する。 東京電力の小森明生常務は「非常用電源は当初動いていたが、津波が敷地内に押し寄せ、やられてしまった」と明かす。海水にぬれたのが命取りになった。 1号機の格納容器内の圧力が異常値を示し始めたのは、11日深夜から12日未明にかけて。加えて原子炉内の水位低下がどんどん進行する。核燃料は水に浸されていれば制御しやすいが、むき出しになると過熱して危険な状態になる。今回起きた炉心溶融は、米国のスリーマイルアイランド原発事故とよく似た経過をたどった。 説明見当外れ 水位維持のために東電が原子炉内に流し込んだ水は2万リットルを超える。「これだけ水を入れたのに、水位が下がる。一番ありそうなのは、水位計が間違っていること」。記者会見に臨んだ保安院の山田知穂原子力発電安全審査課長は見当外れの説明を繰り返した。 東電は、格納容器の蒸気を配管を通じて外部に放出する方法(=ベント)を取った。微量の放射性物質が空気中にまかれてしまうのが欠点だが、リスクは比較的低く、こんな時に効果的とされる。だが東電はここでも手間取った。 1号機は古い設備で、ベントのために配管の弁二つを手動で開ける必要があった。だが既に現場の放射線量は上昇。作業員の被ばくを防ぐため、十分な作業時間が取れない事態に陥った。 放射線作業に従事する人の被ばく限度は、1年だと50ミリシーベルト、5年だと100ミリシーベルトを超えないのが望ましい。今回、東電は緊急事態として、特例的に上限を80ミリシーベルトに設定。しかし午前中の作業完了は午後にずれ込み、作業員1人が100ミリシーベルト以上の放射線を浴びてしまった。 枝野幸男官房長官は12日夜の記者会見で「(核燃料を封じ込める)原子炉格納容器の損傷は認められない」と爆発後も安全性が保たれていることを強調した。ただ傷ついた信頼は簡単には取り戻せそうにない。
2011年03月13日日曜日
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