気象・地震

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東日本大震災:福島第1原発炉心溶融 石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)の話

 ◇全原子炉停止、総点検を

 東日本大震災を引き起こしたマグニチュード8・8の地震で、福島県の東京電力福島第1原発が重大事故を起こした。

 外部電源が止まり、1、2号機の原子炉を冷やすための非常用発電機も4台すべてが故障して、原子力災害対策特別措置法による「原子力緊急事態」が11日夕方、菅直人首相から宣言された。

 1号機は運転歴40年の老朽炉だが、炉心溶融が生じて爆発、建屋が大きく壊れて放射能が環境に放出された。周辺住民が避難させられたが、一連の事態は絶対起こしてはいけないことだった。起こらないともされていた。2号機と福島第2原発にも深刻なトラブルがあるらしい。

 私は、地震による原発事故と通常の震災が複合する「原発震災」の恐れを97年から警告し、05年の衆議院予算委員会でも公述した。07年の新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)被災の後は、その危険がさらに明白になったことを強調してきたが、今回はまさに原発震災。最悪にならないことを祈るばかりだ。

 福島第1原発は、原子力安全・保安院と原子力安全委員会が最新の耐震設計指針に照らしても安全だと09年に評価したばかりである。今回の地震は想定外だというかもしれないが、全国の原発で地震を甘く見ているから想定外が増えるのだ。

 爆発に余震の揺れが絡んだような情報もあるが、私は余震の重大性を指針検討分科会で力説したのに無視された。原子力行政と、それを支える工学・地震学専門家の責任は重大だ。

 日本国民は、地震列島の海岸線に54基もの原子炉を林立させている愚を今こそ悟るべきである。3基が建設中だが、いずれも地震の危険が高い場所だから直ちに中止すべきだ。運転中の全原子炉もいったん停止して、総点検する必要がある。

毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊

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