東京電力は福島第1、第2原子力発電所の被災により、14日から地域ごとに順番に電力供給をストップする計画停電(輪番停電)を始めると発表した。他の電力会社からの電力供給量も限られ、生活に欠かせない電力不足は長引く可能性がある。原発の新規建設への警戒心が強まることも避けられず、官民そろって目指してきた「原発立国」に暗雲が垂れこめている。
東京電力は12日、都内の本社で記者会見し、週明けの月曜日から電力供給区域内で順番に供給を止める計画停電を実施する方針を明らかにした。企業のほか一般家庭も含む。13日の日曜日は実施しないが、週明け以降、電力需要が拡大し、供給力が足りなくなる見通しのため。計画停電は1951年の会社設立以来初めて。
会見で藤本孝副社長は14日の電力需給予測について「需要が4100万キロワットに対し、供給力は3100万キロワット程度で、1000万キロワットほど不足する」と述べた。計画停電を実施する期間や規模は未定だが、「少なくとも1週間ぐらい続くのではないか」とし、異常事態であることを認めた。「頼れるのは火力と(稼働中の)原子力だけ」だが、被災した福島第1、第2原発の稼働が見込めない。
2007年7月に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の全7基が停止した際、東電は一部の大口需要家向けに17年ぶりに送電抑制を実施した。あらかじめ「需給調整契約」を結んでいる大口需要家が対象で、化学や金属など一部の工場は生産ラインの停止を余儀なくされたが、送電抑制の規模は15万~20万キロワットだった。
一方、今回の計画停電は大口需要家だけでなく一般家庭も対象にしたもので、停電の規模も500万~1000万キロワット。07年に実施した大口需要家向け送電抑制に比べて対象顧客も規模も格段に大きい。
頼みの綱である電力融通は期待できない。電力会社は自社で足りない分を他の電力会社から買うこともあるが、東電と同じく周波数50ヘルツの電力は、大きな被害を受けた東北電力や遠隔地の北海道電力だけ。60ヘルツの中部電力から融通しても、周波数変換設備の能力から受電量は限られてしまう。
東電の福島第1、第2原発の設備容量は約910万キロワットで発電量では東電全体の約2割を占める。07年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発は再稼働まで1年10カ月を要した。炉心が溶融したとみられる今回の事故は柏崎刈羽原発の被災状況を大きく上回る。07年当時に電力供給を頼った東北電力の原発も被災しており、電力需給の逼迫は中越沖地震の時よりも深刻になりそうだ。
中長期でも電力各社の原発新増設計画に深刻な影響を与えるのは確実だ。東電をはじめとする電力各社は、低炭素化社会対応の切り札として原発の新増設を相次ぎ打ち出している。政府が昨年まとめた「エネルギー基本計画」に沿って、電力各社は30年までに14基の原発を新増設し、国内全体で発電量に占める原発比率を34%から70%に高める方針。
中部電力が同社唯一の原発である浜岡原発で6号機の新設を打ち出したほか、東電も福島第1原発で7、8号機の増設と青森県・東通原発の新設を計画している。しかし、今回の事故によって地元の強い反発が予想され、計画自体が宙に浮く可能性がある。
日本は世界的にも長年の運転実績をもとに原子力を軸にした低炭素化社会を目指すエネルギー政策を推進してきたが、根本から見直しを迫られそうだ。
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