第1回自動車損害賠償保障制度を考える会を開催

 

  繰入金の早期返済と積立金の一般会計移管反対で一致

    要望書取りまとめの意向

 第1回「自動車損害賠償保障制度(自賠制度)を考える会」(座長=福田弥夫・日本大学法学部教授)が8月18日、東京・港区芝公園の芝パークホテル会議室で開催され、国土交通省自動車交通局保障課の八木一夫課長より、懸案事項の自動車安全特別会計(旧自賠責特会)の積立金からの一般会計繰入などについて説明を受けた後質疑応答を行い、その後、考える会メンバーで意見交換をした。なお、本会は公開にて行われた。

 

 


1.「自賠制度を考える会」開催の経緯
 わが国における自動車損害賠償保障制度は、自動車ユーザーの保険料で、不幸にして交通事故の被害に遭われた方々を支えており、世界に誇れる制度である。しかし、保険料から交通事故の被害に遭われた方々のために積み立てた資金の大部分が一般会計に貸されており、未だに5,893億円が返済されないまま、返済期限である平成23年度を迎えようとしている。さらに、特別会計の見直しや埋蔵金探しが議論されており、この制度そのものも、それが特別会計だからという理由だけで、その存立さえ危惧されかねない状況にある。
 この制度は、自動車ユーザーが支払った保険料による、自動車ユーザー同士の支え合いの仕組みである。当考える会は、自動車損害賠償保障制度の今後に危機意識を持つ者が議論をし、意見表明を行うため、国交省の「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」の主要メンバーである福田弥夫・日本大学法学部教授、桑山雄次・全国遷延性意識障害者・家族の会代表、西原浩一郎・自動車総連会長、萩尾計二・日本自動車会議所保険委員長(日本通運取締役常務執行役員)、が呼びかけ人となって発足。日本自動車会議所が事務局を務めることになった。メンバーは一覧表の通り。

2.国交省自交局保障課の八木課長の説明骨子
 @自動車損害賠償保障制度は、自動車ユーザーの保険料で、損害賠償の保障、交通事故の被害者救済と自動車事故の防止を支える制度であり、自動車ドライバー同士の共助の精神による世界に冠たる制度である。自賠法制定時の昭和30年は損保会社の体力が弱かったため、徴収した保険料の6割を政府が再保険し、円滑な保険金支払い等の事業を実施してきた。
 A自賠責保険は平成14年4月以降、政府再保険制度が廃止となり、当時の政府の累積運用益等(約2兆円)のうち、20分の9(約9,000億円)が政府の旧自賠責特会・自動車事故対策勘定に、20分の11(約1兆1,000億円)が保険料等充当交付金勘定(平成20年度廃止)に分けられた。
 B政府は一般会計の財政事情が厳しいため、平成6年及び平成7年に自動車事故対策勘定から一般会計に繰り入れ、現在、5,893億円(平成22年度末推計)もの繰入金があるが、平成22年度予算案でもその繰り戻し措置がとられていない。
 C上記繰入金については、国交相と財務相間で平成23年度末までに繰り戻すとの覚書が結ばれているが、国の財政が厳しいため返済されていない。引き続き財務省に覚書の約束通りの繰り戻しを働きかけていきたい。
 D行政刷新会議が平成22年10月より特会見直しに着手、徹底した無駄削減の一環として、事業仕分け第3弾となる特別会計にメスを入れゼロベースで見直しを行うことになった。保険料をもとに運用している自動車安全特別会計も俎上に載ることになる。

3.主な発言
 国交省説明後、出席メンバーからの主な発言は以下の通り。
○福田座長
 「積立金は自動車ユーザーからの保険料として集めたお金で、税金は1円も投入されていない。このまま黙って見過ごすわけにはいかない」
○萩尾日本自動車会議所評議員
 「一般会計繰り入れ分は約束通り早期に返すべき。積立金を埋蔵金であるかのように使うなどは言語道断だ」
○西原自動車総連会長
 「共助の精神で自動車ユーザーが納めたお金であり、早期に返すべき」
○田中JAF会長
 「2010年度の収支は赤字見込みで、料率の引き上げは必至だ。6,000億円が未解決のまま料率を引き上げるのでは納得できない」
○北原交通事故後遺障害家族の会代表
 「保険料を上げる前に6,000億円を返してもらうべき」
○藤川日本医師会常任理事
 「各団体連名で財務省と国交省に胸を張って申し入れるべき」
○赤塚前立教大学教授
 「一般会計繰入や積立金が狙われていることなど、国民や自動車ユーザーの大半は知らない。国民や自動車ユーザーに広く知らせてほしい」
○東川日本脳外傷友の会理事長
 「返してもらうのは当然だが、どうやって返してもらうのか手立てはあるのか」
○八木国交省保障課長
 「財務省に対し、例年以上に強く要請したい」

 以上、活発な意見交換を行い、自動車関係団体及び被害者団体は、繰入金の早期返済と積立金の一般会計移管反対を盛り込んだ要望書を議決することで一致。最後に福田座長から今後の進め方として、第2回自賠制度を考える会を9月15日に開催し、要望書の決定と提出先や要望方法を議論することが提案され、全員一致で決定した。

  「自賠制度を考える会」メンバー一覧