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第八話 遊撃士試験!
<ロレントの街 遊撃士協会ロレント支部>

シンジとアスカがエヴァンゲリオンごと使徒の作り出した異次元に飲み込まれて異世界であるリベール王国にやって来てから2年後。
アスカが16歳になった日にエステル、ヨシュア、アスカ、シンジの4人は準遊撃士になるための試験を受ける事になった。
試験官を務めるのは1年前から遊撃士協会で4人を指導している遊撃士、シェラザード。
シェラザードはカシウスの指導を受けて準遊撃士になり、1年半前に遊撃士となり、昔からのエステルの姉代わりであり、4人の先輩に当たる。
大酒飲みで陽気にシンジとアスカをからかうような所は2人にミサトを思い出させた。
しかし、シンジとアスカはシェラザードを嫌う事は無かった。
シンジとアスカはシェラザードを姉として慕うようになっていった。

「うーん、このカードは……良く分からないわね」

エステル達がやって来た時、シェラザードは神妙な顔でタロット占いをしていた。

「シェラ姉、おっはー!」
「おはよ、シェラ姉」
「おはようございます」
「……おはよう……ございます」

エステルとアスカ、ヨシュアとシンジがあいさつをしながら階段を登って部屋へと入って来た。
シェラザードは対照的な4人の様子に苦笑する。

「エステルとアスカは凄い張り切りようね」
「あったりまえじゃん、あたしはずっと遊撃士になりたかったんだから!」
「早く遊撃士になりたくてウズウズして、16歳になるのが待ち遠しかったわよ」

シェラザードに言われて、エステルとアスカは元気いっぱいにそう答えた。

「ヨシュアとシンジは何か落ち着いた……って言うか、疲れた表情になっているわね」
「ええ、エステルがやっとここまでこれたと安心しているんです」
「僕は今日は最終試験だって思うと緊張しちゃって……」

オドオドと答えたシンジの背中を、アスカが思いっきり叩く。

「ほら、シャキッとしなさいよ!」
「うわっ、何するんだよ」
「情けないシンジに気合を注入してやってるのよ」
「そうだよシンジ、気合が無ければ出来るものも出来なくなるわよ!」
「エステルは気合だけは有り余っているんだから」

ヨシュアはそう言ってため息をついた。

「さあ、それじゃあ始めるわよ。4人とも、席に着きなさい」

シェラザードの言葉を聞いたエステルは顔を青ざめる。

「ええっ、試験ってペーパーテストなの!?」
「違うわよ、とりあえず今までの授業のまとめをするのよ」
「じゃあ試験はペーパーテストじゃないの?」
「ええ、実技試験をしてもらうわ」

シェラザードがそう言うと、エステルは両手を合わせて祈るようなポーズでつぶやく。

「ああ女神エイドス様、実技試験にして下さって感謝致します」
「あのねえ、試験の内容を決めるのは私なんだけど。筆記試験の方が良かった?」
「アタシはそっちの方でも構わないけど」
「アスカまでそんな事言わないで! お願いします、女神様、シェラ姉様~」

そんなエステルを見てヨシュアがこっそりシェラザードに耳打ちする。

「エステルのためにわざわざ骨を折って頂いてすいません」
「遊撃士は実戦力が大事ってことで、カシウス先生にも頼み込んで何とか実技試験だけの最終試験にこぎつけたわよ」

シェラザードの苦労を知ってか知らずか、エステルは椅子に座りながら元気良く飛び跳ねる。

「さあ、早く試験をやっちゃおうよ!」
「だから、その前に今までの講義のまとめがあるんだって」

ヨシュアはあきれたようにため息を吐き出した。

「今日は居眠りなんかせずにしっかり聞くのよ」
「うい~っす」
「返事だけは良いんだから」

エステルは興奮していて、今日だけは居眠りをする気配が感じられなかった。
シェラザードは苦笑しながら授業を始めた。
授業内容は100年の間のリベール王国の歴史年表をおさらいし、導力革命、百年戦争、遊撃士教会の成り立ちの基本的な事を抑えるものだった。

「アスカ、導力革命が起こったのは?」
「七耀暦 1150年です」
「そう、今からちょうど50年ぐらい前の事ね」

堂々と質問に答えるアスカに、シェラザードも安心した微笑みを浮かべた。

「エステル、民間人に対する保護義務は協会規約の第何項?」
「第1項!」

エステルが自信満々に答えると、シェラザードを含めて部屋の中に居たシンジ、アスカ、ヨシュアは深いため息をついた。

「第1項は遊撃士の基本理念でしょう。何度言ったら覚えてくれるのかしら」
「正解は第2項だよ」
「まったく、基本3原則すら覚えてないなんて」
「規約を知らない遊撃士として信用されないよ」
「えっ、だって大切な事なんだから第1項に決まってるって普通はそう思うじゃない、そんなのフェイントよ、引っかけよ!」

顔をふくれさせてエステルはそう言い返した。

「でもシェラさん、エステルはスニーカーの銘柄はきちんと覚えられるんですから、やる気があればきっとできるはずです」
「はぁ、それに期待するしかないわね」

ヨシュアの言葉にシェラザードは妥協したのだった。
その後も授業は続き、エステルは早く終わって欲しいと願っていた。
しかし、シンジは授業を聞きながら終わって欲しくないと思っていた。

「実技試験って何をやるんだろう……やっぱり魔獣と戦わなくちゃいけないのかな……」
「シンジも覚悟しなさいよ。どうせ試験じゃ無くても遊撃士になったんだから、魔獣と戦わなくちゃならないのよ」

青い顔でつぶやいたシンジをアスカはそう言って元気づけた。
エヴァで射撃の練習をした経験のあるシンジは拳銃、アスカはシェラザードに師事して鞭を武器に選んだ。
シンジはまだ自分の銃の腕に自信が持てなかった。
加えて接近戦に持ち込まれたらどうしようかと不安になっていたのだった。
そして、授業が終わったエステル達は戦術オーブメントの使い方を学ぶためにロレントの街のオーブメント工房、《メルダース》工房へと移動した。
戦術オーブメントとはそのスロットに七耀石セプチウムを加工したクオーツを組み込んで、攻撃・回復・補助などの術を発現させる戦闘用に携帯できるように改良された小型導力制御装置である。
分かりやすく言えば精神エネルギーではなく導力エネルギーを消費する魔法発生装置のようなものだった。

「話し合って、それぞれが得意とするオーブメントを決めなさい。ただし、回復はなるべく全員が出来るようにしなさい」

シェラザードはエステル達に戦術オーブメントのスロットに組み込むクオーツを選ぶように指導した。
クオーツには火・水・風・土の4属性と時・空・幻の3属性の計7属性が存在する。
先にあげた4属性は魔獣の弱点を突きやすい上に回復は水属性のクオーツでしか使えない。
水のクオーツを1個組み込めば、ティアと言う小回復できるアーツが使える。
シェラザードは水のクオーツを最低1個組み込む事と、火・水・風・土の属性を4人でそろえる事を勧めた。
エステルは火のクオーツを中心とした構成。
アスカは風のクオーツを中心とした構成。
ヨシュアは土のクオーツを中心とした構成。
シンジは水のクオーツを中心とした構成。
4人の戦術オーブメントが決まった所で、また遊撃士協会に戻る事になった。



<ロレントの街 地下水道>

遊撃士協会に戻ったエステル達は、シェラザードから遊撃士手帳を受け取り依頼についての記録の取り方や報告の仕方についての指導を受けた。
今日の試験の内容とは、シェラザードの出した依頼を達成する事だった。
シェラザードから出された依頼は、地下水路に隠された小箱を回収する事だった。
依頼内容を示す書類には小箱の特徴が詳しく書かれている。

「長丁場になるから、危なくなったら街に戻って来なさい。戦術オーブメントの急速回復はメルダース工房でしてもらうと良いわ」
「大丈夫よシェラ姉、小箱を回収して来るだけでしょう?」
「そうそう、そんなのちょちょいと終わらせて来るわよ」

エステルとアスカが余裕たっぷりの表情でそう言うと、シェラザードは顔をしかめる。

「地下水道には魔獣も住みついているの、油断しないで」
「はい、僕達が気を付けます」

シェラザードに見送られて、エステル達は七耀教会の裏手にある地下水道へのマンホールの梯子を降りて行く。
地下水道の中は導力ランプが灯っていて、真っ暗ではなさそうだった。

「シンジ、アタシが先に降りるからね」
「どうして、危険だよ」
「バカっ、アタシはスカートを履いているのよ!」
「あっ……」

シンジは顔を赤くしてアスカに先を譲った。
そんなシンジを見てシェラザードは愉快そうに笑い声を上げた。
地下水道は下水や魔獣達の生活臭などが漂い、居心地の良い場所では無かった。

「うっぷ、凄い臭いね」
「アスカ、この程度の臭いでへこたれていちゃ遊撃士になれないよ」
「うるさいわね、シンジのくせに」

余裕たっぷりのシンジの態度にアスカはそう言い返した。

「しっ、魔獣が居るみたいだよ」

ヨシュアがそう言うと、エステル達に緊張が走った。
魔獣に背後を取られると戦いは不利になる。
先にこちらから発見できたのは幸運だった。

「ネズミっ!?」

魔獣の姿を見てアスカは嫌そうな顔になった。
アスカはネズミが苦手なのだった。
しかし、相手が2匹だけだったのを見て、エステル達は勢い付いた。
エステルとヨシュア、アスカとシンジが組んであっという間に巨大ネズミとなった魔獣を退治した。

「よっしゃ、セピスをゲット!」
「この魔獣の骨は料理に使えそうだね」

エステルとヨシュアは悠々と魔獣の死体を解体していった。
セピスとはセプチウムの欠片で、集めてクオーツに加工される。
先ほどの魔獣も元はネズミだった生物がセピスを大量に飲み込むうちに魔進化を遂げた物だと推測されている。
アスカとシンジは、恐る恐ると言った感じで顔を少し青ざめながら魔獣の死体を解体し、セピスと骨を回収した。
この世界で生きて行くためには仕方の無い事だとは言え、まだ抵抗を覚えていたのだった。
ともあれ、初戦は無傷の勝利だった。

「さあ、この調子で奥まで進むわよ!」

拳を突き上げてやる気満々でそう宣言したアスカにエステルが声を掛ける。

「ねえ、ちょっと街に戻ろうよ」
「エステル、さっきの戦闘でどこか怪我でもしたの?」

ヨシュアが心配してエステルに尋ねた。
シンジも不安そうにエステルを見つめた。
すると、エステルは顔を赤くしながらモジモジしながら答える。

「朝ご飯を食べたきりだから、お腹が空いちゃって……お弁当も忘れちゃったし、お昼ご飯を食べに帰らない?」
「バカっ、何言っているのよ!」
「そうだよ、お昼ご飯を食べるために依頼を途中で中断する遊撃士なんて聞いた事無いよ」
「それぐらい我慢してよ……」

アスカとヨシュアとシンジに反対されたエステルは、少し落ち込んだ表情をしながら後をついて行くのだった。
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