福島県にある東京電力の福島第一原子力発電所では、敷地内の1号機の周辺で、ウラン燃料が核分裂して発生する「セシウム」や「ヨウ素」という放射性物質が検出されたことから、経済産業省の原子力安全・保安院は「1号機で炉心にある核燃料の一部が溶け出たとみている」と発表しました。
福島第一原発では、敷地内の1号機の周辺で、ウラン燃料が核分裂して発生する「セシウム」や「ヨウ素」という放射性物質を、東京電力などが検出しました。「セシウム」や「ヨウ素」は、核燃料棒の中のウラン燃料が核分裂して発生するもので、原子力安全・保安院は、「ウラン燃料が詰まっている『被覆管』と呼ばれる金属製の筒が溶けた可能性がある」と話しています。セシウムが原子力の事故やトラブルで、施設の周辺で発見されたのは、国内で初めてだということです。また「被覆管の中のウラン燃料は2700度から2800度まで温度が上がらないと溶けないので、1号機の温度はかなり高温になっているとみられる」と説明しました。さらに、1号機では原子炉を冷やすために水を注入し続けていますが、水の高さが下がっていて、核燃料棒を束ねた「燃料集合体」が、最大で1メートル70センチほど露出していると説明し、原子力安全・保安院は、「格納容器から水が漏れている可能性も否定できない」と話しています。一方で、住民の避難については、「漏れた量や、気象状況などからみて半径10キロという避難の範囲を広げる必要はない」と話しています。原子力が専門の東京大学の関村直人教授は「今回、原発の敷地内で観測された放射線は決して弱い値ではなく、このまま冷やせない状態が続くと放射性物質がさらに漏れ出す可能性は否定できない。しかし、ほとんどの核燃料は今も原子炉の中に納まっていて、原子炉はすでに停止している状況だ。住民には冷静な対応をお願いしたい」と話しています。