経済産業省原子力安全・保安院は12日、東京電力福島第1原発1号機の原子炉容器内の水位が下がり、燃料棒の一部が最大90センチ露出し損傷している可能性のあることを明らかにした。国内初の炉心溶融になる恐れもある。消防車が大量の水を供給している。また、同原発の正門で通常の8倍、1号機の中央制御室で同1000倍の放射線量を計測した。この地震で放射性物質漏えいが確認されたのは初めて。政府は健康に影響を与える数値ではないとしているが、念のため12日、同原発の半径3キロ以内としていた避難指示を「半径10キロ以内」に拡大。12キロ南にある福島第2原発も同日、半径3キロ以内に避難、10キロ以内に屋内退避を指示した。
保安院によると、福島第1原発1号機では格納容器内の圧力が一時、基準の2倍超の8.4気圧になった。圧力が上がりすぎると容器の破壊につながるため、東電は弁を開けて、蒸気を外に放出する作業を始めた。電源が確保できないため作業員が手動で二つある弁のうち一つを開けたが、残りは難航している。放射性物質を建物外に放出するのは初めて。微量で避難指示も出され、住民の安全は確保できるという。
2号機では、原子炉内の水位が燃料棒の先端より3.7メートル高く、燃料は水中に没している。一時、緊急時に原子炉を冷やす冷却装置が稼働せず、炉心溶融も心配されたが、装置の稼働が確認された。3号機では原子炉内に冷却水が注入され、安全が保たれている。
福島第2原発の1、2、4号機は、圧力抑制室の温度が100度を超え、圧力を一定に保てなくなっている。炉内を冷やすポンプは、地震で海水をかぶり故障している模様だ。1~4号機についても蒸気を外に放出する準備を進めている。
【ことば】福島第1、第2原発 第1は東京電力初の原発として、1971年3月に1号機が営業運転を始めた。現在6基の原子炉が稼働する。第2は、第1の約12キロ南にあり、82年4月に1号機が営業運転開始。計4基が稼働している。いずれも、燃料の核分裂反応によって生じた熱で水を沸騰させ、できた蒸気でタービンを回して発電する「沸騰水型原子炉」で、計10基の総発電量は約910万キロワット。
毎日新聞 2011年3月12日 10時42分(最終更新 3月12日 13時35分)