「地震調査委員会では、宮城県沖から南の茨城県沖まで個別の領域について地震動や津波について評価していた。すべての領域が連動して発生する地震は想定外だった」。国の地震調査委員会の阿部勝征委員長(東京大名誉教授)は11日の会見で想定外だったことを明らかにした。
同委員会は、日本海溝付近で起きる地震について、将来の発生確率やその規模を「長期評価」として分析、公表している。今回の地震は「三陸沖南部海溝寄り」と定義されている海域で発生したが、同委員会の評価によると、同領域で想定される地震の規模は「単独発生ならM7.7前後、陸側に近い宮城県沖と連動して発生すればM8.0前後」だった。しかし、今回の地震はM8.8とけた違いに大きかった。
東京大学地震研究所の佐竹健治教授も「個々の地震は予測されていたが、今回のように全部が連動することは予測されていなかった」と話す。
佐竹教授によると、869年に起きた貞観地震の津波では、津波による堆積(たいせき)物の調査から、当時の海岸線から仙台平野で数キロ、石巻では3キロ以上津波が押し寄せたことが判明。津波を起こす地震のモデルを検討したところ、断層の長さが200~300キロ、滑りは最低で7~10メートルと想定された。
また、貞観地震の津波を含め、同様の堆積物から、過去にほぼ1000年に1回の頻度で同規模の津波が4度あった可能性が指摘されていた。貞観津波からすでに1000年以上経過していることから、地震調査委員会の長期評価部会でも今年2月以降、貞観津波の時と同規模の地震が再来する可能性について「切迫性があるのではないか」という意見があり、議論を続けていたという。
阿部委員長も、貞観地震を引き合いに「(同じような地震が)起きてもおかしくないという議論はあったが、統一見解としてまとめるに至っていなかったのは事実。反省を込めて言うが、自然は簡単には割り切って話ができる現象ではないと感じた」と述べた。
毎日新聞 2011年3月12日 1時02分(最終更新 3月12日 1時03分)