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前原外相辞任:自民「4月解散」も照準 首相問責、前倒し探る

参院予算委で白浜一良公明党副代表の質問中に後ろを振り返って細川律夫厚労相(左)に言葉をかける菅直人首相=国会内で2011年3月7日午後2時16分、藤井太郎撮影
参院予算委で白浜一良公明党副代表の質問中に後ろを振り返って細川律夫厚労相(左)に言葉をかける菅直人首相=国会内で2011年3月7日午後2時16分、藤井太郎撮影

 前原誠司前外相の外国人献金問題を追及して辞任させた自民党内では7日、今国会の会期末(6月22日)までに菅政権を衆院解散・総選挙に追い込む戦略の前倒し論が強まった。「4月解散」も照準に、まずは国民年金の第3号被保険者問題で細川律夫厚生労働相の「ドミノ辞任」につなげ、11年度予算関連法案の審議が行き詰まる3月末以降、菅直人首相に対する問責決議案の提出時期を探る方針。首相は後任の外相人事を一両日中に決め、態勢の立て直しを図るが、民主党内に「解散か、総辞職か」の悲観論が広がる。

 「菅政権の自壊スピードが速まった。(問責提出が)早まる可能性もある」。自民党幹部は7日、解散戦略の前倒しに言及した。

 自民党はこれまで4月の統一地方選での民主党惨敗を見込み、「5~6月解散」を視野に「問責カード」を切るタイミングを計ってきた。最も警戒していたのが「菅首相退陣-前原首相で解散」による民主党の支持率回復だったが、前原氏の辞任でその目は消え、一気に解散に追い込む強硬論が強まった。

 ただ、小坂憲次参院幹事長は「当面は予算審議をしっかりやる」と語り、3月中の問責提出にはなお慎重だ。問責決議に法的拘束力はなく、首相が退陣を拒否すれば、野党側は政権攻撃の好機と位置づける参院予算委員会の審議を拒否せざるを得なくなるためだ。

 逆に首相が解散に踏み切れば、公明党の嫌う衆院選と統一選の「ダブル」となる。同党幹部は「政権の自壊を待っていればいい」と自民党の独走をけん制。河村たかし名古屋市長らの地域政党の国政進出に対する警戒感も強く、シナリオは自民党内でも野党間でも描き切れていない。

 前原氏辞任で政権基盤は弱体化し、民主党内には「長くは持たない」との見方が広がった。小沢一郎元代表に近い党関係者は「6月解散・7月総選挙と思っていたが、早まる。4月以降、問責が通ればジ・エンド。菅首相は解散に踏み切る」とみる。小沢グループの中堅議員は「解散になれば、小沢さんは20~30人の新党をつくって河村市長の新党と連携し政界再編のイニシアチブを握ろうとする」と党分裂を予測する。

 仙谷由人前官房長官を交代させた1月の内閣改造への不満もあり前原グループの「菅離れ」も顕在化。グループ幹部は「『菅さんは解散できない。(次の首相で解散後の)政界再編しかない』と仙谷さんは考えている」と指摘する。「そのときに自民党に手を突っ込むカードとして前原さんを温存した」のが外相辞任の真相というわけだ。

 野田佳彦財務相のグループと連携して首相に総辞職を迫る展開も想定しており、前原グループの若手は「野田さんを担ぐしかないか」と語る。岡田克也幹事長に近い党幹部は「対抗馬は岡田氏以外に見当たらない」。菅首相支持派も「ポスト菅」へ動き始めた。

 菅首相は7日夜、記者団に「国民のことを考えて誠心誠意やっていく」と退陣を否定。外相の後任人事は「適材適所の人を熟慮中」と語り、政権浮揚のきっかけとしたい思惑もにじませた。【中田卓二、高山祐】

毎日新聞 2011年3月8日 東京朝刊

 

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