外相辞任で沖縄基地の負担軽減に懸念

2011年3月8日 09時30分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 前原誠司前外相の辞任は、半年足らずで日本外交の責任者が交代する事態となり、膠着(こうちゃく)する米軍普天間飛行場移設など基地問題の行方に波紋を広げている。前原氏は沖縄の負担軽減策で、普天間移設との「パッケージ分離」に閣内で唯一前向きだっただけに推進役を失った格好だ。県側も基地問題全体の停滞を警戒している。(東京支社・西江昭吾、中部支社・吉田伸)

 「どういう方が後任になるとしても直接の影響を及ぼさないようにしたい」

 外相の臨時代理となった枝野幸男官房長官は7日の会見で戸惑いを隠せなかった。普天間への影響を問われ「内閣全体がチームで外交案件に取り組んでいる。遺漏なきよう進めて乗り切りたい」と応じるのがやっとだった。

 「驚いた。その一言に尽きる」。外務省幹部も突然の辞任劇に困惑気味だ。

 民主党内でも岡田克也幹事長が7日の会見で「大臣が辞めなきゃいけない事案か疑問だ」と述べるなど、外国人献金問題が辞任に直結しないとの観測もあった。

 政府内では5月にも予定される外務、防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を危ぶむ見方も出ている。事務方ベースの協議は進む半面、「政治判断を出せる状況にない」(防衛省幹部)との嘆きの声も。

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 「ポスト菅の一番手に挙げられて考え方が変わった」。与党幹部は、前原氏の“変身ぶり”を驚き交じりに、こう評していた。

 県や地元自治体が求める普天間と切り離した負担軽減の実現。北沢俊美防衛相や枝野氏ら関係閣僚が困難視し、米側も否定的な見解を出す中、ただ一人理解を示す言動を繰り返した。

 与党幹部は「首相交代論が高まる状況で自負が芽生えてきた」と分析。日米の共通戦略目標策定と普天間との切り離しも前原氏の関与が大きいとみていた。

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 県庁内では普天間移設だけでなく、沖縄の基地問題全体の解決策が停滞するのではという懸念が急速に高まっている。

 7日、記者団に何度も囲まれた仲井真弘多知事。「一体全体、普天間はどうなるのか。ほっておかれるの、今度は?」。逆に記者に問い掛けてみせた。

 前原氏は2009年の政権交代以来、沖縄担当相として3度、外相として2度来県。仲井真知事と会談を重ねた。

 知事は「話が早い人だった。考え方は別にしても」と振り返り、後任がどう基地問題と向き合うかを測りかねている。同時に「危険性を放置したままが一番困る。とにかく動かさないといけない。だから早く県外移設。このポイントはよく理解されていたと思うが」と渋い表情は崩さなかった。

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