【東京】自民党が長く握っていた与党の座を手放して2年もたたないが、地方統一選で有権者の新たな反乱が起これば、既に迷走しているこの国の政治がさらなる分裂に陥る可能性がある。
一部の大都市や都道府県などでは、個性的なバックグラウンドを持った新種の独立系候補者が出馬している。多くが訴える減税や地方自治体の役割拡大は、米国の茶会党運動の考えに似ているように聞こえる。ただ、日本の候補者の訴える政綱は大きく異なる上、候補者の大半は互いに連携していない(関連記事)。
わかりやすいスローガンの照準は現在の与党・民主党に当てられている。ただし候補者は、自民党と手を結ぶことには消極的だ。
4月10日と24日の統一地方選で予想されるこうした候補の成功は、国政混乱が年内の解散総選挙につながった場合、政治の見通しをさらに複雑にする恐れがある。政界は既に分裂しており、民主党に経済改革や赤字財政への対処能力がないことが前原誠司外相の辞任で浮き彫りになった。菅直人首相は7日、枝野官房長官が外相臨時代理を兼務すると発表した。
民放のTBSが7日発表した世論調査によると、菅内閣支持率は18%、不支持は約81%だった。
東京都知事選に立候補したワタミの前会長、渡辺美樹氏は「民主党はあれだけ言って自民党を倒した。しかし、民主党になってみたら、何も変わらなかったし、何も変えられなかった。かえってこの国を悪くした」とし、「国政ではこれから絶対、混乱が始まる。だから私は日本が倒れても東京だけは守るという気持ちでいる」と述べた。
名古屋市では、市民税10%減税を訴えた河村たかし氏が2月の出直し名古屋市長選で地滑り的勝利を収めた。同氏が代表を務める「減税日本」は地方選での候補者擁立を進めている。
河村氏は「今の世の中は全部不景気というのは実はうそ。税金を払う方は非常に苦しいが、税金で食べている方は極楽だ」と訴えた。
減税を支えるため、同氏は市会議員報酬を現行の約1600万円の半分にしたい意向だ。多くの自治体では、人口と税収の減少にもかかわらず議会は大きく報酬は高いままだ。
ただ、河村氏の人気については、小さな政府に対する支持の広まりより同氏の派手な性格によるものだとの見方が多い。国民皆保険や児童への手当てといった給付が当たり前の国では、多額の費用がかかる制度の維持・拡大に政治的議論が集まりがちだ。国や地方が大きな借金を抱えていてもそれは変わらない。
世論調査によると、こうした給付を維持するため増税は致し方ないと考える国民が半分以上だ。与謝野馨経済財政担当相は最近、(河村氏は)減税日本などといってはしゃいでいるより、地方債残高を減らすべき、と述べている。名古屋市の借金は計1兆8000億円。
一方、大阪府の橋下徹知事は地方選での躍進を目指している。同知事の掲げる「大阪都構想」は、人口が3番目に多い大阪の独立性を高め、低迷する景気へのてこ入れや東京との競合を可能にするというアイデアだ。
東京都では、経営者や元芸人が石原慎太郎知事の後任を狙う見通し。民主党も自民党も候補を擁立できていない。
都政に「経営力」を生かすと訴える渡辺氏は東京のホテルで最近、ニューヨークのブルームバーグ市長の政策に関する講義を米大手コンサルタント会社の専門家から受けている。
同氏は国の多額の債務について、「政治に経営がなかった」と指摘。「収入以上の借り入れをする、そして経営をしていく。これは潰れるのは当たり前」だと説明した。
このほか都知事選には、神奈川県現知事の松沢成文氏が首都圏連合の推進を掲げ出馬する。
さらに、前宮崎県知事の東国原英夫氏や蓮舫行政刷新担当相の立候補もうわさされている。ただ、現在の危機を考えると、知名度の高い女性閣僚を手放すことは菅首相にとって難しい。
専門家らは、最近の地域政党の台頭について、1995年の地方分権推進法の結果だと語る。現在、東京のように比較的豊かな地域が富を住民のためにとどめるべく戦う一方、地方の自治体は従来の特権を維持しようとしている。
三重県の知事を務めた経験を持つ早稲田大学大学院の北川正恭教授は、「地方分権はどんどん進化してきている」とし、国政の混乱がこの傾向を加速させていると付け加えた。