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特集ワイド:愚問ですが 菅政権、活路は「救国内閣」? 亀井・国民新党代表に聞く

前原外相(前列中央)が辞任し、ますますぐらつく菅内閣……=4日午後、藤井太郎撮影
前原外相(前列中央)が辞任し、ますますぐらつく菅内閣……=4日午後、藤井太郎撮影

 ◇「大連立」もう古い

 支持率低迷にあえぐ菅政権。外国人からの献金問題で前原誠司外相が辞任したが、依然予算関連法案の通過のめども立たない。混乱の中、「救国内閣」を訴え、注目されている与党・国民新党の亀井静香代表に真意を聞いた。【江畑佳明】

 ◇自、公は人材派遣会社になればいい/官民挙げて社会政策を

 --今の民主党をどう見ていますか。

 亀井さん 民主党は党じゃなくなっているよ。党として不可欠な同志愛がなく、一緒に政治をやろうという共通の決意がなくなっている。それが日本の政権を担当しているというのは、悲劇だな。政権を奪取して、社民党を含めて3党連立を組んだ時の気概がなくなった。政策以前の問題だ。

 --なぜこんな状況に?

 亀井さん 「日本をどうするか」という責任感が欠如しているから。中国と米国の間にあって、ロシアとの関係も注意が必要。この状況の中で、経済だけではなく外交・防衛を含めて「自分たちが日本のかじ取りをしている」という責任感があるなら、こんなざまにはならなかった。

 --「責任感の欠如」は、民主党か菅さんかどちらでしょうか。

 亀井さん 民主党全体ですが、菅さんには「あなたは民主党が選んだ総理かもしれんけど、本当は違うんだよと。国会から選ばれて国を任されている総理なんだ」と常に言っている。自分の基盤である民主党の状況について、国家的見地からきちんと対応していかねばダメだと。まず仲間を固める。野党から攻撃されればかばってやる。「いや自分はやっている」と言うんだけど、どう見たって連合赤軍の内ゲバみたいなもんだ。

 本当に政治をやるにはね、政策以前に同志的結合、力学が必要なんです。それをきちっと構築をしないままだったら、自民党さえ認めるような案を作っても、日の目をみない。(憲法が衆院の優越を定めた)「3分の2条項」があるんだから、野党が反対したって、再議決で法律を通せる可能性があったのに、党内基盤を崩しちゃっている。

 --菅さんには伝わっていますか。

 亀井さん 私の助言を聞かないで逆のことばかりをやっているから政権が行き詰まっている。菅さんは決断力がない。朝5時に起きて勉強してるというけど「あんた、勉強する必要ない」と言ったんだ。頭もいいし、あとは決断して実行するだけ。

 --具体的に何を、どうしろと?

 亀井さん だから菅さんにこの際、官民挙げて総力戦をやりなさいと言っている。北海道から沖縄まで、人材はいるんだから。それを登用し、第3次内閣改造をやれ、と。

 --「救国内閣」ですか。

 亀井さん そう。民主党だけにとらわれないで、人材を広く求める。在野からも。自民党、公明党にもいるでしょう。

 --つまり「大連立」を組めと?

 亀井さん すぐ、そう言う。「大連立」という言い方はもう古い。第一、国民はもう政党に期待してないんだから。政党政治という制度になっているけど、政党に対する期待感がない。だからそういう古い次元に立った組閣ではなく、新しく人材を登用し政策を実行していく。政党の枠組みなんて考えることはない。

 --先日、(亀井さんの盟友の)石原慎太郎東京都知事の記者会見で、石原さんが亀井さんを応援していました。

 亀井さん 彼も人材ですよね。人材はほんとにたくさんいるから、それを全部集めるんですよ。例えば、大阪の橋下徹府知事だってそう。あらゆる人材に参加してもらう。今は国家国民のためにこだわりを捨てるときなんです。

 --でも、政策の一致は必要でしょう。

 亀井さん 自社さ政権成立(94年)のとき、自民党は「安保、日の丸・君が代反対」の社会党とさえ手を結んだ。国家が総力戦をするときはそれでいい。日の丸・君が代が本当に不必要か、本音で話して解決したでしょう。水と油みたいなものがうまくいく。そんなもんです。

 --実際に自民党、公明党から人材が来るとは思えません。

 亀井さん 自民、公明は人材派遣会社になればいい。国家国民のためにそれができるか、です。「あなたのところの人材を出して協力してくれよ」と言ったら、谷垣(禎一・自民党総裁)さんが嫌だと言いますか? 言ったら、国民から「了見が狭い」と言われちゃうよ。何も難しい話じゃない。

 自民党、公明党にも人材は多くいますよ。皆が協力できないなら、国家がどうなるか。米国と中国の間で、沈没するかもしれない状況を、政党としてどう考えているか。たとえ今、解散総選挙があっても、自民党が政権をとる保証がどこにあるんですか。

 私は極めて現実的なことを言っているんです。「国家をどうするか」の観点に立たねばならない。幕末の話ですが、薩長同盟が結ばれ維新がなされたけれど、薩摩と長州は同盟直前に戦っている。国家の危機のときには、小さな利害にとらわれてはダメ。小沢(一郎・民主党元代表)さんも巻き込めばいいんですよ。

 --「救国内閣」設立のリミットはいつごろですか。

 亀井さん 時間がない。今月中ぐらいだろうね。

 --愚問ですが、救国内閣の首班は亀井さんですか。

 亀井さん 「亀井静香が美容整形外科に行って初めて現実味を帯びる話」ですよ(笑い)。この顔を見ればわかるでしょ。

 --顔は関係ないでしょう。菅さんだって……。

 亀井さん 私よりいいだろう。私は総理向きの顔じゃない。

 --「救国内閣」で何をするか、ですが。

 亀井さん 資本主義、資本原理と決別して社会政策をしていくんですよ。そして日米関係を対等にする。中国、ロシアに対しても。政治は、大学の研究室で、研究するようなものじゃない。簡単な話で、生きとし生けるものをどう幸せにするか、ですよ。

 --民主党の低支持率は、国民新党にも悪影響では?

 亀井さん 私は党利党略で言っているんじゃない。国民新党は支持率ゼロでいい。今のように国民のほとんどが正確な判断ができない、日本人らしい魂を失った状況で、国民新党の支持率が高かったらおかしい。支持率がなくて当たり前です。

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 ■人物略歴

 ◇かめい・しずか

 1936年生まれ。衆院議員。警察庁官僚を経て、79年に初当選。以後当選11回。運輸相、建設相などを歴任。05年自民党を離党し、国民新党を結成。死刑廃止を推進する議員連盟会長。

毎日新聞 2011年3月8日 東京夕刊

 

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