民主党は8日の常任幹事会で、マニフェスト検証委員会(委員長・岡田克也幹事長)の設置を正式決定した。09年衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた子ども手当や農業の戸別所得補償制度、高速道路無料化などの見直しが焦点となる。見直し姿勢を示すことで与野党協議の呼び水にしたい考えだが、政権交代の原動力となったマニフェストの理念がなし崩しになる恐れもある。
検証作業は、社会保障分野は4月までに、他の分野は9月までに一定の結論を出す予定。計16・8兆円の財源捻出については個別に小委員会を設置する。
最大の焦点は、中学生以下の子どもに月2万6000円を支給すると掲げた子ども手当の見直しだ。計5・3兆円の財源のメドが立たず、菅直人首相は「もう無理なのかも含めて検証の対象にする」と満額支給断念の可能性に言及。農業の戸別所得補償制度(1兆円)や高速道路無料化(1・3兆円)なども財源不足のため一部実施にとどまっている。検証作業に着手することで、党執行部はまず子ども手当法案での野党との協力につなげたい考えだ。
検証作業には、財源不足が明確になっているマニフェスト政策を現実的なものに修正する意味もある。
岡田幹事長は「衆院議員の任期の4年の中間点での見直し」と位置づけるが、「子どもを社会で育てる」との基本理念からこれまで否定してきた子ども手当の所得制限導入の是非も議論の対象とする方針だ。
一方で、小沢一郎元代表ら非主流派はマニフェストの原点回帰を旗印として見直しの動きに批判を強めており、見直し議論は党内の亀裂拡大につながりかねない。政調幹部は「当面は実績の検証。『見直し』は慎重にやらないといけない」と話している。【大貫智子】
毎日新聞 2011年3月9日 東京朝刊