【東京】日本では政治的な内紛から菅政権が揺らいでおり、経済の回復を損ないかねず、投資家の注目を集めつつある。
政府と野党との国会紛糾を受けて、菅直人首相の支持率は20%を割り込み、与党民主党内部でも内輪もめを生んでいる。
しかし、日本の政治的な混乱はいつものことだと長年静観してきた市場関係者たちも、政治動向、とりわけ予算関連審議のこう着状態に無関心ではいられなくなり始めている。審議が行き詰まれば関連法案を国会通過させられず、総選挙につながりかねないからだ。
1月27日に日本国債格付けを「AA-」に格下げした米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は8日、政治的な混乱が経済成長に影響を及ぼし始める恐れがあると述べた。
S&Pは「日本の政界の不安定さで、日本の短期的な成長見通しが脅かされている」とし、「とりわけ、与野党間の膠着状態の結果、予算関連法案の国会通過が滞るかもしれず、そうなれば、とりわけ今年下半期の成長が阻害されるだろう」と述べた。
新たな政権交代を懸念するアナリストや投資家も少なくない。
東京海上アセットマネジメント投信のシニア・ファンドマネジャーは「最も心配なのは菅首相の辞任で、その場合政治が不安定化するだろう」と述べ、「総選挙を回避するのが日本の株価にはプラス」と語った。
政治的な混乱の最近の犠牲者は前原誠司外相だ。同氏は菅首相が退陣した場合に最有力の後継候補と見られていた。菅首相は8日、新外相として松本剛明外務副大臣を起用すると述べた。
市場は長年、政治的な混乱よりも中央銀行の日銀に注目してきた。日銀は長い間、超低金利政策を取っており、債券ないし為替市場に影響する突然の措置を講じる公算は皆無に近いとみられてきた。膨大な規模の日本国債市場が安定的とみられているのは、国債が主として国内企業によって保有されており、売却の公算は小さいとみられているからだ。
一方、株式市場のパフォーマンスは順調と見る投資家も少なくない。アジアやその他世界向けの輸出が強く、政治など国内的な問題から若干隔離されてきたためだ。
実際、日本の株価は今年これまでに3%上昇し、他のアジア市場よりも好調だ。債券市場も安定的だ。円相場は1ドル=82円前後で、1995年につけた過去最高値79円75銭をわずかに下回っている。
一部の市場ウォッチャーは、政治的な混乱をきっかけに外国人投資家が円を売り、国債利回りを押し上げて、国債支払い額をさらに割高にするのではないかと懸念している。住信基礎研究所主席研究員の伊藤洋一氏は「将来、円安と国債利回り上昇につながる可能性は高い」と述べている。
政府にとって最大の障害は、国債発行法案の議会通過だ。4月からの新年度の予算で、借り入れは支出の48%を占める。
菅首相は38兆2000億円の赤字国債発行関連法案やその他関連法案の議会通過のため支持取り付けが必要だ。同法案は自民党指導の参議院で拒否されるのがほぼ確実な情勢だ。
モルガン・スタンレーMUFG証券の日本担当チーフ・アナリスト、ロバート・フェルドマン氏は、赤字国債法案は今月中に通過しない公算が大きいため、政府は6月までの20兆円のつなぎ資金調達に頼る必要があろうと述べている。
一部の政府関係者やエコノミストは、その場合、7月には資金面で行き詰まる恐れがあると述べている。そのシナリオでは基本的な行政機関の運営は政府短期証券の発行などで調達した資金を使う。しかし、義務的でないサービスは一時停止する可能性がある。また法人税減税や子ども手当なども影響を受ける。
こうした影響は、国民負担を2兆4000億円増やし、来年度の国内総生産(GDP)成長率を0.2ポイント引き下げると第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストはみている。