メア氏発言 広がる余波

メア日本部長発言録骨子

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2011年3月9日 10時01分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 米国務省のケビン・メア日本部長の発言の余波が政府内で広がっている。当初静観していた枝野幸男官房長官は8日、ルース駐日米大使に電話会談で抗議に踏み込んだが、背景には県議会の素早い抗議決議や与党内からの突き上げがある。米側が持ち掛けた会談でようやく抗議の姿勢を示した“受け身”の側面も強い。日米双方で沈静化に努める一方、関係省庁内では米軍普天間飛行場移設への影響を懸念する声が高まっている。(東京支社・西江昭吾、銘苅一哲)

 「政府として発言を承知していないのでコメントは差し控えたい」

 メア氏の発言が報じられた7日午前。枝野氏は会見で用意された原稿を淡々と読み上げるだけだった。

 対応が微妙に変化したのは同日午後。

 県議会が抗議決議の検討に入ったことなどを受け、官邸内では「官邸と沖縄に決定的な溝ができかねない」との懸念が急速に広がり、枝野氏は会見で「報道だけ見れば沖縄の皆さんが怒るのは当然」と軌道修正した。

 一方で、メア氏が否定していることを踏まえ「事実と異なると思われる報道」と慎重さを保ちつつ、日米関係の信頼の積み重ねを強調し「報道がどうなんだというのは問題だ」と米側への配慮も付け加えた。

 ただ、米側が7日のうちに在日米大使館名で「米国政府の見解を全く反映していない」と異例の声明で火消しに走り、8日の参院予算委員会でも民主党議員から政府の対応をただす質問が飛び出した。

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 その日の午後。ルース氏の求めで実現した電話会談で枝野氏は「発言が事実だとすれば」と前置きをしつつ「容認しがたい」とようやく抗議に言及した。結果的に沖縄が猛反発する事態を重くみた米政府に促された格好だ。

 わずか1日での豹変(ひょうへん)ぶりについて、枝野氏は「(7日は)単に報道されただけだったが、(8日は報道を受けて)沖縄の皆さんや日本人の多くも発言が真実の可能性が高いと受け止めた」と会見で釈明。世論の反応で対応を変えたとした。

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 「余計な話で沖縄に変なメッセージを与えた。ダメージが大きい」。日米交渉の当事者から発せられた思わぬ横やりに防衛省幹部は不満をあらわにした。

 10日は普天間移設を含めた日米局長級協議がある。メア氏の発言で「方向性は変わらない」(同幹部)とするが、ただでさえ日米合意への反発が強い県民感情をさらに害する事態に「迷惑だ」と吐き捨てた。

 「沖縄の理解を得るために負担軽減を含めて努力をしている。発言が影響を与えないように、というのがわれわれの希望だ」。防衛省の鎌田昭良報道官は8日の会見で省内の空気を代弁した。

   ■    ■

 前原誠司前外相の辞任直後というタイミングの悪さも重なった。対米関係を重んじる外務省は及び腰で事務方が当初、幹部の報道機関対応用に作成した応答要領は「政府として実際にどのような発言があったか承知していない」との内容。沖縄県側の感情に配慮する文言はゼロだった。

 外務省幹部は記者団の問い掛けに「外相不在の今、自分の判断でメア氏の発言を論評することなんてできない」と自嘲気味に語った。

 米政府内では、基地問題に精通し、対日外交の窓口であるメア氏の〝暴言〟に困惑が広がった。

 メア氏は普天間移設問題では現行計画推進を強く求める言動でも知られる。沖縄県側の反対で、県内移設が進まない日本側の事情への不満があるのは間違いない。

 メア氏は6月ごろ在イラク米大使館のナッパー参事官(政治担当)と交代する方向だったが、日米外交筋は「交代が早まるのでは」と指摘した。

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