自民党神奈川県連は９日、元フジテレビキャスターで国際医療福祉大大学院教授の黒岩祐治氏に県知事選への出馬を正式に要請した。黒岩氏は他党からの支持を前提としながらも立候補に前向きな姿勢を示した。候補者探しが難航している民主党は同氏を支持する相乗りも視野に入れており、24日の告示を目前に控え、各党の動きが加速してきた。

　自民県連会長の菅義偉衆院議員から都内で出馬要請を受けた後、黒岩氏は記者団に「日本再生に一番大事なことは地域活性化だ。そのためのチャンスがあればやってみたい」と、出馬に意欲を示した。ただ一方で「全部の党で１つになれるのか、それができた段階で改めて最終的に考え、結論を出したい」と発言。出馬にあたっては民主や公明など自民以外の政党支持を求める考えを示した。

　菅会長は黒岩氏擁立の理由について「県の課題である医療、介護福祉分野の専門家で、知名度もある」と説明。地元経済界から推薦があったことも明らかにした。今後、民主を含む各党に黒岩氏支持を呼び掛ける方針だ。

　黒岩氏によると自民からの打診と同じ時期に、民主からも出馬要請を受けたといい、近く民主県連代表の笠浩史衆院議員と会う予定だという。

　その民主は10日にも県連の笠代表と水戸将史幹事長が黒岩氏への支持の是非などを協議する。独自候補の擁立を引き続き模索しながらも「黒岩氏への支持も有力な選択肢の一つだ」（県連幹部）としている。

　民主関係者の間からは「無理に独自候補を擁立して惨敗すれば、それこそ目も当てられない。これ以上、民主への逆風を強めないために、相乗りも視野に負けない選挙戦にすべきだ」との声も出始めている。

　公明党は12日に県本部の幹事会を開き、対応を検討する。みんなの党は「党本部の意向も聞いた上で、黒岩氏の政策と考え方が合えば支持する可能性はある」（県議）という。

　これまで知事選への立候補を表明しているのは、共産党が推薦する市民団体代表の鴨居洋子氏だけ。県町村会の推薦を受けた開成町の露木順一町長も立候補に意欲を示している。自民党が黒岩氏に出馬要請したことを受けて、露木町長は日本経済新聞の取材に「各政党が黒岩氏に相乗りする可能性はあるが、出馬を前向きに検討する姿勢は変わらない」と語った。