社説
国会攻防/解散で局面打開は図れない
2011年度予算案の修正協議が滑り出せないでいる。与野党が衆院解散をにらんだ駆け引きに終始し、政策論議が後景に退いてしまっているためだ。 前原誠司外相の辞任によって野党の攻勢が強まり、歩み寄りの機運が一層遠のいた印象すらある。 予算や予算関連法の成否は国民生活に直結し、地方財政への影響も大きい。審議の遅れは国際的な信用低下や市場の不信を招き、国益を損ねる。意地を張り合っている暇はない。 動かない政治を前に進めるにはどうするか。困難を承知しつつ、当面、衆院解散の呪縛を解いてはどうか。我慢比べの意味が薄れ、与野党を協議に向かわせる糸口になるのではないかとの期待からである。 予算案は衆院通過で本年度内成立が確実だが、財源の裏打ちとなる関連法案が参院で可決する見通しが立たず、予算は「空手形」の状態にある。 長期間、執行が制限を受ける不正常なままにしておけない。 自民党は野党多数の参院で政権を徹底追及し、早期の衆院解散に追い込み政権奪還を図りたい考え。ただ、解散に至る道筋を描けているわけではなく、手詰まりが長引くことにより、国政全体が国民から見放される事態を恐れる。 窮地の菅政権の延命に手を貸すような方向にはかじを切りづらいだろうが、党利を超えた「大人の対応」は、失った党への信頼を取り戻し、むしろ政権復帰の可能性を広げよう。 菅政権は暮らしを人質に取る形で持久戦に逃げ込むのではなく、直ちにマニフェスト(政権公約)の根幹に踏み込み、柔軟な修正で応えるべきだ。政権交代の正統性を傷つけ、解散風を呼び込むことを気にして、公約の抜本的な見直しに尻込みするようでは責任を果たせない。 民主党が柱に位置付ける子ども手当は、自公政権当時の児童手当にあった所得制限の検討を含めて、大幅な修正を排除すべきではない。無傷の成立はもはやあり得ず、世論は待機児童解消のため保育所増設との組み合わせを求めている。 急浮上の主婦年金の救済策も先送りできない。受容可能な対策に知恵を出し合わずに責任追及に日々を浪費すれば、強い批判を浴びよう。 より良い案に練り上げるための与野党の妥協は、国民の望むところ。双方の政策立案能力を鍛えることにもなる。 政権交代時代に突入する一方、「ねじれ国会」が半ば常態化している。解散・総選挙で、政権が再び交代しても、衆参の与野党逆転状況は変わらず、局面の打開にはつながらない。 予算や重要法案の突っ込んだ修正協議を通じて、国会の機能、二院制のあり方や、予算、法案審議の進め方などを丁寧に問い、原則を定め直す好機とも受け止めたい。 解散を通じた政界再編により強く安定した政権が生まれ、的確な判断と迅速な対応を期待する向きがある。思いは理解できる。ただ、その前にやるべきことがあまりに多い。
2011年03月10日木曜日
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