前原誠司前外相を辞任に追い込んだ外国人献金問題が菅直人首相を直撃したことで、菅政権はかつてないダメージを受けるのは必至だ。菅首相は「在日韓国人だとは知らなかった」と故意の献金受領を否定したが、野党が首相を厳しく追及するのは確実。首相の進退問題に発展する可能性もあり、政局は一段と緊迫化しそうだ。
首相は「外国籍とは知らなかった」と違法性を否定している。民主党の安住淳国対委員長は「前原さんは在日外国人という認識があり責任を取った。首相は全く認識がない」と強調。枝野幸男官房長官も会見で「外国籍と知って献金を受けること以外は刑罰の対象になってない」と述べ、進退問題には発展しないとの考えを示した。
しかし、野党からは進退を問う声が上がった。自民党の大島理森副総裁は党本部で記者団に「全容を説明し、自身の処し方を含め責任をどう考えているか明らかにすべきだ」と、首相の責任を追及する考えを示した。
公明党の井上義久幹事長は記者会見で「前原前外相は国益を守るという観点で辞めた。首相ははるかに職責が重い。事実関係を明らかにし、出処進退を明らかにすべきだ」と進退の判断を迫った。
また、民主党内からも批判が相次いだ。小沢一郎元代表に近い奥村展三衆院議員は「政治とカネの問題を声高に言ってきたが、結局ブーメランになった」と述べ、小沢元代表を党員資格停止処分にした首相ら党執行部の対応を批判した。
首相自身の政治不祥事だけに、4月の統一地方選を前に民主党内の首相退陣論に拍車がかかる可能性もある。民主党内では小沢元代表との対立から小沢系グループの16衆院議員の会派離脱表明問題など亀裂が深まり、国会では野党が専業主婦らの年金切り替え漏れ問題で細川律夫厚生労働相への辞任要求を強めている。公明党幹部は「民主党で統一地方選を前に『菅降ろし』が加速するだろう」との見方を示した。【田中成之、野原大輔】
毎日新聞 2011年3月11日 12時00分(最終更新 3月11日 12時06分)