最高裁が、3人の元少年に対して死刑を言い渡した。大阪、愛知、岐阜の3府県で94年、通りすがりの若者ら4人にリンチを加えて殺害したとして強盗殺人罪などに問われた当時18~19歳の被告らだ。
少年法は、社会復帰を前提とした更生教育や保護処分を中心におく。また、どのような犯罪でも18歳未満には死刑を科さないと定める。裏返せば、18歳以上には、死刑で対処することがあり得るということだ。
今回、最高裁は「結果は重大で、被害者らの恐怖、無念は言うに及ばず、遺族の被害感情も厳しい。少年だったことを考慮しても死刑はやむを得ない」と述べた。
最高裁が83年、4人を射殺したとして永山則夫元死刑囚(犯行時19歳)に死刑を言い渡した際、死刑選択の基準を示している。
事件の罪質や殺害手段の残虐性、被害者の数、被告の年齢など9項目を挙げたうえで、総合的に考慮しても、やむを得ない場合に死刑の選択が許されるとした。
一方、山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の上告審で、最高裁は06年、広島高裁の無期懲役判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
犯行の悪質性を重視して「死刑を回避する十分な理由が見いだせない」と結論づけ、死刑を求刑した検察側の上告を認めた。少年だったことは「考慮すべき一事情にとどまる」と判示したのである。
00年代になって厳罰化の動きが強まり、死刑判決が急増した。光母子殺害事件での最高裁の判断は、少年事件も例外ではないことを示したものといえる。
この事件は、広島高裁が08年、差し戻し審で死刑を言い渡した。
今回の最高裁の判断も、18、19歳の少年による重大事件を裁く地・高裁に今後、影響を与えるだろう。
少年事件の場合、育った環境などを踏まえ、どう更生可能性を判断するのか、成人以上に突き詰めて考慮するのが法の精神である。
昨年11月、宮城県石巻市の3人殺傷事件で、当時18歳だった少年に対し、仙台地裁の裁判員裁判で死刑が言い渡された。会見した裁判員が「一生、悩み続ける」と、判断に際しての重圧を語ったのは記憶に新しい。
死刑の確定を機に今回、元少年らを実名表記に切り替えた報道機関がある。だが、毎日新聞は、真摯(しんし)な反省など元少年らの更生が今後も続くべきだとの観点も考慮し、匿名を維持した。報道の立場で、今後も個々の事件について判断したい。
厳罰化の一方で、死刑制度への国際社会の批判が強まっているのも事実だ。刑罰のあり方について国会で本格的な議論を始めてほしい。
毎日新聞 2011年3月11日 2時32分