米アップルの革新的なタブレット端末「iPad(アイパッド)」の対抗機種が相次いで発売されるなか、アップルは11日、次世代機種の「iPad2」を発売する。
iPad2は、初代iPadと比較して3分の1薄く、10%以上軽い上に、処理速度や能力は向上している。しかも、価格は同じだ。
筆者はiPad2を約1週間試用したが、非常に気に入った。初代機種のように革新的ではないが、おおむね満足のいく改良がなされており、筆者の使用結果はとても良好だった。
より軽やかで、しかも高性能
アップルの優れたデザインチームの手腕により、iPad2はさらに軽やかなっている。初代iPadと米モトローラ・モビリティのタブレット端末「XOOM(ズーム)」が分厚く見えてしまうほどだ。
ふちはさらに薄さが増し、新たに加わったホワイトモデルはその色味が一段と軽量感を感じさせる。重さは601グラムと数値的には初代iPadとそれほど変わらないが、実際に持ち歩いてみると違いが感じられる。
薄く、軽くなったにもかかわらず、これまでどおり比較的大型の9.7インチの鮮明な画面が搭載されており、バッテリーの駆動時間もこれまでと同じ10時間とうたっている。また、他のメーカーのライバル機種と同様、デュアルコアプロセッサー(1つのチップに脳みそが2つあるようなもの)が搭載され、アップルによると画像処理速度は最大9倍。
より高速なプロセッサーや前面・背面にカメラが搭載されているにもかかわらず、価格は最下位機種で499ドル(約4万1300円)と、これまでと同じ。今のところ、この価格を上回るライバル機種はない。
さらにもう1つ優位な点が、約35万種類ものサードパーティー製アプリが利用できることだ。しかも、そのうち約6万5000種類は、スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」ではなく、より大型のタブレット端末の画面に合わせて開発されている。
これは、米グーグルの携帯電話向け基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」搭載端末向けアプリの数をはるかに上回っている。グーグルによると、アンドロイド端末向けのサードパーティー製アプリは15万種類で、そのうちタブレット端末向けアンドロイド用に開発されたものは100種類にも満たない。
処理速度は、劇的とは言えないが、高速化しているのは感じられた。
また、筆者がこれまで試用したアンドロイド端末とは異なり、テスト中に動作が停止することは一度もなかった。
初代iPadと同じく、iPad2もWi-Fi接続だけの機種と移動体通信接続(3G)も可能な機種のいずれかを選べる。
欠点
iPad2には、いくつか欠点もある。
内蔵カメラで撮影した写真の画質はいまひとつで、アップルは画素数さえ公表していない。アップルは、カメラは写真よりも、動画向けに設計されているとしている。筆者は実際に背面のカメラを使用して高解像度ビデオを撮影したり、前面のカメラを使用してテレビ電話をしてみたが、確かに動画の画質は悪くなかった。
バッテリーの駆動時間も、非常に優れてはいるが、初代iPadほどではない。画面の採光度を約75%に設定し、Wi-Fiと3Gの両方を使用しながら、映画を再生するという厳しい条件でテストを行った結果、バッテリーは10時間9分で切れ、アップルがうたっている10時間という駆動時間を辛うじて上回った。XOOMで同じテストを行ったときよりは2.5時間上回ったが、初代iPadの11時間28分という駆動時間には及ばなかった。
一方、画面を省電力モードに設定し、ときどき休止しながら使用したときの結果は素晴らしかった。数百通の電子メールや数十種類のアプリや楽曲、書籍をダウンロードしながらでも、優に48時間はもった。
もう1つの欠点は、ふちがより薄くなったために、底のポートが斜めに搭載されており、充電ケーブルを含めケーブルや周辺機器を差し込みにくくなったことだ。
このほか、さらに大きな欠点が2つある。1つは、初代iPad同様、iPad2も米アドビの動画規格「フラッシュ」に対応していない点だ。アップルはiPadではあえてフラッシュをサポートしない方針を取っており、これはアンドロイド端末と比較して不利になる場合がある。アンドロイド端末は大半がフラッシュに対応しており、今対応していない製品でも、近く対応する予定だ。
もう1つの大きな欠点は、移動体通信システムへの対応だ。iPad2では、第4世代移動通信システム(4G)が使用できず、将来的に4G対応にアップグレードすることもできない。
アップルは、この理由について、プロセッサーがまだ4Gに対応しておらず、バッテリーを大幅に消費してしまうためだとした。だが、モトローラ・モビリティは今年後半にXOOMを4G対応にアップグレードするとしている。ただし、それによってバッテリー消費や毎月のデータ通信料にどのような影響が出るかは不明。
ソフトウエア
iPad2に搭載されている最新OS「iOS(アイオーエス) 4」によってウェブ閲覧ソフト(ブラウザー)が高速化されているほか、「AirPlay(エアプレイ)」も利用できるようなった。
AirPlayがあれば、アップルのセットトップボックス(STB)「Apple TV(アップル・ティービー)」を使用してインターネット経由で動画をテレビで視聴したり、パソコンにインストールした音楽管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)」から音楽や動画をストリーミング(逐次再生)できる。これらはすべて、宣伝文句どおりに機能した。
さらに、マック向けのビデオ編集ソフト「iMovie(アイムービー)」と音楽編集ソフト「GarageBand(カレージバンド)」のiPad2版が5ドルで用意されている。
初代iPadで使用可能なアプリをiPad2でテストした結果、どれも問題なく動作し、処理が速くなったものもあった。
付属品
iPad2(またはiPad、iPhone4)を高解像度テレビに接続し、テレビ画面を使用してiPad2を操作できるようにするためのアダプターが39ドルで用意されている。筆者のテストでは問題なく動作した。
さらに、見た目がかっこよく、非常に薄いiPad2用カバーも発売されている。価格はプラスチック製のものが39ドルで、革製のものが69ドル。色も豊富にそろっている。
磁気でくっつくようになっており、カバーを開け閉めするたびに、画面の電源が自動的についたり消えたりする。折り畳むとiPad用のスタンドとして使用でき、画面の汚れを防ぐために裏地がついている。
だが、実際に使用してみたところ、知らないうちにカバンの中でカバーが外れ、画面の電源が入ってしまい、バッテリーを無駄に消費してしまった。
結論
アップルが現在タブレット端末市場に占めるシェアは90%だが、新規参入が相次いでおり、今後もそのシェアを維持できる公算は小さい。だが、iPad2によって、参入時のハードルは上がっている。iPad2は薄さや軽さ、スピードや処理能力が増したにもかかわらず、価格的な優位性や利用できるアプリの種類、バッテリー駆動時間はこれまでと変わらない。
今のところ、平均的なユーザーには、iPad2をベストなタブレット端末としてお奨めする。
(ウォルター・モスバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の「パーソナルテクノロジー」コラム(毎週木曜日掲載)担当の記者。ウォール・ストリート・ジャーナルで40年近く記者および編集者として勤務するほか、米CNBCネットワーク制作のテレビ番組でテクノロジー関連のコメンテーターも務めている)