【社説】チャン・ジャヨン事件の背後にある勢力の解明を

 2009年3月7日に自殺した女優チャン・ジャヨンさんが生前、知人に送っていたという手紙の一部がテレビ番組で公開された。手紙は全て手書きで計50通あり、分量にすると235枚にも及ぶという。この番組をきっかけに、いわゆる「チャン・ジャヨン事件」は2年の時を経て、今再び注目を集めている。番組によると手紙には「芸能界や大手企業、金融機関、マスコミ関係者など、31人を相手に100回以上も接待をさせられた」と書かれているという。番組放映後、インターネット上には接待を受けた人物のリストやさまざまなうわさが広まっているが、これらはもちろん出処が明らかになっていない。2年前の事件直後にも同じような状況となったが、これが今また再現されているわけだ。

 警察は2年前、41人からなる捜査チームを投入して27カ所に対する家宅捜索を行うと同時に、137人の参考人から事情を聞き、関連する14万件の通話記録について調べた。その結果、チャンさんが所属していた芸能事務所の元代表キム氏、チャンさんの元マネジャーのユ・ジャンホ氏、ドラマ監督や金融関係者7人を起訴相当として検察に送致した。しかし警察は、チャンさんを死に追いやった本当の勢力や人物は誰で、またこの勢力と癒着して便宜を図る見返りとして、性的な接待を受けた人物が果たして誰かを明らかにすることも、また罪を追及することもできなかった。その上、この事件を悪用した一部政治勢力による悪意のある攻撃で、不当に名誉をおとしめられた複数の人物を明らかにすることも、また名誉を回復してやることもできなかった。

 検察がこれらの真実を解明できなかったことで、一部マスコミの間では、真実を知りながら知らないふりをするだけでなく、逆に事件に便乗して私腹を肥やそうとする動きまで出てきた。その結果、社会はさらに混乱に陥り、それは今も続いている。

 芸能界や放送業界が暴力団などと癒着し、その見返りに性的な接待などが行われているといううわさは、数十年も前から公然と語り継がれてきた。チャン・ジャヨン事件お後も、芸能人が自ら命を絶つ事件が繰り返されているが、これは、このような闇の勢力が今も力を持ち続けている事実を証明するものだ。

 芸能人の自殺を、人気に左右されることによる単なる心理的不安が原因と結論付けてしまうと、この悪循環は絶対に断ち切ることはできないだろうし、また韓国社会がより透明なものへと生まれ変わることもできないだろう。忘れたころに表面化する芸能界のさまざまな問題は、接待と人気を交換する業界の慣習が今も残っていることを示しており、それを解明するはずの捜査も、いつも中途半端に終わっている。これでは闇の勢力が力を発揮する範囲がいかに広く、またその影響力がいかに強いかを実感するばかりだ。

 今回の事件を通じ、芸能人が構造的な悪循環を通じて搾取され続ける現実と、またその流れに乗らない限り、生き残ることができない芸能界の仕組みが解明されなければならない。また再捜査は、この悪循環の仕組みに対して外部から治療を行うきっかけにすべきだろう。今回も先回同様、捜査が行われるようなジェスチャーを示すだけで、最終的に何も明らかにできないまま終わるようでは、権力と癒着する闇の勢力は今もやりたい放題だという疑惑を改めて呼び起こすことになるだろう。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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