【ウッドランズ(米テキサス州)山田大輔】小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの微粒子の組成が、地球に落下した隕石(いんせき)の一部と似た特徴を持っていることが分かった。10日午前(日本時間11日未明)、当地で開催中の「第42回月惑星科学会議」で、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米国などの共同研究チームが発表した。
チームは、はやぶさのカプセルに入っていた0.03~0.1ミリ程度の比較的大きな岩石質の微粒子52個について、中に含まれる鉱物や元素の組成、立体構造などを分担して分析した。宇宙線などにさらされてできた「宇宙風化」の痕跡が確認されたことなどから、微粒子はイトカワ表面で採取されたと結論づけた。風化の程度は月の岩石より低かった。
組成は、地球上で見つかる隕石の大部分を占める「普通コンドライト」と一致した。生命の起源につながる有機物の有無も調べたが、試料からは見つからなかった。
1月下旬に日本で始まった分析の結果は世界的な関心を集めた。最初の成果報告の場となる同会議では特別セッションが設けられ、立ち見も出る盛況。8チームが先端技術を駆使した分析手法や成果を発表した。
はやぶさプロジェクトを率いた川口淳一郎JAXA教授の話 今後、国際公募による研究が始まり、さらに新たな発見が生まれることを期待したい。
小惑星イトカワの岩石質微粒子の初期分析結果は、本格的な分析開始から1カ月余しか時間がなかったこともあり、定説を覆すような大発見は今後に持ち越しとなった。しかし、元素組成など物質的な特徴が地球で見つかった隕石の一部と似通っていたという結果は、従来の隕石研究から判明した太陽系の誕生や進化に関する知見に一定の「お墨付き」を与えたといえる。
約46億年前の太陽系誕生時の情報を得るには、熱による変化を受けにくく、当時の状態を保っている小惑星などが適している。従来、地球に降ってくる隕石を手がかりに研究が進められてきたが、隕石は出所や地球に到達するまでの状況が不明な上、大気と接した際、熱による変質を受けるという難点があった。
今回、そうした心配が一切ない小惑星の表面物質を直接分析することができ、結果が一部の隕石の特徴と一致した。
分析チームの藤村彰夫JAXA教授は「今までの隕石研究が正しい方向を向いていたことが検証できた」と話す。【西川拓】
毎日新聞 2011年3月11日 2時32分(最終更新 3月11日 3時16分)