上田市で映画館を経営する「セム・コーポレーション」(駒崎隆社長)は9日、大正時代からの歴史がある「上田でんき館」(中央1)と「上田映劇」(中央2)の定期上映を、ともに今春で終了することを明らかにした。同市では4月下旬に複合映画館(シネマコンプレックス)の「TOHOシネマズ上田」(仮称)が日本たばこ産業跡地(天神)に開館する予定で、集客やデジタル化への対応が難しくなったためという。
これにより市内の定期上映館はシネコンだけになる。でんき館は閉館して土地・建物を引き継ぐ売却先を探す。映劇は舞台を生かした新たな事業展開による存続を検討している。
でんき館(2スクリーン、計180席)の前身「上田電気館」は1921(大正10)年に開館。火災などによる2度の建て替えを経て、98年に現在の建物を新築。曲面を生かした斬新なデザインで、同年の市都市景観賞を受賞している。映劇(1スクリーン、280席)は17(大正6)年に演劇場としてオープン。昭和初期から映画を上映してきた。
観客数は、十数年前にヒット作が出た時には両館合わせて年10万人に上ったものの、近年は3万人ほどで低迷。3D(3次元立体)上映や料金引き下げで攻勢をかけるシネコン最大手「TOHOシネマズ」(東京)が同市へ進出することになり、1千万円以上かかるデジタル化の投資をして存続させるのは難しくなったという。
駒崎社長は「街なかの映画館を残してほしいという声は多いが、商業ベースでの継続は難しいと判断した」と説明。一方、全国では他業種やNPO法人による地元映画館の運営事例もあることから、でんき館については「できれば、映画も含めて新しい施設の活用アイデアを出してくれる事業者に引き継ぎたい」とする。
シネコン進出などによる老舗映画館の閉館は全国でも続いている。県内では2000年に東筑摩郡山形村、08年に松本市にシネコンがオープン。同市中心部の映画館が相次いで閉館している。