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      ■今、なぜアフリカ支援が必要なのか? よくある質問(FAQ)
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      目次
      
      (1)ライブ8が日本でも開かれるなど、最近アフリカ支援の気運が高まって
         いますが、どうしてですか?  ミレニアム開発目標(MDGs)とは。
      (2)日本は援助大国だと聞きますが、貧困者支援でも主役なのでしょうか?
      (3)アフリカの問題は、西欧の植民地支配に責任があると聞きました。
         なぜ日本がアフリカを支援する必要があるのですか?
      (4)人道的な目的からアフリカ支援が必要だといいますが、ODAは国益のため
         のものではないのですか?
      (5)小泉首相はアフリカ援助倍増を公約したと聞きましたが?
      (6)G8財務相会合で最貧国の債務を100%削減したとのことですが、
         どのような内容ですか?
      (7)債務を棒引きにすると、まじめに返す意欲がなくなるのではないですか?
      (8)今年のG8サミットの焦点は何ですか?
      (9)援助を増やしても援助依存になるばかりで、かえって自立をジャマしない
         でしょうか?
      (10)アフリカが貧困から脱出するには、何が必要ですか?
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       ライブ8が日本でも開かれるなど、最近アフリカ支援の気運が高まっていますが、
       どうしてですか? 
      A:アフリカの人々の暮らしが、ますます苦しくなっているからです。
       2000年の数字では、アフリカの人々は20年前よりも貧乏になっています。
       こうした地域はほかにありません。また、平均余命が40歳未満の国29カ国の
       うち28カ国がアフリカにあり、さらに30歳に達しない国3カ国はすべてアフリカの
       国でした。このままでは,アフリカの貧困者の割合は、2015年には1999年より
       28%増加すると予想されています。
       2000年に世界の指導者たちが約束したミレニアム開発目標(MDGs) の達成
       は、こうした状況にあるアフリカでは困難と見られています。今年9月に、ミレニ
       アム開発目標の中間評価サミットが開かれることも、アフリカ支援の国際的な
       世論を押し上げています。
      ** ミレニアム開発目標(MDGs) **
      ミレニアム開発目標(MDGs)とは、21世紀の始めにあたって、これまでの国際社
      会のさまざまな目標を統合し、貧困のない世界を作るために、2015年を期限として
      世界の総力を結集して、8つの具体的目標を達成しようという野心的な計画です。
      8つの目標とは、貧困者の割合を半減するすべての子どもが初等教育の全課程
      を修了できるようにする、HIV/エイズの蔓延を阻止するなど人々の幸せに最低限
      必要なものばかりです。
      ミレニアム開発目標(MDGs)は、2000年9月の国連ミレニアム総会で採択された
      もので、この採択には日本政府も加わっています。
      http://www.undp.or.jp/Publications/MDGs.pdf
      http://www.hottokenai.jp/message/index.html
      
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       日本は援助大国だと聞きますが、貧困者支援でも主役なのでしょうか?
      A:残念ながら、日本の発展途上国支援、特に貧困者向けの援助への取り組み
       はまだ十分とはいえません。
       日本は経済規模からみると、ODA負担率(国民総所得-GNI-に対する割合)
       が先進援助国22カ国中19番目で、0.2%です。これは第1位のノルウエーの
       5分の1強です。
       困難を抱えている後発開発途上国向けに、ODAを多く配分する国ほど貧困
       問題に熱心だといえますが、多い順に先進援助国をランキングすると、日本は
       22カ国中20番目になります。ただし、これは日本の主な援助対象だった東ア
       ジアの国々の所得が上ったのも一因で、貧困対策の面では、アジアからアフ
       リカへと重点を移す時期に来ているといえるでしょう。
       先進国は、1970年代半ばにすでにODAを国民総所得の0.7%に増加させる
       と公約しています。現在、日本とアメリカの二カ国が、依然としてこの公約達成
       の具体的な日付を明らかにしていません。また、この二ヶ国中、2000〜2003
       年にアメリカはODAを63%増やしていますが、日本は44%減少させています。
       わたしたちは日本政府に、GNI比0.7%達成の具体的な日程を明らかに示す
       よう求めています 。
      
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       アフリカの問題は、西欧の植民地支配に責任があると聞きました。
       なぜ日本がアフリカを支援する必要があるのですか? 
      A:わたしたちは、過去の問題とは無関係に、日本はアフリカを支援すべきだと
       考えています。
       ODAは本来人道的な目的以外に利用することは認められていません。もっとも
       困難な状況で貧困と闘っている人々がアフリカに多いのですからODAをアフリカ
       に振り向けるのは当然の事だと思います。
       また、アフリカ民衆が直面している困難な状況に日本は無関係ではありません。
       今日のアフリカの問題は、植民地支配だけではなく独立後の政治経済にも
       原因があります。アフリカ諸国の独立後、日本は西欧諸国と一緒に多くの独裁
       政権に援助を続け、また鉱物資源を買い続けました。アパルトヘイト体制の下
       にあった南アフリカとの貿易が、世界最大規模になって国際社会から非難を受
       けたこともあります。
      
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       人道的な目的からアフリカ支援が必要だといいますが、ODAは国益のための
       ものではないのですか?
      A:ODAの定義を定めたのは、日本も加わった国際フォーラム「開発援助委員会」
       です。
       それによるとODAとは、開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与すること
       を主目的としていなければならず,先進国の国益を目的とした援助(例えば、
       国連安全保障理事会 常任理事国の地位獲得のため)は、ODAには分類でき
       ません。援助が外交の道具に使われることはよくあることですが、人道的な
       目的から逸脱してはなりません。
       外交の道具としての援助が必要であれば、人道的な援助とは区別して実施
       すべきだとの考え方もあります。異なった目的別に援助を管理運営することに
       よって、いずれの援助も現在より効率的・合理的に運営できるようになるから
       です。
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       小泉首相はアフリカ援助倍増を公約したと聞きましたが?
      A:今年4月のアジア・アフリカ首脳会議(バンドン)におけるスピーチで、小泉首相
       は「今後3年間でアフリカ援助を倍増」すると述べています。
       わたしたちは、政府がアフリカに目を向けたことを高く評価します。そして一時
       的な援助増に留まらず、本格的にアフリカ支援に取り組むビジョンを、アフリカと
       日本の市民社会と相談しながら作ることを要望します。
       ただし、アフリカ援助を倍増してもまだ過去最高の水準には戻りません。
       2003年の実績を基礎にすると,倍増により1996年水準を回復することになり
       ますが、過去最高だった1995年にはまだ届きません。2003年の実績は、1995
       年の40%以下に縮小しているからです。
       また、アフリカ援助が日本の二国間ODAに占める割合は8.8%(2003年)です。
       3年後にはODA全体がやや増加すると考えられるので、アフリカの割合は15%
       程度まで上昇するでしょう。これは1989年の割合(15.3%)に戻るということです。
       私たちはアフリカ援助の割合を二国間ODAの35%まで引き上げることを求めて
       いますが、小泉首相の公約が実現しても、この目標の半分に満たないでしょう。
      
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       G8財務相会合で最貧国の債務を100%削減したとのことですが、
       どのような内容ですか? 
      A:まず、最貧国の債務すべての削減が合意されたわけではありません。
       もっとも貧しく、また到底支払えない債務を負っている国(重債務貧困国)の
       うち、経済の再建計画を忠実に実行している国18カ国(うち14カ国がアフリカ)
       に限って、債務が削減されることになりました。
       さらに今後同様の努力が認められた国(最大20カ国)については、債務の
       100%削減を行うことも同意されました。
      
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       債務を棒引きにすると、まじめに返す意欲がなくなるのではないですか?
      A:再建計画を前提にして債務を減らしたり、棒引きすることは、日本国内でも
       会社や銀行の再建の際に行われています。無理に返済を迫っても、会社は
       破産して返済が得られないだけでなく、失業者が増え、景気にも悪い影響が
       出るからです。
       借り手が国の場合、破産はしませんが、貿易や外国投資が難しくなり、国民
       が国際経済からはじき出されて一層貧しくなってしまいます。
       アフリカの国々の再建計画は「貧困削減戦略」と呼ばれています。その内容
       は、貧困者支援を最優先にすること、マクロ経済を安定し、政府がよい仕事をし
       民主主義を強めることなどです。そして、アフリカの国民と援助国がその実施を
       監視することが条件とされています。債務削減によって浮いた財政資金も、
       貧困者の支援に使うことが義務づけられています。
       かつてIMF(国際通貨基金)の高官は、「債務返済が滞った場合は、常に
       「悪い借り手」と「悪い貸し手」がいる」と述べました。この場合、「悪い借り手」
       とは発展途上国の政府です。債務を効果的に利用して税収を増加させられ
       なかったからです。
       他方「悪い貸し手」とは、回収の見込みを誤って貸し付けた援助国政府(日本
       政府を含む)です。
       そして被害者は先進国の納税者、つまりわたしたちと、発展途上国の民衆です。
       発展途上国の人々は、政府が無駄遣いした借金を返済し続け、さらに財政
       再建のために社会サービス低下の犠牲となったのです。こうした過ちを避ける
       ためには、市民の政府に対する監視を、アフリカでも日本でも強めることが
       大事です。
      
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       今年のG8サミットの焦点は何ですか? 
      A:G8サミットの中心議題は、「アフリカ開発」と「気候変動」です。アフリカ開発で
       最も注目されるのは、日本が本格的なアフリカ支援に踏み切るかどうかです。
       ヨーロッパ諸国は、すでにアフリカ支援の拡大を確約しており、アメリカも2000年
       から3年間でアフリカ援助を4倍以上に増加させています。
       一方、日本は、95年には世界のODAの4分の1を占めた援助大国でしたが、
       2003年にはシェアを半分に縮小しています。さらに援助におけるアフリカの比重
       は、15%(1995)から8.8%(2003)に低下しています。日本は経済規模が大き
       いので、日本が経済力に見合った水準までアフリカ援助を増やすことが必要
       なのです。
       そのために,私たちは日本政府にODAの対GNI比0.7%達成への日程を公約
       すること、そしてアフリカ援助を35%に増加することを求めています。
      
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       援助を増やしても,援助依存になるばかりでかえって自立をジャマしないで
       しょうか?
      A:確かに、かつてアフリカの独裁者たちは、援助依存の国家をつくりだしました。
       しかし、アフリカは変わりつつあります。大半の国では民主主義が復活してい
       ます。アフリカ政府が財政難に苦しんでいるため、普通の人々が自分たちで
       助け合う組織をつくってがんばっています。また政府も、財政の再建や、少な
       い予算の中で貧困と闘うための資金配分を増やすなどの努力をしています。
       しかし、アフリカはさまざまなハンディキャップに苦しめられています。
       例えば、アフリカ人の13人に一人がHIV・エイズの感染者です。またマラリアに
       よる死亡の90%がアフリカで発生しています。日本が同じ状況に陥ったらどう
       でしょうか。アフリカは「長引いた緊急事態」にあり、アフリカの人たちの力だけ
       で自立に向かうのは難しいと考えられています。
       債務の100%削減という歴史的な措置が取られたのもそのためです。
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       アフリカが貧困から脱出するには、何が必要ですか?
      A:(1)資金供給、(2)公正な国際秩序、(3)市民社会と政府の強化・連携の
       三つが必要です。
      (1) 貧困から脱出するには、資金が必要です。
       東アジアでは外国投資が主な資金を提供しました。外国投資が当面期待でき
       ないアフリカでは、援助がこれに代わって資金を供給し、投資が活発になる
       環境を作る必要があります。国連の報告書では、アフリカへの援助総額を倍
       にする必要があると勧告しています。
      (2) アフリカが自らの生産活動で発展することを保障しなければなりません。
       アフリカの農民は低価格で生産しているにもかかわらず、先進国の関税や
       保護的な補助金、輸送や商業上の困難、新しい技術がえられないことなど
       から、国際競争の中で不利な立場に置かれています。彼らの努力が報われ
       るように、先進国の譲歩と、アフリカのハンディキャップを埋める国際的な
       協力が必要です。
      (3) アフリカ政府の能力を高めるとともに、市民社会の強化が必要です。
       債務削減と援助が貧困削減に正しく使用され、働く人々の汗が発展に結び
       つくために、市民社会に資金と技術を提供しなければなりません。市民社会
       が強くなり、政策の決定や管理に参加することが、政府が人々のために働く
       ことの条件だからです。また市民の生活を知る市民社会は、社会サービスの
       提供者としても有能であり、増加した援助が有効に使われる鍵は市民社会
       にあります。
      そのためにわたしたちは、日本のODAの40%を市民社会経由で活用すべきだ
      と求めています。また、わたしたちはアフリカの市民社会を支援するだけでなく、
      彼らの力を借りて、アフリカ民衆のためのアフリカ政策が実現されるよう努力し
      ています。
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      TICAD市民社会フォーラムについて:
      問い合わせは info@ticad-csf.net
      詳細は http://www.ticad-csf.net/
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