名古屋市のソフトウエア開発「アイコン」
■「訓練」なのに残業? でも残業代はなし……
名古屋市中村区のソフトウエア開発会社・アイコン(代表取締役:加藤春視)が、緊急雇用安定助成金の教育訓練費を不正受給した疑いで愛知労働局から調査が入り、会社が助成金を返還する意向であることが労働局関係者の証言で明らかになった。
「休業教育訓練」を会社から命じられて受講し、「残業」までしたにもかかわらず給料も残業代も適正に支払われていないとして、愛知県の個人加盟制労働組合・名古屋ふれあいユニオンのTさんが愛知労働局に通報していた。
Tさんは2009年4月9日、アイコンから「休業教育訓練」を命じられ、その状態が2009年12月9日まで継続した。
約20万円の基本給のうち18万6000円が「休業減額」と称して減額されており、それに代わって「休業教育手当」が約15万円支給されていた。つまり、本来20万円の給料が約17万円に減額されていたのだ。
「休業教育訓練」の内容も、外部の講師がIT技術を教授するといったものではなく、アイコンの社員を「講師」として、「勤怠管理ソフトを一定期日までに作成する」というものだった。Tさんによればその「講師」は、ほとんどTさんに何かを教えるということはなく、Tさんは会社のいつものデスクで、勤怠管理ソフトを作成し続けていた。ほぼ毎日、残業までした。
「これではいつも通り仕事をしているのと変わらない」とTさんは言う。しかし、「休業教育訓練」という名目なので給料は満額払ってもらえないばかりか、残業代も1円も付かなくなってしまった。
現在、従業員の雇用維持に努力する中小企業事業主を支援するため、国は『中小企業緊急雇用安定助成金』制度で賃金相当額の5分の4が補助されている上、その間に従業員に教育訓練を行なった場合は1日一人あたり6千円の補助金が加算されている。名古屋ふれあいユニオンはアイコンに対し、「会社がこの制度を利用しているとすれば、国から不正に助成金を受ける一方で、労働者には給料を減額し残業代を支払わずに労働させるという、二重の不正を行なっていたことになる」と指摘。1月12日、アイコンに対して未払い賃金の支払いや休業教育訓練の実体解明などを求めて団体交渉の開催を求めた。
2月1日、名古屋市内で第1回団体交渉が開催された。
会社側の山崎史郎常務取締役は、アイコンが緊急雇用安定助成金の教育訓練費を受給していたかどうかについて、「私の立場ではお答えできない」と回答。Tさんが残業までして勤怠管理ソフトを制作していたのに残業代が付いていないことについても、「私は具体的な訓練の内容まで把握していない。現在調査中なのでお答えできない」などとする回答に終始した。
名古屋ふれあいユニオンが団体交渉を申し入れたのは、2月1日から半月以上前の1月12日のことである。どうして「現在調査中なのでお答えできない」などということがあるのだろうか。会社が緊急雇用安定助成金の教育訓練費を受給しているのかどうか、それすら「調査中」であるなどということは絶対にあり得ない。
アイコン側のあまりに不誠実な対応に、名古屋ふれあいユニオン側は、「あなたたちは今日、一体何をしに来たのだ。話を聞いて持ち帰るだけならテープレコーダーでもできる」と猛反発したが、山崎常務取締役は、「私の立場ではこれ以上言えない。勘弁してください」と言うばかりだった。
名古屋ふれあいユニオンは仕方がないので、次回の団体交渉では加藤春視代表取締役が出席すること、また、Tさんの実際の「訓練」の実態に詳しい人も出席させるよう要求し、開催日時を決めようとした。
すると山崎常務取締役は、「社長が出席するのであれば、私には日時は決められない」と言いだした。名古屋ふれあいユニオンは仕方なく、「では、いつまでに返事をもらえるのか」と問いただしたが、山崎常務取締役は、「それも、社長と打ち合わせをしないとわからない」というのである。
名古屋ふれあいユニオンは別に、今すぐ日程を入れろと言っているのではない。いつまでに日程を連絡していただけるのかと聞いただけだ。それすら答えられないとは、一体どういう立場で山崎常務は今日の団体交渉にのぞんだのだろうか。名古屋ふれあいユニオンは、「それすら決めていただけないなら、今日の団体交渉は何一つ前進しなかったことになる。これでは私たちは席を立てない」とねばったが、山崎常務は最後の最後まで、次回団体交渉の日程をいつまでに組合に連絡するか、一切答えることはなかった。
だが、愛知労働局関係者は、「アイコンにはもう調査に入っています。資料も会社から提出していただいています。会社の方は、雇用調整助成金については返しますと言っています」と言っている。それでありながら労働組合に対しては、「調査中」・「私の立場ではお答えできない」と一切の回答を拒むとは一体どういう了見なのか。
Tさんは、「あきれました。今後、労働基準監督署への申告や裁判の提起など、あらゆる手段でこの不正を社会的に明らかにしてゆきます」と話している。
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
酒井徹の日々改善
http://imadegawa.exblog.jp/
■「訓練」なのに残業? でも残業代はなし……
名古屋市中村区のソフトウエア開発会社・アイコン(代表取締役:加藤春視)が、緊急雇用安定助成金の教育訓練費を不正受給した疑いで愛知労働局から調査が入り、会社が助成金を返還する意向であることが労働局関係者の証言で明らかになった。
「休業教育訓練」を会社から命じられて受講し、「残業」までしたにもかかわらず給料も残業代も適正に支払われていないとして、愛知県の個人加盟制労働組合・名古屋ふれあいユニオンのTさんが愛知労働局に通報していた。
Tさんは2009年4月9日、アイコンから「休業教育訓練」を命じられ、その状態が2009年12月9日まで継続した。
約20万円の基本給のうち18万6000円が「休業減額」と称して減額されており、それに代わって「休業教育手当」が約15万円支給されていた。つまり、本来20万円の給料が約17万円に減額されていたのだ。
「休業教育訓練」の内容も、外部の講師がIT技術を教授するといったものではなく、アイコンの社員を「講師」として、「勤怠管理ソフトを一定期日までに作成する」というものだった。Tさんによればその「講師」は、ほとんどTさんに何かを教えるということはなく、Tさんは会社のいつものデスクで、勤怠管理ソフトを作成し続けていた。ほぼ毎日、残業までした。
「これではいつも通り仕事をしているのと変わらない」とTさんは言う。しかし、「休業教育訓練」という名目なので給料は満額払ってもらえないばかりか、残業代も1円も付かなくなってしまった。
現在、従業員の雇用維持に努力する中小企業事業主を支援するため、国は『中小企業緊急雇用安定助成金』制度で賃金相当額の5分の4が補助されている上、その間に従業員に教育訓練を行なった場合は1日一人あたり6千円の補助金が加算されている。名古屋ふれあいユニオンはアイコンに対し、「会社がこの制度を利用しているとすれば、国から不正に助成金を受ける一方で、労働者には給料を減額し残業代を支払わずに労働させるという、二重の不正を行なっていたことになる」と指摘。1月12日、アイコンに対して未払い賃金の支払いや休業教育訓練の実体解明などを求めて団体交渉の開催を求めた。
2月1日、名古屋市内で第1回団体交渉が開催された。
会社側の山崎史郎常務取締役は、アイコンが緊急雇用安定助成金の教育訓練費を受給していたかどうかについて、「私の立場ではお答えできない」と回答。Tさんが残業までして勤怠管理ソフトを制作していたのに残業代が付いていないことについても、「私は具体的な訓練の内容まで把握していない。現在調査中なのでお答えできない」などとする回答に終始した。
名古屋ふれあいユニオンが団体交渉を申し入れたのは、2月1日から半月以上前の1月12日のことである。どうして「現在調査中なのでお答えできない」などということがあるのだろうか。会社が緊急雇用安定助成金の教育訓練費を受給しているのかどうか、それすら「調査中」であるなどということは絶対にあり得ない。
アイコン側のあまりに不誠実な対応に、名古屋ふれあいユニオン側は、「あなたたちは今日、一体何をしに来たのだ。話を聞いて持ち帰るだけならテープレコーダーでもできる」と猛反発したが、山崎常務取締役は、「私の立場ではこれ以上言えない。勘弁してください」と言うばかりだった。
名古屋ふれあいユニオンは仕方がないので、次回の団体交渉では加藤春視代表取締役が出席すること、また、Tさんの実際の「訓練」の実態に詳しい人も出席させるよう要求し、開催日時を決めようとした。
すると山崎常務取締役は、「社長が出席するのであれば、私には日時は決められない」と言いだした。名古屋ふれあいユニオンは仕方なく、「では、いつまでに返事をもらえるのか」と問いただしたが、山崎常務取締役は、「それも、社長と打ち合わせをしないとわからない」というのである。
名古屋ふれあいユニオンは別に、今すぐ日程を入れろと言っているのではない。いつまでに日程を連絡していただけるのかと聞いただけだ。それすら答えられないとは、一体どういう立場で山崎常務は今日の団体交渉にのぞんだのだろうか。名古屋ふれあいユニオンは、「それすら決めていただけないなら、今日の団体交渉は何一つ前進しなかったことになる。これでは私たちは席を立てない」とねばったが、山崎常務は最後の最後まで、次回団体交渉の日程をいつまでに組合に連絡するか、一切答えることはなかった。
だが、愛知労働局関係者は、「アイコンにはもう調査に入っています。資料も会社から提出していただいています。会社の方は、雇用調整助成金については返しますと言っています」と言っている。それでありながら労働組合に対しては、「調査中」・「私の立場ではお答えできない」と一切の回答を拒むとは一体どういう了見なのか。
Tさんは、「あきれました。今後、労働基準監督署への申告や裁判の提起など、あらゆる手段でこの不正を社会的に明らかにしてゆきます」と話している。
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
酒井徹の日々改善
http://imadegawa.exblog.jp/