2011年3月8日
小児用肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチンを同時接種した後に乳幼児5人が8日までに相次いで亡くなった問題で、厚生労働省の専門家検討会は同日、「いずれも接種との直接的な因果関係は認められないが、さらに情報を収集する」として、接種の再開を見合わせることを決めた。今月中をめどに改めて会合を開き議論する。
小児用肺炎球菌ワクチンはファイザー社の「プレベナー」。ヒブワクチンはサノフィパスツール社の「アクトヒブ」。いずれも細菌性髄膜炎を予防する。接種1〜3日後に乳幼児が亡くなる例が相次いで報告され、厚労省は4日に接種を一時中断した。
検討会では、兵庫県宝塚市の男児(2)、同県西宮市の女児(1歳7カ月)、京都市の女児(6カ月)、川崎市の女児(3カ月)、宮崎県都城市の男児(6カ月未満)の5例を調べた。5人のうち3人は心臓に持病があり、持病がない子では誤嚥(ごえん)による窒息死の可能性が指摘された例もあったが、ワクチンとの因果関係を完全には否定できないため「評価不能」「不明」と報告されていた。
検討会では、「医学的にみると必ずしもワクチンの直接的な影響はない」との意見が大勢を占めたが、詳しい病態や同時接種の安全性などの情報が足りない、との指摘もあった。また、生まれつき心臓病などの持病がある乳幼児に対しては、体調や病状などをよく見極めた上で接種するよう注意を促すことも決めた。
二つのワクチンは昨年11月から公費助成が始まった。販売から今年1月末までにプレベナーは110万人(215万回)、アクトヒブは155万人(308万回)がそれぞれ接種されたと推定される。
厚労省によると1月末までに、ワクチンの製造販売会社や医療機関からは、プレベナー80件、アクトヒブ74件(死亡1件含む)の副反応(副作用)報告が寄せられた。2月28日の専門家による検討会ではこれらの副反応について「接種との因果関係がある死亡例はなく、安全性に重大な懸念は生じていない」と評価されていた。
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〈薗部友良・日赤医療センター小児科顧問〉 二つのワクチンは、世界保健機関(WHO)が推奨し、世界中で広く使われ、安全性が確立されている。統計上、一定の確率で接種後に死亡例が出て、また、乳幼児突然死症候群(SIDS)も年間150例ぐらいあることを、日本のお母さんたちは受け止める必要があるだろう。国内で接種を見合わせている間、細菌性髄膜炎にかかる子どもが出て、重症化しないか心配だ。