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[14307] 東方人生望 ~wants to be it with a human 東方オリ主 旧作ネタ込み
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/01/11 05:24
この作品は東方Projectの二次創作です。
したがって基本は再構成などですが、原作とキャラの設定や性格、出来事の改変などが存在します。

また、この作品は一話一話が短かったり、戦闘場面は存在するが描写がほとんど掛かれない場合がございます。

それらが苦手な方は素直にブラウザの戻るを押してください。




[14307] 第1話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2009/11/29 20:18
とある東の国の中にある幻想郷。

その幻想郷の中にあるとある小さな神社、

博麗神社。

そこは今、僕と博麗の巫女の二人だけで住んでいる。
正確には後一匹、庭の池に亀が住んでいるが、それは気にすることではないと思う。

この話は僕と言う人間が巫女や魔法使いという奴らと日々を楽しく過ごしていくお話である。

…………いけたらいいな。




話を始める前に少しだけ僕の事を少しだけ紹介しておこう。

僕の名前は沙耶。幻想郷の外からやって来てので幻想郷の住人で言うところの外来人だ。

苗字は無い……というより覚えていない。

僕が覚えている中で最も古い記憶は水の中で溺れていることだった。
何故、僕が溺れていたのかは残念ながら記憶には残っていない。
というより、それ以前の記憶が無いのだ。

所謂、記憶喪失というものだ。
しかし、全てを忘れたわけではない。
物の名前も分かるし、その使い方も分かる。

忘れたのは自分の事に関係するエピソードだけだ。
どこで生まれたとか、どこに住んでいたとか、よくある記憶喪失だ。


では何故名前だけ分かるのかと言うと、僕の唯一の持ち物であったぬいぐるみに書かれていたからである……らしい。
実際に僕がそれを確認したわけではなく、僕を助けてくれた先代の博麗の巫女が見たそうだ。
僕もその文字を見たかったが、先代が僕が着ていた服と一緒にぬいぐるみを洗ったときに汚れと共に文字も消えてしまって見ることは叶わなかった。

その他もろもろや紆余曲折などがあったが、記憶が無いのに外の世界に帰しても意味が無いという先代の発言で僕が博麗神社に住み込むことが決まったのである。


















博麗神社に住み込んで既に数年がたち幻想郷の暮らしにも神社の仕事にも慣れてきた今日この頃。
僕は箒を片手に掃除と実益を兼ねて境内の落ち葉を集めていた。
本来なら今日は彼女の当番であるが、今現在彼女はうさばらし……もとい巫女の仕事として妖怪退治というより今回は魔退治に向かっていったので僕が掃除をしているのである。
いつもなら僕も一緒に退治しに行くが今回はちょっとした事情でおとなしくお留守番をすることにしたのだ。




特に面白いこともなくお昼の時間まで掃除をやっていた僕は一息いれることにした。

いつもならこの時間帯になると元気な奴が遊びに来て飯や酒をたかりに来るのだが、ここ最近はなぜかおとなしい。
来ないなら来ないで構わないのだが少し心配だ。今度様子でも見に行こうかな?

「あら? もう掃除は終わったのかしら?」

背後から声を掛けられた俺は腰を上げ、声を掛けた相手のほうへ向き直る。

「まあな。それにしても随分と早かったな靈夢」
「沙耶が手伝ったらもっと早かったけれど」
「攻撃が聞かなきゃ手伝うこと自体が無理だろうが」
「弾除けには丁度いいわよ」
容赦が無いよこの子

僕の目の前にいて会話を勤しんでいる女の子……博麗靈夢は今代の博麗の巫女である。
外見は紫色の髪の毛を腰のほうまで伸ばしており、それを紐で縛ってまとめていて頭に赤いリボンを乗せており、
服装に関しては職業の通り紅白の巫女服を着ている。これ以上に無いくらい巫女らしい巫女服を着ている。


まあ今靈夢が着ているのは博麗の巫女の正装ではないけれど僕としてはこっちのほうが好みである。
決して巫女好きと言うわけではない。というかまだ年齢が二桁も無いのに変なフェチを持っているほうがおかしい。

まあ年齢関してはおよそであり、フェチなんて言葉を知っている時点で前の僕は一体どんな性格で過ごしていたのか…………
正直言って思い出したくない。ぶっちゃけ怖い。知らない過去の自分が怖い。

「まあいいわ。それよりお腹が空いたからお昼にしない?」
「それに関しては同感だな。今日は朝から何も食べてないし」
僕は靈夢の提案に素直に賛同した。

「じゃあ決まりね。早く行きましょう」

靈夢は早く連れて行けとばかりに僕の背中に飛び乗り、僕は慌てて両手を後ろに回して靈夢を支え、落とさないようにする。
そして、そのまま靈夢を背負ったまま僕らは里に向かって飛び、少しの空中散歩を楽しむことにした。

ボロボロに壊れた博麗神社を後にして…………
今日も野宿だなこれは。
幻想郷に来て無駄にサバイバル技術が向上していくことにこっそりと涙を流す僕だった。






あとがき
頭の中にあるいくつかの東方のssのアイデアの中で形にしてみたのがこの作品です。
時系列は靈異伝の少し後ですね。
あとがきに関しましては今後は書きたいときに書くという感じでいきたいと思います。



[14307] 第2話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2009/11/29 22:54
ある晴れた日の博麗神社。
その日は朝から金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響いていた。

いや別に何かしらの異変と言うわけじゃなく、ただ単に僕が金槌で釘を打っている音なんだけどね。

今現在、僕は金槌片手に前回の異変時に壊れた箇所を修理していた。
決して僕の趣味の欄に日曜大工と書き込むほど日曜大工が好きという訳じゃない。
僕だって大工さんに頼めることなら今すぐ頼みたい。
別に大工さんに払うお金が無いわけじゃない。ただ単に場所が悪いだけだ。

1つ目の問題点として、この博麗神社は里から離れた山の中の幻想郷と外の世界の境界に立っているため単純に場所が遠い。
2つ目にして最大の問題点は、里と博麗神社の道中に妖怪が出没することだ。

僕や靈夢みたいに力を持たない者にとって、妖怪に会うと言うことは大抵は死に繋がるので誰もこの場所に来たがらないのだ。
その結果、いつの間にか僕の仕事の中に博麗神社の修理というのが組み込まれていったのである。

ちなみにこの音は僕の生活にとって非常に馴染み深い音……と言うか慣れた。
ことあるごとに神社が壊れるおかげで強制的にそうなっただけだが、靈夢はどうもこの音は苦手らしく先ほどから箒を持つ手が震えている。

が、僕はそんな靈夢を無視して釘を打ち続ける。それはもう機械のように、無心のごとく。
こんな考え事をしている時点で機械でも無心でもなんでもないが、別に気にすることではないだろう。

そんなこんなで朝からこの調子が続いたが、昼ごろになってようやく靈夢の我慢がとかれた。

「ああもう五月蝿いわね。もう少し静かにできないの?」
靈夢は掃除をするという行動を投げ出し、僕のほうに向かって声を掛けて来た。
そこまでされたら流石に無視はできないので、僕のほうも釘を打つ行動をやめて、改めて靈夢のほうに向き直る。

「五月蝿いんだったら玄爺つれて修行してこいよ」
「いやよ。めんどくさい」

……この巫女、現状で双方が幸せになれる方法を放棄しやがったよ。
そんなんだから何時までたっても一人で空を飛ぶことができないんだ。

「何か思った?」
「……別に」
「あやしいわね……」

まったく、変なところで鋭いんだから靈夢は……

このままだとボロが出そうなので話を強引に戻すとしよう。

「音に関してはあと少し我慢しろよ。ここを直せば神社の修理も終わるんだからな」

僕の言葉どおり先日までボロボロだった博麗神社は殆ど直っており、今夜中には布団で寝られるようになるだろう。
先ほども述べたが、何度も何度も神社が壊れたのを僕は何度も何度も直してきているのだ。
必然的に僕の日曜大工の腕も上がることとなり、そこらのプロ顔負けという具合になってきたのだ。

でも、まったく嬉しくないのは何故だろう?

「そう……だったらさっさと直しなさいよ」
言いたい事言って靈夢はさっさと自分の仕事に戻っていった。

修行はめんどくさいと言っている癖に巫女の仕事はきちんとこなすんだよな靈夢は。

まあ、巫女の仕事も投げ出されちゃ困るんだけどな。
少しでいいからその熱意を修行の方に傾けてくれないかな………

まあ、叶わぬ願いなんか祈っても意味ないし、とっと直して靈夢の機嫌を取ろうとするか。

僕は金槌を持つ手を動かし、神社に釘を打ち付けていくのであった。

















「沙耶。修行しにいくわよ」
「…………はい?」

はて……今何か変な言葉が聞こえたような気がしたのは、神社が無事に直ってから数日が経過した後の朝食の時間帯だった。
ちなみに食事に関しては交代交代でやっており、今日の当番は靈夢の日だった。

「なあ靈夢……お前なんか変なモンでも食べたか?」
「……何よ急に」
「いやだって、お前の口から修行なんて言葉が出るなんてまるでこの幻想郷に電気が通ること自体ありえないと言うか……」
「言葉の意味は分からないけど馬鹿にされていることだけは分かるわ」

そう言って靈夢は不機嫌な顔をして、今にも戦闘に入れる状態になっていた。
だって、数日前まで修行がめんどくさいと言っていた人間が急に修行しに行くなんて、どこぞの青い人も真っ青な矛盾だよ。

「別に私が修行したっていいじゃない」
「まあ、そうなんだけどさ……それで、どこに修行をしに行くつもりなんだ?」
「妖怪が住んでいる所の隣のほうの山よ」

山で修行か……まあらしいと言えばらしいか。
それに、これはまたとない絶好のチャンスかもしれない。
靈夢がやる気を見せているうちに修行して靈夢の中の博麗の力を強めなくちゃな。

鉄は熱いうちに打てを言うしな。
うん、うん、そうだ、そうに違いない。
「よし行こう」

が、その時僕は知らなかった。

靈夢の隣に置いてあった大天狗の新聞のことを。
靈夢が修行しに行くと言った真の目的を。
そして――博麗神社に戻った時に起こる異変のことを。


















「調子はどうですか? ――様」
「そうね……最高と言いたいけれど完全復活とまでは流石に行かないわね」
「そうですか……でもご心配なく。――様の復活までの時間は私が稼ぎますわ」
「そうかい。じゃあ期待してるわよ」
「お任せください」

あとがき
ばればれの二人組み登場ですね。



[14307] 第3話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2009/12/02 15:42
「はー……」
霊夢と修行しに行ってから一週間ほどたった帰り道……僕は酷く落胆し、思わずため息をついていた。。

「そもそもおかしいと思ったんだ。靈夢が自発的に修行しに行こうなんていうはず無いんだから」

あの後、僕と靈夢は膳は急げという感じで素早く荷造りをし、移動兼荷物係として玄爺をお供に山に向かって飛んで行き、
その山の地脈の状態を見ると霊力に満ち溢れており、これなら十分修行の効果が望めそうな場所だったのだが、
いざ修行を始めようとしたときに、

「じゃあ早速、秘湯の湯を探しましょう」
「…………えっ?」

靈夢の言葉の意味を理解するために、思わず聞き返してしまった。
何でも靈夢は天狗の新聞の記事の中に秘湯の湯の情報と、山の秋の味覚が目的だったようなので、
そのことを聞いた時の僕の靈夢に酷くあきれたあの時の感情は今でも鮮明に思い出すことができる。

そのおかげで靈夢の修行はろくに進まなく、今、山を下りている理由は靈夢が布団で寝たいと駄々をこねたからである。

僕は靈夢の傍若無人ぶりに、本日二度目のため息をついた。

「まったく……これじゃあ山にこもった意味が無いじゃないか」
「別にいいじゃない。沙耶だって少しは楽しんだでしょ?」

くやしいがその通りなので何も反論ができない。

視線を靈夢の顔の方に向けると、ご機嫌な状態で、普段はあまり見せない笑顔の靈夢の姿が僕の目に映っている。

…………まあいいや、靈夢の我侭もそうなのだが、僕も僕で靈夢に対して甘いのは問題であろう。

この靈夢の笑顔が見れただけでも来た甲斐はあっただろう。十分だ。
だが、頭の中は理解しても感情の方は追いついていないため、未だ負の感情が僕の中を駆け巡っているのだ。

それを追い出すために、僕は本日三度目となるため息をつくのであった。

















「ちょっと……何よこれ」

山から帰り、一週間ぶりの博麗神社で僕達を待っていたのは大量の妖怪やらお化けで、
それらを発見した後の僕らの行動は早かった。

僕と靈夢は懐から数枚のお札を取り出し、敵に向かって投げつける。
妖怪達は飛んでくるお札に気がつくが、些か遅かったな。

お札は数名の妖怪に当たり、そのまま周囲の妖怪達を巻き込んで消滅した。
辛うじて生き残った連中は体制を立て直して僕に向けて反撃をしてくる。
僕はその場から素早く動き、弾幕をかわす。
僕を狙った弾幕は空を切り、流れ弾が神社周辺に当たっていく。

「……せっかく修理が終わったばかりなのに」

僕は相手の攻撃を避けつつ、視線を敵が放った弾幕で壊れた場所を向き、被害の状況を確認する。
どうやら今回は前回みたいに壊れた様子は無く、この程度なら一日で終わるだろう。
そのことを確認し終えたのは靈夢が相手を全滅させたのとほぼ同時だった。


「まったく……こんなに妖怪が多いんだったらこれじゃ落ち着いて眠れないじゃない!!」
「戦闘終了後の初会話がそれかよ!!」
よくもまあこの状況で眠る発言ができるもんだな。

「こうなったら修行の成果を見せてあげるわ!!」
「どの口が言うかどの口が!!」
全国の修行している人たちに謝れ。

「まったく……とりあえず今後のことを話し合うぞ」
とりあえずこのままじゃ埒が明かないので、強引に会話の話題を作ることにする。

「別にそんなことしなくてもいいわ」
「どうした? 何か方法でもあるのか?」

靈夢のことなので自然と考えは浮かぶんだが、靈夢がやけに自信満々なのでとりあえず聞いておく。

「怪しい奴片っ端から退治していったらいいだけよ」
「……そんなことだろうと思った」

まったくどうして靈夢は攻撃的なのだろうか?
妖怪を見かけたら退治一直線は女の子としてどうかと思うぞ。

そんな会話をしていたら、突然横から今まで黙り込んでいた玄爺が口を挟んできた。
「御主人様、今度の妖怪は妙に統制がとれてます。つまりどこかにこいつらの親玉がいるはずじゃ。
 それに、なんとなく異文化の力も感じとれますぞ。気をつけなされ。」

なるほど、そう言えば先ほどの妖怪たちも素早く体制を立て直して反撃をしていたな。
「しかし、ここまで統制されているんだったら今回は一筋縄じゃいかないぞ靈夢?」

だが、靈夢は僕の言葉に対してさらっと返してきた。

「そんなの関係ないわ。私は神だろうが悪魔だろうが神社を壊した奴らは倒すだけよ」
「いやまあ、俺は神は嫌いだが、巫女が神を倒すなんて言うんじゃないだろう」

だが、今の答えはとても靈夢らしい答えだと思った。
やはり、僕の知っている博麗靈夢はこうでないといけないな。

「ほら沙耶。さっさと退治しに行くわよ」
「分かっているよ靈夢」

こうして僕らはこの異変を解決するために、再びボロボロになった博麗神社を後にするのであった。

あとがき
短いですが封魔緑編開始の話です。
しかし、SS書くのって難しいですね。
描写の部分が少なかったりうまく表現されて無かったりとかね。
次回はお待ちかねの旧作キャラの登場ですよ。



[14307] 第4話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2009/12/05 12:34
僕と靈夢は神社を壊した探しているのだが……今現在、襲われています。

「よっと」
目の前には白くてふわふわとした物体がこちらに向かってくるのを手に持っているお払い棒で払いのける。
その払いのけた正体は、僕達の進行を邪魔してくる化け化けだった。

「これはちょっと、数が多すぎるぞこれは」
雑魚と言えば雑魚なんだけど非常に数が多い。つまり、非常にうざいのだ。
これが塵も積もれば何とやらって言うやつか?

「ああもう、邪魔ねこれ」
どうやらさすがの靈夢もこれにはイラついているみたいだ。
まあ金槌の音でイライラするから沸点が低いのは当然な……

「しかし、こんな物に教われるなんてうちの神社はもうだめなのかしら?」
「!?!?!?」
あの楽天的で有名な靈夢が弱音を吐いただと!?!?
しかも、何かこう……うるうるって言うのか? そんな擬音まで聞こえてきそうなくらいの涙目だった。

「えっと……その……」
あまりの態度に少しうろたえてしまった。この場合どう接すればいいんだこれ?
ま、まあ、とりえあず慰めになるかは分からないけど、少しは問題を解決するための策を靈夢に言ってみることにしよう。

「じゃあさ靈夢、神社が襲われても大丈夫なように少しは修行したらいいんじゃないか?」
「それは嫌よ」
「……まあ、分かってたけどね」

でも、別に即答しなくてもいいじゃん。

















「ん? 化け化け達がいなくなったな」
靈夢と多少の会話を交えながら退治していったら、いつの間にか化け化け達を全て追い払えていたようだ。
まあ、あれは数が多かっただけで、こちらの攻撃は普通に効くからな。

「本当ね、今のうちに通り抜けましょ」
「そうだな……」
先に行く靈夢の後を追いかけるように空を飛んでいくが……
その時、何かしらやな予感が僕の頭の中を過ぎった。

僕は靈夢に警戒をするように呼びかける。
「靈夢!」
「沙耶!」
どうやら靈夢は靈夢の方で何かしら感じたようだ。

僕達はその場から左右に分かれながら素早くその場から離れる。

ある程度距離を稼いだの後、確認のために後ろを振り返ってみる。
すると、先ほどまで僕達がいた所に弾幕が飛んでいた。
あと少しでも避けるのが遅れていたら確実に巻き込まれていたな、あれ。

「ちっ! 外したです」
僕の後ろの方から誰かの声が聞こえたので振り返ってみる。
そこには地上の道の真ん中に女の子が一人ぽつんと立っていた。

「うげっ! ばれてしまったのです」
「声が聞こえたら誰だって振り返るし、ど真ん中に立っていたら誰だって気づく」
「しまったです。こんな凡ミスをしてしまったです」

何かちょっと変わった子だな。

「ちょっと離れすぎよ沙耶……何かいるわね?」
謎の女の子と会話をしていたら、靈夢が追いついてきたようだ。

「何だ人間か……残念」
「残念って、妖怪だったらどうしてたんだ?」
「抹殺」
「退治じゃないのかよ! しかも、それ使いどころ間違ってるし」

ちなみに今のは柑橘系で、名前すら表示されない奴に言うべき台詞だ。

「もちろん退治もするわ。ただちょっと加減を間違えちゃうだけよ」
「そんなことをはっきりと言うなよ」
何か頭が痛くなってきた。

「巫女まで来るとは……二人がかりとは予想外よ」
女の子は女の子の方で先ほどからぶつぶつ言ってるし。

「ところで……あれ誰?」
「さぁ?」
「むぅ、誰とは失礼です!」

いや、失礼と言われてもねぇ

「それで、怪しいあんたはここで何をしてたのよ?」
「何もしてないし、怪しくもないです。ただ、ここのお化けを全部私が作っただけよ」

「…………」
「…………」

さっきの変な子修正……アホの子だよこれ。
靈夢だってひっくり返ってるし。

「それのどこが怪しくないのよ!!」
「またしてもそんなこと言うとは失礼ね。もう怒ったです」
「なによ、やる気?」
「おい靈夢止めろよ」

とりあえず靈夢をなだめようとするが……
「 なんだこの音?」
こう、ガタゴトガタゴトと歯車が稼動している音が僕の耳に聞こえてきた。

「見るがいいです。私の最高傑作を!!」
女の子が腕を動かして方向を示しているので、僕も釣られて示している方向を見ると……って、あれは形は変だがもしかして、

「戦車?」
「そうです。私の最高傑作のふらわ~戦車です」
「最高傑作ってことは君が作ったの?」
「そうですよ。だけど、作るのは苦労したわ」

自作なのかこれ。

「すごいな……」
「あんたも戦車に興味あるの?」
「いやそういうわけじゃないんだ。ただ、これが個人の手作りだってことに感動してるだけだよ」
しかも、この幻想郷という名の箱庭の中のことだし。

「そ、そうですか」
女の子は若干にやけた顔をしている。よほど褒められたことが嬉しいんだろうな。

「ま、まあ、どうしてもって言うなら乗せてあげないこともないですよ」
「えっ、いいの?」
「別に構わないわよ」

もう一度修正、いい子だよ、この子
僕はふらわ~戦車に乗り込むために近寄るが……今度は、上空から何かが空を切り裂く音が聞こえる。
何だと思って空を見上げようとするが、その行動よりも早く何かが落下してきて、それは見事に戦車のど真ん中に当たって爆発した。

……って
「「せ、戦車があああああああ!?!?!?」」
何? 何? 何が起きたんだ?

煙が晴れるとそこには2種類の物があった。
一つは元ふらわ~戦車の残骸、もう一つは博麗家の秘宝の陰陽玉…………陰陽玉!?
慌てて上を見上げる。

そこには玄爺の上に立って何かを投げたポーズをしている靈夢がいた。
「そんな奴と会話している暇があったらさっさと神社を壊した奴を追うわよ!!」
靈夢は僕の視線に気づくと、不機嫌な声で言ってきた。

「正論だが、もっと他に方法があるだろうが!!」
と、僕は反論するが靈夢はそんなの知らんという感じで僕を無視して先に進む。

「ご、ごめん」
僕は女の子に謝るが、当の本人はというと、
「戦車が……私の戦車が……ふらわ~戦車が……」
という感じで僕の言葉が聞こえないようだ。

仕方ないので、ふらわ~戦車を破壊した陰陽玉を回収して靈夢の後を追う。

今度謝りに行こう

















「ちなみに、あれとはもう出会わない気がするわ」
「……マジで?」

――哀れすぎるぞ。






あとがき

戦車むすめの里香が登場。
彼女は封魔録では1面ボスと兼任してEXTRAボスもやってます。

まあ靈夢に退場宣言されてしまいましたけどね。



[14307] 第5話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2009/12/12 03:36
「しまった。あいつから黒幕の情報を聞くのを忘れたわ」
「えっ、今更?」

突然靈夢がそんなこと言い出したが、既に数十分も経過した後のことだぞ。

「これも、沙耶が敵とのんきに会話をしていたおかげよ」
「……ごめんなさい」

まあ、こちらにも若干の非があるから素直に靈夢に謝る。それに、機嫌をとっておかないと後が怖いからな。
この前なんかお茶請けのお菓子を間違って食べたら夢想封印を撃ってきたしな……あれは痛かった。
しかも、数日間も口をきいてくれなかったというおまけ付だ。

結局、あの後は一週間の食事当番と、デザートと、服を数枚作ってやっと許してもらえた。
ちなみに、そのことを魔理沙に話したら「沙耶は相変わらず靈夢には弱いんだな」と、おもいっきり笑われてしまった。
まあ、否定はしなかったけどな。

「そう、反省してるならいいわ」
「ん。サンキュー」

どうやら今回は簡単に許してくれたようだ。
でも、後が怖いので何か機嫌取りをしておかないとな。
そんな決意で何をしようか考える……やっぱ食べ物か?

「……何か今一瞬腹立しい気分がよぎったわ」
と、当の本人は首をかしげていた。

……するどい。

「……何か企んでるでしょ?」
靈夢は僕の顔を覗き込んでくるのでおもわず目をそらしたい衝動に駆られるが、
目をそらした時点で針が飛んできそうなので無理やり押さえ込み、ボロを出さないように慎重に言葉を考えて答える。

「別に。今晩の献立を考えてただけだ」
うん100点。嘘もついてないし。

「そう、なら今日はさっぱりしたものが食べたいわね」
「さっぱりとしたものか……了解、考えとくよ」
「期待しておくわ」

とりあえず献立のメニューに靈夢の好きそうな物をピックアップしておこう。
が、まあ今はとりあえずそれはおいといて、

「先ほどから見てるお客さんから見物料を貰わないとな」
「ほう……」

僕でも靈夢でもない声が聞こえたかと思うと、突然目の前に刀を持った新選組もどきのような奴が現れた。
相変わらずだがこれってどういうメカニズムなんだか?

「よく気づいたな」
「さっきからじろじろと見られたら嫌でも気づくわよ」

靈夢は既に針を手に持ち臨戦態勢に入っている。
僕はお札を持ち、いつでもサポートに入れるように準備しておく。
だが、相手は刀を持っているため油断は禁物だ。
修行には関係ないと思って刀を置いてきたのは失敗したな。

「それで? あんたは誰に頼まれたのよ」
靈夢はストレートに聞いているが、そんなの簡単に答えてはくれないと思うんだけど。
けど何か相手の様子も何かおかしいな? 首をかしげてるし。

「何のことだ?」
あれ? こちらの見当違いか?
相手の表情を見ても本当に知らない顔してるし。

「じゃあ何しに現れたんだ?」
僕は相手の目的を聞いてみることにする。まあどうせ大した事じゃないだろうけど。

「私の名前は明羅。博麗を貰うため」
「ぜいやっ!!」

大した事あった。思わず手に持っていた陰陽玉を相手に投げつけてしまった。
まさか変態だったとは……人は見かけによらないな。

「い、いきなり何をするんだ」
「何だ、生きてたのか変態?」

あれか? やっぱ変態は首だけにならないと死なないのか?
でも、今は刀を持ってきてないし……どうすればいいんだ?

「だ、誰が変態だ!!」
「幼女を貰う発言しておいて違うとは見苦しいぞ変態ペド野郎」

靈夢は博麗の巫女(まだ見習い)だが年齢的には二桁越えたかどうかだ。
相手をロリコンと認定しても問題はない。というか相手自体が大問題だ。

「い、いや、私が貰うって言ったのは博麗の力であって……それに私は女」
「言い訳不要!!」

博麗に手を出す者を始末するのも仕事の内だ。

「喰らえ!! 夢想封印」
「は、話は最後まで――」
相手は何かを言いかけたが光の弾幕が相手を包み込んで爆発した落ちていったので、途中から何を言ってるのかさっぱりだったな。

「結局なんだったのかしらあれ?」
「さあ?」
とりあえずこの場を後にして先に進むとしよう。

















沙耶と明羅が戦闘をしていた場所から少し離れた場所。
そこには二人の女性――主と従者が空に浮いており、先ほどの戦いを見守っていた。
二人は彼らが戦っているときは終始無言だったが、決着が着くと同時に主が従者に命令を下す。

「――。あの人間、後で始末しておきなさい」
「……殺すのですか?」

従者は命令の真意を確認するために主に質問する。

「その辺はあなたに任せるわ」
「かしこまりました……――様。少しいいですか?」
「何かしら?」

従者は主の命令を実行する前にどうしても聞いておきたかったことがあった。
「彼は一体何者なのですか?」

本来、従者の主は寝ている時刻であり、起きてくるのは非常に珍しいことなのである。
さらに、主がただ見守るというだけで外に出ることもおかしい。
彼女の能力を使えば外に出ずとも見ることはできるのだ。

ならば何故、彼女が自分を連れて外に出るのか? その理由は彼を除いて他にはいないと従者は考えていた。
それに、従者は上記の他にも個人的な理由で彼のことを聞いておきたかったのである。

「なるほど……彼に勝てなかったことをまだ引きずってるのね」
「!?」

従者の奥底の感情を主は容赦なく引きずり出してくる。

思い返すは昔、主の命で動いてたときに突然現れて戦った挙句、勝てなかったという苦い思い出。
主はそのことは気にとめてなかったが、自分としては主の命令を実行できなかったという――としてのプライドを傷つけられた出来事であった。

「そ、それより彼は一体何者なんですか?」
従者は強引に流れを変えようと返答を急かす。主の方もこれ以上いじっても意味がないと従者の質問に簡潔に答える。

「彼は私の友人よ。大切なね」

「……それだけですか?」
従者は不満げに答えるが、主の返答は実にあっさりとしたものだった。
「それだけよ。じゃあ、私はそろそろ寝るから後始末頼むわね」
「えっ! あ、ちょっと」

従者が納得がいかないと引きとめようとするが、彼女は能力を使い、一瞬でこの場から去ってしまう。

後に残ったのは不満げな表情の従者が一人だけだった。



あとがき

ようやく完成しました。が、後半は滅茶苦茶ですね。
とりあえず作中で沙耶が夢想封印を使ってますが、沙耶は先代に修行させられたので、基本的に博麗の技は使えます。博麗の技って神仙術の流派みたいですしね。
ですが、元の力が違うため、靈夢のとはちょっと性質が違います。波動拳と豪波動拳みたいな違いです。

明羅さんについては東方のシェゾ・ウィグィィと言ってもいいですね。
BGMもやみのちからですし。



[14307] 第6話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/03/27 04:07
「で、ここがその靈魔殿なの?」
「ええ、ここにご主人様の神社を壊した黒幕がいると思われますぞ」
「奥の方からもの凄い力の邪気が感じられるな」
「そうね……当たりかしら?」

今現在、僕たちは靈魔殿と呼ばれる館に潜入している。

前回、明羅とかいう奴を退けた後、手がかりが無くなったので途方にくれていたんだが、
玄爺が靈魔殿に心当たりがあると言ってきたのだ。
靈夢はどうして黙ってたのと玄爺を睨みつけたが、話が進まなくなるので僕は必死に靈夢を落ち着かせ、玄爺から場所を聞き、今に至ると。

靈魔殿の中は名前のわりには意外と洋風で、部屋の薄暗さや内装の効果もあってかとてもおどろおどしい。
けど何か物足りないな……騎士の鎧とか置いてあればさらに雰囲気がでるな、これ。

「けどさ、玄爺ってどうしてここの事を知ってたんだ?」

僕はふと玄爺に、ちょっとした疑問を投げかける。

正直な話、僕は玄爺のことをよく知らない。
靈夢の足代わりとして捕まったそうだが、それにしては先代に信用されていたし、博麗の事も詳しくて知識が豊富だったし、
靈魔殿のこともそうだが、ここに来る前に通った幻夢界のことも知っていたし……一体何者なんだ?

「沙耶殿……気にしたら負けですぞ」

……気にしたら負けってなんだよ。

「とりあえず先に進みましょう。ここにいるかどうかはともかく、目の前のあれは見過ごせないわ」
「えっ! あっ、ちょっと」

僕が呼び止める間もなく靈夢は靈魔殿の奥に進んでいった。というより突撃していった。
イノシシも真っ青な猪突猛進、突撃馬鹿である。

まったく……思い立ったら直ぐに行動するのはいいことだが、少しは周りのことも見て欲しいものだ。
基本的に妖怪の類を見つけたら攻撃しに行くのはどうかと思う……てか、玄爺も少しは止めろよ。

が、嘆いていても何かが良いことがおきるも無い。
それに、ここに一人取り残されるのもまぬけだ。

……仕方ない。玄爺のことはまた今度追及することにしよう。
とりあえず今は先走った靈夢の後を追いかけないと。


























靈夢と共に靈魔殿に突入してからそれなりの時間が経過していたが、特に問題もなく先に進んでいた。

僕達を迎撃するために敵が幾人かやってきたが、先ほどから感じている念の持ち主に比べれば月とスッポンだ。
靈夢が先行して敵を倒して行き、倒し損ねたのは僕がフォローする。
だけど、敵の殆どは靈夢が倒してしまい、僕の出番は無いに等しかったりする。

そんなことを数回繰り返すと、先ほどまでの雰囲気とは一転して、何も無い広い部屋にたどり着き、
先ほどから奥に進めば進むほど強く感じていた念はここに来てさらに濃くなった。

「この念……どこかで感じたことがあるわ」
靈夢が難しい顔をしてそんなことを言った。

「そうなのか? 僕はまったく覚えが無いんだが」
今まで先代や靈夢と共に大量の妖怪と戦ってきたが、少なくとも僕が知っている中でこのような念を感じた敵とは一度も戦ってはいない。
ここまで特徴的なのは珍しいし……一度でも会ってたら覚えてるはずなんだけどな?

「沙耶が覚えが無い? ……そうかこれなら納得がいくわ。今回の騒動の犯人は……」
靈夢の勘違いかと思ったんだが、どうやら靈夢は僕の言葉を聞いて何か引っかかったらしい。
はて? 何かあったかなと思い返そうとするが、どうやら相手はそんな暇は与えてはくれないようだ。

「来るわ……」
靈夢の言葉に重ねるように周囲の雰囲気が一瞬にして変わる。
部屋の空気は一気に重くなり、部屋の中央に大量の邪気と魔力の渦が発生する。
そして、その渦の中心には僕と同じ緑色の髪をした女性が堂々と立っていた。
おいおい……あの力は大妖怪クラスだぞ。靈夢はあれと知り合いなのか?

「久しぶりね、靈夢」
「やっぱり……黒幕はあなただったのね。魅魔!」

どうやら知り合いだったらしい。

そういえば前回の異変の時は僕はお留守番だったな。
先ほどの靈夢の態度から推測すると、きっとその時に出会ったのだろう。

「ふぅん、どうやら前よりも陰陽玉を使いこなせているようね」
「そんなことは、どうでもいいのよ! それより私の神社を壊すなんてどういうつもり!!」
「どうもこうも無いわ。あれはただの前座。全人類に復讐するためのね」

前座で神社を壊したのかよ。何て自分勝手な人だ。いや、あれは人じゃなくて幽霊だな。
まったく、少しは神社を修理する身になって欲しい。
修理といえば、神社は半壊してたけどぬいぐるみ達は無事かな? 流れでこのまま来ちゃったけど確認してから来ればよかったな。

「私の神社が前座ってどういうことよ! 今、この場で封印してくれる!!」

魅魔の言葉で完全に頭にきた靈夢は針やお札を魅魔に向けて投げつけるが、魅魔はそれを楽々かわしていく。

一見簡単そうに見えるが、あれを完璧にかわすのはなかなか難しい。なにせ、動きがまったく読めないからな。
そこら辺の雑魚なら一瞬で退治できるんだが……それだけ相手のレベルが高いってことか。

「そんなに怒らなくても相手をしてあげる、と言いたいけれど残念ながらまだ本調子ってわけじゃないの。
 それまではこいつと遊んでてね」

言うだけ言って魅魔は靈魔殿のさらに奥のほうに行ってしまった。
……一体何のために出てきたんだあの人?

「あっ! 待ちなさい」
靈夢は奥に行った魅魔を追いかけようとするが、

「了解、魔梨沙にまかせて~」
どこか聞き覚えのある声、と名前が僕の耳に届き、続けて、上空から星型の弾幕が靈夢の行動を妨害するように降り注そそぐ。
って危ねっ! こっちの方にまで飛んできたぞ。

「悪いけどここから先には行かせないわよ」
「……何やってるんだ魔理沙?」

靈夢の行動を邪魔した人物は僕と数少ない、貴重な靈夢の友人である霧雨魔理沙だった。
しばらく見ないと思ったらこんな所で何してたんだ?
しかも、何か服装とか髪の色とか名前のニュアンスとかいろいろ変わってるし。

「魔法を教えてもらったかわりに魅魔様のお手伝いをしてるの」
と、魔理沙は僕に今までの経緯を話してくれた。

なるほど……魅魔のところで修行してたから、それでしばらく神社に来れなかったのか。
そういえば、魔理沙の魔力も若干強くなっているな。

「とにかく、沙耶と靈夢にはここで遊んでいってもらうわよ!」
魔理沙が話を終えたから戦うぞといわんばかりに、ミニ八卦炉を取り出してすぐにでも戦闘に入れるようにする。
が、その前に魔理沙に現実を教えてやらなければ。

「あーはりきっているところ悪いが……靈夢ならもういないぞ」
「……えっ?」

僕と魔理沙が会話をしている隙をみて、靈夢は魅魔を追いかけに行ってしまった。
そんなわけで今現在ここに残っているのは僕と魔理沙の二人だけである。

「……ここは普通、靈夢と協力して私と戦う流れじゃない?」
「いや、それを僕に言われても……」

それは先に行った靈夢に言って欲しい。
それにしても靈夢が先に行っちゃったからやることが無くなったな。
一応、魔理沙に今後を尋ねてみることにしよう。

「それで、これから魔理沙はどうするんだ?」
「……とりあえず沙耶と戦っておく」
「あっ、やっぱ、そういう結論に達するのね」

まあ、魔理沙がそう言うなら仕方ない。
靈夢と魅魔の決着が着くまで、僕らは僕らで戦っておくことにしよう。

あとがき

魅魔様のことで一番印象に残ってるのは突進攻撃だったりする作者です。
あれ喰らったときはビックリしましたね本当。

さて、一応この話で封魔録本編は終了ですね。
魅魔様の話は日常の話のときで。



[14307] 第7話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/01/11 05:24
靈魔殿の戦いが終わって早数日。

半壊した博麗神社も僕が徹夜で修理をして復元し、今回の事件は無事に終わりを告げた。

そんなわけで、今晩、博麗神社でささやかな祝杯……もとい宴会を開くことになったんだが、

「…………」
「お酒のお味はいかがですか魅魔様?」
「なかなかね。上手くなったものだ」

状況を確認しておこう。
僕は靈夢が玄爺をつれてつまみなどの買出しに行っている間に、宴会の料理を運び、居間の方に向かうと、
そこには既に先客がいて酒を飲んでいた。以上。

うん、魔理沙はまだいい。先代がいた頃から宴会に参加してるし、今回も来るだろうと予想はできた。
今回は敵として現れたがそこらへんは僕も靈夢もあまり気にしてない……というより敵対したことはどうでもいい。
問題は……

「何であなたがここにいるんですか?」
「ん?」

今、僕の目の前にはなぜか何事もなかったかのようにのんきに酒を飲んでいる今回の黒幕がいた。
前回の戦いの決着は靈夢が魅魔を封印して終わったはずなんだが、何時の間にここに侵入してきたんだ?

「宴会をするって魔理沙から聞いたからここに来たんだが? これ土産な」

そう言って魅魔は近くに置いてあった酒を僕に向かって放り投げた。
それを反射的に受け取る。割れたら危ない物を人に向かって投げるな!

「どうも……って、聞きたいことはそんなことじゃない!!
 靈夢が封印したはずなのにどうして外に出てきてるのかってことだ!?」

一応、僕や玄爺も魅魔を封印してあることは確認している。
封印し損ねたというわけではない。

「あの程度の封印なんて簡単に抜け出せるよ。
 ああ、もう復讐する気はないから心配するな」

僕の疑問に魅魔はさらっと答えた。
って、ちょっと待った!! 抜け出してきたってあの封印を? 曲がりなりにも博麗の封印術だぞ。
いくら相手が強かろうとそう簡単に抜け出せるはずはないんだが……

「単純に靈夢の修行不足なだけじゃないの?」
「……やっぱり?」

魔理沙のほうからも靈夢の修行不足を告げられた。
まあ、そりゃそうだよな。ことあるごとに修行サボるし、修行と偽って温泉旅行に行くような奴だからな。
本当、もうちょっと真面目にやって欲しい。

「靈夢の修行……どうしようか?」

僕自身がちゃんと靈夢に注意していけばいいだけなのだが、
山でのことがあるからうまくできるかどうかの自信が無い。
あー、何か良い方法は無いものか。

「ねぇ」
「ん? なんだ?」

靈夢の今後の方針を考えていると、魔理沙が何か思いついた表情をして、横から声を掛けてきた。

「修行のことで悩んでいるみたいだけどよかったら私が修行を手伝ってあげようか?」
「魔理沙が?」

うーん。魔理沙が手伝う修行か……どうしよう。
魔理沙自体は修行は慣れてるから任せてもいいけど何か嫌な予感がするんだよな。
けど、僕だけじゃこの問題は解決はしないし……まあ仕方ないか。

「じゃあ、頼むよ」
「了解~、徹底的に鍛えるわね」

あっ、でも手加減はしてね。

「それは知らないわよ」

魔理沙の返答は妙に笑顔な顔だった。
……選択ミスったかもしれない。

後日、魔理沙が靈夢の修行を始めたが……うん、ご愁傷様としか言えなかった。
火あぶりは無いよな普通。


















靈夢はまだ帰ってきてないが、二人が飲み始めているので自分もアルコールを体に入れる事にする。
ただ、料理をを食べるわけにはいかないので、魔理沙が持ってきたキノコを肴に酒を嗜む程度だが、
これが意外といけたりする。酒もなかなかだしな。

「それで、さっき復讐しないって話は本当なのか?」

体が温まってきたところで魅魔に先ほどの言葉の真偽を問いただす。
さっきはさらっとながしたが、この間まで敵だった奴の言葉をいきなり
はい、そうですか、と信じるわけにはいかないからな。

「本当よ」
「ふーん。なんで急に止めることにしたんだ?」
「靈夢と絡んだほうが楽しいと思ったからな」
「……は?」

待て、なぜそこで靈夢がでてくるんだ?

「始めは陰陽球が本命だったんだけど、だんだんと靈夢のほうに興味が湧いてな、
 そしたら復讐は別にいいやって思うようになったんだ」
「…………」

ようするに、どうやら魅魔は目的のために陰陽球の力を狙っていたが、
靈夢と戦いたいと言う思いが強まった結果、復讐とかどうでもよくなったことか。
……何ともいい加減な悪霊だ。神社は壊され損じゃないか。

「まるで邪気が抜けたような気分だ」
「……それ、実際に抜けてるんだと思いますよ」

言われてみれば確かにこの前会った時は強く感じていたはずの邪気が、今はまったく感じられないな。
だけど、邪気が抜けた悪霊ってのはどうかと思うが……まあいいや。

「それで、これからどうするつもりだ?」

とりあえず魅魔に今後のことを尋ねてみることにする。

「そうね……とりあえず神社の近くに住もうと思っている」
「何故?」
「何となく」
「何となくって言われても」

僕としては靈夢に変なことをしなければ別に構わないが、問題は靈夢がなんて言うかだな。
悪霊が近くに住むなんて神社の評判が落ちかねないし、何よりアイツ自身
あなたのこと嫌っているみたいだしな、あそこまで好戦的なのはなかなかいないし
また退治されかねんぞ。

「靈夢が許すかな?」
「そのための土産だろ」
「えっ、そうなの」

あらかた飲んじゃったけど、やばいんじゃないか、これ。

「それはお前への土産だ。靈夢は靈夢で別なのを用意してあるよ」

そう言って魅魔は靈夢の土産用の酒を取り出した。
靈夢が好んで飲む酒だが、ちょっと値が張るもので、なかなか買えなかったりする一品だ。

「随分と用意がいいもんだな」
「魔理沙からそこら辺の事は聞いているよ」

ああ、確かに魔理沙はそこら辺のことを簡単に話しそうだな。そういえば肝心の奴は何をやってるんだ?
顔を動かして魔理沙を見つけようとする……いた。さっきから話しかけてこないと思ったら酒を飲みまくってるよ。
しかも、かなりのハイペースで。靈夢でもそこまでは飲まんぞ。

「何?」
「あっ、気づいた。いや、ちょっと魅魔と話しているときに魔理沙の話題が出たからさ」
「えっ、何を言ったんですか魅魔様」
「さあね。ああそういえば魔理沙にあんなことがあったんだが……聞くか?」
「是非」
「ちょっと、止めてくださいよ魅魔様」

そう言いながら何故か僕のほうを叩いてきた。うん、痛いのでやめてくれ。照れ隠しにしては強烈だぞ……って、
もしかして酔ってるだけかこいつ。まあ、あれだけのペースで飲んでたら酔わないはずないよな。
あっ、ちょっと頭の上に寄りかかるな、重いから。魅魔も笑ってないでちょっとは助けてくれ。

「へぇ~、人が買い出しに行ってるのに沙耶は先に宴会を始めてるのね」

その一言で背筋が凍った。
僕はゆっくりと首を回し、視線を後ろのほうに向ける。
そこには、すごく不機嫌そうにしている靈夢が立っていた。……終わったな。

「色々言いたいことがあるけどとりあえず一言だけでいいか」
「奇遇ね。私も言いたことがあるけど一言だけでいいわ」

こんな時に意見が噛み合ってもな……正直嬉しくない。

「おかえりなさい」

僕は今は言いたくない一言を言った。

「ただいまっ!!」

今の言葉の返事と共に、靈夢は僕に向かってお札を投げつけてくる。
明日の仕事が決まった瞬間だった。






あとがき

もう既に遅いというレベルじゃありませんが、新年あけましておめでとうございます。
今年も東方人生望をよろしくお願いします。

やっと7話が書ききれました。プロットとは大幅に違いますが、
今回は封魔録のEDあたりの話です。
内容的にはグッドエンディングのバッド進行というですかね。
靈夢、火あぶりされますし。スライムでぬめぬめにもされるかも知れませんね

そういえばいつの間にか1万PV越えてますね。ありがとうございます。
とりあえずは作者の気力が続く限り書き続けたいですね。
ではまた。



[14307] 第8話 修正
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/03/27 17:10
 秋も終盤に差し掛かり、周りの自然がゆっくりと冬に姿を変え始めた幻想郷。
 当然、気温も下がるため、とても寒くなる。
 それだけならまだしも、とある場所を目指して空を飛ぶ僕の体に容赦なく冷たい風が突き刺さり、体の体温が容赦なく奪われていく。

「寒い……急に寒くなるなんて、そろそろ今年の防寒具を作り始める時期か?」

 口に出しても体感温度は変わらないが、とりあえず気を紛らわすために声に出しておく。
 空を飛びながら体をさすっているが、何時までも続くように思える寒さの前にそれは気休めにしか過ぎない。
 しかし、それでもやらないよりかは幾分かましだ。

「こんな時カイロでもあれば……っと、もう着いたか」

 寒さと格闘しているうちに目的地に着いたようだ。
 僕は空中で急停止し、ゆっくりと地上に降りる。



 目の前の視界に広がる木々は人を喰うと噂される通称”魔法の森”と呼ばれる森だ。
 その中は禍々しい妖気で充満しており、強烈な瘴気も発していて普通の人間は耐え切れず、妖怪も近寄らない幻想郷有数の危険スポットだ。

 だが、今回用があるのは魔法の森の方ではなく、その入り口で商売をしているお店で香霖堂というお店だ。
 お店自体は普通の道具屋、もとい骨董品屋みたいなものだが、マジックアイテムを売っていたり、
幻想郷で唯一、外の世界の商品が売られていたりする。
 また、道具の作成もしてくれるため、思ったよりも使い勝手は良かったりする。

 が、それはお店のことを知っているもの対してであって、
正直なところ知らない奴から見ればただの怪しい店としか思われないだろう。

 なぜなら、店の前には此処の店主が集めた大事な商品もとい非売品のコレクションの数々が乱雑に置かれていて、
それが見事に近寄りがたい怪しい雰囲気を作っている。
 ……少しは整理ぐらいしてもいいだろうに。

「あら、沙耶じゃない。此処に用があるの?」

 突然、空から声が聞こえたので顔をあげると、そこには箒にまたがり空に浮かんでいる魔理沙がいて、
そのまま僕のそばに着地してきた。

「沙耶もってことは魔理沙も何か用事でもあるのか?」
「ええ、もうそろそろストーブっていうのをを使ってる頃だと思うから温まりにきたのよ」
「……要するに冷やかしか」

 思わずそんな言葉が出たが、当の魔理沙はその言葉なんか気にせず、
そのまま香霖堂の扉を開けて中に入っていったので、僕も後に続くように中に入る。




























 香霖堂の中に入ると、外との寒さとは一転してまるで真夏のような暑さの空間になっている。
 いくら寒くてもこれはやりすぎだと思う。

「買うものは無いけど温まりにきたよ香霖」
「……僕としてはお客じゃなければ早々に帰って欲しい所なんだが? 読書の邪魔になるし」

 魔理沙の声に香霖堂の店主である森近霖之助さんが、伏せていた顔をあげる。
手に持っている物を見るに、どうやら今まで本を読んでいたらしい。
 本当に商売をする気があるのだろうか?

「そんなつれないこと言わないでよ。それに客は客で別にいるわよ」

 そう言って魔理沙は僕のほうに指を指す。
 それにつられて霖之助さんは本を置いて、視線を指先の僕の方に向ける。

「ああ、君も来ていたのか。いらっしゃい」
「……今まで気がつかなかったんですか?」
「というか、露骨に態度が違うわね」

 まあ、それはそうだろう。一応ここはお店なんだし。

「まあいいや、それより体が冷えているからお茶でも淹れて頂戴」
「どうして僕が君のお茶を淹れなくちゃいけないんだ?」
「あ、淹れるんだったらついでに僕の分もお願いします」

 魔理沙が霖之助さんに注文したので僕の分もついでに頼むことにする。
 霖之助さんは渋い顔をしたが、何故か視線を下に動かし悩んだ挙句、しぶしぶと立ち上がる。

「悪いね、香霖」
「今、読んでいたの本にお客様にはサービスを大切にと書いてあったからな。君はついでだ」

そのまま霖之助さんは店の奥へと向かう。お茶が出てくるまでストーブの前で
暖まってようかな?

「香霖もこんな本読むのね」
 
 魔理沙がいつの間にか霖之助さんが先ほど読んでいた本を手に取り読んでいたのでそちらの方に行く。
 なになに、本の題名は……『商売の心得~実践編~』か……一応、商売する気はあるようだな。

 そういえば魔理沙も勘当はされたけど、元は霧雨さんの所のお嬢様だったな。
 魔理沙が、さっきから本の表紙をじっと見ているので少し尋ねてみることにする。


「その本が気になるのか?」
「いや、別に」

 僕の問いに魔理沙は即決で答えた。
 随分あっさりと否定したな……迷うそぶりも無かったぞ。

「こんな本より私としては高位な魔導書を読みたいわ」
「魔導書ね……」

 魔理沙の家に何度か掃除に行った時、部屋のあちこちに魔導書が乱雑に置かれていたりしているが……

「面白いのかね」
「沙耶も読んでみる?」

 うーん気にはなるが、あいにくと僕は魔法の事なんて分からないし、
今回はパスしておこう。
 
「せっかくのお誘いだけど遠慮しておく。第一、僕は魔法使いじゃないしな」
「そう」

 魔理沙は手に持っていた本を置き、待つのが暇なのかそのまま店内を物色し始めた。
 僕も店内を物色しようにも、最近来たばっかなので特に目新しいものが無い。
 しかたない、とりあえず今はお茶が来るまでストーブの前で暖まっておくとするか。

あとがき
祝、東方香霖堂書籍化
まさにちょうどいいタイミングで発表してくれました。
実に長かった。2年延期でしたか?これで香霖の活躍が増えるといいな。
問題は同人誌の話も含まれているかどうかだけですね。

そういえばそろそろ人気投票が始まりますね。
今回も魅力的なキャラが増えたのでどんな嵐が巻き起こるやら。
小傘と白蓮がすごいことになりそうな予感ですね。
それでは。



[14307] 第9話 加筆修正
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/03/27 04:04
ストーブで体を温めはじめてから数分が経過した後、
霖之助さんが奥からお盆にお茶を乗せてやって来たのでそれを受け取りお礼を言う。

魔理沙の方は既に霖之助さんからお茶を貰い、彼女の定位置となっている壷の上に座りお茶を飲んでいた。

「なんだ、普通のお茶ね」
「君にとっては十分だろ?」

たしかに、味自体は特別でもなんでもない普通のお茶だけど、冷えた体にはちょうどいい味だ。

そういえばたしか神社のお茶も切れかけていたし、帰りに買って置くことにしよう。
……里のほうだけどね。

「それで、今日は一体どんな用件で来たんだい?」

僕がお茶を飲んで、体の芯から温まった頃合を見て霖之助さんは商売人としての対応をし始めた。
相変わらずこの切り替えは早い人だな。

「そういえば何の用か聞いてなかったわね どんな用なの?」

魔理沙は興味津々な表情で尋ねてきた。
そう言えばここに来た目的は魔理沙にも言ってなかったな。
というか目的聞いてないのに人の紹介をするなよ。

「いや、ちょっと刀が壊れちゃって修理をお願いしたいんだけど」

そう言って二人の目の前に自分が持ってきた刀を置く。
状態は刀の刃の部分が所々欠けており、既に刀としての切る機能を発揮しそうにない程だ。

「ふ~ん……確かにこれは酷いわね」
「しかし、一体どうしてこんな状況になったんだ?」

二人は目の前に置かれた刀を見てそれぞれ言いたいことを口にする。
まあ、確かにこんな状態になるなんて一体何を切ったんだってなるが、

「化け化け達が神社を破壊していた時に一緒に壊されたんだよ」

今思い出してもあの状態は酷かったな。
外見だけじゃなくて中のほうもきっちり荒らされており、 
神社を完全に直すまでの間は殆ど野宿していた程だ。
そして、靈夢の機嫌は言うに及ばず、僕の方に何度か八つ当たりしてきたりもしたりするので落ち着ける

結論としてはいろんな意味であまり思い出したくない事件の一つである。

「今まで体験してきた中で、一番被害が大きかったんじゃないのかな?
 僕のコレクションも所々荒らされていたしな」

僕の趣味としてぬいぐるみや人形とか物を作ったり集めたりしていたんだが
ものの見事に滅茶苦茶になっており、少しガチでへこんだりもしたのは秘密だったりする。

「もう少し保管場所でも考えるべきかな?」

僕は思わず愚痴をこぼすが、それを聞いた魔理沙が首をかしげた。
何か悩んでいる様子だが何を考えているんだ?

「どうかしたのか?」
「んー あそこの神社に安全に保管できる場所なんてあるのかしら?」

魔理沙の痛恨の言葉が僕の心を抉った。
……何も否定できないのが悲しいな。

「は~、まあその話は置いといて、刀は直せますか? すみませんが2日以内にお願いしたいんですけど」
「2日か……少し弄くるがそれでも構わないかい?」

霖之助さんは僕の刀を持ち、刀の状態を確かめながらそう言った。
弄くるって言ったが時間に間に合うであれば別に構わないし、
とりあえずは一安心って所かな。

「構いません。お願いしますね」
「了解。二日後に取りに来てくれ、報酬はその時で構わないよ」

商談成立。修理に掛かる費用を聞いて、僕は香霖堂を後にした。


























香霖堂の帰り道。
行きに比べて帰りの気温はだいぶマシになっており、
体が凍えるほどじゃなくなっていたので空を飛ぶのがだいぶ楽になっていた。

とりあえずは先ほど考えたように里によってお茶と夕飯の材料でも買おうと考えていたが……
まずは隣の奴を何とかしないといけないな。

「それで、どうして魔理沙は付いてきているんだ?」

空を飛ぶ僕の隣に魔理沙がぴったりと後をつけてきていた。
香霖堂で分かれたんだが、何故だ?

「香霖の奴が仕事の邪魔になるから出て行けって言われて、追い出されたから」
「それはまあ、当然だな」

今、霖之助さんの仕事の邪魔になると僕としても迷惑かかるし。

「それで暇だから靈夢の所に遊びに行こうかと思ってね」
「……今はお茶が切れてたから対したのものは出せないぞ」
「そう、じゃあ仕方ない。お酒でも飲むとしましょうか」

お茶の代わりが酒盛りって……

「ついでに夜も食べるからよろしくね」

そう断言されても困るんだがしかたない、材料を少し多めに買っておくか。

「そう言えば一つ聞きそびれたんけど」
「ん? なんだ?」

しばらく空を飛びながら魔理沙と会話をしていたが、
魔理沙がふと何か思い出したかの顔をして僕に尋ねてきた

「さっき刀の修理を頼んでいたけど、あれくらいなら沙耶でも治せそうな気がするけど?」

そんなことを聞いてくるのはそれだけ魔理沙の評価がいいってことなのかな?
確かに刀の状態が酷かったが、僕自身の手で直せないこともないだろう
が、今現在、僕の手持ちにアレを直せる金属がないのも原因の一つだが、

「今回は時間が無いんだよ。別の用事が入っていてね」

実は少し前から頼まれていたことがあって、帰ったらその準備をしないといけなかったりする。
だけど、確実に酒盛りにつき合わされるだろうな。

「それにさ、餅は餅屋って言うだろ? 短時間で良い物を仕上げるんだったらやはり専門家の手を借りたほうがいいだろう」

霖之助さんは商売人としてはダメだけど、道具作りの腕に関しては文句の一つも無いしな。
多くの妖怪が彼の道具を愛用してるって噂もあるし、博麗の道具も彼お手製だから、使いやすかったりする。

そんな無駄話をしていたら、いつの間にか人間の里の付近まで飛んでいた。
そろそろ下りる準備をしておかないとな。

「そろそろ里が見えてくる頃か、じゃあ魔理沙、僕はこのまま里に寄るから先に靈夢のところに行っといてくれ」
「何か用でもあるの?」
「別に、ただの買出しだよ」

その言葉を聞くと魔理沙は納得したようでわかったとだけ残して分かれた。
今までは僕のほうに合わせていた魔理沙だがが、一人で神社に行くので一気に加速をして猛スピードで飛んでいった。
相変わらず早いな、もう見えなくなったよ。

さて、何時までもぼけっとしないで買い物を済ませないとな。
さっきから体が冷えて暖かいものが食べたいから今夜は鍋にしよう。

あとがき
今年節分しそこねた。



[14307] 特別編第1話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/02/14 23:25
~最初に~
これは本編よりはるか先の未来(仮)の話です。
ご了承ください

本日2月14日はバレンタインデーである。
女達がこぞって異性にチョコレートを渡し、相手に告白するチャンスの日だ。
逆に男は異性にアピールをし、チョコレートを貰おうと必死になる日でもある。


ただし、それは外の世界の話であるため……



「幻想郷には関係無いんだよな」
「急に独り言なんかしてどうしたのよ?」
「……別に」

そもそも霊夢がバレンタインデーなんて知ってるわけないだろうし、知ったとしてもめんどくさいの一言で済ませられるだろう。
いや……見返りという打算でならくれるかもしれないな。

実際に紫がそういった意味で毎年チョコレートを渡してくるからな。
まあ、紫は外の世界にも遊びに行っているし、知っていてもおかしくはないな。

まあとにかく幻想郷にいる場合は例外を除いて、バレンタインデーは殆ど意味がないイベントである。

しかも今年は休日と重なっているため、僕は久々にのんびりとした時間を取り、
本を読みながらお茶を飲んでまったりとした気分で過ごしていた。

「沙耶、お茶を入れて頂戴」
「それくらい自分で入れろ」

霊夢ががお茶の催促をしてくるが、僕は霊夢に一言言うだけですぐに読書に戻る。
まったく……、今いい所なんだから読書の邪魔をしないで欲しいもんだ。
えーと……どこまで読んだっけ?

「沙耶ー」
「……今度は何?」

霊夢がしつこく呼びかけてくるがそこまで僕の読書の邪魔をしたいのか?

「誰かがこっちに飛んで来るわ」
「えっ?」

僕は本を見るのを中止して視線を外に向ける。
まだ遠くてよく確認できないが、確かに霊夢の言う通り何者かが神社めがけて飛んできている。

一体誰だろう? 魔理沙かレミリアあたりでも遊びに来たのか?
と、思っている間にも相手は神社との距離を詰めていき、律儀にも玄関の先で着地する。

「すみません誰かいますかー?」

玄関の方で声を掛けてきたのは一応、商売敵である早苗だった。
珍しい……わけでもないが宴会の時以外でくるとは一体何の用だ?

「沙耶、行ってきなさい」
「……僕が?」
「ええ、あれに関してはあなたの方が適任でしょ」
「まあ、確かにそうだけど一応ここの主人はお前だぞ」

僕はそう反論するが霊夢の態度は相変わらずで、

「必要になったら呼べばいいでしょ、ほらさっさと行きなさい」

そう言って霊夢は責任を全部僕のほうに押し付けやがった。
しょうがないなと思いながらしおりを本に挟み立ち上がる。
何時までも待たせるのも悪いしさっさと用件でも聞きに行くとするか。

玄関を開けると僕の視界には早苗の姿が映ったが、その手には紙袋を持っていた。

「あっ、こんにちは沙耶さん」
「ああ、こんにちは。何の用だ?」
「ちょっと待ってて下さい……あ、あった。はいこれです」

そう言って早苗は持ってきた紙袋から何かを取り出すと僕に渡した。
綺麗に緑白にラッピングされているけど、これってまさか……

「はい。バレンタインのチョコです」
「……やっぱり」

その可能性は考えてなかったな。
そういえば早苗って元高校生だし、こういったイベントをやっていてもおかしくは無かったな。

「あ、あとこれは霊夢さんの分です」

そう言って早苗は僕のとは色違いのラッピングされたチョコレートを渡す。
ちなみにラッピングの色は紅白だった。

「配って回ってるの?」
「はい。お世話になったお礼を兼ねてです」

結構律儀な性格をしてるんだな早苗は。
幻想郷には珍しいタイプだそ、何時までもこのままでいて欲しい。

「それじゃあもう行きますね。他の所にも回らないといけませんし」
「ああ、チョコレートありがとうな」

僕がお礼の言葉を言うと、それを早苗は笑顔で返しそのまま空を飛んでいった。
あの方角から察するに紅魔館の方へ向かうのだろう。
来年アイツに何かしら影響が出ないといいが……心配だ。

「何の用だったの?」

部屋に戻ると霊夢が声を掛けてくる。
お茶を飲んでいるということから早苗と対応している間に淹れて来たのだろう。
霊夢に早苗がくれたチョコを渡すと何これみたいな顔をした。

「バレンタインデーのチョコを配って回ってたんだって」
「バレンタインデー?」

霊夢は僕の言葉に首をかしげる。
霊夢にしてみればまったく聞いたことがない言葉だから。

「そうだな……相手に感謝したり、友達同士で交換し合ったり、好きな男に告白するためのチャンスを与えてくれる
 女の子のためのお祭りみたいなかな」
「ふーん」

霊夢にバレンタインデーの説明するが、当の本人はあまり興味がなさそうな顔をしている。
この様子だと来年のチョコも期待はできないかもな。

チョコレートのラッピングを外し、中をあけると形が少し歪な小さいチョコが数個入っていた。
これって手作りチョコなのか。
一つ取って食べると中にはピーナッツが入っていて結構うまい。
これはホワイトデーのお返しは気合いを入れないとな。

















時間は過ぎて既に夜である。
途中で紫にチョコレートを貰うイベントがあったが特に知らせることはない。
紫が持ってきたのは明らかに買ってきた物だった……というかレシートを渡された。
しかも結構な金額である。これを3倍返せってことか。

それはさておき霊夢に呼ばれて居間に向かう。これから夕食だ。

「「いただきます」」

霊夢と声をあわせて、挨拶をする。
今日の担当は霊夢なのため、全てが和食で構成されており、
メインの焼き魚や煮物にぬか漬けやら味噌汁が並んでいて、後は簡単な酒の肴があるだけだ。

「あれ?」

幻想郷の夕食には欠かせない肝心のお酒だが今回は一升瓶ではなくとっくりに入っていた。
霊夢がとっくりを使うのは大抵自分で作った酒を入れるときだ。

「霊夢、酒どうしたんだ?」
「ちょっと新しく作ったから試飲よ、試飲」

試飲か……そう聞くと魔理沙のキノコ焼酎のことを思い出すが、まあ、魔理沙みたいな失敗はないからいいか。
と、そんなこと思い、飲む分を注ごうとする直前で止め、霊夢にお願いをする。

「なあ霊夢、ちょっと1回だけでいいから注いでくれないか?」
「いいけど」

変なのって言いながらも霊夢は僕の分の徳利を持ってお猪口に酒を注ぐ。
で、それを一気に飲み干す。うん、結構いけるなこれ。

「これでいいの?」
「ああ、後は自分で注ぐよ」

霊夢に徳利を返してもらい2杯目を自分で注ぐ。

「でも、どうしてこんなこと頼んだの?」
「別に……ただの自己満足だよ」

そう、これは”チョコ”と”猪口”をかけたしゃれの自己満足だ。
霊夢本人には自覚はないだろうけど、けどまあ……これも一種の手作り”チョコ”になるだろう。
お返しのホワイトデーにはこれに合う料理でも作ろうと思うから、


とりあえず今はこのお酒の味を覚えておくとするか。


あとがき
今回は時期ネタのバレンタインデーのお話です。
そのため、本編より先に早苗を登場させましたが、
けど、本編で出るのは一体どれくらい先になるのかな分かりません。
このペースだと1年後も出てなさそうですし……
書くスピードをもっとあげないといけませんね。



[14307] 第10話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/03/29 04:52
「ようやく完成か」

 筆を置き、自分の書いた物にミスが無いか最後のチェックを行う……よし、どこも間違ってない。
 背伸びをし、気分をリラックスさせる。
 これで明日使う全員の分のプリントを書き終えたな。

 最近、僕は人間の里でいろんな仕事を依頼されてきている。

 小さい頃から人間の里で先代と一緒にくっついて博麗神社としての仕事を手伝ったりしていたんだけど、
先代がいなくなってから後、本来は先代の仕事を引き継いで現在の博麗の巫女である靈夢がやる仕事のはずなんだが、
本人がやる気が無く、そういった仕事を全部僕のほうに押し付けて自分は神社を綺麗にしたりしているため、
必然的に人里の殆どの仕事を僕がやるはめになってきているのだ。

 まあそれも始めの頃は博麗神社までの護衛だったりお守りを作ったり妖怪のトラブルを受けていたりしていたんだが、
ここ最近は急激に個人的な依頼が増えてきている。

 服を作ってくれと言われたり、プレゼント用の玩具を作って欲しいと言われたり、
怪我や代わりやらサポートとして手伝ってくれ等などいろんな頼みごとを聞いてきたりなど、
我ながらもはや何でも屋という言葉が似合うようになってきたりしていなと思う。

 別にそういったことが嫌だというわけではなくて、服を作ったりするのは趣味の範囲内だし、
頼みに来る人も僕の能力を買ってくれて来ているわけだから悪い気はしない。

 それに仕事していれば里の人の好感も上がるし、貰う報酬でお酒とか食料を贅沢にすることができるので
特に何も無ければそういった依頼も全部引き受けたりしている。

 今回の依頼主は慧音さんだ。
 最近人里の子供に歴史を教えるために寺子屋を開いたんだけど思うようにうまくいかないらしくて
外の世界で授業を受けていた僕に手伝って欲しいと相談に来たのだ。
 
 「さて……明日も早いしそろそろ寝ようとするか」

 僕はそのまま立ち上がり、プリントを整理しながら筆を片付け布団を敷き就眠準備を整える。
 布団に入り込んでよし寝ようと思った時、

 「なんかやけに静かだな」

 さっきから靈夢と魔理沙の声が聞こえないことに気がつく。

 僕が抜けた後も二人で酒を飲んでいたはずだから おそらく酔いつぶれたんだと思うんだが、
そのままにしておくと風邪をひく可能性もあるな。
 仕方ない……様子でも見ておくことにしよう。
 
 自分の部屋を出て居間の方に様子を見に行くと、予想通り。そこには酔っ払い二人が床に寝そべっていた。
 あーあ、一升瓶が4本も空になってるよ。こりゃ酔いつぶれるよな。
 
 靈夢たちが飲み散らかした一升瓶を片付け、毛布をかける。
 まあ、これで大丈夫だろう。
 じゃあ今度こそおやすみって事で部屋に退散することにしよう。






















 翌日、朝食を食べ終えた後、昨日書き終えたプリントを持って慧音さんの所へ向かう。
 神社を出て数十分程度で人間の里に辿りついたとき……

「ん? あれって……慧音さん?」

 視線の先には今ちょうど会いに行こうとしていた人物が里を歩いていたが、
 首を傾げながら額に手を当てていたりして少し様子がおかしい。
 地面に着地して、そのまま慧音さんに向かって声を掛ける。

「おはようございます慧音さん」

 が、慧音さんはこちらを振り返らずそのまま歩いていってしまう。
 聞えなったのかな? とりあえずもう一度。

「おはよーございます慧音さん」
 
 もう一度声を掛けるがやはり気がつかない。
 おかしい。挨拶にこだわってる人だから無視って事はないが……
 って、こうやって悩んでいる間にも慧音さんとの距離がどんどん離れていってる。

 慌てて慧音さんの後を追いかけて、そのまま慧音さんの肩を叩く。

「慧音さん!!」
「うわっ! っと……何だ沙耶君か」
「ようやく気づいたよ。さっきから呼びかけ続けたんだけど」
「そうなのか。それはすまなかった」

 頭を下げてすまなそうに謝る慧音さん。
 こういったことは律儀だなこの人は。

「それで、一体どうしたんですか?」
「ああ、実はな。先ほど急な用事が入って、そちらのほうに行かなくてはならなくてな」

 こう見えて慧音さんは多忙だったりする。今回もそういった兼で呼ばれたんだろうけど……

「って、そうなると寺子屋はどうなるんですか?」

 もしかして休校か?

「そのことなんだ。多分、昼ごろになれば寺子屋の方にいけると思うんだが、
それまでの間そうやって持たせようかと……と、そうだ」 

 お、どうやら慧音さんが何か思いついたみたいだ。
 とりあえずは寺子屋のことは一安心……

「すまない沙耶君。私の代わりに授業をやってくれないか?」

 でも無かったようだ。
 まあ、ある程度感づいてはいたけどな。









 さて、寺子屋の前まで来たが……まさかこの年で先生をやることになるとはな。
 まあ、サポート自体おかしな話だしどちらも変わりないか。
 幻想郷の歴史とかは先代の教育の一環で教わってるし問題はない。
 

 って、さっきから生徒達のお喋りが外のほうまで聞こえてくるぞ
 授業が退屈とか、宿題を忘れてきたとかそういった話で盛り上がっているみたいだ。
 正直な話、この中に入るのってちょっと気まずい気がするんだけど……ええい。ここで悩んでいても仕方ない。

 意を決して扉に手を掛け、ガラガラと音を立てて扉を開けて中に入る。

「やべ、もう来た……って、あれ?」

 皆の授業の準備をする手が止まる。 
 どうやら僕が寺子屋に来たことに驚いていたり、疑問に浮かべていたりしているようだ。
 まあ、いきなり関係ない奴が来たら戸惑いはするだろう。
 寺子屋の生徒達の視線がざくざくと突き刺さってきている。

「あのー、どうして沙耶さんがここにいるんですか?」

 恐る恐る一人の生徒が手を上げて質問をしてくる。
 周りの連中はよくぞ質問してくれたという雰囲気になっていた。 

「慧音さんに授業を頼まれたんだよ」
「慧音先生はどうしたんですか?」
「用事で昼ごろに来るって」
「そうなんですか」

 しかしなんだな。同年代らしきから敬語を使われるって……
 妖怪とか退治してるから格上に見られてるのかな?
 まあいいや。さっさとプリントを配って授業を始めるとしよう。












 結論から言えば授業の内容は大成功だった。
 内容をその場その場で終わりじゃなくてちょっとした小話を加えたりしていたら、
 慧音先生より分かりやすくて面白いと好評で、慧音さんからもまたやってくれないかと言われた。
 とりあえず考えておくことにしよう。

 あとがき
 申し訳ございません。今回は遅れに遅れました。
 本来はとある旧作キャラを出そうとしたんですが、
単発で出しても今後に響く可能性があるので断念し、
 話を練り直している最中に身内のドタバタに巻き込まれたり
 スポイラーに逃げたりしていました。

 椛ネタが一つつぶれました。



[14307] 第11話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/04/29 21:17
 秋の太陽が東へと沈み始めた時間帯、僕がいる寺子屋は下校の時刻を迎えようとしていた。
 慧音さんが明日の予定を話しているが、一部の生徒はそれをよそに好き勝手に話をしている。

今日の帰りどこかに寄っていく? とか、今日一緒に遊ぼうぜ等、実に微笑ましい内容の会話だけど、
このまま会話をしていたら慧音さんからお仕置きを受けてしまうので注意をしておく。

「もう帰りのHRだから私語はやめておけよ」
「えー、ちょっとくらいいいだろう」
「後ちょっとで終わるんだからそれまで我慢しろよ」

 と、ぶちぶち文句を言う生徒を黙らせてたりしながら帰りのHRは着々と進行していく。

「起立、礼、先生さようなら」
「「さようなら」」

 寺子屋の教室に生徒の声が響き渡り、その流れで急ぐように生徒たちの殆どが寺子屋を後にする。
 やれやれ皆元気だな。
 
「ああ、さようならだ。各自しっかりと宿題をしておくように……って、聞いているのか」
「聞いてないと思いますよ。余計なことを聞く前にさっさと帰ったんじゃないかと……」
「はぁ、まったくあの子達ときたら」

 生徒の情けなさにため息をつく慧音さん。
 まあ、宿題なんて余計なものを貰いたくはないしな。
 その辺の生徒の気持ちは分かるようなきがするけどね。

 掃除のために残っていた生徒達もゴミを掃き終え、帰るのを見送る。
 これで教室に残っているのは僕と慧音さんだけになり、先ほどまで賑わっていた教室は、
外にいる鳥の泣き声がよく通るほどの静寂な空間になった。

「さて、それじゃあ僕が慧音さんの授業を通して感じたことを話しましょうか」
「よろしく頼む」

 寺子屋にある小さな机をくっつけ、慧音さんの対面するように座る。
 はたから見れば、居残りで怒られている生徒や、個人面談をしているように見えるだろうな。
 だが、今この場では僕が先生で慧音さんが生徒なんだけどね。

「まず初めに慧音さんの授業で思ったことは慧音さん自体は必死で教えようとしているんですが、
その……授業の内容がが一方通行というか生徒達を置いてきぼりにしているんですね。
言葉も早いし、授業の内容は詰め込みすぎ。補足の内容もまったくないので難しいんですよ」
「そ、そうなのか?」
「そうですよ。今日の授業を見ている限りでは内容を理解しているのは半分もいないと思いますよ」

 慧音さんの授業は既に教わる側が一定の情報を持っていること前提で進めていた。
 これくらいは知っているだろう。これくらいはよく聞けばわかるだろうと、生徒たちの理解力を考えていない。
 
 というかなんとなくで通ってくる子供に対してやる授業じゃないよ……あれ。
 資料元が稗田のだから難しいのも分かるが、少なくともそのままの内容は小学生クラスの人間に教えるものではない。
 実際今日の授業なんて寝てる生徒が大半だったし、起きている生徒もただ板書しているだけに感じた。
 

「授業というのは形を変えれば先生と生徒の会話なんですよ。
 相手の言葉が分からないまま話が進んでも面白くはないし、分からないまま進んでも絶対理解なんて出来ません」
「なるほど……では具体的にどうすればよいのだろうか?」
「そうですね……簡単に分かりやすく、それでいて相手の興味を引くような授業を目指せばいいのかな?」

 とりあえず慧音さんには昨日僕がやった授業方法を丁寧に教えよう。























「あー終わった。お疲れ様です慧音さん」
「ああ、お疲れ様」

 ようやく慧音さんに一通りのアドバイスをすることができた。
 んー、と背筋を伸ばした時、あかね色に染まった太陽の光が目に入り込む。
 窓の外を見ると既に太陽は沈みかけて、空が綺麗な夕焼け色になっていた。

 「うわーもうこんな時間帯なのか」

 秋の日のつるべ落としって言う言葉があるくらい日照時間は短いからそれほど時間はたってないんだろうけど、
 真っ青な時間帯から話しているから長く話したように感じる。

「今回は沙耶君のおかげで助かったよ」

 そう言って慧音さんは笑顔で僕にお礼を言ってきた。
 うん、やっぱりこうやって人に感謝されるのは気分がいいな。
 まあ、本業からだいぶ離れているけどね。

 妖怪退治の依頼もそこそこは来ているんだが、あくまでそこそこだ。
 先代の巫女様が言うには先代の子供の頃に比べると妖怪が暴れまわることが少なくなったそうだ。

 それでも、巫女様が僕を連れて里をの中を動き回るぐらいは依頼があったのだから、
最近の幻想郷は平和になってきたということだ。

 ……その結果が今の何でも屋状態なんだけどね。
 とりあえず報酬はもう貰っているし、そろそろ頃合だろうから香霖堂の方に向かうとするか。
 と、思ったその時、

「そうだ沙耶君。少し時間は空いているか?」
「へ、時間ですか?」

 思わず変な声を上げてしまった。
 慧音さんが思いついたような顔をして突然そんな話題を振ってくるなんて、
 はて? 一体何の用だろう?

「これから香霖堂に行こうと思っていたところですけど……一体なんですか?」
「いや、昨日の急なお願いを聞いてくれたお礼をしたいと思っているのだが」

 なるほど。昨日のことのお礼か……やはりそういったことは律儀だな。
 でもどうしようかな。霖之助さんのは僕の都合で調整してもらったからこちらのほうがいいんだけど、
慧音さんのお誘いを蹴るのは気分が悪いな。
 巫女様も善意の行為は素直に受け取らないと駄目って教えられたし……

 香霖堂と慧音さんのお誘いを天秤にかける……うん、慧音さん優先。
 霖之助さんの方はずらせば何とかなるだろう。時間の指定はしてなかったしな。
 だったら今このお誘いを受けたほうが得だな。

「じゃあ、お願いしますね慧音さん」
「わかった。けど香霖堂の方はいいのか?」
「後でお土産を持っていくから平気ですよ」

 この後慧音さん愛用の甘味どころに行くことになった。
 楽しみだな。








あとがき
前回の更新から丸々1ヶ月も開いてしまって済みませんでした。
それにしても話がちっとも進まないや。
あのキャラとかあのキャラとかいろいろ出したいものがいっぱいあるのにな。
あと靈夢もそろそろ出さないといけないし、
魔理沙の性格もそろそろ調整を加えなくては……

やることがいっぱいで何時くらいでDSまで追いつけるだろうか?




[14307] 第12話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/05/29 02:48
 夕暮れの人里は混雑していた。
 今日のおかずの材料を買いに来る人や、仕事が早く終わり一杯やっているもの。
 はたまた子供がお小遣いで物を買うなど、一種のミニお祭りと化している。

 僕は他人にぶつからないように人ごみを掻き分けながら、先導している慧音さんの後をついていく。
 子供だから小さい隙間を潜り抜けることができるけど、ちょっと気を抜けば流されてしまうのかもしれない。
 慧音さんもそこのところが分かってるみたいで時々後ろを振り返りながら大丈夫か? と声をかけてきてくれる。

 その心遣いはありがたいんだけど、子供といえど男だからその扱いにはちょっとむっと来るものがある。
 そのことを言ってみるのもアリかもしれないけど、軽く笑い流されるような気がするので黙っておく。
 
 そんなことを大人に言うと背伸びしている子供に見えると思うし、
 こういうのは靈夢や一緒に馬鹿やっている魔理沙のほうがいいだろう。
 ……まあ背伸びをしているのは事実だしね。

 って、そんな事を考えていたら慧音さんとの距離がちょっと開いてしまった。
 慧音さんが振り返る前に早く距離を詰めないと。
 が、さすがにこの人ごみの中を走るわけには行かないので、走るに近いような早歩きで人ごみの中を駆ける。 

 考えたら行動は早く、迅速に動けというのが博霊の教えだ。
 そういった教えが幻想郷の異変の早期解決に繋がっていたりと結構な実績を持っている。 
 だけどその結果が靈夢の妖怪に喧嘩腰というのに繋がっているとなると問題視せざる負えないけどね。

 人と人との間をうまく通り抜けて距離を詰めていく。
 妖怪相手の弾幕に比べれば単調だとか死ぬ危険性が無いから幾分か楽かもしれないが、
 人を避けたり追い越したりするのは結構大変だ。

「っと、失礼」
「あ、こちらこそ」

 何度かぶつかりそうになる度に謝罪の言葉を口にしつつ慧音さんを追いかけ続けると、
 先ほどまでと比べるとだいぶ人ごみが薄れて楽な場所に出た。

 チャンス! 今のうちに距離を稼ごう。
 そう思ってさらに早歩きのスピードをあげる。
 よし、あと少しで追いつくぞ。 

「着いたぞ沙耶君」

 目的の甘味どころに着いたので足を止めて振り向く慧音さん。
 あっ、やばい。

 慌ててスピードを落とすが、勢いを完璧に殺すことはできず、
 ぽてんと慧音さんに当たってしまった。

「えっと……大丈夫か?」
「……うん」

 子供だから体が軽いので慧音さんを押し倒すほどの力が無いので怪我はしなかったけど、
 恥ずかしいと心に傷を負ってしまった。






























 店の中に入り、空いている席に慧音さんと向かい合って座る。
 店員がお茶とメニューを持ってくるが、基本僕はこんな場所に来たときは大抵頼むものは決まっている。
 だけどやっぱり初めて来た場所だし、一応確認のため探してみる。
 えーと……お、あったあった。値段も手頃だしちょうどいいか。
 
「すみません白玉あんみつを一つ」
「私もそれで頼む」
「あ、じゃあ二つで」
 
 店員は注文を取り終え厨房に入る。
 しかしまさか慧音さんと注文がかぶるとは思わなかったよ。

「沙耶君もあんみつが好きなのか?」
「そうですね。主に餡子が好きなのであんみつはよく頼みますよ」

 靈夢とかはパフェとかそっちの方が好きみたいだけど僕は断然和風派である。
 甘い餡子に少し渋めの緑茶が最高に合うしね。緑茶好きとしてはこっちのほうがいい。

 さて、店員があんみつを持ってくるまで暇なので、お茶を少し含みつつ目線を動かし店内を見渡す。
 始めて来たのもそうだが、何より慧音さん贔屓の店だからどのようなものか少し気になったりする。
 店内には特に変わったものは無いが、意外と中は広く、多人数で利用できるテーブルが数台あり、
 そのためか店内は多数の買い物帰りの主婦が休憩として利用しているみたいで非常にぎやかだ。
 掃除もしっかりと行き届いており、これなら気持ちよく食べれそうだ。

「どうかしたのか?」
「えっ、いや慧音さんのお勧めのお店だから一体どんなものかなと思ってですね、
 正直なところ慧音さんが甘味どころを利用するのって考えたことがなくて」
「それは酷いな。私も甘いものをは好きだし人並みに利用はするさ。
 むしろ私としては君を此処に案内するのはどうかと思ったんだがな」
「それこそ酷いですよ。男だって甘いものを食べる人もいます。
 あとは僕に関しては育ちの影響もありますしね」

 巫女様や靈夢、時々魔理沙と言った女家庭で育ったためか僕の好みや思考がそっちよりになっていたりしている。
 要するに甘いもの大好き、可愛い物大好き、小動物大好きといった感じだ。
 特に甘いものは靈夢も好きで食べるので趣味で時々自分で甘味を作ったりしている。

 ほかにも友人と待ち合わせたり、仕事の打ち合わせに使ったりと何かと利用したりと、
 結構な頻度で利用していたりする。それに甘味どころには個人的に思い入れがある。

「それに……巫女様が仕事帰りによく連れて来てくれましたしね」
「……彼女が亡くなってからしばらく経ったな」
「はい」

 ……しまった。ついうっかり余計なことを話して空気を悪くしてしまったよ
 やばいな。何とかしてこの空気を変えないと。
 
「ああ、そういえば現博霊の巫女はどうしている?」
「えっ、あ、ああいろんな意味で先代を大体は引き継いでいますよ」

 何とか話を変えようとしていた事を思っていたことを察知したのか分からないけど
 都合よく慧音さんが話題を振ってくれて助かった。

「そうか。アレはなかなか里の方に来ないからな本来は宣伝しなければならないのに……」
「それを全部僕に押し付けてるんですよ。まったく少しは自分で動けばいいのに」
「ふむ。ならばそのことをはっきりと伝えればいいと思うが?」
「まあ……そこは僕も甘いといったところで」

 いつもいつもそう思っているが、結局の結論はそこにたどり着いてしまうのだ。

 と、そこまで話したところで店員が注文したあんみつを持ってきて目の前に置かれる。
 中身は一般的な白玉や餡子に求肥の他にいろいろな果物がたくさん乗っていて非常に綺麗で、
 普段行っている店とはまた別物見たいだった。

「それじゃあいただきますね」
「ああ。私も食べるとしよう」

 それじゃあいただきます。





























 さて、あんみつを食べ終えた後、お土産の和菓子を買って香霖堂に向かったんだけど。

「どうして二人ともここにいるんだ?」

 香霖堂の中には店主の霖之助さんがいるのは当然なんだけど、
 余分なおまけが2人いた。靈夢と魔理沙だ。
 しかもなんか鍋をつついているし、顔赤いし、完全にできちゃってるよ。
 周りの一升瓶がそれを証明してくれているよ。


「沙耶が注文した物が気になったから来てみたらなかなか来ないからここで食べようと思ったの」
「沙耶の帰りが遅いから香霖堂で何か美味しい物でも食べているかと思ったのよ」
「……それで押し切られたと」
「まあそういうことだよ」

 少し遅れるだけかと思ったらまさかこんなことになるなんて……
 あー何か非常に申し訳ない気分になってきた。

「香霖この酒も開けましょうよ……というか開けるぜ。」
「あら? 沙耶それお土産なのね。気が利くわ」
「いや、これお前のじゃないから! 魔理沙も勝手に開けるな自重しろよ」

 ……誰かこいつらを止めてくれよ。

あとがき
今回も月1ペースの投稿です。
次回こそは早くと思うほどなかなか書けません。
まあ、それは置いといて次回ようやく書きたかった場面に突入
そこで沙耶の能力も明かす予定です。



[14307] 第13話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/06/28 02:57
 今日も今日とて里のほうで仕事がある。
 これで買い物を含めると4連続の出勤だ。……神社を放置しすぎか?

 ……まあいいや、神様嫌いだし。仕事だし。

 欲を言えば霖之助さんに作ってもらった武器の慣らしをもう少し済ませたかったけど受けてしまったものは仕方が無い。
 そういうわけで今日も修行をそこそこに切り上げて、今回の依頼主の家である稗田家にお邪魔しているというわけだが…… 

「どうですか?」

 そう言って阿求は筆を置き、今書き上げたばっかの紙を僕に見せてくる。

「どうって……新手の生物か?」

 そこにはお世辞にも上手とはいえない禍々しいものが書かれていた。
 何というか邪神? 見るものの正気度を奪うようなそんな奴。
 こんな奴がいたら真っ先に退治しないとな。

「猫ですよ……描いてるところ見ていましたよね」

 いや、描いてる風景は見てたから何を描いたか知ってはいるが、
まったく別のものを描こうとしていた感じがして……

「原型を知れば知るほど信じられないと思うぞ、これ」
「そうですか」

 はぁ、とため息をつく阿求。
 そんな主人の様子を気遣ってかペットの猫たちが阿求のそばに近寄ってにゃーんと泣いて
 慰めているようだ。 

 今回の依頼主はあの阿礼乙女の9代目である稗田阿求。
 歳自体は僕と大差はないが、彼女を含め歴代の御阿礼の子は、
幻想郷縁起という妖怪に対する情報の本を書いていて、慧音さんとはまた別の幻想郷の歴史を記している。

 阿求もその例に漏れず今代の幻想郷縁起を書いているのだが、何でも妖怪達の絵を描きたいから描き方を教えて欲しいと言われた。
 絵を習いたいなら画家の方に行けばいいと思うんだが、阿求が描きたいのはどうやらキャラクターのほうらしい。
 確かにそっちならいろんなデザインを作っている僕のほうが得意だな。

 だから今、彼女の画力を知りたかったんだけど……予想外すぎた。もちろん悪い意味で。

「それにしてもどうして絵を描こうとしたんだ? 
過去の幻想郷縁起は一切そんなことは無かったのに」

 僕は視線を少し隣にあわせ聞いてみた。

 僕の隣に積まれているのは阿求以前の御阿礼の子が描いた幻想郷縁起が積まれている。
先ほどざっと目を通したがほとんどが文字で構成されており、絵などは資料としてちょこっと乗っていただけだ。
なのにどうして絵を習おうとするのだろうか?

 そうですね……と、阿求はつぶやきながらどう説明しようか悩んでいたが、
しばらく経って言葉がまとまったらしく説明を始めた。
 
「沙耶さんは今の幻想郷になってから幻想郷縁起が出るのは初めてということは知っていますか?」
「今の……というのは大結界ができてからということでいいのか?」
「はい」

 確か大結界は明治18年、西暦1885年にできて、御阿礼の子は百数十年に一人が生まれるから……
計算はあっているか。

「確かにこれがはじめての幻想郷縁起になるな」
「ええ、それと共にこの幻想郷縁起の意味も変わりました」

 ん? 意味が変わったってどういうことだ?

「今の妖怪達は昔に比べ、人を襲うことが少なくなりました。
それどころかこの人里にまで遊びに来るようになると幻想郷に対して人間の復権を目的としたこれは
もはやただの妖怪の情報雑誌のような物になりました」

 確かに今の時代にこんな本はあまり意味が無いのかもしれない。
 阿求も言ったように今の時代は人と妖怪が一緒に笑い、一緒に酒を飲み、一緒に時間を共有している。
 時代は変化した……か

「ですので私は今代の幻想郷縁起は昔とは違う新しい幻想郷縁起にしたいのです」
「その為に絵を教えて欲しいと言ったんだ」
「はい。今回の幻想郷縁起では妖怪ひとりひとりピックアップして描こうと思ったので
紹介の最後の方に絵を加えようかなと思いまして」

 確かに、妖怪達の印象をつけるんだったら文字だけでなく絵も入れたほうが分かりやすいな。
 文字ばっか続くと読み辛い人もいるし、阿求もいろいろと工夫しているんだな。
 でもそうなると、描いた絵が中途半端だといろいろ問題が起こりそうだし……これは気合を入れて教えなければ。

 と、思ったとき阿求が爆弾発言をした。

「妖怪のほかにも一部の人間ことも書く予定です。あっ、勿論沙耶さんも書きますよ」
「……えっ?」

 一瞬、時が止まった気がした。

「僕も載るの? それに?」
「はい。英雄伝の欄に書かせてもらいますよ。資料もありますし原稿も書いてありますよ」

 資料!? 資料って何だ??
 何時の間にそんなものがあるんだ。
 天狗か? 天狗の仕業なのか? ぶっちゃけありえそうで怖いんだけど。
 というか、もう原稿書いているのかこれ次のを発行するまで残るんだよな。
 ちょっと恥ずかしいぞ。

「一体どんなことが書いてあるんだ?」
「そうですね……職業が一応神主だとか沙耶さんの能力である災厄についてとか博霊のこととかですね
まだ書きかけですけど原稿見てみますか?」
「……はい」

 内容に関して言えば阿求の主観が入っていていて、未完成ながらなかなかの出来だった。
 後は絵だけだ。残っても恥ずかしくないようにしないとな。

  


あとがき
東方新作漫画発表来ましたね今から楽しみだな。
しかしやっぱり今年は新作は無しなのかな
それはちょっと残念だ。



[14307] 第14話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/07/27 09:14
 今現在、僕は台所にて簡単な料理を作っている。
 現在の時刻はそうだな……既に日が高く上りきった後なので、大体午後2時を過ぎたあたりだと思う。
 そんな時間帯に食べるんだから実に遅い昼食だな。

 鍋の中に昆布のだし汁と洗った米を入れて、弱火にして煮込み、
ある程度米が水を吸ったら、さらに火を弱めて、蓋をずらして閉めて軟らかくなるまでまた煮込む。
 その後水分を飛ばして味を調えて、梅干を乗せれば簡単梅粥の完成だ。


 出来上がった梅粥を茶碗に乗せて運ぶ。
 が……食べるのは僕や靈夢ではなく、魔理沙でもない。
 というかここは博霊神社ですら無い。

 今僕がいる場所は僕や靈夢たちが住んでいる現実世界と夢幻世界の境目にある館で、
通称夢幻館と呼ばれる場所だ。

 そしてその館の主人であり、四季のフラワーマスターや、
神社周辺最強の妖怪などの二つ名等で知られているのが風見幽香だ。

 僕と彼女の関係は巫女様のつながりで、紆余曲折があって今はいろいろなことを教えてもらっている立場だったりする。
 靈夢はその辺興味ないから幽香とはかかわりないけどね。
 
 そして……幽香は僕が倒すことを目標としている妖怪でもある。
 まあ、未だ負けっぱなしなんだけどね。
  
 今回、霖之助さんに刀を直して貰ったのも彼女と戦うための準備だし、
 阿求のところでも過去の詳細をいろいろと調べたりしている。

 今日こそは白星を勝ち取ろうと思ったんだが……

「ごめんなさい。幽香ちゃんは昨日嵐の中お花を護るために外に出ていたら風邪を引いて寝込んでしまっちゃって」
「そういうわけだから今日幽香はあんたと戦えないから帰りなさいよ!!」
「…………えっ?」

 とまあ、こんなわけで今日幽香とは戦えなくなってしまったわわけだ。
 だけど、このまま帰るのもどうかと思ったし、まだ昼を食べてないということなので、
こうして僕が幽香の昼飯を作っているというわけだ。

「もう出来たのかしら?」

 噂をすれば影という奴か。
 テーブルに料理を並び終えたところに幽香から声をかけられたので振り向く。 

「ん?ああ並べたから早く食べ……」

 そこには所々汗をかきながら顔が赤みがかっていて、
今は長い髪の毛が邪魔なのか後ろにまとめている幽香がいた。

 ちなみに服装はあの性格と違って、ピンク色のフリルが付いている可愛いパジャマを着ていた。
 んーそういえば最近は神社の修理ばっかであんな服とか作ってないな。
 今度魔理沙あたりにでも作って送ってみようかな?

 って、そんなこと考えるんじゃなくて、

「寝汗がすごく出てるじゃないか、どうして着替えてないんだよ幽香?」

 寝汗でぺたぺたしているんだったら早く着替えないと汗が引っ込んでしまうから
体によくないというのに。

「着替えは今エリーが用意しているから先に食べてから着替えようと思ったのよ」

 そう言って幽香は椅子に座り、用意したお粥を食べ始める。

 とりあえずご飯を食べれるだけの元気はあるのか。
だったら後はしっかり看病すれば直るか。

 いろいろ考えていると不意に蓮華の動きが止まった。
 はて?一体どうしたのだろうか?

「……じっと見てられると食べづらいのだけれど」
「えっ?あ、ああごめん。つい靈夢のときの癖でさ」

 どうやらいつの間にか幽香のほうをじーと見つめていたようだ。 
 ちょっと気まずくなったかなと僕は思ったが、幽香はそんなことは気にせずにお粥を食べ続けた。

 この空気は着替えの準備が出来たと報告に来たくるみとひと悶着があるまで続いた。

 


あとがき
はい、短くてすみません
今回旧作の東方幻想郷メンバーから幽香と一言だけですが
エリーとくるみの登場です。
そして長い間準備とかで引っ張ってきた一連の流れもお終いです。

当初はきちんと戦うのを考えていたのですが、
私の頭脳がゆうかりんの初登場はパジャマだろうと考えてしまったため
急遽風邪を引かせて無理やりパジャマに着替えさせました。
その結果いろいろとカットということになりまして
やりたかったことは幻想郷に行くのかな?



[14307] 第15話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:19bd4370
Date: 2010/08/23 05:03
 朝起きたらあたり一面が秋も終わりを告げるかのごとく落ち葉で埋め尽くされていた。
 昨日の夜から強風が吹いていたとはいえここまで酷いとは……

「しかし、よくもまあこの時期にこれだけの枯れ葉が残っているな」
「愚痴をこぼして仕方ないわよ。はい沙耶」

 そう言って靈夢は手にした箒を僕に渡す。
 さて、今日も靈夢と二人で神社を掃除する日が始まるのか。

 掃除に関しては僕よりもこの神社に長く住んでいる靈夢のほうが一枚上手であり、
そこら辺に関しては妥協が無い。
 要領よく、地面に落ちている木の葉を掃いていく。

 彼女いわく、参拝客がまっすぐお賽銭に歩いていけるように配慮しないとと言うことだが
その努力はむなしくあまり参拝客がやってこないのが事実だ。

 むしろその努力を宣伝にまわしたほうがいいのではないか?

「次はあっちを掃いてきてちょうだい」
「はいはい」

 と、まあこんな風に掃除に関しては彼女の独擅場だ。

「靈夢これはどうしたらいいんだ?」
「それは先に左のほうからやるのよ」
「靈夢終わったら次はどこをやればいいんだ?」
「じゃあこっちに来て手伝ってちょうだい」

 僕は靈夢にの指示を聞きながら分担して境内の掃除をテキパキと終わらせていく。
 時折茶飲み休憩や昼食を挟んだりしたがそれでもまだ太陽が高いうちに掃除を終わらせることができた。 
 
「んーようやく終わったわ。これで参拝客を迎える準備もできたわね」
「その肝心な参拝客が来るかさえ分からないけどな」
「何言ってるのよ。ご利益のある神社なんだから参拝客だってきっと来るわよ」

 ご利益ね……
 この神社にどんな神様が祭られているのか分からないけど
 本当にそんなのがあるんだったら多少はましになるのかな?
 けどご利益があろうと別の問題があるからな……
 
「まあとりあえず参拝客は置いといてこの落ち葉を片付けるか」

 僕の目の前には掃除で集めた落ち葉があるが量が量なだけあって山のようになっていた。
 処理をするのも一苦労だなこれは。
 しかしただ燃やすだけというのもなんだかな……

「あっ、そういえばまだサツマイモが残っていたわねぇ

 また何という都合のいいタイミングだな。 

「んーじゃあちょうどいいから焼き芋も一緒に作るとしようか」
「そうね。そのままにしていても使い道もなさそうねぇ」

 さて、靈夢も同意したし芋を取りに行くとするか。
 そう思って腰を上げたとき。

「こ、子供?」
「ん?」

 ふいに、知らない声が聞こえた。
 まさか本当に参拝客がきたのか?
 視線を声の先に移す。

 そこには見知らぬ男性がいた。
 身体的な特徴は何も無いほど若いがその顔は真っ青に染まっていて、
 こちらをじーと見ていた。

「あんた誰?」
「ひっ」

 靈夢が男に声をかけると男は体をビクッと震わせ、目を動かしてあたりをキョロキョロと見渡した。
 その行動があまりにもおどおどとしていて見ているこっちが不安になりそうだ。
 と、よく見れば服の一部が破れている。

 どうやら妖怪に襲われたらみたいだなこれは。
 なるほど……そりゃあオドオドとするよなぁ。

 とりあえずは誤解を解くために一言言うとしよう。 
 
「見たところ外来人だな。博麗神社にようこそ」

 そう言うとようやく男は安堵のため息をついた。
 やれやれだ。































 博麗神社の仕事は妖怪退治だけではない。
 滅多な事であまり無いが、外の世界からこの幻想郷に迷い込んできたりする。
 まあ、それは僕が証明しているわけなんだけどね。

 主な原因としては八雲紫という妖怪が食料としてつれてくるのだが、
 ごく稀に何らかの能力や、はたまた純粋にこの幻想郷にやってきたりする人がいたりする。
 
 で、そういう人たちを保護したり、外の世界に帰したり、里に住みたいという人がいたら
その仲介役になったりするのが博麗の大事な仕事の一つだったりする。

「ほ、本当にここまでくれば大丈夫なんだろうな?」
「ああ、ここから先は幻想郷の外の世界ですからね。とりあえずは安心してくれて構わないよ」

 で、今僕らがいる場所は幻想郷が隔てた神社の結界を越えた先、まあいわゆる外の世界だ。
 本来なら僕は付いていく必要は無いんだけど、ここから町はだいぶ離れており、
 道も整備されてないため歩きづらいので、外の世界に返す時は僕も付いていくことにしている。

 それに僕はこの幻想郷の結界を自由に出入りできるしな。

「そうか……ここにも神社があるんだな。ボロボロみたいだけど」
「こっち側の神社は忘れ去られてるからね……あっ、足元に注意してよ」

 男のほうに振り向いて注意をすると、外の世界の博麗神社が視線に入る。

 しかし何度見てもここが同じ博麗神社とは思えないな……
 人々に忘れられるのが本当の死と聞くがこれを見ているとわりかし冗談に思えなくなるな。
 
「えっと……どっちに行けばいいんだ?」
「僕が先頭を歩きますから後をつけてくださいよ」
「わ……わかった」

 さて、それじゃあ出発するか。


 森の中をしばらく歩いていくうちに男の人もようやく落ち着いてきたらしく、
だんだんと余裕を取り戻してきてちょくちょくと会話を交わせるようになってきた。
 
「けど、まさか妖怪なんてものが本当にいるなんて思わなかった」
「思わなくて当然。外の世界の人間は幻想を否定したから今の幻想郷ができたんだし」

 そうしたおかげでこの幻想郷の結界のシステムができたんだからな。
 何でも幻想郷には否定された幻想を引き込む結界が張られているらしく、
幻想郷にはほかの幻想が入り込むようになったみたいだ。

 で、その後に今僕らが管理している博麗大結界が張られ今に至ると。

「そんなことがあったのか……」
「今では外にとって幻想郷は知る人ぞ知るみたいな感じですからね……と、ようやく見えてきたか」

 ようやく目当ての掲示板にたどり着く。
 ここまでくれば後はもう案内の必要も無いだろう。

「ここを真っ直ぐに行けば町に出ますから後は自力で帰ってくださいね」
「ありがとうおかげで助かったよ。ちょっと待っててくれ」

 そう言って男はポケットから財布を取り出すとお札を数枚取り出して僕に手渡した。
 正直なところ外の世界のお金を渡されても困るのだが……
 どう返答しようか……

「えっと……」
「それは感謝の気持ちかだら黙って受け取ってくれないか?」
「…………わかりました」

 そこまで言われて「でもいりません」とはさすがに言えない。
 おとなしく受け取ろう。

「じゃあ」
「お元気で」

 そう言って男と別れる。
 ……お金の使い道考えないとな。

あとがき
俺、これが終わったら妖精大戦争やるんだ



[14307] 第16話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2010/09/17 01:42
 男の人を外の世界に送り返した後、僕は久しぶりに外の世界をふらついていた。
   
 本当なら今頃は博麗神社に帰っていて靈夢と焼き芋でも食べていたはずなんだが、
今は少し余計な荷物を持ってしまった。
 
 ちらりと自分のポケットに視線を移す。
 そこには僕の財布が入っていてるが、その中身は決して少なくない数の異物が入っていた。
 具体的に言うと諭吉さんです。

 いや、まあ本来諭吉さんは別に異物でもなんでもないんだけど、
 幻想郷に住んでいる身となればこんなの紙切れと一緒だしな。
 
 それに外の世界のお金を何時までも持っておくのもいろいろと悪影響を与えそうだし、
今現在外の世界でも普通に歩けるような服を着ているから何かしらにぱっと使おうと思ったんだけど……

「いくらなんでも子供に対しては多すぎるよなこれ……」

 さてどうやって消費しようか?

 子供的に考えれば一番お金を消費することができるのがゲーム類だけど、
幻想郷に電気が通ってないし、
携帯ゲーム機なら電池を大量に買えばしばらくはできそうだけど電池が荷物になるのと処分が難しいから
ゲームの類は却下だな。

 次に浮かぶのは玩具とかの類だけど……無いなこれは。
 まず僕が玩具で遊ぶ姿が想像できない。
 それに遊ぶ相手がいないと持っていてもしょうがないだろうしな。
 あっ、いや魔理沙は興味を持つのかな?
 
 まあそれは置いといて、他に何かあるだろうか?

 趣味のほうで考えれば人形とかぬいぐるみとかだが、
流石に店で買うのは恥ずかしいな。

 女所帯で育っているし何か可愛い物好きだけど一応は男だしな。
 それにぬいぐるみぐらい自作で作れるからこれも却下。

「あーもう何かいいアイデアないかな」

 と、つぶやいた時に一軒のコンビニエンスストアに目がいった。
 食品か……いいかもしれないなこれ。
 流石に保存とかの関係でいっぺんに買うことはできないけど靈夢とか喜びそうだな。

 それに久しぶりにポテトチップスとか食べたいし……うん決めたこれにしよう。
 今日少し使って次はまた今度買うことにしよう。

「それじゃあ適当にお菓子でも早く買って帰るか」
 
 焼き芋もできている頃だろしな。
 そう思って僕はコンビニの中に入っていった。






























「よし、帰宅完了。ただいま…………って、ええええええええええ」

 ただいまと言った僕を出迎えてくれたのは靈夢では無くて巨大な火柱だった。
 一体何事だよこれは!?

 僕は慌てて火の元へ行くとそこには二人して慌てている靈夢と魔理沙の姿があった。

「ちょっと、ちょっと早くこの火を消しなさいよ」
「それがちょっとコントロールができないのよ」
「あーもうどうするのよ」
「あは、あはははは」
「笑い事じゃないわよ」

 ……はたから見るとコントにしか見えないのは何故だろう?
 一生懸命なのは分かるんだけどな……って、そんなことしてる場合じゃなくて早くこの火を消さないと!

「靈夢、魔理沙早くこっちにこい」

 と、僕が言うや否や素早く後ろに下がる二人。
 随分と対応が早いな……流石だと思っておこう。

 二人が能力の範囲外から出たのを確認した後、
 目の前の火柱に能力で作り出した豪雨をぶつける。

 雨を降らせるとみるみると炎は鎮火していった。
 これで一安心だな。

「本当に助かった。ごめんな沙耶」

 と、魔理沙がすまなそうに話しかけてきた。

「はいはい謝るはいいから一体どうしてこうなったのか教えろよ」
「実は……」















「それで? 焚き火ついでにキノコを焼こうとして失敗したのか」
「うん、そうなんだよね」

 と、魔理沙は頭をかきながら言う。
 どうやら魔法としては初歩的な呪文で失敗したことが恥ずかしいんだろう。

 まあ僕からしてみれば靈夢を強制的に修行させたときに同じようなことをしていたので、
今更といえば今更のことなんだけどな。

「それにしても珍しいキノコだったのにもったいないわね」
「まあ次があると思えばいいさ」

 そう言って魔理沙の頭の上に手を置いて撫でる。

「……何してるの?」
「ん? 少し慰めようと思ってさ。まあいいや、それよりお土産があるんだけどさ」
「ん? お土産って一体何を買ってきたの?」

 お土産という部分に靈夢がすかさず反応した。
 やれやれまったくぶれないな靈夢は。

「外の世界のお菓子だよ。スナック菓子とかチョコ菓子とかね」
「へーなかなか美味しそうね早速食べましょう」

 そう言って靈夢は一目散に家の中に行ってしまったので、
 後を追いかける僕と魔理沙だった。















 余談だが、僕が食べようと思って買ってきた
コンソメ味のポテトチップスが消えていたんだけど一体どうしたのだろうか?


あとがき
最近ネタがまったく思いつかなくなってきた。
頭の中に浮かぶのはほとんど未来のことばかりだったりしています。
それでいて沙耶が暴走しまくっているから困ったもんだ。



[14307] 特別編第2話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2010/10/03 15:47
 ~最初に~
 これは本編よりはるか先の未来という設定の話です。
 ご了承ください。


 今年も春告鳥の声が店内に響き渡る、
 窓から差す光が暖かく感じられるようになり、そこから見える景色は白銀だった景色から
鮮やかな色彩に彩られるようになった。

 普段ならこの景色を楽しみつつ一人で酒を飲むところだが、今は商い中だ。
 それどころか今僕は店の中の清掃をしているため景色を楽しんでいる余裕は無い。
 売る数より増える数の方が大きいため、なかなか終わらないからである。

「おや? これは……」

 と、思わず口を漏らしてしまった。
 これはまた随分と懐かしいものを見つけてしまったな。

 僕が持っているのは昔に僕が書いた日記である。
 今現在も僕は日記を書いているがそれは紙が昔と比べ比較的に入手しやすくなったためであり、
この日記を書いていた頃はまだ紙は高価であった。
 その為当時の僕は数日で日記を書くのを止めてしまったのだ。

 一体どんなことを書いていたかな?
 既にこれを書いていた頃の記憶は薄れており、その当時は何を思って書いていたのかも思い出せない。
 だからその日記を読むことは過去の経験なのに新鮮味を感じた。

 が、なにぶん量が少なく、もう既に日記の最後のほうになってしまった。
 多少の名残惜しさを感じ、そのまま読むのをやめようかと思ったが、所詮は古い記憶だ。
 そのまま読むことを再開しよう。






























 ――カランカラッ

「すみません……ここが香霖堂ですか?」

 店の中に知らない声が響き渡る。
 その声で僕は本を読むのをやめて顔をあげ、声の持ち主を確認した。
 先ほどの声の持ち主は綺麗な緑色の髪の少年で身長は低めで、おそらくは魔理沙と同年代であろう。
 そして今ではあまり見られない狩衣を見るにおそらくは彼は博麗神社の関係者なのだろう。
 少し前に巫女がこちらに来たとき子供を拾ったと言っていたので間違いは無いはずだ。

「ああ、そうだけど君は一体?」
「えーと……沙耶と言います。服装で分かると思いますが一応博麗神社に住んでいます」

 普段はこんな格好はしないんですけどねと沙耶と名乗った少年は最後に付け足した。

「そうか沙耶というのか……それで本日は何の用できたのかな?」
「服を作りたいので上等な布を買いに来ました」
「服を?」

 その言葉に首をかしげる。
 今の世の中では服ぐらい買ったほうがいいと思うのだが……

「靈夢が近々誕生日を迎えるそうなので作ってプレゼントしたいと思っていて」

 なるほど手作りということか。

「分かった。少し見繕ってくるからそこで待っているといいさ」
「あっ、はい」

 それを確認した後僕は倉庫に入っていった。














 僕が店内に戻ってみると沙耶が一つ一つ商品に手に取り眺めていた。
 よほど珍しいと思っているのだろう。
 それもそうだ、僕の店の商品は外の世界の物であり他の幻想郷の店では売っていない。

 まあ、大半は手放したくないコレクションであるがね。

「どうだろうか? 僕の店の商品は?」
「あっ、店長さん……これらの商品って売っているんですか?」
「ああ、基本そこにあるのは店の商品だよ。何か欲しいものでもあったのかい?」
「いえ、ちょっと売る価値がないものがあったりしているので」

 と、言って沙耶は商品の一つを手に取った。
 それは確か……ビデオテープというもので用途は映像を記録するものだったかな?
 使い方が分からず適当に置いておいたが……

「幻想郷に電気が通ってないとかテレビがないと意味が無いなどもありますが……
 第一にこれ、ツメが折れているので録画できませんよ」
「そうなのかい?」
「それにこれもですね」

 沙耶はビデオテープを置いて次のを手に取る。
 それはペットを育成する不思議な機械だったな。
 僕も試してみたが何も起こらなかったが……

「この玩具は電池切れで動きませんよ。この幻想郷で電池は手に入れられそうに無いので
 完全にガラクタですよ」
「なるほど……しかし君は随分と詳しいな。僕でも使い方を見つけるのは苦労するのだが」
「まあ僕は外来人ですからね。記憶はありませんけど」

 なるほどそういう訳か……それならこれ等の使い方が分かるのも納得がいくな。
 と、そこで僕は名案が浮かんだ。

「沙耶、報酬を払うから店の中の商品について教えて欲しいのだけどどうだろうか?」





























 ――カランカラッ

「霖之助さんいますか?」
「いるけどどうかしたのかい?」

 ちょうど日記を読み終えた頃にまるで見ていたのかのようにタイミングよく沙耶が来た。

「ん? 何か読んでいたんですか?」
「ああちょっと昔の日記を見つけてね。それで? 今日は一体何の用で来たのかな?」

 僕は日記をたたみながら尋ねる。

「今日はちょっと霊夢に言われて花見の誘いに来たんですよ
 霖之助さんめったに来ないでしょ? だから今回は無理やりにでもつれて来いと言われてるんですよ」

 沙耶は困り顔で微笑しながら言った。
 が、同時に僕も困った顔をした。

「僕は騒がしいのは苦手なんだけどね」
「知ってます」
「宴会で呑みつくすほど酒には強くないんだが?」
「知ってます」
「生憎と今日は店の掃除をしていてね」
「手伝います」

 ……どうやらお互い引かないようだ。

「どうしてそこまでするのかな?」
「たびたび誘っておいて無視されては維持にもなりますよ。あいつの酒は絡み酒ですからね」
「……加減はしたいのだが?」

 譲歩としての条件を言ってみる。
 
「鬼がいる中で加減ができれば良いですけどね」

 明日が辛くなりそうだった。


 あとがき
今回は祝東方香霖堂販売記念小説です。まあ、まだ自分は入手できていないんですけどね。
今回ので一般的に名前だけ知られていた霖之助の正確が広まれば良いですね。

今回の話は沙耶と霖之助の初めての出会いを書いてみました。
霊夢や魔理沙ではなく霖之助が先に書かれるとは……
巫女様が登場する話もあったんですがそっちのほうはお蔵入りにしました。

それはさておき、あと1ヶ月でこの東方人生望が一周年を迎えます。
そこで今回はいつも読んでくれる人たちにネタ募集をしてみたいと思います。
新旧問わずどんなキャラでどんな話が見たいのかを感想のほうに書いていただければ
拾って書いてみたいと思います。
では



[14307] 第17話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2010/10/23 20:35
 そろそろというかいい加減というかここらで少しだけ僕の能力でも語ってみようかなと思う。

 唐突の流れなのは分かるが、既に何箇所か紹介する機会を逃しているし、このままずるずると引っ張っていくと何時紹介できるか分からない。
それに先日の魔理沙の火炎魔法の始末の際に使った後だし、ちょうど今話すのがタイミングがいいからである。
 
 けどその前に能力についての説明をしておかないといけないな
 基本的に幻想郷において能力と呼ばれている物の大半は個人や種族が持っている力――超能力みたいな物のことを差している。

 例として数名の能力をあげると
 霖之助さんの能力は道具の名前とその用途が分かる程度の能力を持っていているんだけど
この能力は名前の通り、見た物の名前と使い道だけが分かる能力なんだそうだ。

 慧音さんの能力は2種類あって、人間の時と獣人の時とで使い分けている。
 人間時の能力は歴史を食べる程度の能力を操り、獣人の時は歴史を創る程度の能力を使うことができるらしい。
 らしいと言うあやふやな言い方なのは、この能力に関して具体的なことは慧音さんに聞いてないからだ。

 と、まあこういった感じの能力が数多くあるわけだが、
 一部の者にはそういった超能力ではなく、技術を昇華させたものを能力として扱っている者もいたりする。

 魔理沙の魔法を使う程度の能力がこの例だな。
 他にも昔僕に刀の使いかたを教えてくれた人は剣術を基にした能力を使っていたな。

 さて、軽い前書きもとい脱線はこれくらいにしてまずは能力名を言っておく。
 これを言わないと何も言えないしね。

 で、肝心の僕の能力名は物事を操作や干渉することができる程度の能力だ。
 まあ分かりやすく言い換えれば何かしらの影響を起こしたり無効にすることができる能力と言ってもいいだろう。
 
 で、普段僕が使っているのは影響の起こす能力の方で、
前日みたいに豪雨を降らせたり、日照りと同じ影響を起こしたり等など主に天候に関することが多い。

 こっちの方がいろいろと便利だったり使い道があったり、くるみ対策が簡単にできたりといろいろな利点がある。
 おまけにこの能力は僕に相性抜群と厄神のお墨付きだったりする。何でかな?

 まあ、それはもう置いておくとして何で今のタイミングで言うことにしたのかと言うと……

 実はさっきまで目の前で火事が起きているため雨を降らしていたからである。

 甘味どころで一息ついているところに火事を知らせる鐘の音が鳴り響いたため、
店の中が大パニックになったのを鎮めたり、逃げる人々を掻き分けて進んだり、
これをチャンスと思わんばかりに火事場泥棒をしている奴を捕まえたりといろいろなことがあったんだが少々割愛させてもらう。
 
 せっかくいい気分で白玉餡蜜を食っていたのに勿体無かったなあれ……

「あーもう服が雨で濡れてぺたぺたしてて気持ち悪いな」

 早く着替えないと風邪引きそうなんだし神社に帰りたいんだが、
この寝転がっているこの馬鹿者をどうにかしないといけないんだよな……はぁ
 
 久々にため息をつくと寝転がっている奴を背負ってある場所へと向かった。



 あとがき
無理やり挟んだ説明回のため短いです
作中でもあるとおり発表のタイミングを何度か逃しているので
いい加減公表しておかないとなーと思ったので

次回の話は分かる人にはわかるんじゃないのかな
次も短くなりそうな気がしますけどね



[14307] 第18話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2010/12/13 17:18
「ハーックシュン……」

 両手がふさがっているため、くしゃみの音を小さくすることができず音が回りに漏れてしまった。
 普通なら大変恥ずかしい気持ちがするんだが……

「まあ、今は人影すら見えないんだけどね」

 今現在、火事で焼かれた部分の道を歩いているから里の人たちはここにはいない。
 既に非難が終わった頃だろう。早めに行動できていたから死人は出ていないはずだ。
 それはそれでいいことなんだが……

「んっ……」
「その隙を狙ってこんな馬鹿が出てくるからな」

 今僕が背負っている火事場泥棒が起きそうになったので一撃を食らわせる。
 いいとこにモロに入ったおかげでピクリとも動かなくなった。 

 火事を消し終わってから火事場泥棒を働いた奴を背負ってから既に10分くらい経過しただろうか?

 雨に濡れたおかげで服が体に引っ付くのが気持ち悪かったり、冬の風がさらに冷たく感じるようになり
体の芯から凍えるようになってきた。
 さっきから体が震えるようになってきた。

「あーこれ風邪を引いたな」

 ああもうこんなことしてないで早く神社に帰って布団に包まりたいな。
 
「というかこいつ、このまま放置してもいいんじゃないかな?」

 一瞬、そんな事を考えたが、流石にそれは問題だと思い直す。
 夏ならまだしも、冬にそれをやっちゃ凍死するかもしれない。

「とりあえず日照りで周囲の日光の力を強くしたけど僕が離れると効果が切れるしな」

 結局はこいつを連れて行くしかないか……はぁ
 いつもの癖でため息がこぼれる。
 ため息をつくと幸せが逃げると言ったのは誰だっけな?

 そんなくだらないことを考えながら一歩一歩歩きながら、目的の場所へと向かっていく。

 ぶっちゃけあの人はあんまり会いたくないんだけどな。




























 さて、意外に思うかも知れないが実はこの幻想郷には警察機関が存在していたりする。
 と、言っても外の世界にあるような立派なものではなく、
 どちらかといえば派出所みたいな小さいものだ。

 
 理由は単純明快。
 この幻想郷において犯罪者が非常に少ないからだ。

 この幻想郷では妖怪の問題が多すぎて今の今までそれほど大きな犯罪は起こっていない。
 時にこいつみたいな泥棒などの犯罪は起こっているが、それでもごく少数であって、
妖怪達の被害に比べれば扱いが月とすっぽんだ。

 一応警察も妖怪の犯罪に対する対応を取ることもあるのだが、普段は僕や慧音さんや里に住んでいる退魔師が解決しているため、
利用者が少ないこともあげられる。
  
 そういった事情があるためか、警察施設は里の中心ではなく少し離れた場所にぽつんと建っていたりする……
 ていうか、ぶっちゃけ遠い。
 ここに来るまで3回くらいは気絶させたぞ。

 もう体のほうも辛くなって来たし、さっさと引き渡して帰るとするか。

 建物の中に入ると、入り口の近くに小さなデスクが置かれており、そこに座って何かしらの作業をしている女性の姿が目に入った。
 服装はOLスーツという幻想郷では大変目立つ服装であり、胸にしている黄色のネクタイと非常にマッチしている。
 その女性は僕が入ってきたことに気づきと顔をあげて作業を中断した。 
 入ってきた人物が僕であることにを確認するとだるそうな顔をしていたのを戻して話しかけてきた

「沙耶じゃない。 珍しいなこんなところに来るなんて」
「ひさしぶり小兎姫。僕としても来たくは無かったけど……まあやむ終えない事情があってね」

 目の前で僕に話しかけてきたのは小兎姫という幻想郷でもあまり見かけない婦人警官であり
あまりあいたくない僕が苦手とする数少ない人物だ。
 何でかと言われると僕の第六感がこいつと靈夢をあわせるなと教えているからだ。
 こういう時の僕の感は的中しやすいのだ。

 そういうわけで他に話ができる人と会話をしたいところなんだけど周りを見ても小兎姫以外誰もいない。

 う~んまた外れか。
 何度かここに来たことはあるけど毎回毎回小兎姫しかいない。
 というかこいつのほかに警官とかいるのかとすら思えるレベルだ。

「ところでさっき事情って言っていたけど何かあったのか? 後ろにいる人物と関係があるの?」

 小兎姫は僕が背負っている者に興味があるらしい。
 まあ、白目むいていて気絶していて自分よりはるかに小さい子供に背負われているんだし
興味が出ないほうが無理だというものだろう。

「さっき里の向こう側で火事が起こったから雨を降らせて消火をしたんだけど、
 その時にこいつが人がいない民家を狙っていたから捕まえたんだよ。
 で、火事のおかげで人もいないし、冬の寒さの中放置も駄目だからこうして警察署まで送り届けてきたんだよ」
「そうだったのか。じゃあそいつはこっちのほうでちゃんと牢屋に閉じ込めておくわよ」

 そう言って小兎姫は立ち上がると僕のほうに近づいて今まで担いできた泥棒を担ぎ上げる。
 その結果僕の背中にあった重みが無くなり開放される。

 あ~しんどかった。ただでさえ体調悪いのに身体能力強化に霊力を使うんだもん。
 持続力の特訓も増やさないといけないなこれは。

「しかし最近になって牢屋を活用することが多くなってきたな。まだあまりはたくさんあるけどさ」
「ん? そうなのか」

 それは初耳だぞ。

「最近妖怪達がおとなしくなって来たから妖怪達の恐怖が薄れてきているのでしょうね。
 そういったことは君も気づいているんでしょ?」
「まあ……確かにそういった依頼は少なくなってきたしな」

 んーただ単に仕事が減っていくだけだと思っていたけど確かによくよく考えればそうだよな。
 さっきだって犯罪者が少ないのは妖怪達のおかげだって思っていたし。

「ついこの間も2人も捕まえたしね……あっ、いや1人は連れてこられたんだ」
「連れてこられたって……一体何をしたんだそいつ?」
「さぁ? 連れてきた奴からは何も聞いていないけどね」
「聞いて置けよ!!」

 警察官からあるまじき発言が飛び出してきたので思わず怒鳴ってしまった。
 一体誰がこの人を警官にしたんだよ。

「刀持っていたし人斬りでもしたんじゃないのか?」
「刀持ったくらいで人斬りにするなし」

 ああもう頭が痛くなってきたな。
 この痛みが風邪からくる頭痛だと信じたい。

「ちなみにもう一人の方は里香と言うんだけど……」
「いや、もう帰りたいからその話は喋らなくていいや」
「ん、そうか」

 なんか一気に具合が悪くなってきたしこれ以上ここにいても意味ないだろうしな。
 風邪をこじらせる前にさっさと退散しよう。

「それじゃあね。今度来たときは自慢のコレクションを見せてあげるわ」
「いや、そういうことするは霖之助さんだけでいいから」

 そう言って僕は警察署を後にした。

 


 しかし、タイミング逃したなと思うのは何故だろう?




あとがき
祝!1周年
というわけでこの東方人生望を書き始めてから1年が過ぎました。
書き始めた当初とはまったく別の話になってしまい
沙耶の方も初めのほうに考えていた設定もころころと変わって別人のようになってきたように思えます。
しかし、この一年を振り返ってみると長いようで短かったような気がしますね。まだ夢時空も始まっていないし。
自分の展開の遅さを実感しますね。
でもようやく夢時空のキャラクターが出てきたのでさらに進展していきたいと思います。

さて少し捕捉を加えますと、今回出てきた小兎姫ですが上でも書きましたが夢時空に登場するキャラクターです。
出てきた当初はすこし過激なお姫様ですが実は演技していた警察官という設定でした。
靈夢のくだりについてはEDでちょっとしたことがあったのです。

今回はこの辺で終わろうと終わります。
このSSは来年に向けて頑張りたいです。



[14307] 第19話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2010/12/16 19:32
「ふーむ39.5℃ですか……だいぶ下がりましたのう。 どうやらただの風邪のようですじゃ」

 玄爺が体温計の温度をみて安堵のため息をついた
 39℃超えで安心されるなんて……昨日はどれほどの高熱だったんだよ。

 里の火事を消した次の日……いや、まあ、予想道理というかなんというかねぇ。
 僕は高熱を出してしまいいつの間にか布団に寝込んでいた。
 
 昨日あれほどの描写をしておいて風邪を引きませんでしたということはなく、
玄爺が言うには神社に帰ってきた直後にぶっ倒れてそのまま意識を手放してしまいそこから先は何も覚えていない。

 僕が境内で倒れたおかげでどうやら昨日靈夢や玄爺は大慌てになったが、
 すぐさま手当てをしてくれたおかげで、今はなんとか意識を取り戻して体が少し楽を感じるくらいには回復した。

 で、今現在も靈夢と玄爺が僕の部屋に来ていて看病をしてくれているんだけど……
 なーんかピリピリしているというかマジ切れ少し前というかそんな感じか?
 とにかくただならぬオーラを発しているわけで……ぶっちゃけこれ怒っているよな?

 でも何で怒っているんだ? ただ単に風邪を引くくらいではそんなに怒るような要素はないと思うんだけどな。
 うーん…………駄目だ、熱のせいで頭が響いて考えるのが辛い。玄爺なら何か知っているかな?
 ちょうど今靈夢は用事があって席を外した事だし聞いておくか

 頭の上に載っていた濡れた手ぬぐいを取って上半身を起こして、玄爺に話しかける。

「あのさ玄爺ちょっといいか?」
「沙耶殿! まだ寝ていないと駄目ですぞ」
「少しの間なら大丈夫だよ……それよりなんで靈夢が怒っているか理由知っているか」
「あーそれはですね……ちょっと待ってくださいね」

 そう言って玄爺は浮き上がるとふわふわと移動して部屋から出て行ってしまった。
 しかしこうして見ると亀が浮き上がるのってシュールだよな。
 どこかの大怪獣みたいに回転でもすれば少しは見栄えがよくなるんじゃないかな?
 あっ、でもその場合炎を吐かないと駄目だけどさ。

 しばらく待っていると玄爺が何かを口にくわえて帰ってきた。……あれは新聞か?
 玄爺が僕のひざの上に落とした新聞を拾い上げる。

 ん? この新聞はいつも購読している新聞ではないな。号外って書いてあるし。
 製作者の名前を見るといつも号外新聞を作っている天狗なんだけど
 号外新聞だから質よりも速さを優先するような奴で大した物はあまり載っていなく、
 読み物には向かなくてささっと見てどんな出来事があったのか確認するくらいのものだけど……
 
 新聞トップページを見る。そこには里で起こった火事のことについて書かれており、
 どうやら出火元は僕が食べていた甘味どころから少し離れていた場所にある飲食店からだったみたいだ。

 んー別にこの記事を読んでも靈夢が怒るようなものは何も書いていないんだけどな。

「あ、そこでは無くて問題は次のページですぞ」
「次のページ?」

 玄爺の言葉に疑問を浮かべながら新聞をめくって次のページを見て僕は固まった。

 そこには”お手柄何でも屋 火事場泥棒を見事拘束”という見出しで僕についての記事が載っていた。おまけに写真入り。
 その写真は拘束した瞬間を見事なまでにに綺麗に撮っていた。ずぶ濡れで髪の毛がぼさぼさの姿のぼくを。

「えっ、何これ?」

 しかも号外ってことはこれ里や他の妖怪のところなんかにも広まっているってことだよな。
 うわっ、予想以上に恥ずかしいぞこれは。殆どの奴がこれを読んでいるってことはもしアイツが見ていたとしたら……やべぇ寒気がした。
 幸いなのは記事のほうはそこまで詳しくは書かれてないからあること無いことのでっち上げが無いことなんだけど、
 それでも記事にされるのはなんかこうむず痒いものがある。

 が、それだけだ。
 別にこの記事自体に靈夢を不愉快にさせるような要素は入っていない。
 となると外的要因だけど……ん?

 まてよ、昨日からどたばたしていたと言っていたし、もしかして天狗の対応に手間取ってたから
 状況を作った僕に対して怒ったとかか?

「んーもしかして取材の天狗が山ほど来たから怒っているのか?」
「一応取材をしたいという天狗たちは来ましたけどそれとは関係ないですぞ」
「なんだ違うのか。じゃあ一体何が原因なんだ?」
「その見出しですぞ」
「見出し……?」

 玄爺に言われてもう一度見出しを見る。”お手柄何でも屋 火事場泥棒を見事拘束”
 んー別に何もないよな。普通の見だしみたいだし。

「ごめん分からないや、どういうことだ?」
「あのですね沙耶殿。沙耶殿の本業をお忘れですか?」
「本業?それは勿論……あっ!」

 え、もしかしてもしかするとそういうことなのか!?

「要するにこの見出しの何でも屋の所が神主じゃあ無かったから靈夢が怒っているのか?」
「おそらくは、とだけです……ご主人様自身そこまで自覚はしていませんから詳しくは分かりませんがのう」

 玄爺がとぼけた顔で言ったが、玄爺がそんな風に言った時は大体があっているのだ。
 僕は靈夢が気が付かないうちに怒らせるような行動をし続けていたのだ。

「ご主人様は先代様に懐いておられましたし、あなた様のことも少なからず思っております。
 あなた様はご主人様と共に先代から教えを受けた身です。ですから何でも屋と誤解されるのは……」
「そう……か」

 ここ最近は殆ど神社にいない日が続いていたからな。
 何が神様嫌いだ、何が仕事だ。何が何でも屋だ。まったく過去の自分を殴りたくなって来るな。
 あー、穴があったら入りたいぜ。

 そんな頭の中をごちゃごちゃにして考えていると、
 
「まあ、そこまで深く自分を責める必要はないですぞ」
「えっ?」

 玄爺の凛とした声が頭に響いた。
 せめる必要がないって一体……

「先代だって里の人々の頼みをいろいろ聞いたり、依頼されたことをこなしたりしておりました。
 ただ沙耶殿は先代がやってきたことをちょっとだけはりきり過ぎただけですじゃ」
 
 そこで玄爺は一旦しゃべるのをやめ、一呼吸おいた。
 僕はつばを飲み込み次の玄爺の言葉を待つ。

「要はバランスですぞ。沙耶殿がこれまでと同じように依頼を受けるんだとしたらそれ以上に神社の仕事もがんばればよい。
 もうそろそろで年始明け、その時にでもご主人様の手助けをがんばればいいじゃろう」

 ……そうだったな。ここ最近忘れかけていたが、僕は靈夢のサポートをすることを巫女様に言われてたんだったな。
 仕事に、掃除に、札作りに、修行に、妖怪退治に、異変にも。
 本当に懐かしい決意だ。

「玄爺ありがとう。おかげでこれから更に忙しくなるよ」
 
 玄爺にお礼言うとさすがに起きてるのが辛くなったので後ろに倒れる。





























 それからしばらく経って、襖がシャッと開いて靈夢がお盆を持って部屋に入ってきた。
 上に乗っているものは入れ物から察するにお粥と玉子酒かな?
 熱引いているときにポンと玉子酒が出てくるのは幻想郷らしいな。

「お粥を作ってきたけど食べるかしら?」
「……食べる」

 そう言って体を起こそうとするが、体がふらふらしていてうまく起こすことができない。
 やばいな、ちょっと無茶をしすぎたかな?

「どうしたのよ沙耶。さっきより顔色が悪いじゃない」
「いやーちょっと玄爺と話すときに体を起こしていたんだけどそのときに体力を使い果たしちゃってさ」

 あははと笑う僕だけど靈夢の顔は呆れたものを見る顔になっていた。
 まあ、仕方ないといっちゃ仕方ない。
 結局は自業自得だしね。

「そこに置いといてくれれば後で起きて食べるよ」
「そうじゃあここに置くわね」

 そして靈夢は僕が指定した場所に置こうとしたその時、玄爺がとんでもない爆弾を投下しやがった。

「別に置かなくともご主人様が沙耶殿を起こして食べさせればよろしいんじゃないかと」

 …………ナニイッテルノ?
 いやいや落ち着け、これは玄爺が勝手に言ったことだ。
 靈夢が受けるわけが……

「そうね……早く洗物をしたいしさっさと食べさせちゃいましょうか」
「えっ、マジ?」

 いやいやいやいや、ちょっと何考えているの靈夢。もう少しことの本質を見直そうよそういうのは。
 というか僕も何か頭の中が混乱してきたし。
 って、やばい靈夢が近づいてきたよ。近い近い近い……あっ、なんかいいニオイがする。

「はい、あーん」
「……あーん」

 ……食べきったおかゆの味は分かりませんでした。












 余談だが、お粥を食べさせられた翌日。
 僕の枕元にどこかのドラマに登場しそうなほどの豪勢なフルーツの盛り合わせが置いてあり、
 その近くにあったメモには”お見舞いとこの間のポテトチップスの礼をこめて”と書いてあった。
 一体誰が置いたんだ?




あとがき
今回の話は書いているうちにどんどんと別物に変化していきました。
おかしいな、最初は魔理沙と魅魔様と幽香のお見舞い話の予定だったのにな。
なんか玄爺が暴走して一人歩きしたような感じがしましたね。
沙耶も今後は描写されないだけでさらに靈夢に尽くしていくと思われます。
今回は今まで書いてきた中で最長の長さの本作は書いているうちにテンションがあがっていくのを感じました。
では、よい年越しを





[14307] 第20話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2011/01/01 00:00

 12月31日の大晦日……と言ってもそれはもう後数十分だけだ。
 今現在の時刻は午後11時半を超えたところでもうそろそろで新年へと移る。
 そんな時間帯に僕と靈夢は明日の仕事と、とある儀式の準備の仕上げを外で行っているのだけど。
  
「ううう寒い……」

 寒さに震える手を擦り合わせ摩擦熱を発生して少しでも体の体温を上げようとしながらそんな事をつぶやく。
 さっきまで夕食の片付けや何やらで神社の中にいたから外に出たら中との温度差で体が完全に固まってしまった。
 
「さすがに熱めの年越しそばのつゆも全部飲み干しただけではこの寒さに対抗できるわけないか」

 境内はこの前の大雪が残っていて完全には溶け切れていなかった。
 その為足元が濡れてしまい、足の裏の感覚が分からなくなるほどに冷えてしまっている。

 酒でも飲んで体の中から温まりたいが、これから神事や参拝客の相手で忙しくなったりするので
 酔わないようにするために飲むこともできやしない。

「ほら、情けないこと言わないの。 確かに今は寒いけどしばらくすれば寒さなんて感じなくなるんだし」

 靈夢が僕の独り言に割り込んできた。
 僕より先に外にでて、さっきまで境内の雪の片づけをしていた手はしもやけで赤く染まっていた。
 まったく、手袋くらいつけたらいいのに

「感じなくなるって……そういえば前に女性の方が皮下脂肪が多いって聞いたことが……って、あぶねっ!!」

 突然、顔の横を針が通っていった。ギリギリだったぞ今の!!

「いきなり投げることは無いだろうが!!」
「あっそ、じゃあ投げるわよ」
「ごめんなさい許してください」

 靈夢が針を構えてもう一発という体制を取ったので、素早く謝る。
 このことに関してはNGワードということだな。 失言だった。

「もうすぐ新年になるというのに相変わらずだな靈夢たちは」
「あら、魔理沙じゃない」

 さっきの僕たちのやり取りを見ていたのかケラケラと笑いながら魔理沙が後ろからやってきた。
 来たなら来たって言えばいいのに……まったく。

「今からこんな調子だと夜明けまで調子が持たないと思うがな」
「それは余計なお世話だ……というか魔理沙。お前口調戻したのか?」

 今現在、魔理沙は魅魔のところに魔法の修行をしに通っているんだけど、
 どうしてか分からないが修行をさせてもらう条件として魔理沙に丁寧な言葉遣いを使うことを強制させている。
 
 でもここ最近の魔理沙が使っている言葉遣いと違い、今の魔理沙は昔からの使っていた口調で
 僕たちに話しかけてきている。

「ああ、魅魔様が年末年始ぐらいは素の口調でいいって言っていたからな」

 こっちのほうが気が楽だしなと笑う魔理沙。
 僕としてもあんな丁寧な言葉遣いではなくてこうして気軽に話しかけられるこっちの方が魔理沙らしいと思う。

「それはそれでいいとして儀式の邪魔はしないでよね魔理沙」
「分かっているぜ、邪魔をしてお前と沙耶に攻撃されたらたまったもんじゃないからな」
「分かっているならそれでいいのよ」

 靈夢はさっきのじゃれ合っていた態度から打って変わって今はピリピリとした態度に変わっている。
 まあ、あの儀式……明けの明星の封印が失敗したらと思うと気が気ではないんだろう。

 とまあ、そんなやり取りをしているうちに腕につけていた時計がアラームがピーピーピーと鳴る。
 っと、もうこんな時間か。 58分になるようにセットしてあるからそろそろ移動しないとな。

「靈夢ー、魔理沙ー、もう後2分程で年明けるからそろそろ賽銭箱前に行かないと間に合わんぞ」
「ん? もうそんな時間なのか。それじゃあさっさと移動するか」
「ちゃんとお賽銭のお金を用意しないと駄目よ」

 それぞれが好き勝手に言いながら賽銭箱前に集まる。
 さて、何で僕らがこんな時間に神社に御参りをするかというと、それは二年参りという習慣があるからだ。

 日をまたいで御参りをすれば二年分を願ったことになり、ご利益も二年分になるからこういった名が付いたそうだ。
 まあ年末の御参りの分が入るんだったら普段から御参りすればいいと思うのはご法度だ。
 こういった事でも何かしらの由来があるんだからな……僕は知らないけど。

「毎回思うんだが沙耶って神様嫌いだというのにこういった御参りとかしていいのか?」
「別に……私情は私情だし、仕事もあるから使い分けぐらいするさ」

 んー我ながら何という暴論だろうか……まあいいや。

「ほら、もうカウントするぞ、はい5、4、3、2、1、…………」

 僕のカウントと共に二人が願い事の体制に移る。
 っと、僕も願い事、願い事。

 …………………………………………よし、完了。
 じゃあ今年に向けていろいろとやることやろうか。

「それじゃあ二年参りも済ませたし、さっさと儀式に移ろうか靈夢」
「ええ、それじゃあ沙耶は配置について頂戴」
「りょーかい」
「それじゃあ私はお前たちが失敗することを念じることにするぜ」
「おい、魔理沙!!お前という奴は……」

 まったく、今年も忙しくなりそうだな

































 この後いつもどうり儀式を終わらせて、慧音さんが参拝客を連れてきてくれたので神社は大賑わいになった。
 僕は神様が嫌いだから都合のいいことを言っているかもしれないけどこのお願いだけは叶えてください。
 ”どうか靈夢や魔理沙達といつも通りの日常が遅れますように”
 


あとがき
新年明けましておめでとうございます。
さて、初めて現実の時間とSSの時間が一緒になりました。
今回は儀式の方には触れていませんけどこれは次の機会にとっておきます
今年も沙耶達と共に新年を生きて生きたいと思います。



[14307] 第21話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2011/01/23 04:33
 正月気分……もとい新年気分がある程度抜けてきた1月の中ごろ。
 博麗神社の台所にて鍋の中をかき混ぜている僕のテンションは大幅にあがっていた。
 具体的には鼻歌を口ずさむ程にご機嫌だった。

 今、僕が作っているのはお汁粉だ。
 といっても別に今日飲むために作っているわけではなく、明日の鏡開きの際に飲むように今から仕込んでいるのである。
 別にこんな手間隙かけなくても当日作ってすぐ飲めるようなレシピも知ってはいるが、妥協はしない。

 なぜなら僕はお汁粉が白玉あんみつについで好きだからだ。というか小豆系の菓子が好きだからだ
 ゆえに僕は完璧なお汁粉を作るのだ。

「テーンテンタ~ラターラフ~ンフーン……っと、もうちょっと砂糖をいれた方がいいかな?」

 味の様子を見ながらこの日のために用意した高級な和三盆を少しずつ投入し、焦がさないようにかき混ぜながら溶かしていく。
 うんうんだいぶいい感じになってきたな。 
 それじゃあ後は少し塩を加えて煮込むことにするか。

「フンフンフ~ン チャーラッチャチャーララー」
「様子を見にきたけど……これはまた随分とご機嫌ね」
「ん? ああ靈夢か」

 あまりにもテンションが高すぎたため声をかけられるまで気がつかなかった。

「大好物だからね。作っている最中でも気分も良くなるものさ」
「はぁ……わざわざ鏡開きの前日に作らなくてもいいのに」
「いやいや靈夢。お汁粉ってのは時間を置いたほうが味がなじんで美味くなるんだよ。
 それにせっかくの良い小豆や砂糖を買ってきたんだししっかりと調理しないとな」

 ちなみにこの小豆や和三盆は外の世界で僕が買ってきたものだ。
 食料品などの質に関しては圧倒的に外の世界のほうが上であり、
 極上なものを作ろうとするならば必然的に外の世界のものを頼らざるおえないのだ。

 まあ、そういったものは当たり前のようにお金がかかるがそれに関しては
 前回貰った分が残っているので問題なかった。
 というかまだまだ残っていたりする。

「まあそれはさておき、せっかく顔を出したんだ。 味見をする必要があるんだけど少し飲んでみるか靈夢?」
「んーそうね……せっかくだし少し貰うわ」
「了解」

 僕は戸棚からおわんを二つだし、出来立てのお汁粉を少しだけ注いでいく。
 流石にこれだけだと寂しいので栗の甘露煮を付け加えてっと。

「よし完成。じゃあ食べてみて靈夢」

 そう言って靈夢に箸とおわんを渡す。
 受け取った靈夢は栗をお汁粉に浸した後、直ぐに口に入れてお汁粉を飲み込んだ。

 さて、反応はどうだろうか

「へー、この小豆思っていた以上にホクホクしているわね。 豆自体も美味しいし……これはいけるわね」

 おっ、高評価だな。どれどれ……

「うん美味い。 この小豆は買って正解だったな。 明日が楽しみだな」
「期待しているわよ……お餅は2個入れてよね」
「はいはい分かっているよ。 それより靈夢のほうこそ鏡餅の管理をしっかりしろよな」
「私はそんなヘマはしないわよ」

 とまあこんな感じで今日も一日が過ぎていくのであった。




あとがき
今回は鏡開きの話でした
皆様は鏡開きの餅はどうやって食べていますか?
私は昔はぜんざいで食っていたのですが、今はお汁粉のほうが多いです。
それじゃあまた次回お会いしましょう



[14307] 第22話
Name: オニキス◆621e4f8e ID:78f046a5
Date: 2011/03/09 22:01
 冬の寒さもだいぶ落ち着き始めた3月の上旬……というか3月4日の本日は昨日行われたひな祭りの宴会の後片付けで
 今朝から大忙しだ。

 朝早く起きて眠気を覚ましながら直ぐに昨日の宴会で出たゴミの片付けや掃除をしたり、料理に使った皿や調理道具を洗ったり等
 魔理沙を見送ったり……別に普段と変わらないなこれ。

 女の子の健やかな成長を願うひな祭りもここ幻想郷では宴会のための理由作りでしかないのだ。
 まったく、もう少し靈夢も魔理沙も女の子らしくなればいいのに。

 特に昨日の酔っ払い具合は本当に酷かった。靈夢も魔理沙も絡んできてつまみを作らされるわ酒の大量に飲ませるわ
 あれだけストックしていた酒が一晩で空っぽになってしまった。ああ、また余計な出費がでていく……はぁ。
  
 とまあ、そんな愚痴とため息をこぼしながら後片付けをしていくのがいつもの宴会の後片付けなんだが、
 今回はひな祭りなので雛人形の片付けも含まれているのだ。

 ちなみにこの雛人形は僕が作った特別性だったりする。
 元々博麗神社にあった靈夢の雛人形が神社の倒壊に巻き込まれて壊れたため一から作ったんだけど
 我ながら良い出来だと思う。だけどその分人形が多くなりすぎたので片付けるのが非常に面倒だ。

 雛人形を早く片付けないと嫁に行き送れると言われているが、
 ここ幻想郷においてそういった迷信は洒落にならなので早めに片付け無ければならないんだけど
 いかんせん僕と靈夢は子供なので片付けるのは一苦労だ。雛人形って意外と重たいんだよね。
 それにお飾りとか土台のあれもあるし、小分けにして入れても結構な重さになるし。
 だからこうしてさっきから雛人形の箱の端を二人がかりで持って運んでいるんだけど……
 
「ちょ、ちょっと靈夢早すぎ早すぎもっとペースを緩めてくれ、こっちに傾いてるし重いから!」
「あーもう仕方ないでしょ、箱が大きすぎて前が見えないんだから」
「うわっ、馬鹿馬鹿重い重いって潰れる潰れるちょっと一回下ろすぞ」

 と、まあこんな感じでなかなかペースが上がらないのだ。
 先代様が生きていればなとつくづく思う今日この頃だ。





























「んっー、はぁ、ようやく倉庫の前まで運び終えたか。後はこれを仕舞っておしまいだな」
「あーもうくたくたよ。早くお茶を飲んで一服したいわ」
「同感、確かまだお茶請け用の羊羹が残っていたからそれを切るか」
「ついでにお茶も入れて頂戴ね」

 そう言って靈夢が倉庫の鍵を懐から取り出して南京錠に差し込んでまわすとガチッと重々しい音を鳴らし取り外す。
 そして観音開きになっている倉庫の扉をゆっくりと開けたその時、倉庫の中からにゃーと鳴きながら猫が飛び出してきた。

「きゃっ!!」
「うわぁ、ネコだ!ネコ! 可愛いなぁ」

 うん、反射的に思わず声を上げてしまった。まあ可愛いから仕方ないよね。
 こんな可愛いのを見たら誰だってそうするだろう。

「こっちおいでこっち、よーしいい子だな」

 猫の目の前で手招きをして僕の言葉に従うようにやってきた猫を抱き掲げやさしく撫でる。
 おー、気持ちよさそうにしているな。いいなーこのネコ可愛いなー癒されるよ本当。

「でも、このネコはどうやって入ってきたのかしら?」
「鍵はかけてあったからな……どこかに空いてある穴から潜り込んできたとかかな?」
「いえ、それは違いますぞ沙耶様」

 僕の考えを急に出てきた玄爺すぐさま否定されてしまった、というか冬眠していたみたいだったけど起きてきたんだ玄爺。
 まあ、もう3月だから起きて来ても不思議じゃないんだろうけどさ。

「何か知っているの玄爺?」
「ええ、そのネコの正体は陰陽玉ですよ」
「「……陰陽玉!?!?」

 僕と靈夢の言葉が重なる。
 いやいやいやいや、えっ、何で? 陰陽玉って普段僕らが使っている奴のでしょ?
 それが何で猫になるんだ?

「おそらく陰陽玉の霊力が溜まりすぎたので暴走しているんでしょうな」
「暴走してるの陰陽玉!?」
「ここ最近平和ボケしていたんでしょうな……まだ、陰陽玉を制御できていないようですから
 少しは修行して霊力を発散していれば良かったのに」

 ……これ直ったら絶対修行に持っていこう。
 これ以上博麗の秘宝に悪影響を与えちゃいけないし。うん決定だ。
 今度こそマジだ。

「でもさ何故に猫なんだ?」
「さぁ?それに関してはわしは知りません」

 知らないって一番聞きたいところなのに何で肝心なところが分からないのかよ。
 
「これって何時までこの状態なのかしら玄爺?」
「これくらい形だとまあ3日もあれば元に戻るでしょうからそれまでの辛抱でしょうな」

 3日か……思ったより長いかな。
 もしかして今妖怪の大事件が起きたら僕一人で戦わなければならないのか?
 それは非常に面倒なんだがな。

「まあそれまでは何も出来ませんからね。元に戻るまでペットとして可愛がってみてはどうでしょうか?」

 ペットね……いいかもしれないな、うん、こういったことも経験しておかないとね。
 それにこういった機会じゃないと世話できそうにないしな。よし、まずは猫の洋服でも作ろうとするかな。
 よーし、腕が鳴るぜ 元に戻るまでに絶対可愛い服を着せてやるぞ!!
 僕は新たな決意を胸に秘め、さっきまで放置してあった雛人形を片付けるのであった。


あとがき
今回の話は東方封魔録のEDの話を組み込んでいます。
実際には事件の数ヵ月後に玄爺から話されるんですけどね
猫のほかにも芳香剤になったり甘いものを食べても太らなくなったりといろいろな力を持っている陰陽玉ですけど
これ、謎の生命体なんですよね。初期設定は

さて、それはさておき東方の新作発表出ましたね
正式のナンバリングは2年ぶりの今作のタイトルは東方神霊廟……今度こそ魅魔様の出番か?
今年の夏に期待ですね


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