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広島西飛行場廃港へ 問われる県と市の連携 '11/3/10

 広島市議会がきのうの本会議で広島県営の広島西飛行場を市営に移すための条例案を否決した。

 飛行場として存続させる前提となっていたのが市議会の可決だった。重々覚悟の上の結論といえるのだろうか。

 4月に広島市長・市議選を控え、市議の間には「新市長の下で結論を出すべきだ」との声もあると聞く。拙速の感を抱く市民もいよう。

 広島西飛行場は120億円近い累積赤字を抱え、昨年秋からは定期便ゼロ。もはや飛行場の体をなしていなかったといえる。

 市議会の否決を受けて湯崎英彦知事は「新市長の判断を待つのは困難」と市長選の結果を待たずに廃港、ヘリポート化の手続きに入る意向を示している。

 期限を切ったのは飛行場の北側を横切る広島南道路の着工が迫っているからだ。2012年秋の予定から逆算すれば来月にも基本設計に取りかからないと間に合わなくなるという。

 市営化の構想は有識者による検討委員会の提言を受けた形で秋葉忠利市長が打ち出した。

 ただ飛行場の存続に不可欠なドル箱路線の東京線が就航するめどはない。その上、滑走路のかさ上げ工事などで計100億円を超す費用負担が見込まれる。岩国市の米海兵隊岩国基地で民間空港が来年にも再開されれば、競合相手はさらに増える。

 秋葉市長は「夢のある都市づくりのチャンスだったのに…」と残念がった。廃港により都市機能が低下することへの危機感もあったのかもしれない。

 しかし飛行場の市営化がどんな夢をもたらすのか、説得できるだけの材料を市民にも議会にも示せなかった。

 廃港後に向けて県、市は対応を迫られよう。中でも最も急を要するのが広島空港と広島市中心部とを結ぶアクセスの改善である。

 現在のように山陽道に頼ったアクセスでは、事故や降雪のたびにリムジンバスなどが通行止めに巻き込まれる。高速料金割引による渋滞の影響も大きい。

 急場をしのげる代替の手段は待ったなしだ。例えば、新幹線の東広島駅と結ぶバス便を復活できないのだろうか。空港に最寄りの白市駅の駅前一帯の整備も求められる。空路とライバル関係にあるとはいえ、JRにも共存共栄を模索する努力を求めたい。

 117万都市の中枢機能を今後どう高めるかという戦略が大きな課題になる。

 飛行場の跡地利用も考えどころになる。ヘリポートの用地は約48ヘクタールある跡地の1、2割ほどあれば足りるという。

 発想を変えることも必要だろう。離着陸の関係で飛行場周辺には高層建築物を建てられなかった。廃港すればその規制がなくなる。都市づくりの「夢」を描き直す好機になるかもしれない。

 その青写真を描くためにも県と市は連携を強め、幅広い層の声に耳を傾けてほしい。




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