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社説:米高官の暴言 これで対日責任者とは

 沖縄、そして日本に対するとんでもない偏見と暴言である。怒りを覚えるとともに、こんな人物が米政府内で「知日派」外交官として重用され、対日政策策定の実務担当者であることに、がくぜんとする。

 米国務省のメア日本部長が昨年12月、沖縄訪問を控えた米国人学生に対して行った「講義」である。

 複数の学生が作成した発言録によると、「日本の文化は合意に基づく和の文化だ」「合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりに使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする」と断言している。日本に対する最大級の冒とく発言である。

 講義内容の多くは沖縄への侮蔑発言だった。「沖縄の人はごまかしとゆすりの名人だ」「沖縄の人は怠惰で(ゴーヤーも)栽培できない」「沖縄の人はいつも(米軍)普天間飛行場は世界で最も危険な基地だというが、彼らは、それが本当でないことを知っている」などなど。

 沖縄県の仲井真弘多知事が強い不快感を示し、県議会は発言の撤回と謝罪を求める決議を全会一致で採択した。枝野幸男官房長官も「容認し難い」と批判し、米政府の公式対応を求めた。当然である。

 日本語が堪能なメア氏は、駐日大使館安全保障部長などを経て06年から09年まで駐沖縄総領事を務めた。しかし、沖縄が振興策と引き換えに基地負担を甘受する状況でないことを知らないようでは、とても知日派とは言えない。総領事時代には、普天間飛行場は「特に危険だとは思わない」と語ったことがある。今回も似た発言をしている。周辺住民の危険除去という普天間問題の出発点を覆す議論であり、重大だ。今回の一連の発言が普天間解決への大きな障害になったことは間違いない。

 メア氏は「講義はオフレコ(非公開)だった」「発言録は正確でない」と述べた。オフレコということで本音を語ったのだろう。正確でないというなら本人が説明すべきだ。

 在日米大使館は「伝えられている発言は米政府の政策と相いれない」との声明を発表し、外務・防衛当局による局長級協議のため9日来日したキャンベル国務次官補は、記者団に「(日本側との協議で)米国を代表して心から陳謝したい」と語り、米政府として公式に謝罪する考えを示した。

 発言への反発を考慮したのか、メア氏はキャンベル氏に同行する予定を急きょキャンセルした。本人は今夏、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア部長に転出するとされる。対日政策はアジア外交の柱の一つのはずだ。その責任者に就任するとすれば、今回の事態に対する真摯(しんし)な対応がぜひとも必要だ。

毎日新聞 2011年3月10日 2時31分

 

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