先週末、ネットでちょっとした炎上騒ぎが発生した。ダダ漏れで有名なそらのさんが放送した番組内での、ある女性の取り上げ方に関する問題だったのだけれど、その件に関してそらのさんがツイッターで謝罪をしていたのは土曜日の午後だった。別に僕は直接の関係者じゃないのでただのやじうまだったのだけれど、ちょうど「総統閣下シリーズ」の作り方のワンポイントアドバイスの記事を書こうと思っていたので、ちょっと参考までに、と思って、その件(土曜の午後のそらのさんの謝罪も含め)に関する雑感をまとめて「「そらの的あさのニュース」の謝罪について総統閣下の見解 」という動画を作成、YouTubeにアップしてみた。
ブログに記事を書いたのが18時過ぎだったのだけれど、動画には夜からブックマークが付き始め、素人がやっつけ仕事で作ったとは思えないほどの閲覧数になった。僕が最期に見たのは多分月曜日の昼頃で、アクセス数は9000を超えていたと思う。しかし、このあと、動画はYouTubeによって削除されてしまった。原因は恐らく著作権の侵害である。
僕自身、「この動画って、著作権上どうなんだろう」と思いつつ作っていたので削除されたことについてはそれほどの驚きがなかった。確かに僕が作った動画は、元ネタの意匠を全く無視した動画だったから。でも、元ネタを馬鹿にしたわけではないし、見かけたはてなブックマークのコメントの中には「あのシーンは実際はなんて言っていたんだ」というものもあった。つまりは、元ネタへの新しい興味を喚起もしていた。その一方で、「この改変動画を見て笑っている人は元の映画に敬意を払っているのだろうか」という指摘もあった。僕は自身のブログで映画レビューをそれなりの数書いている映画ファンでもあるので、そうしたことを言われるまでもなく、日曜日のうちに「ヒトラー 最期の12日間」をレンタルしていた。
月曜日の夜中に「ヒトラー 最期の12日間」のDVDを観て、普通に映画を観るのとはまたちょっと違った楽しみ方ができた。改変動画を作るに当たって何度も観ることになったあのシーンが劇中に出てきた時の「あぁ、これこれ」という感じはもちろんだが、見慣れた顔が何人も出てきて、「あぁ、この人が、あのシーンの・・・」という感じで、全く見ず知らずの俳優が演じるよりも、ずっと分かりやすい映画になったのである。そこで、映画を見終わってから、ふたつのことをやってみた。一つは、映画のレビューを書くこと。もう一つは、件の動画を再度アップすることだ。ただ、普通にアップするのでは、同じように削除されることになる。今回は、自分が書いたレビューへのリンクと、Amazonへのリンクを動画の紹介コメントに記載してみた。
映画がつまらないものであれば、こうしたこともできなかったはずだ。でも、「ヒトラー 最期の12日間」はレビューにも書いたように役者たちの素晴らしい演技によって、見事な映画となっていた。そして、件のシーンは、彼らの役者力を典型的に提示するシーンでもあった。僕がそうであったように、この改変動画がひとつのトリガーとなって、新たにこの映画を観る人間が生まれるのであれば、製作者にとっても利があるのではないかと思う。
今回、懲りずにほぼ同じ動画をアップしたのだが、YouTubeはこうした背景をあまり考えずに削除してしまう可能性は高い。管理する側とすれば、いちいち細かいことなど考えないで削除するのが普通だ。また、僕の意図を斟酌した上で、それでもやはり削除するという判断も十分にあり得ると思う。
それでも、である。この映画におけるこのパートは、使っている言語がドイツ語であること(日本語はもちろん、英語であっても、何を言っているのか想像がついてしまう)、中心人物がヒトラーであるとほとんど全ての人が一目で理解すること、役者達の演技の質が非常に高いことなど、様々な視点で奇跡的のように「改変にフィットしている」のである。
可能性は非常に低いけれど、何とか著作権者との相互理解が実現しないだろうか。ネットを上手に使えば解決の可能性もあるような気がするのだが・・・
・・・・ということを書いていたら、ちょうどこんな場面に遭遇した。smashmediaの河野さんがブログにアップした、星野リゾートの星野さんの講演に関する記事が、事務局からの要請によって削除されてしまったのだ。
【削除済】星野リゾート・星野佳路さんの講演を聞いてきた
河野さんとは3年ほどのお付き合いだけれど、先日出版した「Twitter後のネット社会」でも言及させていただいたりしていて、大変お世話になっているし、勉強もさせていただいている方である。彼が先日、星野さんの講演を聞きに行ったときのレポート記事がブログに掲載されていたのだけれど、運営から削除する旨の連絡があったそうで、記事は削除されてしまった。僕は削除される前の記事を読んでいたけれど、星野さんのファンであるという河野さんの思いが良く表現された記事で、星野さんや、この講演の価値を下げるようなものではなかったと思う。事務局とすれば、「ひとつの事例を許可すると、他の事例を許可せざるを得なくなる」とか、「事前に撮影禁止としてしまった手前、ここで許可したら不公平になる」という立場なのだろう。そこは理解可能だ。ただ、そもそもなぜ撮影禁止なのかが良くわからない(これは、日本の美術館などでも一緒だけれど)。
このあたりにも、著作権者の、それを見るものに対する不幸な不信感があると思う。