神奈川県警の元警視(55)が運営に関与した有限会社「神世界」(山梨県甲斐市)グループによる霊感商法事件で、神奈川県警は同グループ傘下のヒーリングサロンの顧客らから現金をだまし取った疑いが強まったとして、詐欺容疑で元サロン経営者の女(47)ら5人の逮捕状を請求した。捜査関係者への取材で分かった。近く逮捕する。元警視については関与が限定的だったとして立件を見送る方針。
捜査関係者によると、5人はグループ傘下の「びびっととうきょう・青山サロン」(東京都港区、閉鎖)の経営などに関与。04年11~12月、サロンに通っていた女性(48)に「キツネの霊がとりついている」などと言って、除霊などの名目で現金300万円近くをだまし取った疑いが持たれている。
元警視は青山サロンを経営していた女と交際しており、05年12月ごろから同サロンの会計を担当。07年3月ごろ、警察学校時代の教え子ら7人に架空の投資話を持ち掛け、集めた約520万円をサロンの運転資金に充てていたことなどが県警の調べで判明した。しかし除霊行為などにはかかわっておらず、詐欺容疑の立件は難しいと判断したとみられる。
県警は、元警視が青山サロンが入っていたマンションの名義人になっていたことなどから07年9月に捜査を開始。同12月と09年3月にグループ本部など関係先を詐欺容疑で家宅捜索した。元警視は08年2月に懲戒免職となったが、警察庁は県警が元警視に警備課長など重要ポストを歴任させていた点を重視、県警の歴代3本部長らも警察庁長官訓戒などの処分とした。
神世界グループの霊感商法を巡っては被害者弁護団も結成され、弁護団によると、09~10年に全国の男女計42人が総額約2億6000万円の損害賠償を求め、グループを相手取り東京地裁に提訴している。
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■ことば
00年2月に占いや鑑定を目的に「教祖」を名乗る男性が有限会社「千手観音教会事業部」として設立。02年に現在の名称になった。資本金500万円で、傘下に「ヒーリングサロン」を運営する複数の系列会社を持つ。神奈川県警や被害者弁護団によると、サロンでは手かざし行為や姓名鑑定が有料で行われていたほか、高額な霊感グッズなどが販売され、最盛期は全国100カ所以上あったとされる。07年12月に県警の家宅捜索を受け活動拠点は激減したが、本社がある山梨県甲斐市などで活動を続けている。
毎日新聞 2011年3月10日 東京朝刊