「生物学における高校・大学連携を考えるシンポジウム」を終えて
藤 義 博
(九州大学大学院理学研究院・2004年三学会合同大会準備委員長)
日本動物学会、日本植物学会、日本生態学会の3つの学会の九州支部は、合同で支部(地区)大会を開催しています。生物学の分野は細分化され、より専門化した新しい学会が設立されていますが、九州地区の三学会は伝統的な生物学を基盤として半世紀にわたり合同で学術講演を開催してきました。支部大会は学部学生、大学院生にとって最初の学会発表の場となっており、若手研究者の育成に役立っていると自負しています。ただ最近、大学では社会貢献や高等学校と連携の必要性が認識され、いろいろな活動が進められています。私が所属する動物学会でも全国大会での高校生のポスター発表が定着しつつあります。三学会の九州支部でも、本来の目的である研究発表と若手研究者の育成に加え、社会への貢献の可能性について検討してきました。合同大会は動物、植物、生態の諸分野の研究者が参加するため、生物学の広い領域をカバーしています。そのため、合同大会参加者は高等学校の生物部の研究活動にコメントできる専門家集団です。そこで、合同大会と高校との連携について検討を始めました。具体的には、昨年5月に三学会の九州支部の合同委員会で、「高校・大学連携促進のための検討委員会」を発足させ、委員らによる高等学校生物部会教諭との会談、生徒による生物研究発表大会の視察等を行ってきました。これらの活動を通して、九州地区では高校の生物部の活動が活発であることを知り、高校側から大学の研究者との交流を希望していることを聞かされました。そこで、三学会合同大会が九州大学箱崎キャンパスにおいて本年5月15日(土)に開催されるのに際し、福岡県内10校の生物学研究に取組む高校生を招き、15題の研究発表をポスター形式によりおこないました(発表演題参照)。
高校生の発表内容は生態学関連が多かったものの、生化学、遺伝学、生理学なども含まれ、その研究形態も個人、グループ、あるいは大学研究者との共同研究まで様々でした。発表する高校生は質疑応答の際には多少緊張している様子がうかがえましたが、基本的にどの演題も大変よくまとまっているようでした。ポスターを訪れる研究者や大学院生が教育的立場というより、むしろ同じ研究に携わる者として議論する雰囲気が印象的でした。本発表会で発表した高校生にとってはいわば「プロの土俵」で自身の成果を公開した訳ですから、今後の研究に大いに励みになった事と思います。
高校生の発表に続いて、特別講演として、大学教授と高校校長を併任し意欲的な高大連携活動を展開しておられる松浦克美氏(東京都立大学大学院理学研究科教授・東京都立大学付属高等学校長)に高校生と高校教諭の現状を理解した上で、大学から高校へ援助・協力できることの具体例を紹介していただきました。特に、松浦氏が中心となって展開している「高校教員向け講座」、「高校生向け体験授業」、「ゼミナール入試」について解説していただきました。高校生の発表については、高校教員から九州地区の高校生物部の活動が全国的に見ても高いレベルである素地を生かし、今後も同様の催しの存続を望む意見などが出されました。
当日はあいにくの雨ながら本シンポジウムには、学会参加者80名、高校生60名、高校教員10名、計150名と予想以上の多数の方々に参加していただきました。本シンポジウムは、少なくとも九州地区の生物学における高校と大学あるいは学会との関わりを一層密にするためのチャンスを供する企画となったと思います。これを機に今後両者間の連携活動が一層具体化、活性化することを期待します。末筆ながら本シンポジウムを全面的にご支援いただいた財団法人九州大学後援会に厚くお礼申し上げます。
【高校生による発表演題一覧】(発表風景の写真はPDF版をご覧ください)
1) カブトガニの成長を追え〜曾根干潟からの報告〜
勝部章子、中村和代、頼 忠幸(小倉東)
2) クロオオアリの活動について
加藤雄介、長田諭実(柏陵)
3) ベニシジミの観察
前田和也、戸部田雅一、橋口嵩志、石井友規(柏陵)
4) 舞鶴公園および西公園における蛾類調査の記録
大庭弘毅(大濠)
5) SSC環境クラブの活動報告
井上 藍、堀 芙美代(修猷館)
6) 皿倉山の自然 ?自然林と人工林の比較?「人工林は動物の棲めない林か?」
鹿毛亜耶、栗森ゆかり、下平美歌、田代靖子(九州国際大学付属 女子部)
7) 照葉樹林帯、福岡県に生育するブナの分布状況に関する調査
坂田芳江、国分美由紀、仁田原薫(八女)
8) ハブ毒ホスホリパーゼA2のリホールディングに関する研究
榲山えみ香、向野隆彦、大野裕理、渡辺唯子(修猷館)
9) スーパーサイエンスクラブ(組織培養)の活動について
安森渓太郎、今和泉剛志、布川哲也(修猷館)
10) SSC遺伝子クラブの活動について
有須田知佳、仲原彩香(修猷館)
11) ゾウリムシの繊毛運動と食胞形成について
田淵 綾、佐川明那(福岡)
12) 光合成細菌による悪臭発生物質の除去
大場郁佳、藤木麻子(明善)
13) スイカと根瘤線虫の共生に関する研究
松尾慶子、富松満菜美(八女)
14) ナットウキンの増殖に対する無機塩類等の影響
福田恵子、鳥羽美春、吉原久美子(福岡)
15) 窒素の各種濃度培地におけるモウセンゴケの培養
高橋由華莉、川内 彩(糸島農業)