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<中>基地依存経済 どう脱却

写真:写真説明
国内初の空港外免税店。観光客らで終日にぎわう(23日、那覇市おもろまちで)
 沖縄県宜野湾市にあるビル1階の沖縄駐留軍労働組合事務所。すぐそばの米海兵隊普天間飛行場では、大型ヘリがうなりを上げて旋回している。

 「あと20年近く家のローンが残っている。将来、仕事がどうなるか、不安で仕方ないよ」。副委員長の平良武夫さん(47)は、深いため息をついた。

 平良さんは海兵隊の司令部機能が集中するキャンプ瑞慶覧(ずけらん)に勤務、家具や文具品など物資調達の仕事をしている。妻も同じく基地従業員。2年前、約4000万円で念願のマイホームを建てたばかりだ。

 5月の在日米軍再編最終報告では、沖縄の基地負担軽減策として瑞慶覧を含む6施設の返還が決まった。従業員約9000人のうち約2000人の雇用に影響するとみられ、今回の知事選は“安定職場”にいた従業員らが初めて深刻な立場で迎える選挙となる。

 月々十数万円のローンの返済に、進学を希望している高校生の息子2人の教育費。もし夫婦とも失業したら……。平良さんは知事選の立候補者に対し、「不毛なイデオロギー論争をやめ、現実的な雇用対策を示してほしい」と訴える。

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 平均失業率全国ワースト1(昨年7・9%)の沖縄で、日本政府が雇用する形の基地従業員は「国家公務員並みの収入が得られる」「英会話がマスターできる」と人気が高く、採用倍率20〜35倍の狭き門だった。

 しかし、若者たちは敏感だ。キャンプ瑞慶覧リージョンゲート前にある基地就職専門学校「グロリアビジネススクール」では、米軍再編が取りざたされた昨年から入校者が激減。ピーク時に約130人いた生徒が4人にまで落ち込んだ。

 恵隆之介校長は「将来が見込めないと思ったのか。募集しても集まらないんです」と嘆く。

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 基地の雇用は減るが、土地は返って来る。再編のロードマップによると、住宅密集地では1972年の本土復帰後、最大規模の土地が返還される見込みだ。

 跡地利用のモデルケースとされるのが那覇市おもろまちの新都心地区。87年までに約192ヘクタールが返還され、20年近くを経て、モノレールが走り、国内初の空港外免税店「DFSギャラリア・沖縄」、大型ショッピングセンターなどが立ち並ぶ一大商業地に生まれ変わった。

 那覇市の不動産会社には、「新都心のマンション」を求める客が引きも切らない。本土の移住希望者や転勤者からの問い合わせも多い。

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 地場最大手の建設会社「国場組」。元会長で、グループ会社最高顧問、国場幸一郎さん(73)は那覇市の自社ビルで、「再編をチャンスととらえる発想の転換が必要だ」と説く。

 米軍の試算では、基地がもたらす経済効果は年間約1680億円で、観光産業と同じくらいの波及効果がある。国場さんは基地返還後の跡地利用策として「カジノを含むエンターテインメント施設をつくってはどうか」と提案し、年間1000万人の観光客を目標に掲げる。

 「これまでの沖縄は政府に『どうしてくれますか』と迫るばかりだったが、これからは、我々が『こんな島にしたい』と提案しなければいけない。新しい知事に問われているのは、基地依存型経済からの脱却だ」

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