スズキ、燃料電池スクーターで世界初となる「欧州統一型式認証」を取得
スズキが現在英国で実証実験をしている燃料電池スクーター「BURGMAN Fuel Cell Scootor」が、燃料電池を搭載した車両としては世界で初めて「欧州統一型式認証(WVTA=Whole Vehicle Type Approval)」を取得した。 欧州では、車両を販売する際にEU(欧州連合)の各加盟国ごとの型式認証を個別に受ける必要があるが、WVTAを取得したことにより、すべての加盟国で販売できるようになる。
スズキは、燃料電池システムを開発している英Intelligent Energy社と共同で、英国の技術開発を促進する政府機関(TSB)が主催する燃料電池車の実証実験に、2010年2月より参加している。TSB (Technology Strategy Board)はイノベーション、新製品、新規サービスなど、産業振興のために資金援助などを通して技術開発の促進を図っている。実証実験は英国中部のラフバラ大学を中心とした地域で行なわれており、スズキはBURGMAN Fuel Cell Scootor3台を使って実証実験中。
これまで実証実験する場合は、車両1台ごとの検査制度による個別認証(SVA=Single Vehicle Approval)を取得したうえで進めていたが、今回BURGMAN Fuel Cell Scootorが2輪、4輪を問わず燃料電池搭載車として世界で初めてWVTAを取得した。
BURGMAN Fuel Cell Scootorは、街乗りに適した市販のスクーター「BURGMAN 125」をベースに燃料電池車とした。車体質量は170kg。エンジン、CVT、ガソリンタンクなどがなくなった分と、水素タンク、燃料電池、2次電池などが増えた分を差し引いて、ガソリンエンジン仕様のBURGMAN 125より10kg重くなるという。全長2055×全幅725×全高1240mm。0.5kWのLiイオン2次電池を積む。航続距離は30km/hの速度で運転した場合350km、最高速度は63km/h。
燃料電池は英Intelligent Energy社製の空冷式PEFC(固体高分子型燃料電池)。空気極に、反応に必要な量より何倍も多い空気を送り込み、排気マニホールドから出す。空気が熱を持って出て行くので、燃料電池としては空冷になる。通常の燃料電池車は水冷式で、ウォータジャケット、水ポンプ、ラジエータなど多くの部品があった。空冷はセル単位の出力密度では水冷にかなわないのだが、この大きさで補機を含めて比較すると空冷の方が小さく、軽くなるという。質量は約10kgで、シート下の比較的高い位置に置く。
112セル合計で1.6kWの発電能力があり、熱効率は低位発熱量基準で50%、騒音は62dB(A)以下。寸法は170×468×167mm。水素は圧力を0.14MPaまで下げて燃料電池に供給する。マニホールドは入り口だけで、空気極で行き止まりになる。ただし、余計なガスが入り込んだときにそれをパージするために弁を開くことがあり、それを含めた水素利用率は98%になる。
水素タンクは70MPaの圧力に対応しており、数分以内に充填(てん)できる。断面が真円の円筒形で、車体の一番低いところ、ちようど2本のフレームの間に収まる。ライナーはエポキシ樹脂製で、それに炭素繊維を巻いて強化した。タンクが重いことは確かで、今後どうするかは検討中。70MPaタンクが本命と決まったわけではない。必要な航続距離など具体的な設計を詰めていく段階で、35MPaなど多くの選択肢の中から決めていくことになる。
「図解カーエレクトロニクス」発刊記念セミナー第2弾!
■【3月31日開催】クルマのシステムを支える要素技術の最新動向
日経Automotive Technologyではデンソーの協力を得て,カーエレクトロニクスのシステム,要素技術をまとめた別冊「図解カーエレクトロニクス[上][下]」を発刊しました。本セミナーでは,ECUおよびICの構成と自動車における課題,自動車用半導体デバイスについて現在求められているニーズと最新動向,自動車用センサとして適用が加速している半導体センサの最新動向,カーエレクトロニクスを支える品質保証,ものづくり,人づくりについて解説します。詳細はこちらです。