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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】松本新外相 立て直せるか統治力劣化
日本にとって「外交の空白」は一刻も許されない。菅直人首相は8日深夜になって、辞任した前原誠司前外相の後継に松本剛明外務副大臣を起用する方針を固めた。外相が不在だった丸2日の間にも外交案件でいくつかの停滞が生じている。
1つは、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定をめぐり、10日の衆院本会議で予定していた国会承認案の審議入りが延期されたことだ。新外相が決まらない以上、審議入りは難しいと与党側が判断したためである。
現行の特別協定は3月いっぱいで期限切れとなる。新協定の発効が間に合わないと、日本側が負担してきた在日米軍基地の光熱水費を米側が負担することになる。時間との勝負ではないか。
このほか、一連の外交日程が変更や再検討を余儀なくされている。前原氏はムバラク政権が崩壊したエジプトを12日に訪問することで調整していた。実現すればムバラク体制後では初の日本政府要人の訪問となる。外相辞任で見送られる公算が大きくなっており、早急な判断が必要だ。
とくに懸念されるのは、5月上旬に予定される外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)だ。米国務省のクローリー次官補も「日本が新外相をいかに早く選ぶかにかかっている」と後任人事に注目し、早い決着を求めていた。
前原氏は同盟深化に向けて「共通戦略目標」の策定を主導してきた。軍事力を増強する中国への対応をどう盛り込むかなどが焦点となっていた。
9、10の両日にはキャンベル国務次官補とグレグソン国防次官補が来日し、外務、防衛両省担当者と局長級協議を行う予定だ。松本氏には同盟重視を掲げた前原氏の路線を引き継ぎ、外交基軸の日米関係強化に尽くしてほしい。
鳩山由紀夫前政権が米軍普天間飛行場移設問題を迷走させ、日米関係を悪化させた。菅直人政権下では、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした。ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を初めて訪問した背後にも、日米同盟の弱体化が影響している。
後継人事を直ちに決められなかったこと自体、菅政権の統治能力の劣化として見過ごすことはできない。
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