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社説:主婦の年金救済策 批判合戦より救済急げ

 誰に責任があるのだろう。救済策を決めた長妻昭前厚生労働相か、「知らなかった」と発言した細川律夫現厚労相か。政権批判を強める自民党や公明党は長年放置してきた自らの責任についてどう説明するのか。

 厚生年金に入っている会社員の夫をもつ主婦(第3号被保険者)は年金保険料を払わなくても国民年金に加入しているとみなされる。夫が会社を退職した場合、妻も国民年金に切り替えなければならないが、そのまま保険料を払っていない人が最大で約100万人に上る。

 この問題に着目したのは長妻氏だ。保険料を納めていない人に年金を満額支給するのは不公平が生じるが、保険料未払い分を厳正に当てはめると無年金や低年金の人が出てくる。このため、すでに年金を受給している人は保険料を払ったとみなし、現役世代は直近2年分の納付を義務づけ、それ以前の分は帳消しにすることにした。この「運用3号」という救済制度を主導したのが当時大臣だった長妻氏で、細川氏は労働担当の副大臣だった。

 昨年12月、「運用3号」は課長通知で正式決定したが、この時点で細川氏は大臣に就任していた。1月末までに2331人が適用を受けている。ところが、総務省の年金業務監視委員会で「運用3号」が問題になり、国会で質問された細川氏は課長通知を出した当時は救済策のことを「知らなかった」と発言。その後も細川氏の答弁をめぐって国会は紛糾し、政府は「運用3号」を廃止し法改正によって新たな救済策を実施することを決めた。

 切り替え漏れによる保険料未払いの期間を年金加入期間に算入することで受給資格が得られたとみなす一方、給付は未払い分を減額する案などが検討されている。しかし、どこまでの期間をさかのぼって保険料納付を認めるのか、すでに受給している人はどうするのか、一般の無年金・低年金者の救済との公平性は保てるのかなど課題は多い。

 かつて野党だった民主党は「消えた年金」などの追及で政権交代への道を開いた。年金は国民の関心が高く政府批判には効果が大きい。責められる側になって改めて実感していることだろう。しかし、野党になった自民党や公明党が同じ手で政権再交代を図ろうとしているのであれば、国民の目にどう映るのだろうか。ずさんな年金管理や切り替え漏れを放置してきた責任も改めて問われねばなるまい。

 長年の怠慢と無責任によって年金制度には矛盾がいっぱいある。攻守所を変えて批判し合っているばかりでどうするのか。与野党が協力して早く救済策を決めるしかない。

毎日新聞 2011年3月9日 2時32分

 

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