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社説:外国人の献金 与野党で冷静に議論を

 外国人からの政治献金の禁止が前原誠司外相の引責辞任との関連で改めて注目されている。今後、同種の献金の有無を確認する動きが広まり、他の与野党議員への波及を予測する見方もある。

 前原氏が外相の立場などを理由に辞任した今回の判断はやむを得ない。だが、個人献金をどこまで厳密にチェックできるかなど、難しい問題をはらむ。外国人からの献金の一律禁止の是非も含め、与野党はあり方を冷静に議論すべきである。

 政治資金規正法は、外国人から政治家が寄付を受け取ることを禁止している。これは外国人や外国の政府、組織などの勢力が日本の政治や選挙に影響を及ぼすことを未然に防ぐ目的からだ。

 外国人と知りながら故意に寄付を受ければ刑罰に処せられ、公民権も停止される。前原氏の場合、5年間で25万円寄付したのは在日韓国人で焼き肉店を経営する知り合いの女性だった。前原氏は相手が外国人だと知っていたが「献金を受けている認識はなかった」と説明している。

 前原氏以外にも外国人・法人からの献金が今後判明する可能性は否定できまい。現にこれまでも与野党を通じ、こうしたケースが何度か指摘されてきた。前原氏は外相の立場に加え、国会審議への影響も考慮し引責した。だが、政治責任を判断する指標は、故意だったかどうかの点に原則として置かれるべきだろう。

 企業献金との兼ね合いも問題になる。株式の過半数を外国人や外国企業が持つ日本企業からの献金は、もともと禁止されていた。

 ところが、グローバル化などを理由に自民党が解禁に動き06年の法改正で、5年以上国内で上場している企業は例外として解禁された。個人献金に比べ企業献金は多額にのぼることも多いだけに、何らかの影響力を行使する懸念はより強いかもしれない。個人献金との扱いがバランスを逸しているとの指摘は免れまい。

 外国人といっても在日韓国・朝鮮人が日本名を名乗るような場合、国籍はわかりにくい。普段は地域の住民として生活している永住外国人については、地方選挙権の付与も検討されている。外国人の個人献金を一律に禁じることの当否も含め議論すべきではないか。

 企業・団体から個人献金への政治資金のシフトは、政治全体の課題でもある。今後はネットによる献金も拡充が予想されるだけに「(外国人かの確認について)制度をどうするか考えないといけない」という岡田克也民主党幹事長の指摘は理解できる。不毛な暴露合戦の泥沼に陥らないためにも、制度の点検につながる議論を与野党に求めたい。

毎日新聞 2011年3月9日 2時31分

 

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