銀輪の死角

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銀輪の死角:自転車事故対策、車メーカー「本気」に ホンダは模擬装置販売

 自転車乗用中の死者(事故後30日以内)が年間1000人近くに上り先進国で突出する中、自動車メーカーが自転車の事故防止に向けた取り組みに乗り出した。トヨタ自動車幹部は学会誌で自転車レーンの設置を提言し、ホンダは街中での自転車の危険を体験する安全教育用シミュレーターの販売を開始。年間15万件以上発生している自転車事故の相手の8割以上は車で、メーカーの危機感が対策に向かわせている。【馬場直子、北村和巳】

 トヨタの亘理(わたり)章IT・ITS企画部担当部長は、自転車と車の事故を減らすには、車のドライバーが(1)常に自転車を見て(2)その動向を予測し(3)自転車の利用者とアイコンタクトする--ことが重要になると指摘。このため車道の脇を区切って自転者用通路とする「自転車レーン」が、死角を生むような柵などもないため最適だと主張する。

 こうした考えに基づき亘理氏は、全国の道路約120万キロを17区分し、道路状況に応じて、柵などで車道と区切る「自転車道」や自転車レーンを設置するよう国や自治体に求めた。亘理氏は「高齢化や地球温暖化の中、将来的に1人乗り電動小型車が普及することも予想されるが、現在の道路状況では安全に走行できる場所がない。自転車レーンは電動小型車の通行帯にも活用できるのではないか」と期待を寄せる。

 一方、ホンダは自転車運転を仮想体験しながら交通ルールやマナーを学べる「自転車シミュレーター」(73万2900円)を開発、昨年2月から販売を始めた。既に車やオートバイのシミュレーターは販売していたが、交通事故に占める自転車事故の割合が99年の18・2%から09年は21・2%と年々高まっている状況を受け、自転車用も製作した。

 自転車シミュレーターは、ペダルをこぐと前面のモニターに街中を走行する画面が流れる。車や歩行者も映るほか左右や後方にもモニターがあり、「学校へ行く」「商店街へ行く」などコースを選んで道路上の危険を体験できる。自分の走行について適否を点検することも可能だ。

 これまで各地の警察や自動車教習所に約100台販売され、安全講習や小中学生・高齢者向けの交通安全教室などで活用されている。

 ホンダ広報部は「車やバイクのメーカーとして、自転車や歩行者にとっても安全な道路環境を目指す取り組みが必要と考えている」と話している。

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 情報やご意見、体験談をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100-8051毎日新聞社会部「銀輪の死角」係)でお寄せください。

毎日新聞 2011年2月21日 東京夕刊

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