きょうのコラム「時鐘」 2011年3月9日

 公立高校の入試本番である。真剣な場で笑いのタネを拾うのは不謹慎だろうが、広島での「珍事」には驚いた

国語の試験で漢字「投」の書き取り問題が出た。が、あろうことか、受験生が座った椅子に「いすを投げないように」という注意書きのラベルが貼られていた。目の前に答えがぶらさがっていたというお粗末である

携帯電話によるカンニング騒動の矢先である。そっちにばかり注意が向き、椅子には目が届かなかったか。木を見て森を見ず。こんな過ちは誰にでもある。さほど目くじらを立てることもあるまい

驚きが、もう一つある。高校入試に「投」の書き取りとは、随分やさしい出題ではないか。投手、投書、投資など、身近にあふれる文字である。当節、漢字力はこれほど衰えてしまったか。ため息が出そうになったが、我が身を思うと偉そうなことは言えない。読めるが書けないという漢字が増殖中である

パソコンや携帯電話は、便利な暮らしの相棒である。相棒は驚くほど賢い。その賢さに、どんどん磨きが掛かる。揚げ句、当節の15歳は「投」の書き取りに挑む。取扱注意の相棒である。