行政刷新会議の作業グループが7日までの2日間、初の「規制仕分け」を実施した。各府省庁の法令や通達が消費者の利便を損なったり、企業の創意の芽を摘んだりしている事例を明らかにするのが狙いという。
政権交代後に本格的に始めた事業仕分けのやり方を生かし、インターネット中継や利害関係者からの聞き取りを取り入れつつ、規制の根拠や弊害を指摘した。仕分け人は与党議員と民間人などが務めた。
議論の過程を公開し、外の目を大切にするやり方は評価できる。しかし取り上げた項目は小粒なものが多かった。市販薬のインターネット販売規制の撤廃問題など、患者と消費者の関心が高いものもあるが、結論は「見直し」と踏み込み不足だった。仕分けの結果が本当に改革につながるのか、疑問が残る。
規制改革は医療、農業、法務、消費者保護など社会規制の改革の実をどう上げるかが課題だ。自公政権のときも安倍・福田・麻生の3政権はこの点がおざなりだった。
必要なのは、規制を所管する府省庁と、その背後の既得権者を説き伏せる菅直人首相の力だ。首相は行刷会議の議長である。仕分け人激励のパフォーマンスより、改革実現のための戦略構築に力を注ぐべきだ。
今回、仕分けで議論したのは医療、環境、農業、消費者の4分野だ。
医療分野で注目された薬のネット販売は、薬を飲んだ人が副作用に遭う危険が高い分類の薬について、厚生労働省が規制存続にこだわった。薬剤師などによる対面販売の原則を根拠にするが、説得力が乏しい。どうすればネット通販などでも副作用の危険を小さくできるのかを工夫するのが同省の仕事だ。担当の大塚耕平副大臣の指導力が試される。
患者が健康保険と保険外診療を同時に利用できない矛盾の解消も長年の課題だ。だが、この「混合診療」の原則解禁の問題は、反対を唱える日本医師会などへの配慮からか、仕分けの対象にさえしなかった。国民の間にも賛否が渦巻くだけに、仕分けに打ってつけのテーマだ。成長を促し、消費者主権を確立する政権公約を果たすために、こうした難しい改革に正面から取り組むべきだ。
ほかにも、農業分野の本丸である農協の経営改革は俎上(そじょう)に載せず、仕分け人が議論しようとした電波オークション(競売制度)の導入は総務省の政務三役の圧力で取り下げた。環太平洋経済連携協定(TPP)の参加交渉に入るためにも規制改革は不可避だ。どれもこれも、首相の意志しだいである。
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